牧場見学日記1996年編




5月31日 渋谷エクウスの読書コーナーで見た牧場見学本がきっかけで牧場見学を思いつく。

今回の目当てはシンザンとオグリキャップに決定。(2泊3日)


7月11日(晴れ)

北海道へ出発。空港から苫小牧へそして日高本線に乗って馬界へ。静内駅
今日の宿泊地の浦河まで2時間半位らしい。その間弁当を食べながら外を眺めていた。
右側の海を延々眺めてしばらくすると馬がちらほら見えてくる。
途中の静内駅へ来る頃には(右の写真)かなりの馬が見えてくる。
草を食べてたり、寝ていたり。いよいよ馬界に突入だ。これからの旅を期待させる光景だ。
静内から浦河までは更に1時間位。夕方になっており馬もなんも見えなくなっていて
ちょっと残念だ。電車の中にカメラ片手に馬見学者らしい若者2人を発見。
日本ダービーの帽子かぶってる。いかにも馬好きと言う身なり。
話かけてみるか。でもいきなり話かけずらいなー・・・・・・。
そんな事をしているうちに浦河駅に到着。もう夜8時ちかい。電車で見かけた2人も
同じ宿みたいだ。今晩はホテル浦河イン泊。


7月12日(晴れ)

朝6時に起床。7時半くらいの電車で日高幌別駅へ向かう。行く先はシンザンがいる
谷川牧場だ。駅のホームで昨日の若者2人組を発見。話を聞くと2人は東京にある同じ会社の同僚で
1週間も連続で年休を取って牧場見学やばんえい競馬など馬三昧の休暇を楽しんでいるそうな。
なんとも羨ましい限りだ。電車に乗ると学生が一杯で大混雑だ。昨日の下り電車がうそみたいだ。
そんな車内で彼らの旅の計画表を見せてもらったが見学慣れしてるよ。俺と大違いだ。
そこで彼らの今日の予定を聞いてみた。すると彼らはイーストスタッド経由で谷川牧場へ行くと
言うので自分もご一緒させて頂く事にした。旅慣れた彼らに付いて行った方が楽だしね。

イーストスタッドはキレイでちょっとおしゃれな感じの牧場だ。
エルハーブのつもり 一番手前にいたのがエルハーブだ。(左の写真)馬を見た時点では
この馬がイギリスダービー馬と知らなかったが優しそうな顔をして
いてかっこいい馬だ。この馬以外にもミホシンザンなどの馬がいたぞ。
本当ならもっと多くの馬を見れたはずだったが来た時間が見学開始の
時間からたいしてたっていなかったのでまだ他の馬が放牧地に
出てきていないらしかった。見学に来ていたのは僕ら3人だけだった。
彼らの話だと静内、新冠周辺の有名な牧場はこの牧場と違って
大混雑らしい。夏休みなんか行ったら地獄だそうだ。
時計を見るとかなり時間が過ぎてしまっている。発静内方面行きの
バスの時間の事もあるので(これに遅れると3時間待たねばならないのだ)

色々教えてくれた2人には悪いがここで別れることにした。その後も彼らはひたすらカメラで
馬を撮り続けていた。(いいカメラ持っているなー。俺なんか写るんですだよ。(望遠フラッシュなしのやつ))
とは言っても100ミリ相当の望遠で写真が撮れるから好きなのだ。(フラッシュが無いのもいい。)
20分程歩いて谷川牧場に着いたもののお目当てのシンザンは体調不調の為見学できないとの事。
ガックリだなぁ。今回は残念だったがまた来年があるさ。(来年はなかったのである。)
シンザン見学をあきらめて日高幌別駅に帰り、近くにあったセイコーマートで
あんパンを買って浦河駅行きバスに乗り込んだ。さらに浦河駅からバスを乗り換えて
静内まで1時間20分位のバスの旅だ。風景がいい。左にはすぐきれいな海が見える。
海をみながらあんパンを食べる。うまいっ。少し経つと眠くなってきた。あまりにも気持ちが
良くて寝てしまった。しばらくして目がさめるともう静内駅だった。
静内駅内の観光案内所でオグリキャップのいる優駿スタリオンステーションの場所を聞いたら隣町の
新冠町あるとの事。おーっ恥ずかしい。見学ガイドにも書いてあるのに良く読まずに聞いちゃったので
案内所のおばさんに笑われてしまった。
次の電車まで楽に1時間半はあり、待っていても時間のムダと思いタクシーを使って
優駿スタリオンステーションまで行くことにした。


優駿S.S(スタリオンステーション)に着くまでの間タクシーの運転手さんと馬の話になった。
話が見学出来なかったシンザンの話に及ぶと運転手さんは心配そうに「えっそうなの?
うーん心配だなぁ。悪くなきゃいいけど。」とつぶやいた。この後いろいろ話をしたのだがつくづく
「シンザンは本当にこの日高の人に愛されてるんなんだな。」と思った。来年こそ
シンザンを見たい。こんなに人に愛されている馬ならばこの目で必ず。来年も日高へ行こう
そう思わずにはいられないなかった。でもこの時シンザンがこの日の深夜に
死んでしまうとは思いもしなかったが。

