- 申告納税制度が基本
「申告納税制度」では「納付すべき税額が納税者のする申告により確定する」(国税通則法16条)ことが明文化されています。
旧憲法下で、お上が税額を決めるという戦前の賦課課税制度を根本的に改めたこの申告納税制度を発展させ、定着させてきたのは私
たち国民の運動でした。
ですから税務署が勝手に税額を決めることは許されません。税金の基本は申告納税制度であることを頭の中に入れておくことが大事です。主人公は私たち国民・納税者であることを忘れないようにしましょう。
- 税金は自分で計算し納める

自主計算・自主記帳は、自分の商売を伸ばす上でも、不当な税務調査を許さないためにも欠かせません。自分の所得を自分で計算することが大事です。
申告納税制度のもとでは記帳に基づいて自ら計算し申告することが、納税者の権利を守る活動の土台となります。国税庁も「取引の実体を一番よく知っているのは納税者本人」と認めています。
違法な税務調査を許さないためにも記帳が大事になっています。班に集まりみんなの知恵を出し合って、正しく計算し記帳をする活動を強めましょう。
税務調査への心構えと流れ
〜税務調査を受けたときにどう対処すればいいか
実際の流れに沿ってみていきましょう〜
- 通常の調査は任意調査
税務調査は、法の定めに従って、納税者の承諾を得たうえで、税務署員が納税者に質問したり、帳簿書類などを調べるもので、犯罪捜査ではありません。納税者の承諾なしに、強制的に調査することはできません。
調査の際に、納税者の営業や生活、健康などに留意するのは当然です。ましてや承諾なしに自宅や工場・店舗に入り込んだり、机やカバンの中身などを調べるなどの行為は禁じられています。

税務職員の質問検査については「質問文は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」(所得税法第234条、法人税法156条、消費税法62条)と明記されています。また「税務運営方針」でも規定しています。違法な調査は、断固やめさせましょう。
また税務署員は「簡易な接触」といって、納税者の店や工場、事務所等に臨場して実地調査をしたり、「ちょっと聞きたいことがあるから」と、税務署に呼びつけたりしていますが、これらには強制力はありません。また、うっかり対応すると多額な修正申告を強要される場合があるので気をつけましょう。
- 調査の発生
税務運営方針では「一般の調査においては、事前通知の励行に努め」と明記されています。
事前通知なしで突然訪問されたら毅然と対応し、まず身分証明書(写真付)を提示させ身分を確かめ、なぜ事前に通知をしないのかその理由を明らかにさせるべきです。
その上で調査理由の開示を求めましょう。税務署は必要と認めたからこそ調査を発生させたのですから、その必要とした理由をはっきりさせることが重要です。第72国会で採択された請願(第1814号)で「税務調査にあたり、事前に納税者に通知するとともに、調査の理由を開示する事」とされています。税務署員が突然訪問するには何らかの理由があるはずです。その理由を明らかにするのは一般常識からみても当然のことです。
また、調査の日時も「社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行う」(税務運営方針)となっていますから、自分の都合に合わせて決めることが大事です。
調査が発生したらすぐに班の仲間に相談し、班会の中で調査に対する心構えや納税者の権利を学習し、調査を進めるようにしましょう。
- 臨場調査
調査当日は仲間の立会いを求め、税務署員の密室での犯罪防止や違法・不当な調査をさせないように監視しましょう。立会人のいない税務調査では、税務署員が勝手に机や引き出し、寝室、子供や従業員の私物まで調べたあげく、5年も7年もさかのぼった不当な修正申告を強要している事例が広がっています。

税務署員は「税理士法に抵触するおそれがある」「公務員の守秘義務が守れない」などを立会い拒否の理由にしていますが、その根拠はどこにもありません。1972年静岡地裁判決、1993年春日裁判・東京高裁判決、1996年丸田裁判・東京高裁判決、2000年2月北村裁判・京都地裁判決で示されているように納税者自らの権利として立会いを求めることはなんら法律に違反するものではありません。
民主主義を守り、申告納税制度を形骸化させないためにも仲間の立会いはますます大事になっています。
税務署員とのやり取りを克明に記録することも重要です。税務署の不当な調査に対する不服申立てや税金裁判の時の重要な証拠となるからです。税務署員の言動や質疑の内容を細かくメモしましょう。その際、日時や場所はもちろん、その日の天気や部屋の間取りと税務署員の位置関係も克明に記録し、カメラやテープレコーダーの準備もしておいたほうが良いでしょう。
同時に、消費税の課税業者には、立会いを口実に、税務署が仕入れにかかる消費税分の控除を認めない不当な攻撃に出ています。日常から自主計算をおこなうなど、仕入れ税額控除を否認するスキをあたえないよう気をつけることが必要です。
- 反面調査など
反面調査は税務署員が取引先や銀行に対し照会状を送付したり、出向いて行って取引状況を把握するものです。「現況調査は必要最小限にとどめ、反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする」(税務運営方針)と、みだりに反面調査をおこなうことは戒められています。

ところが実際には、納税者が資料をそろえて協力していても、あるいは調査を納税者に通知する前から、反面調査をおこなっている場合も少なくありません。
納税者の承諾のない反面調査は不当な行為です。取引先に対し著しく信用を失墜させる行為は、まさしく営業妨害であり絶対に許されません。
- 調査の終了
調査の結果、申告に誤りがあったと税務署員が認識した場合、修正申告の慫慂(しょうよう=すすめること)をしてきます。

