はじめに

2003年は、アメリカからペリー提督が率いる黒船が浦賀(横須賀市)に来航してから150年目の年に当たります。長い鎖国の時代が終わり、日本の社会は近代化への道を一気に駆け上がってきました。戦後、さらに近代化のスピードを上げ、多くの生活者は地域のコミュニティよりも企業やビジネスにおける人間関係を優先してきました。しかし、高度成長期が終わった後、バブル経済の崩壊を経て、低迷する経済やグローバル化の影響により、すべての産業が改革を迫られ、地域社会も真剣に生き残りを考えなければならない時代になりました。

国際的にはアメリカおよびEUに対して経済的に対抗するため、東アジア圏も経済統合に向けた動きが必要であり、この潮流は日本に更なる開国を迫ることでしょう。このような状況の中で、日本の地域社会は、国内だけでなく海外との積極的な観光・交流(ツーリズム)によって経済を活性化させることが期待されています。国際空港の拡充、観光情報センターの設置、インターネットによる情報提供や予約システム、カード決済システムの普及、長期滞在を可能にするまちづくりなどによって、海外からの旅行者を迎え入れる環境を早急に整備することが求められています。

異なる習慣や生活文化を持つ人々との出会いや交流において、違いを知ることと共に、自らのアイデンティティを失わないことも大切です。そのためには、地域が持っている歴史や文化など、資源の掘り起こしが重要です。海外からの旅行者が日本のそれぞれの地域で暮す人々と交流し、生活文化にふれ、そこでしか味わうことができない体験を通して日本に対する理解を広げ、そして、日本を再び訪れたくなるのです。

私は、これまで8年間を展示会社、15年間を広告会社に勤務し、観光・交流(ツーリズム)に結びつく大型イベントやスペースデザイン(空間開発)などのプロジェクトに携わってきました。この本では、「ツーリズムによるまちづくり」に視点を置いて競合他社との間で凌ぎを削る企画コンペやプロポーザル・コンペで利用した考え方やユニークな事例をキーワードごとにまとめました。まちづくりの企画や具体化の段階において参考にしていただければ幸いです。

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