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名演2009年5月例会 劇団俳優座公演 

原作/藤沢周平 脚本/八木柊一郎 演出/安川修一

時代劇という枠を超え、現代人の生き方、生きがいを描いた藤沢文学の最高峰の舞台化 

清左衛門をとりまく友情・裏切りと小料理屋「涌井」の女将みさとの淡い愛情を通して人生の夕暮に顔をそむけず夕映えに向かって真っ直ぐに歩む主人公の清々しさを情緒豊かに描きます。

 15の連なる話の中で、途切れることなく少しづつ変化していく生き様が見事に描かれている。見ごたえ十分な舞台。

初雷
5月14日(木)6時30分
  15日(金)1時30分
       6時30分 
 
中京大学文化市民会館プルニエホール
(名古屋市民会館中ホール)          地図
上演時間
2時間45分(休憩15分を含む)
あらすじ
解説
キャスト・スタッフ
関連サイトリンク
会費 月額一般 2600円 22歳以下 2000円  
   高校生以下 1300円
入会金  一般  2900円 22歳以下 2300円    
高校生以下 1600円
新入会の方は、会費と入会金が必要です。それ以外の入場料は必要ありません。  くわしい名演の入会方法はこちら
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あらすじ

 東北のある小藩。前藩主の用人であった三屋清左衛門は現藩主への交替に伴って隠居を願い出て許される。家督を長男の又四郎に譲った清左衛門は晴れて自由の身となった筈だが、何故か安堵のあとに強い寂寥感がやって来る。隠居の身となった清左衛門は「残日録」と名づけられた日記に己の行動とともに心の内側も綴ってゆく。

 隠居となっていささか淋しい思いをしていたある日、清左衛門は町奉行の佐伯熊太に頼み事をされる。かつて前藩主のお手が一度だけついたおうめが相手のわからぬ子を孕んでいるというのだ。組頭の山根備中はそのふしだらなおうめを罰しよういうのである。しかし、清左衛門は現藩主からおうめに1年も前に以後勝手たるべしの書類が出ていたのを憶えていた。清左衛門はおうめに合い、事情を調べると佐伯熊太とともに山根備中のもとに乗り込んでいく。
 以後、清左衛門は旧友との出合いにも派閥の陰がしのびより、いつの間にか派閥争いに巻き込まれる。 なにかと慌しくなってきた清左衛門の日常の中の心休まるひとときは旧友佐伯熊太と女将みさのいる小料理屋「涌井」で酒を酌み交わすことであった。なにごとにも控えめなみさに清左衛門の心も徐々に惹かれていくが…。

劇団俳優座公演「三屋清左衛門残日録夕映えの人」作品の魅力

 主人公の清左衛門が身近な、手の届きそうなキャラクターであることがまず第一。戦国時代の武将のような残酷で獰猛な勇敢さではなく「間違ったことは正す」という人としての誠実さはしっかりと持ち合わせている常識人であり普通人であること。藩主の用人という、ともすれば権力を手に入れやすい職を公平に勤め上げて誰からも信頼されていること。但し、心の奥底にはかつて自分よりも早く出世すると思われていたライバルを告げ口したことによって失脚させたのではないかという思いをしこりとして心の奥底に持っている。それが時として夢の中に現れるごくあたりまえの人間であり、そして、現代で云えば退職という時を迎えて逼塞した寂寥感に襲われることがあるという、人間的な弱みも持つ完全なヒーローではないこと等々。

 完全無欠のヒーローではなく、身近で等身大で人間的な弱点を併せ持つ三屋清左衛門にはつい親しさを感じてしまいますが、では、そんな清左衛門が主人公で魅力ある舞台になりえるのか、と疑問に思われるかもしれませんがこれが立派に魅力ある人間に見えてくるのです。

 ほぼ同時期に執筆され、テレビ化や映画化もされた「蝉しぐれ」は一人の武家の少年が青年に成長していく過程を、剣と友情、それに主人公の淡い恋愛感情をからめて書かれたものとすれば、「三屋清左衛門残日録」は退職し人生の夕暮れにさしかかった老年の主人公の人生への達観と、かつての剣の同門もしくは同僚達との剣と友情、裏切り、清左衛門の淡い恋愛感情をからめて書かれたものと云えます。「いよいよ死ぬるそのときまでは、人間はあたえられた命をいとおしみ、生き抜かねばならぬ」という文中の言葉を引用するまでもなく、これはあたえられた人生を全うしようと健気に生きる人々への応援歌ともいえます。舞台の「三屋清左衛門残日録〜夕映えの人」は脚本の八木柊一郎さんが原作の文体の良さ、魅力的な会話を充分に生かしてより等身大の清左衛門が清々しく描かれています。芝居を観ているうちに、どこにでもいるようにみえる男が少しずつ頼もしく、頼りがいのある男にきっとみえてくる筈です。

