くまちゃんと仲良く本を読む準(4万記念絵)
第66話:しまった!(続き)
 「何読んでるの?」
 準が寝そべって本を読んでると、声がしました。
 準がどきっとして横を見ると、ぬいぐるみのくまちゃんが、準と同じ格好で本をのぞき込んでいます。
 「ないしょだよー」
 準はちょっと照れくさそうに言いました。
 「今日ね、ぼくのおねしょのヒミツが、友だちにばれそうになったんだ」
 「そうなの?」
 「うん。しまった!って思ったけど、ぼく、本に夢中になってたから、気づかなかったんだ」
 準は、くまちゃんに、昼休みのことを話しました。
 「ふうん。でも、きっと大丈夫だよ。準くんが思ってるほど、その子は何とも思ってないと思うよ」
 「そうかなあ。ぼく、いつもあとでしまった!と思って、くよくよ悩む方なんだ」
 「おねしょしたときもでしょ?」
 「えっ。まあ、そうだねえ」
 準は頭をかきました。
 「でもね、この本を読んでいると、よかった、ぼくだけじゃなかったんだって、気持ちがすうっと軽くなるんだよ」
 準は、くまちゃんに『ねしょんべんものがたり』を見せました。
 「準くんはいい本に出会ったんだね」
 「うん」
 「ゲームやテレビもいいけど、子どもの頃に読んだ本というのは、一生忘れないものだよ。そして、いろんなことを体験して、人は大人になっていくのだ」
 くまちゃんは、いつになくかっこいいことを言いました。
 「しまった!、もそうなの?」
 「そうだよ。準くんはまだ子どもだから、いっぱい失敗したらいいよ。おもらしだけじゃなくてね」
 「うん」
 準はくまちゃんを見ると、にっこりとほほえみました。

 「ごめんね、くまちゃん」
 「ん、どうしたの?」
 「おねしょの朝、頭ぽかんとたたいちゃって…」
 「平気だよ、それくらい。準くんと寝てると、蹴っ飛ばされたり、おしりに敷かれたり、おしっこひっかけられたりして大変なんだから」
 「ごめーん」
 「アハハハハ」
 「えへへへへ」

 …すてきな本と出逢うこと。いろんなしまった!を経験すること。そして、少年期に大切なことがもう一つあります。それは、何でも話せる友だちを持つこと。今夜は、それをくまちゃんが務めてくれたようですね。

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