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名演2007年10月例会 無名塾公演 

作/ミゲル・デ・セルバンテス 
上演台本/岡山矢
(新潮社刊 荻内勝之訳「ドン・キホーテ」より)
 演出/丹野郁弓

ドン・キホーテ
10月23日(水)6時30分
   24日(木)1時30分
   25日(金)6時30分
 
中京大学文化市民会館プルニエホール
(名古屋市民会館中ホール)          地図
あらすじ
解説
キャスト・スタッフ
関連サイトリンク
会費 月額一般 2600円 22歳以下 2000円  
   高校生以下 1300円
入会金  一般  2900円 22歳以下 2300円    
高校生以下 1600円
新入会の方は、会費と入会金が必要です。それ以外の入場料は必要ありません。  くわしい名演の入会方法はこちら
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はじめに  

 一咋年の9月例会『ドライビング・ミス・デイジー』で好評を博した仲代達矢さんが、再び演出の丹野郁弓さんと組んだ、新作の登場です。17世紀初頭のスペインの名作古典である、セルバンテスの長大な小説「ドン・キホーテ」を無名塾の岡山矢氏が簡潔かつ大胆に展開しプロローグの有る2幕15場の戯曲に脚色した作晶です。  
 バラエティーに富むストーリー、喜劇と悲劇、様々な要素がスピーディーな展開で進んでいきます。これまで、ミュージカルやバレエなどで舞台化された作晶ですが、セリフによるストレートプレイとして、新たな魅力の舞台が期待されます。  

あらすじ  

 ラ・マンチャに住むアロンソ・キハーノは、五十歳に手が届こうとする初老の田舎郷士である。騎士道物話を読み過ぎたせいで、 書物の中の出来事と、現実との区別が付かなくなリ、ある日、自分が遍歴の騎士であると恩い込み、その名もドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと勝手に改名した。早朝の太陽を背に、祖先伝来の古びた時代ものの甲冑を身に付け、錆付いた槍と盾を持って、痩せ馬のロシナンテに跨り、家を後にした。王国を餌に雇い入れた農民のサンチョをお供に引き連れ、物語の中の愛しの姫ドルシネーアを救うべく、乳母、神父、姪、床屋の親方らの引留めもあらばこそ、冒険の旅への出発とあいなったのである。  
 最初の相手はよくご存じの風車の冒険。街適筋を行くキホーテとサンチョは行く手に立つ大きな風車を見つけた。突然キホーテは、風車を悪党の巨人と思い込み、突撃の挙に出た。ところが、運悪く一陣の風が巻き起こリ、風車の羽根が勢いよく回りだし、砕かれた槍が四散し、巻き上げられたキホーテの身体が地面に叩きつけられたのだった。 
 傷付いたキホーテは、何とか馬に跨り、陽が沈みかけた頃、とある旅寵に辿リ着いた。しかし、そこを城と思い込んだ彼は、亭主を城主と、女将を臭方と思い込み、再び遍歴の騎士に引き戻された。挙げ句の果て、女中と愛人の荷運び人足、サンチョまで巻き込んだ寝屋の大騒動を引き起こした。更に見回りの捕リ手も加わり、やっと現実に戻ったキホーテは、宿賃も払わず逃げ出す始末………。  
 キホーテの決定的な時代錯誤と肉体の脆弱さが、この後も行く先々で、嘲笑の的になる。その後の出来事は見てのお楽しみということにするが、やがて旅路の果てに、正気を取り戻したキホーテは、騎士道という理想と夢の終焉とともに、病に冒され、死の床につき、悲劇的な結未を迎えるこどになる。  

終わりに   

 人間の性格には「ハムレット型」と「ドン・キホーテ型」があると譬えられます。40余年前に『ハムレット』を演じた仲代達矢が、『ドン・キホーテ』に挑み、喜劇性と悲劇性を合わせ持つ「ドン・キホーテ」像をどう構築するか、期待されます。また、名演初登場の山谷初男(サンチョ・パンサ役)との絡みも、楽しみです。  
 なお、私事ですが、丁度43年前(1964年8月例会)、名演に初入会したときの作品が仲代さんの『ハムレット』だったことに、何か因縁を感じつつ、稿を終えます。(文責A.U.)