 勿論時代劇ですから派手なチャンバラシーンもありますが、この物語は家長であった清左衛門を中心としたホームドラマと見ることが出来ます。より幅の広い年代の方に楽しんでいただけるお芝居です。

三屋清左衛門残日録〜夕映えの人」の魅力・初演からの感想

★藩という企業社会における高齢下の問題を?生きがい″という形で描いた極めて今日的な作品。「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」黄昏時になって休みたく思っても暮れるには間がある。心身を休めるには早い、もう少し働けと、切ない声が男を仕事に駆り立てる。自分が信じる誇りを捨てることなく、生き抜いた等身大の一人の武士として確かな存在感がそこにある。

★プロローグも圧巻。雪のなかで互いに淡い恋心を抱く料理屋の女将(川口敦子)との別れのシーンの幻想的な美しさはすばらしい。児玉泰次が清左衛門の誠実さを見事に演じ、料理屋の女将みさを演じる川口敦子、嫁の里江など女優陣のきりつとした、匂い立つような節度ある美しさが見事。芝居の流れが爽やかで、実に見入ってしまうあっという3時間の舞台。日本人の心に感動を与えてくれる。

★日本人の美しい立ち居振る舞いや所作に感動。現代にも通じ心にしみる。淡い恋やら、しがらみなど織り交ぜて、展開も速く、見応えのある舞台。藤沢が描く自然や人間的触れ合いは、今日の日本で私達が失ったものをそのままの姿で映し出している。

★宮仕えの束縛から解放されて自由の身となったはずだが心は晴れない。身を包む寂りょう感、現役を退いた寂しさ、しのび寄る老い‥現代人にも共通するテーマである。それでも清左衛門は真っすぐ凛として生きようと努める。退職した人生の生き様が見事に描かれている。

★心の中に秘めている事を、台詞には出さなくても、観ている方にはよく伝わってきて、何とも切ない気持ちにさせられました。できればもう一度観たかったです。若い役者さんの活躍がより一層強く感じられました。

★ゆったりした時間が流れる黒と白の舞台は落ち着きがある。人との出会いや別れ、久しぶりに美しい舞台を観る。原作がいいのか、演じる人がいいのか、心の奥に入り込み、一人一人の人生に思いを巡らす。ため息が出るほどの「夕映えの人」の舞台に魅入られる。


<キャスト> 

三屋清左衛門(元用人) 児玉 泰次
みさ(小料理屋「湧井」の女将) 川口 敦子
三屋又四郎(清左衛門の嫡男)・覆面の侍 内田 夕夜
里江(又四郎の妻) 大庭  藍
奈津(清左衛門の娘) 山本祐梨子
佐伯熊太(町奉行) 荘司  肇
金井奥之助(清左衛門の同輩) 可知 靖之
金井裕之進(奥之助の息子)・竹之助・覆面の刺客 志村 史人
黒田欣之助・重吉・覆面の刺客・犬井彦之丞 塩山 誠司
小木慶三郎(清左衛門の同輩)・夜廻り・覆面の侍 立花 一男
船越喜四郎(現用人)・山根備中・刺客1 島  英臣
朝田弓之助(筆頭家老)・辰三 河内  浩
横山半蔵(同心)・弥八・刺客2・覆面の侍 斉藤  淳
おうめ(菓子屋「鳴門」の娘)・おけい(「涌井」の女中) 生原麻友美
おみよ(野塩村の寡婦)・女中(菓子屋「鳴門」) 清水 直子
おなみ(小料理屋「涌井」の女中) 桂  ゆめ
清次(小料理屋「涌井」の板前)・覆面の刺客 伊東 達広

 <スタッフ>

原作 藤沢 周平
脚本 八木柊一郎
演出 安川 修一
美術 広瀬誠一郎
照明 石島奈津子
音響 小山田 昭
衣裳 今西 春次
殺陣 宇仁 貫三
所作指導 坂東 秀調
舞台監督 石井 道隆
制作 下  哲也


関連サイト

劇団俳優座ウェブサイト http://haiyuza.co.jp/

たーさんの部屋−藤沢周平作品データベース
http://www.j-real.com/ta-san/fjsw/

内田夕夜さんブログ http://uchida-yuuya.blog.drecom.jp/

山本祐梨子さんブログ 月に願いを 
http://blog.livedoor.jp/yuripiano0325/

桂ゆめさんブログ http://ameblo.jp/yume-katsura/


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最終更新日 2009/04/20