「何読んでるの?」
準が寝そべって本を読んでると、声がしました。
準がどきっとして横を見ると、ぬいぐるみのくまちゃんが、準と同じ格好で本をのぞき込んでいます。
「ないしょだよー」
準はちょっと照れくさそうに言いました。
「今日ね、ぼくのおねしょのヒミツが、友だちにばれそうになったんだ」
「そうなの?」
「うん。しまった!って思ったけど、ぼく、本に夢中になってたから、気づかなかったんだ」
準は、くまちゃんに、昼休みのことを話しました。
「ふうん。でも、きっと大丈夫だよ。準くんが思ってるほど、その子は何とも思ってないと思うよ」
「そうかなあ。ぼく、いつもあとでしまった!と思って、くよくよ悩む方なんだ」
「おねしょしたときもでしょ?」
「えっ。まあ、そうだねえ」
準は頭をかきました。
「でもね、この本を読んでいると、よかった、ぼくだけじゃなかったんだって、気持ちがすうっと軽くなるんだよ」
準は、くまちゃんに『ねしょんべんものがたり』を見せました。
「準くんはいい本に出会ったんだね」
「うん」
「ゲームやテレビもいいけど、子どもの頃に読んだ本というのは、一生忘れないものだよ。そして、いろんなことを体験して、人は大人になっていくのだ」
くまちゃんは、いつになくかっこいいことを言いました。
「しまった!、もそうなの?」
「そうだよ。準くんはまだ子どもだから、いっぱい失敗したらいいよ。おもらしだけじゃなくてね」
「うん」
準はくまちゃんを見ると、にっこりとほほえみました。
「ごめんね、くまちゃん」
「ん、どうしたの?」
「おねしょの朝、頭ぽかんとたたいちゃって…」
「平気だよ、それくらい。準くんと寝てると、蹴っ飛ばされたり、おしりに敷かれたり、おしっこひっかけられたりして大変なんだから」
「ごめーん」
「アハハハハ」
「えへへへへ」
…すてきな本と出逢うこと。いろんなしまった!を経験すること。そして、少年期に大切なことがもう一つあります。それは、何でも話せる友だちを持つこと。今夜は、それをくまちゃんが務めてくれたようですね。 |