除名墓場

FMHPG 小事件簿

引用禁止事件

FHPEXP 18番会議室で、テーブルセンタリングツリーに対してくちきママさんが「いい加減にしろ」などと発言、その発言を「引用禁止」としたところ、yuu さんが引用。それに対し平井さんが警告、その警告に対して別の会員が「引用禁止はマナー違反ではないのか?」などと発言して盛り上がったという事件。ここでは詳細を解説する。

引用禁止から警告まで

引用禁止

問題の引用禁止宣言は FHPEXP 18番会議室の #630番、「謎だらけの発言ばかり(-_-;)」と題された発言である。内容は以下の通り……と言いたいところだが引用禁止を尊重し、骨子のみを紹介する。

喧嘩を売っているようにしか見えないが、実際に喧嘩を売っていたのであろうと思われる。特に最後の「引用禁止」は、嫌がらせ以外の何物にも見えない。

そこで yuu さんは、あえてくちきママさんの発言を引用し、以下のように発言した。(#637 「RE:謎だらけの発言ばかり(-_-;)」 1999/01/05 22:22)

In article nifty:FHPEXP/MES/18/630
VFE10701@nifty.ne.jp (くちきママ) 様 writes:
>大元のこの発言につけますが、この膨大なツリーもいいかげんにしてください。
>「謎」でくくられていて、フリートークにも限度というものがない?
何をいってるのかさっぱりわからないのですが、発言というものは、読む読まないと
いう選択が受信側にはあるのです。読みたくないのなら読まなければいいのです。

>謎だらけの発言ばかりで何いっているのかわからない。
>こんなわからない発言ばかりが続く会議室をあたしゃはじめてみたわ。
フリートークってのは、総じてそういうものではないのでしょうか。例えば誰かが
なんかの漫画の話をしていたとして、それが超ヒットしてみんなその話を始めたが、
自分はその漫画を知らないので何をいってるのかさっぱりわからない、こういう
状況を経験したことないのでしょうか。いや別にNIFTY歴が13年あるとかないとか
いう話をしてるわけではないのでよろしく。

>最初は、テーブルをセンタリングする話だったはず。
そんな話はフリートークへ移動した時からどうでも良くなってます。センタリング
云々はあくまできっかけで、今は単に友好を深めている状態であるというか、実際
深まっているかは知りませんが、とりあえず深める気が毛頭ないのなら割り込まない
ほうがいいと思いますというか邪魔しないでくださいというか罠ですかこれ。

>タイトルも内容にあったものにしてくれないと発言検索もやりにくいったら。
フリートーク会議室というものは、比較的タイトルがわけわかになる傾向が強い
のですが、ちなみに例えばFHPBGNのフリートークもタイトルで検索するのは辛い気が
します。というかフリートーク会議室で発言検索をタイトルから推測してやろうと
するのも間違っているというか、何か検索したいのならgrepかけたほうが早いです。

>#あたしのこの発言の引用は禁止とさせていただきます。
引用禁止というのがよくわからないのでとりあえず引用してます。
なにぶん初心者なものですから。

--
(゜ー゜)(。_。)(゜-゜)(。_。)ウンウン教 打たせ湯係
 yuu [VET06031] 子メテオ9ケ⌒☆

平井さんの警告

この yuu さんの発言に対し、平井さんが警告した。(#724「発言引用について」1999/01/08 14:45)

引用は、必要要件を満たす場合には認められるものですが、元発言で明確に引
用を断っているにも係わらず、続く発言で引用を行うことは、法的根拠以前に
むしろ会議室利用におけるマナー違反といえます。

厳重注意するとともに、今後、同様の発言が見受けられた場合は、元発言者に
対する嫌がらせ行為と見なし、発言削除の対象としますのでご留意ください。

これに対し、複数の会員から「引用した方も悪いかも知れないが、そもそも引用を禁止した方がマナー違反なのではないのか?」という主旨の発言がなされた。

この時点では誰も指摘しなかったが、「yuu さんが単なる一会員なのに対し、くちきママさんが FMHP のスタッフだったことがこのような差別的取り扱いに繋がったのではないか」とする見解もある。

引用禁止に対する平井さんの見解その一

そこで平井さんは以下のように発言する(#730「RE^2:発言引用について」1999/01/08 20:15。ただし、これは後に撤回される)。

引用が法的に認められることは存じています。しかし、引用にあたっては必要
要件を満たしていることが要求されます。また、法的な効力は伴いませんが、
「引用禁止」と明記すること自体も自由だと考えます。