この場合、申告のどこがどう違うのか修正の理由を明らかにさせることが大事です。「調査内容を納税者が納得するように説明し、これを契機に納税者が税務知識を深め、更に進んで将来にわたる適正な申告と納税を続けるように指導していくことに努めなければならない」(税務運営方針)とあるように、税務署員には調査結果の説明義務が課せられています。
修正申告を強要する際、納税者の自宅や事務所・店舗に来ないで、納税者を税務署に呼びつけることが多くなってきています。これはとんでもないことです。修正申告とは納税者自らが申告の誤りを認め進んでおこなう行為です。強要すること自体が行政手続法に違反しています。ただちにやめさせましょう。
また、修正申告に応じた場合は、不服申立てなど権利救済を受けられないので、注意が必要です。

- 更正処分に対する「不服申立て」と不服審査及び裁判までの流れ
修正申告に応じない場合、税務署は一方的に更正処分をしてくることがあります。これは行政による一方的な処分ですから、処分をされた納税者を救済する制度(権利)として「不服申立て」があります。
ここでは更正処分に対する不服申立ての流れ、不服審査と裁判に至る流れを説明します。
1 更正・決定→異議申立
処分に不服がある場合、更正処分通知書を受け取った日の翌日から2カ月以内に税務署長に異議申立てをします。口頭意見陳述の申立て及び≡代理人届(委任状)を提出します。
更正処分の通知は、課税標準額と納税額しか示していません(但し青色申告の場合は、理由の記載が義務付けられています)。異議申立ての中で更正処分の理由を明らかにするよう求めましょう。納税者の申告で税額が確定する申告納税制度のもとでの処分では、納税者は財産権を侵害されるわけですから、処分の理由を知る権利があります。なお、青色申告の場合は異議申立てをしないで国税不服審判所に審査請求をおこなうこともできます。
異議申立てでは、委任状を税務署に提出すれば代理人を選任することができます。班の仲間に代理人になってもらい一緒にたたかうこと意見を述べる権利を与えられています。税務署員の違法・不当な調査の実態や更正処分の不当性を堂々と主張しましょう。
2 異議審理
異議申立てを受けた異議審理庁(税務署長)は、更正処分が適法か、適正な課税であるかを審査します。これは処分が正しいかどうかを再検討するためのものですから、申立人の帳簿や取引先を再度調査するものではありません。
しかし、処分庁と異議審理庁(ともに税務署長)が同一なため処分を正当化するために、「再調査」と称して帳簿書類の検査や取引先への照会などをおこなったり、取り下げを働きかけるなど、不服申立て制度の趣旨を逸脱することさえしています。また、法で認められた代理人の立会いを拒否することもしています。このような場合でも、毅然とした態度で異議審理庁(税務署)に抗議し、是正を求めましょう
3 異議決定
異議決定は次の3つです
「却下」…異議申立てそのものが不適法である場合。例えば期限後(処分がされて通知書が手元に届いてから2ヵ月以後)に異議申立てが出された場合など。
「棄却」…異議審理をした結果、異議申立てに理由がない場合。
「取り消し」…異議審理をした結果、処分が間違っていたとして
、一部または全部を取り消す場合。
どの場合でも、税額を増やすとか、加算税を重加算税に変更するなど、申立人の不利益になる決定はできません。なお、異議申立て後3ヵ月を経過しても異議審理庁が異議決定を出さない場合は、国税不服審判所に審査請求をおこなえます。
4 審査請求
異議決定に不服がある場合、異議決定通知書を受け取った日の翌日から1カ月以内に国税不服審判所長に審査請求をおこなうことができます。(通77A)審査請求をおこなうと国税不服審判所長は、異議審理庁から処分についての答弁書を提出させ、副本を審査請求人に渡します。請求人はこの答弁書への反論と、税務署長が保持している資料の閲覧、質問・検査を申し立てることができます。

審判所制度創設を決めた第63国会(1970年)では「その独立性を高める。質問検査権の行使に当っては権利救済の趣旨に反しないよう十分に配慮すること。新たな脱税発見のためではないことを厳に銘記の上、納税者の正当な権利救済に努めること」と決議しています。
ところが実際は、蕃判所長・審判官のほとんどが国税庁の職員であるため、納税者の立場に立つどころか、しばしば請求人の閲覧請求や質間検査の申立てを狭く限定したり、質問検査を拒んだり、代理人の発言を認めないなど、権利救済機関の役割を放棄しています。
こうした状況を改善するためには、国会決議にそった機構と運営を求めていくことが大切です。
審判所は審査した結果を決定し、請求人に通知します。これを「裁決」と言い、却下、棄却、全部又は一部の取り消しの3つがあります。
5 訴訟
訴訟不服審判所の裁決に不服がある場合は、裁決を知った日の翌日から3カ月以内に裁判所に取り消しを求める裁判を起こすことができます。
いわゆる税金裁判です。裁判になると国(税務署長)が「被告」、納税者が「原告」
となり『争点』を中心に裁判をおこないます。税金裁判は原告の利益と申告納税制度を守り、税務行政・税務署を民主的に変えていくためのたたかいです。原告の自覚・決意を高めながら仲間とともに相談しあい「守る会」をつくるなどして組織的にたたかうことが重要です。
あきらめずに不当な事には断固闘い、勝利のためにがんばりましょう。