Desire 〜あなたの欲しいもの〜 2



  クラヴィスの部屋に入ると、いつもと違う雰囲気のものがあり、目を奪われた。ローテーブルの中央に置いて
あるのは、数十本もあるカサブランカの花を生けた花瓶。

「あ、カサブランカが生けてあるんですね〜。とってもいい香り。すごい花束ですね。どなたからの贈り物です
か?」

「…世話係が用意したものだ。誕生日だからと言って…な」
「素敵ですね。あ、私も一応プレゼント用意したんですよ?聞いても教えて下さらないから、困りましたけど」
 アンジェリークは、鞄の中から小さな箱を取り出した。青く光沢のある包装紙にシルバーのリボン。
「…これは?」
「とにかく、開けてみて下さい」
 クラヴィスは言われるままパッケージを丁寧に開いた。中には、宝石店で購入したときに入れてあるような四
角形の箱。更にその箱を開けると、小さめのブルームーンストーンをあしらったイヤリングが入っていた。

「…イヤリング…か」
「はい。クラヴィス様が私に下さったムーンストーンほどではないですけど、綺麗でしょ?」
「そうだな。礼を言う。美しい色だ。月光に照らされた時のお前の肌の色のようだ」
 クラヴィスは、アンジェリークの手を取って、その甲に口付けた。
「…クラヴィス様ったら、もうっ」
 アンジェリークは赤くなって俯いてしまう。
「…もっとも…」
 クラヴィスは身を起こして、少女の耳許に口を寄せる。
「…次第に色付くお前の肌の方が…数倍も美しいが…」
「…っ」
 答えようがなくてただ見つめ返すと、クラヴィスはアンジェリークの反応を楽しむように微笑していた。
「せっかくドレスアップして来たのに…」
 アンジェリークの肩からショールが滑り落ち、首筋から肩までの柔らかな白い肌が現れる。
「…お前がお前らしくあれば、着飾らなくとも美しいと私は思っているのだが…」
 クラヴィスがさらっと言ってのけるということは、本心からそう思っているわけで…。
「…クラヴィス様にはかないませんね。シャワー浴びてから…ね」
 クラヴィスは返事の代わりに頬にキスをした。

 白いシルクのナイトローブを纏った少女は、月夜に舞い降りた天使のように輝いて見える。幾度か肌を重ねて
もなお輝きを失わない清純な魂に、時折触れるのをためらってしまう。

 闇の力と対極にある光。彼女は光に一番近い存在なのだと、改めて思う。
「クラヴィス様…」
 ベッドに近寄るとき、いつも彼女は恥ずかしそうに俯く。
「…何か飲むか?」
 ベッドサイドには、彼女が飲めそうなものが入った小さな冷蔵庫が用意されていた。世話係が用意していった
ものだろう。

「大丈夫です」
 クラヴィスがベッドに腰掛けて、自分を見てると思うだけで身体が熱くなる。内心、飲み物どころではないのだ。
「…どうした?緊張しているようだが」
 隣りに座ったアンジェリークを覗き込み、軽くキスを交わす。
「シャワーを浴びた後にしては、冷たいのだな」
 アンジェリークは、最後に少し低めの温度でシャワーを浴びていたのだ。その方がダイエットに効くと聞いたか
らである。でもそれを知られるのは恥ずかしくて…。

「…温めて下さい」
 思わず口をついて出た言葉にアンジェリークもクラヴィスも驚いた。
「…温める…か。熱く…でも良いか?」
 深い…黒水晶のような瞳に見つめられ、囁くような優しい声で返事を求める。答えは判っているのに…。
「…はい。優しくして下さいね」
 潤んだような瞳で自分を見上げる少女があまりに愛らしく、クラヴィスは思わずキスをした。軽いキスを二度ほ
どして少女を見ると、甘えたような眼で吐息を零す。少女がためらいがちにクラヴィスの背中に手を回した。

 桜色の少女の唇が艶やかに濡れ、クラヴィスを誘う。柔らかな唇に再び触れ、舌先で唇を押すと、僅かに開い
てそれを受け入れる。

クラヴィスの舌がアンジェリークを捉える度に、クラヴィスのナイトローブを掴んでいる手に力が入る。まだクラヴィ
スに応えることに抵抗があるのかもしれない。

 長い口付けから解放し、アンジェリークの金色の髪を掻き上げる。頬を染めた少女が可愛い。指先で頬をなぞ
り、首筋にそっとキスをしながらベッドにゆっくりと横たえた。

ベッドのスプリングが僅かに軋み、クラヴィスの背中を流れていた黒髪がアンジェリークの胸元に落ちる。襟元
から覗く白い肌にかかる髪は、アンジェリークの肌をより白く見せていた。

 さっき触れた首筋に赤い跡を残し、その首筋から鎖骨までを丹念に唇で辿る。時折舌で触れ、わざと濡れた音
を立てて舐めると、アンジェリークが切なげに身をよじる。

 素肌に直接羽織ったシルクのナイトローブは、少女の肌を隠してはいるが、身体のラインまでは隠していない。
薄い布地を通して見える胸の膨らみは、その先までもくっきりと判る。

 クラヴィスは、柔らかな胸の先を薄い布地の上から口に含んだ。
「…っん」
 アンジェリークは、直接触れそうで触れない感覚に戸惑い、喉を仰け反らせた。クラヴィスは口に含んだまま、
舌先で弄ぶように転がし、布を濡らしていく。次第に大きくなる濡れた音が、アンジェリークの聴覚を刺激する。

