Angel Night
〜adult ver.〜
- 1 -
コンコン。
アンジェリークは、静かにノックをして扉を開けた。
「クラヴィス様?」
 先ほどまで明るかった室内が、ほの暗くなっていてドキリとする。思わず彼の姿を探し、暖炉の傍の
広いソファで本を広げているのを見つけた。

「…冷え込んできた。こちらへ来るといい」
 闇色のナイトローブを着たクラヴィスはいつもと全然変わらずに微笑する。暖炉の炎が彼の顔を照らし
て、とても艶っぽく見える。

「はい」
 素直に傍に歩み寄り、彼の隣りに腰掛ける。
「何を読んでいらしたんですか?」
 興味深そうにクラヴィスの手元を覗いたアンジェリークは、見たことの無い文字で綴られた文章に眼を
パチクリさせる。

「…他星系の古代史だ。人の歩んで来た道を知っておくことも必要だろうからな」
 今までの彼からは想像出来ない言葉を聞いて、アンジェリークは驚いた顔をする。
「…どうした?」
「…クラヴィス様、仕事熱心ですね」
 心底感心した様子のアンジェリークに、微笑してみせる。
「そうだな。出来るなら平穏な日々を過ごしたいのだ。私の天使と…」
 クラヴィスは右手を伸ばして、アンジェリークの頬を包んだ。サッと触れるだけのキスをする。
 アンジェリークはキスのあと、赤くなって俯いた。
 優しいキス…。でも、このキスは…。
「あの…クラヴィス様。私って、子供っぽいですか?」
「?」
 クラヴィスは、少女が何を言いたいのか判らないといった顔で見つめ返す。
「えっと、大人の女性として見て下さらないのかなって思って…」
 どう言えば判ってくれるのかと一生懸命な様子の少女が可愛くて、クラヴィスは思わず抱き締めた。
バサリと本が床に落ちる。

「え?」
 なぜ突然抱き締められるのか判らなくて、アンジェリークは驚く。
「…私の…思いを伝えても良いのか?」
 耳元で聞こえる掠れるような切ない声に、少女の心臓がドクンと跳ねる。
「…その…肌に。その…唇に…」
 クラヴィスの低い声が、少女の心に染み込んでいく。
 アンジェリークは何て応えたらいいのか分からなくて、小さく頷いた。
「…アンジェリーク」
 呼ばれてクラヴィスを見上げる。クラヴィスの手が頬に添えられて、端正な顔が近付いてくる。軽く触
れるだけのキス。そして…。

 クラヴィスは左手でアンジェリークの細い腰を抱き寄せ、もう一方の手で顎を少し持ち上げた。
 唇を舐めると、驚いたように身じろぎする。腰に回した手でグイと引き寄せて固定し、更に上向かせ
た。唇の隙間から舌を差し入れて、少女の柔らかい舌を探す。上を向かせたことで容易に歯列を割るこ
とができ、目的のものに触れた。彼女の甘くて柔らかい舌は戸惑いを隠せずに揺れる。

「…っはぁ」
 息が続かなかったのか、クラヴィスが一瞬離れた隙に切ない吐息を漏らす。その声をもっと聞きたく
て、クラヴィスは再び少女の唇を奪った。

「…っん」
 いつも何かを求めるような様子を見せないクラヴィスの大人のキスは、アンジェリークが思っていたよ
りもずっと甘くて情熱的だった。無意識に掴んでいた彼のナイトローブから手を離してしまうほど触れら
れた部分に意識を集中して、他に何も考えられない。

「…!」
 アンジェリークの様子に気付き、クラヴィスは静かに離れた。離れた後アンジェリークは、自分の唇を
指先で押さえてぼんやりと宙を見ている。

「…少し度が過ぎたようだ。怖くは…ないか?」
 クラヴィスの声でふと我に返ったアンジェリークは、深淵の瞳と目が合い、真っ赤になって俯いた。
「…優しく…して下さい」
 掠れるような、震えるような声で言う少女の初々しさが愛しくて、クラヴィスは優しく抱き締めた。
「…ああ。ゆっくり伝えよう。私が、どれほどお前を思っているかを」
 耳元で囁くクラヴィスの声は僅かに掠れていて、内に秘めた感情が見え隠れする。
 少女の頬に口付けて、そのまま両腕で抱き上げた。寝室へと続く扉をくぐり、ベッドの上に静かに横
たえる。

 
AngelNight 設定 2へ