天然酵母を作るにはいろいろなやり方があるようです。 干しぶどうを使ったものが多いようですがその他いろいろなものから出来ます。
僕が最初に試したものも干しぶどうでした。オイルコーティングのされていない比較的自然体な物を選んで試してみましたがうまくいきませんでした。おそらく温度のバランスが悪かったのだと思います。ちょっと暖めすぎだったようです。
天然酵母パンの指南書を読むとビンを煮沸消毒するとか培養の温度を何度にするとか難しそうに書いてあるので挫折していましたが鎌倉の山で桑の実を摘む機会があったので桑の実ジャムを作った残りを使いダメ元でラフにやってみるとうまくいったのです！もちろん消毒はなし、温度の管理もなし、ただほっぽらかしにしておいたのです。しかしながら仕上がりはドイツパンのような酸味のあるちょっと固めのおいしいパンが出来ました。
それに味をしめて作ったのが梅ジュースを使った天然酵母パンです。わずかに梅の風味を残したパンでした。次はプラムを使ってみました天然酵母パン作りに慣れたせいもあってかしっとりとした香り豊かなパンが出来ました。
そのパンを作った後にパン作りについて家族で話をしていると息子が「パンを育てたんだよね」と言ったのです。パンを育てるっ！今までパンは作るものだと思っていました。そうか、育てるものだったんだ！と思った瞬間です！
酵母の力をかりておいしいパンを育てるのです！ そこで今回はご近所のお宅で育った「ブラックベリー」を使ってみました。ムチッと実ったおいしいブラックベリーをいただいて挑戦です。
まず直径2cm程度のブラックベリーを7個ほどジャムの空き瓶に入れてスプーンでつぶします。ビンの消毒はしていません。 そして水を100ccほど加えます。そこに砂糖を小さじで3杯いれてかき混ぜます。 水は特別な浄水器を使ったもの、砂糖は無漂白のうす茶色で香ばしいものを使いました。 ふたをして涼しくない場所に置いておきます。僕はキッチンのカウンターに置いておきました。
2日ほど経つと小さな泡が出てきます。条件がよいと1日で出てくることもあります。ふたを開けてみると「プシュッ！」といってガスが出てきますにおいをかいでみると何ともいえないアルコールのようなすっぱいような爽やかなにおいがします。なめてみるとちょっとピリッとしていて甘いです。 まだかなまだかなと思いながらビンを振ったりふたを開けたりしているとその後一晩ほどで中の具が浮かんできます。そしてさらに「プシュッ！シュワシュワッ」としてきます。これで酵母が完成です。
こんな感じです。 ブラックベリーは実のままだと真っ黒なのに酵母液はきれいな赤紫です。
酵母液を濾すやり方もあるようですがとても美味しそうだったのでそのまま全部使いました。 小麦粉130gと混ぜ合わせます。全粒粉を使った方がふくらむようですがあまりにも美しい色だったので強力粉を使いました。 横着してパン焼き器の登場ですスイッチを入れて混ぜ合わせます。途中様子を見ながらスプーンで混ざり具合をサポートします。 パン焼き器は練り混ぜることだけに使います。
まんべんなく混ざったらボールに取ります。べたべたしています。 スプーンで平らにならしてからラップをかけて発泡スチロールの容器に入れます。そのときに300cc程のペットボトルにお湯を入れて一緒に並べて1次培養を促します。お湯は湯沸器で高温（70℃）にした物を使いました。
6時間ほどすると倍くらいにふくらんできますのでまた250gの強力粉と水150ccを足して混ぜ合わせます。まずは100cc程の水で練って固さを見ながら残りの水の量は調整します。手にくっつかない程度が良いと思います。 今度は2次培養になります。同じように発泡スチロールの容器にお湯入りペットボトルと一緒にラップをかけて寝かせます。 やはり6時間ぐらい経つと......
このぐらいだったものが
こんな感じになります。
スプーンで縁の方をはがしてみると網の目状にふくらんでいるのが分かります。 すばらしい香りがたちあがってきます。酔っぱらいそうです。まさしく育てているという実感がわく一瞬です！
ここまでくればもう出来たも同然です。この元種に強力粉250g、水150cc、塩小さじ2、砂糖小さじ3、 バター2cm（普通の箱形バター）を入れて練り上げ発泡スチロールの容器で1時間発酵させます。それから生地をつぶしてガス抜きし成形してオーブンの発酵モードで1時間程度発酵させます。 そして170度で40分焼き上げると......
幸せなパンが育ちます！ 朝から始めて焼き上がりが夜中になってしまいましたが明日の朝食が楽しみです。このまま放っておくとパンが風邪を引いてしまうので網に乗せてあら熱を取ります。そしてキッチンペーパーのシーツをかぶせてビニル袋の布団にくるんで朝まで寝かせます。子供を育てるように！
そして待ちに待った朝ですが食べるときは最初にパンを鼻に押し当てて香りを楽しみます。次にちょっとちぎって口に入れ噛みしめて息を鼻から抜きます。そしてバターを塗って舌と上あごの間でつぶしていただきます。最高の一瞬です！パン本来の味がしっかりとしているので僕好みの濃いコーヒーともよくあいます。 ブラックベリー酵母パンは焼き上がると色は暗紫色になりましたが実も全て入れたこともあって小さなごま粒のような種が時折奥歯をも楽しませてくれるすばらしいパンになりました。自然の力に感謝！
究極のスローフードですが人間本来の営みを思い起こさせてもらえるパンです。ちなみに食べきれない分はそのまま置いておくとどんどん歳を取ってしまうのですぐに冷凍庫で保存しておきます。