そして静内駅からタクシーで15分位だっただろうか。優駿S.Sに到着。オグリキャップ
運転手さんにお礼を言ってタクシーを降りると目の前に優駿ショップがあった。
「オグリキャップはどこかなぁ」と後ろを振り返ると人だかりが出来ていた。
「あそこだっ。」俺もその人だかりの一部分になって中を見ると芦毛の馬がいた。
「オグリだっ」
心でそう叫んだ。あの日を思い出していた。
まだ俺が競馬に興味がなかった頃、初めてみた競馬中継がラストランだった。
あのオグリのラストランの有馬記念。
競馬好きの友人K君が無理矢理付き合わされて見たテレビ競馬中継がそれだった。
レース直前、友人は「オグリが勝つのは難しいだろう」と言っていたのを今でも覚えている。
レースが始まるとそんな下馬評どこへやら好位をつけて直線チョイ差しで勝ってしまった有馬記念。
武豊をビッグな男にした有馬記念。そして鳴り止まないオグリコール。
その当時自分は競馬を知らなかったがテレビからでもその異様な興奮が伝わって来た。
あれから何年経ったのだろう。今じゃすっかり競馬にはまっている自分だが、あのレースが
自分の競馬好きの原点だと思う。競馬にハマった後は何度オグリのビデオを見た事か。
そんなオグリがオグリキャップが目の前にいるのだ。
こんなスゴイ馬を見せてもらって最高な気分だ。感謝しても感謝し足りない位だ。それにしても草を食べてばかりで
まるでこっちに来る様子がない。見物人などもう見飽きたのだろうか。そんな事はどうでもいい。
本当に北海道にきて良かった。見学の後は優駿ショップで軽くお買い物をしてオグリに別れを告げた。

優駿S.Sから歩いて30分位で新冠駅に着いた。
しかし苫小牧方面行きの電車が当分ないのでバスで苫小牧へ向かった。
それで苫小牧まで戻って来たはいいけれど、今夜の宿をまだ予約していなかった。
その後札幌行きの電車に乗って千歳駅で降りた。ここなら空港駅にも近いし
「万が一ここで宿が取れなかったら空港へ行って一晩明かそう。そうでなければ今日千葉に帰ってもいいし。」
なんて甘い考えで千歳で宿探しを始めた。6、7軒位ホテルを探したがどのホテルも「満室です。」の一言。
1時間あまり探したが見つからず、電話ボックスでその他のホテルに電話を掛けたがやはり答えは同じだった。
計画性のない行き当たりばったりの旅はあまり良くない。かなり反省した。
あきらめて帰ろうかと思った瞬間「空室」の2文字が目に飛び込んできた。
「つるや旅館」を発見。
早速話をしたら空き部屋があるとのこと。(素泊まり4500円)あーっ俺はツイている。感謝感激。
速攻でチェックインをすまして、夕飯を食べに夜の街へ。
ジンギスカンとビールを腹一杯飲み食いして北海道最後の夜は過ぎていく。
明日は千葉に帰らなくてはならない。少し寂しい。
あとになって思えばこの日の夜にシンザンが死んでしまうなどだれが思うだろうか。
つるや旅館泊。

7月13日 晴のち曇り

昨夜からあんまり眠れなかった。いつの間にかに朝になっていた。
昨日の様々な出来事に少し興奮気味だったからかもしれない。
しばらくして朝6時のニュース。その第一報に耳を疑った。
「五冠馬シンザン大往生」
・・・・・信じられない。
近年何度かその生命の危機があっても奇跡的にカムバックしてきたので
来年こそはその雄姿を見るぞと思っていたのにこんなことになるなんて。
もう少し長生きしてくれたらなぁ。自分があと2日早く来ていれば。
その雄姿を一度でいいから見てみたかった。
別にこの馬の現役時代をリアルタイムで見た訳でも馬券を獲った訳でもないけど
この馬を見て感じたかった。
激しい現役時代、外国種牡馬と戦った種牡馬時代
昭和から平成へ時代を超えて生きてきたそのパワーを
時を超え片目の視力を失っても日高の、日本の馬界のスターとしての
存在感を、生きざまを感じたかった。
べつにカッコつけて言ってるわけじゃない。
この旅をしようと思ったのもこの馬を見たいって衝動に駆られたからだ。
シンザンの雄姿は見れなくなってしまったのは本当に残念だ。
その雄姿をみることは叶わぬ夢となってしまったが
この3日間は充実したいい時間になった。来年も馬を見に行こう。
気分転換にもいいし、こういう旅は心の栄養になる。
今度は何を見に行こうか。

終わり

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