「……ィス様…」
 まだあまり肌に触れていないのに、身体が熱い…。
 クラヴィスは、アンジェリークのナイトローブの裾から長い指先を滑り込ませた。
 ビクッ。
 驚いて、足を閉じようとするが、いとおしむような優しい愛撫に身体が反応して力が入らない。
「…アンジェリーク」
 ようやく胸元から顔を上げ、よく響く甘い声で名前を呼ぶ。
「…は…ぁ…」
 アンジェリークは、クラヴィスの声が聞こえてはいるものの、自分の身体の熱さと呼吸の乱れに、どうしたらい
いのか判らなくなっていた。内腿を滑る滑らかな、それでいて男性特有の骨ばった指先が、少女の身体の熱さ
の源を容易に探り当てる。

「…あっ…」
 思わず漏れた声に、アンジェリークは一気に真っ赤になった。
「…今宵は二人きりだ。遠慮する必要はない」
 指に絡みつく甘い液体を舐め取り、再びその奥へと指先を進めようとしたとき。
 ピクン。
 少女の身体が仰け反り、クラヴィスの指先を濡らした。
「…ダ…メ…」
 吐息のように切ない声で言い、恥ずかしそうに身をよじる。
「…身体は…私を欲しがっているように見えるが?…」
 意地の悪いことを言って、アンジェリークの心を揺さぶる。
 クラヴィスは、アンジェリークが自制心を保とうと一生懸命な姿が可愛くて、いつも焦らしてしまう。
「…意地…悪…」
 声を出すと、クラヴィスの指先が触れている敏感な部分が僅かに震えて、思わず腰を浮かしてしまう。
「…お願…い…」
 何度か身を捩ったため、ナイトローブの腰紐が解けて、白い肌が露わになった。左胸に張り付いたシルクから
肌の色が透けて見えて、艶めいて見える。

「…私のキスに…応えたら…な」
 そう言って微笑すると、クラヴィスはアンジェリークの唇を奪った。何度も軽いキスをし、アンジェリークが自分か
ら口を開けてクラヴィスの舌を求めるように誘う。

「…っん…ぁん…」
 アンジェリークは、頭の中が真っ白になりそうなほどクラヴィスとのキスに没頭し、はだけたナイトローブから腕
を抜いてクラヴィスの首に手を回していた。

「…アンジェリーク…」
 愛しい少女の名を呼び、胸に口付けをして、クラヴィスは長い指先を膝から内腿まで滑らせた。
 一瞬、身を硬くするアンジェリークの耳許に、静かに甘い声で囁く。
「…愛している…」
 クラヴィスの声に身を委ねるように、アンジェリークは力を抜いた…。
 カサブランカの甘い香りが二人を包み、共に悦楽へと導いた。


「クラヴィス様って、私を困らせるのお好きなんですか?」
 アンジェリークは毛布を胸まで引っ張り上げて、隣りで自分をじっと見つめるクラヴィスに問い掛けた。
「?困ってるようには見えないが…?」
「乙女心を判って下さらないのならいいです…」
 アンジェリークは、クラヴィスと反対の方を向いて拗ねてみせる。
 クラヴィスは、クスリと笑ってそっと耳許に口を寄せた。
「首筋のキスマークのことなら、ワザとだが?」
 アンジェリークがクルっと振り返る。
「補佐官の服を着て、ギリギリ見えない位置にしたつもりだが…」
 アンジェリークは、呆れた顔をする。
「もうっ、そんなに独占欲強かったんですか?」
「…そうだな。私も知らなかったのだが…な」
 アンジェリークは気付いていないが、アンジェリークを今でも好きな男は一人じゃない。
「…私が好きなのは、クラヴィス様だけですよ」
 極上の笑顔を見せて、クラヴィスの頬にキスをする。
「本当にお前には驚かされる」
「?」
 どうしてそうも簡単に自分が望む言葉をくれるのだろう…。
「いつまでも、その微笑で私を天へと導いて欲しい…」
「え?仰る意味が良く判らないんですけど、えっと、明日も執務があるので…」
 意味を取り違えたまま、遠まわしに断ろうとするアンジェリークが可愛くて、クラヴィスは細い肩を抱き寄せた。
「明日の朝起きるまで、私の誕生日ということにはならぬか?」
「…わがままは今日だけですよ?」
「…判った」
 クラヴィスは、少女の頬に約束のキスをした。
   
                         ― END ―
コメント

 

さて皆さん、いかがでしたでしょうか?アダルトモードのクラリモでした。
綾瀬は今回、アダルトモードに初挑戦だったのですが…皆さんのご感想はいかがでしょうか?実は、ノーマルの
アダルトモードを書いたのは初めてなんですよね〜。アダルトモードを書くと、かなり気力が要るので(笑)なかな
か大変なんですけど。

 綾瀬がアダルトモードを書くとき、かなり表現方法に気を配っているのですがどう思われたでしょうか?男性向
けだと、きっと露骨な表現の方が好まれるのでしょうけど、私はそういう表現をされてるのを読むのが苦手なの
で出来るだけ遠まわしにしてます。まあ、大人の皆さんはそれでもご想像頂けると思いますけど(^^;

 クラヴィス様のお誕生日企画!と銘打っておいて、お誕生日に間に合ってないのですが…お許し下さいませ。
でもまさか、お誕生日企画がアダルトモードになるとは全く思ってませんでしたけど。智希さんったら、描きたい
っていうんだもん〜。

 智希さんはどうやら、リクエストが多ければ描く気まんまんみたいですので、是非感想をメールして下さいね。
(掲示板でもいいですけど、常識の範囲内での書き込みをお願いします)

 綾瀬の方は、こちらがメインではありませんので…。ただまあ、リクエストの熱意に負けることもありますので
(笑)御感想を頂けると嬉しく思います。

 それではここまで読んで下さって有難うございました。また次のお話も楽しみにしてて下さいね。
                                             綾瀬美月

蒼月華のトップへ 蒼月華トップへ