元発言はたかだか10行足らずの発言であり、続くコメント発言では引用風に用
いられていますが、実質全文転載と同じ効果を有しています。さらに#636に
至っては主文と従文の関係が逆転しています。この発言は引用としての必要要
件を満たしていますか。

などと、ここで法律談義をするつもりはありませんし、一般の発言における引
用の範囲などにも触れるつもりはありません。ここで問題にしているのは、む
しろ発言者の「引用禁止」の意を汲んで引用は控えることが発言者に対する礼
ではないかということです。

法律構成の部分にはかなり無理がある。「たかだか10行足らず」「実質全文転載」については俳句などが引用できるという事を知らなかった故の勇み足であり、「主文と従文の関係が逆転」などというのは「主従関係」を単に量のみを見て判断したとしか思えない。いずれも、通説・判例とは立場を異にしている。

本人もその事に気付いたらしく、後にこの発言は撤回されている。


見解その二

のちに、平井さんは新たな見解を公表する(#756「RE^4:発言引用について」1999/01/09 14:42)。この発言は様々な問題を含んでいるので、少々長いが引用しておく。

yuu さん、こんにちは。

素人があまり生半可な法知識を持ち出すことは得策ではないと思うのですが、
説明が必要なようですので書かせていただきます。

yuu さんは「引用できる」ということを過度に解釈なさっていませんか。

まず、著作権法では、原則他人の著作物を無断で使用することは禁じられてい
ます。ただし、著作権法第32条で定められた範囲内であれば、他人の著作物を
許諾なく利用することができるとされています。

 1) 公正な慣行に合致すること、引用の目的上、正当な範囲内で行われる
  ことを条件とし、自分の著作物に他人の著作権を引用して利用するこ
  とができる。[引用註1]

つまり、前述の3つの要件を満たした時にはじめて引用が可能となるわけで
す。引用にあたっては、まず他人の著作物を自分の著作物中に引用する必然性
が認められなけれななりません。また、これ以外に以下の条件が必要とされて
います。[引用註2]
   
 1) カギ括弧をつけるなど、自分の著作物と引用部分を区別されていること
 2) 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること
 3) 出所の明示がなされていること
               最高裁判決 昭和55年 3月28日「パロディー事件」

「引用」を主張なさる以上、おそらくこのあたりはご存じのことでしょうね。

ここから先は私の見解になります。

「引用禁止」自体は、個人の意思表示であり、これ自体は民法第一条にある
「私権の行使」といえます。つまりこれ自体は法的な効力を持つものです。
ただし、濫用は好ましくありませんから、自分の著作物が引用されることで
発言者がなにがしかの不利益を被ると危惧した場合などに限るべきでしょう。[引用註3]

一方「引用禁止」された場合でも、元発言者の意思を尊重する余り、その後の
議論に支障をきたすことも好ましいとは思えません。ですから、元発言に対す
る回答で引用を用いなければ、元発言のどの部分に対して回答を返しているの
か、元発言者及び第三者に不明瞭になると考えられるような場合は、必要最低
限にとどめた引用を行うことはできると思います。[引用註4]

以上を踏まえ、

引用禁止とされた10行の発言を全文利用することは、上記引用の必要要件を満
たしているとは思われません。また、10行程度の簡潔な内容を全文利用しなけ
れば、その後の議論に支障をきたすとも考えられませんから、あきらかに過度
の利用といえます。[引用註5]
次に、300行にわたる長文の発言であれば、引用禁止とされた場合でも、適度
の引用を用いなければその後の議論に支障をきたすことはありえます。
ゆえに、300行の「引用禁止」とされた発言からの引用を否定するつもりはあ
りません。[引用註6]

引用箇所の解釈を巡って、トラブルに発生したケースは私も何度か見ていま
す。ローカルルールで引用を禁じることは簡単です。しかし、長文にわたる発
言を交換するような場合、引用ができなければその後の議論が円滑に運ばない
ことも考えられます。これがローカルルールで引用を禁止しない理由です。[引用註7]

過去に正当な引用が原因となって不快な思いをなさったなら、できるだけ文意
を損ねないような引用を努力してしかるべきですし、もしくは、元発言の所在
を記すに止め、まさにyuu さんのおっしゃるとおり最初から引用などなさらず
自分の表現のみで意思伝達を計るべきでしょう。[引用註8]

