三年寝太郎(アイノ、やってくる)



 さて、ブリーダーさんと合流したあと、しばらく荷物持ちとしておつきあいしたりなんかもしたのですが、この際そこらへんはぐっとはしょって。

 ついにアイノをうちに連れて帰る段になりました。そうです、ご実家との別れの時がやってきたのです。
 がっ!
 アイノは「ぽへー」とした様子でぐうぐう寝ているではありませんか。
 コイツには緊張感とか別れのサビシサってものがないんでしょうか。

 ないんですね。アイノだもんね。

 ちなみにアイノは、移動中もそのままずーーーっと寝つづけていました。
 いや、手がかかんなくて助かるんだけどさ・・・

 そのようにぐうすか眠るアイノを連れて、とうとうワタシはスオミの待つ我が家へ帰ってきたのでした。

 「ただいまー」とドアを開けると、「なんだかいつもより早いのね!でもかえってきたぁ、うれしーー!」・・というカンジですおちゃんが廊下を全力疾走でお迎えに来てくれました。
 いつもながら、なんとカワイイ子なのでしょう。
 しかし、そこでワタシが「ほれ」とキャリーバッグを見せると。

 ぴたっ。

 ・・とスオミが止まったのです。顔には「?」マークがはりついています。ぴんぴんに立っていたしっぽも、立てようか下げようか迷ってるかんじの中途半端なポジションでゆらゆらしています。

 ああ〜、スオミ。
 ごめんよう。

 もとはといえばスオミのために迎えた「オトモダチ」ですが、このときワタシは思わず心でスオミに謝ってしまったのでした。

 とにかくアイノ入りのバッグを居間のまんなかに「どーん」と置いて、「開けたら出てくるかな?」と思いつつフタを開けてみました。
 スオミはさっそく、「なに?なに??」とびくびく中をのぞきこもうとしていますが、腰がひけまくってるところが笑えます。なにかあやしい動物が入ってる、ということはすでに理解しているようでした。
 では、自分よりはるかにでかい猫にくんくん嗅がれたアイノはどうしていたかというと!

 それでもまだぐうすか寝つづけていました。
 あ、アイノ・・・・・
 ・・・・・・・・
 よく寝る子だね。

 さらにワタシは、しばらくはセオリーどおり「仔猫が自分でバッグから出てくるまで放っておきましょう」というのを守っていたのですが、アイノときたらいっこうに出てくる気配がありません。
 出てくる以前に、目を覚ましません。

 ・・・・・・・
 ほんとうに、よく寝る子だね。

 でもごめんね、ワタシはもう待てないよ。
 業を煮やしたワタシは、思いきって「ひょいっ」とアイノをバッグから出して、タオルをしいたソファのザブトンの上に置いてみました。

 するとアイノは!!

 またその場で寝てしまったのです。

 ああ・・・・・・・
 よくわからないけれど、我が家にやってきた仔猫は「三年寝太郎」みたいなヤツだったのね。

 この時点で「どうやらこのチビはタダモノではないらしい」ということがじわじわ判って来たのでした。


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