さて、礼は、礼儀でありマナーです。#630は、会議室の運用形態に対する不快
表明であり、むしろ運営側への意思伝達として受け止めています。

誰が誰に、というのは、特定の発言者が周りの不特定多数の会議室利用者にと
いうことです。1対1の論争でも、周りの会議室利用者がこれをよしとしない
場合はこれに該当します。またマネジャーは表記の違いかミスかわかりません
がマネージャーのことです。

最後に、#730のような発言形態は本意ではありませんが、再発を防止するため
にいささか厳しい表現となっていますが、当会議室利用者の皆様には不快に写
るようなことがありましたら、この場をお借りしてお詫びいたします。

註釈

註1

この部分は著作権法32条1項の引用であるかのように読めるが、実は違う。

地の文とは口調が異なること、"1)" と付されていることから考えて、おそらく著作権法の解説書からの引用であろうと思われるが、出典は何処にも示されていない。そのわずか9行下で「出所の明示」と言っているのは、一体何なのだろうか。

註2

「前述の3つの要件」とは何だろうか?「公正な慣行に合致すること」「引用の目的上、正当な範囲内で行われること」は掲げられているが、3つ目が何処にあるのかが分からない。

ちなみに、当然ながら「必然性」と「必要性」は違う。「引用しなければ目的が達成できない」というような「必要性」が要求されるのではない。引用に必然性があれば良いのである。

必然性がないというのは、たとえば、何の脈絡もなくいきなり全く関係ないモノを引用してくる、などというケースが当たるだろう。

註3

民法一条には、「人は意思表示によって私権を行使することを得」などとは全く書かれていない。単なる意思表示が法的効果を有するのであれば、「この発言を見た者は発言者に100万円を支払え」などという意思表示はどうなるのだろうか。現実に「無断駐車は罰金一万円」などという表示を見かけることがあると思うが、これには法的拘束力はない。「引用禁止」を承諾する旨の意思表示があればともかく、「引用禁止」と宣言しただけで法的効力を有するなどと言うのはナンセンスである。権利の濫用などを論じる以前の問題である。

ところで、くちきママさんのケースは「発言者がなにがしかの不利益を被ると危惧した場合」に該当するのだろうか。肝心のその判断が何処にも示されていないのだが……。

註4

不当な引用によって損害を受けるのは発言者である。引用の正否を論じるのであれば、発言者の不利益と引用者の利益、この二者を比較考量して判断するのが普通の考えと言うものであると思うが、何故ここで一番に「その後の議論に支障を来すか否か」などという観点が出てくるのだろうか。謎である。

註5

どこが「あきらかに過度」なのか、残念ながら理解できなかった。必要要件を満たしていないというが、どの要件を満たしていないのだろうか?

そもそも、本当に「あきらか」なら、その発言を即刻 SYSOP 削除すべきなのではないだろうか。

註6

行数に言及している部分については、後に、「行数は問題ではない」として撤回している。

註7

ここでも会員の権利という観点は出てこない。

ところで、「ローカルルールで引用を禁止するのは簡単」と言うが、著作権法32条に反するローカルルールを制定することに問題はないのだろうか?

註8

「正当な引用」と言うが、そもそも、元の文意を損ねるような引用は「正当な引用」とは言えない。

その後、「個人の意思表示は民法一条の私権の行使であり、法的効力を持つ」というマネジャー見解は FPROG で話題になり、Cマガジンにも載った。

この発言自体を撤回する旨の発言はなされていないが、のちに平井さんは「フォーラムとしての公式見解、ルールはあらためてご案内したいと思います」などと発言した。そして、それきり、案内はない。

結局、引用の禁止は出来るのか?

著作物の利用に当たって、著作権者が利用を認めてくれるのなら、その利用には全く問題ない。著作権者が引用を認めてくれるのであれば、著作権法32条を持ち出すまでもなく引用は出来るはずである。

そう考えると、著作権法32条が明文で引用を認めているのは、著作権者が引用を許諾してくれない、あるいは著作権者に連絡を取れない場合を想定していることが分かる。正当な引用であれば、著作権者はそれを受認しなければならない、という規定なのである。

つまりこの規定は著作権を制限しているのであり、言ってみれば、引用の禁止を禁止しているのである。だから、引用を禁止した側がマナー違反なのではないかという指摘は、実は正しい。



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水無月ばけら, MINAZUKI Bakera
e-mail: bakera@star.email.ne.jp