解 説

『ドン・キホーテ』からもらったもの

ー荒唐無稽は嫌?ー  

 17世紀、中世の騎士道を描いた本が流行した。スペインの地方郷士アロンソ・キハーナ(ドン・キホーテ)は、騎士本に夢中で読み耽り、すっかり騎士になりきってしまう。火薬や銃が戦いの主流になっている時代に、20〜30キロの重さの古い甲冑を身につけ、錆びた槍と盾を手にして旅に出た。それだけでも荒唐無稽、尋常ではない。  
 その旅の途上、塩漬け肉を売る娘を「想い姫」と決め込んだり、風車を怪物と見立てて突っ込んだり、安旅籠を城だと思い込んで宿賃を踏み倒したり等々、次から次へと奇想天外な行動に出る。そのたびに、周りの「常識人」を驚かせたり憤慨させたりするのだが、本人は飄々としている。騎士たる者の道に従った行動であると主張する。  
 滑稽極まりない奇行が続出する様子に、読者(私)は音を上げそうになる。「つきあっていられない」と。内向的なハムレットにも外向的なドン・キホーテにもなりきれない、つまり、とことんその方向に突き進めない凡人(私)は、揶揄や批判をすることで中間人であることの不安をかわそうとする。そんな苦悩を背中合わせで、台本を読み始めた。

ー充実して生きれば、死すとも満足ー  

 何度目かには、台本の中のキラリと光る言葉に付箋を貼りながら読んだ。読み終えて、その付箋の数の多さに驚いた。  
 表現が美しい。豊かな言葉が散りばめられている。機知に富んでいる。優しさに満ちている。自分の行為の理由を説明するドン・キホーテの言葉、サンチョ・パンサのちょっとしたしぐさや発言、行く先々で出会う人々(キホーテを大切に思う人から悪党やずる賢い人達に至るまで)の鋭い表現。会話は、面白さがいっぱいだ。人間の本質を突いている。これが、セルバンテスの、そして、台本にした岡山矢さんの意図しているものではないか。  
 岡山さんは、この芝居のポイントとして、「理想を胸に抱いて生きることと全然持たないのとでは、大きな違いがある」「理想は理想、現実は現実として、リアリスティックに人間を見る目がある」ことを挙げ、面白さの原点がここにあると話された。臨終の場面のキホーテのセリフには、自分の夢「人間と人生の理想郷」を追って生きた人の鮮やかさがある。文明の恩恵にどっぷり浸り、それによる弊害が続出する現代、そんな中に生きる私達が忘れかけている「大切なもの」が何であるか、考え直す機会になるかもしれない。

 ー理解者がいることの幸せー  

 キホーテは、またとない従者を得た。キホーテを「殿様」と呼び、彼の言葉に信頼を置き、彼のせいで危険な目に遭っても決して怒らず、彼を見放さず、ひたすら付き従っていく。  
 人は、自分が困難の中にあっても、理解してくれる人がいることを知っただけで勇気が出る。また頑張れると思う。キホーテにとってのサンチョ・パンサは、まさにこの上ない理解者だったに違いない。また、仲代達矢にとっての岡山矢さんも、仲代さんのドン・キホーテに託す思いを汲み取り、長〜い物語をギュッと凝縮して、仲代さんの実力、ドン・キホーテの魅力を輝かせる台本に仕上げたことで、すばらしい理解者である。  
 思い込んだらひたすらそれに邁進していくところが、仲代さんとキホーテの共通項だと岡山さんは話された。仲代さんの役者人生の到達点になるのではないかとも。  
 そして、サンチョ・パンサを演じる山谷初男さんの存在感も見逃せない。仲代さんにとっての山谷さんも、良き理解者、この上ない相棒になってくれている筈だ。  

ー装置や道具の面白さー  

 舞台や小道具は、ここでは書けないが、とても面白いものになりそうだ。
 舞台の人と一緒に、遊びながら楽しみながら、しみじみとしたものが感じられたら、最高だと思う。
                                      (A14-11 Y)


スタッフ
装置…………………松井 るみ
照明…………………沢田 祐二
音楽…………………池辺晋一郎
衣裳…………………前田 文子
効果…………………八幡 泰彦
擬闘…………………森岡 隆見
舞台監督……………石井 恒樹
制作…………………林  清人 山本 弘人 嶋田 礼子

キャスト
ドン・キホーテ……仲代 達矢
サンチョ・パンサ…山谷 初男

神父…………………野崎海太郎
床屋…………………鎌倉 太郎
乳母…………………西山 知佐
姪……………………渡部 晶子
旅籠の亭主…………友居 達彦
旅籠の女将…………菅原 あき
マリトルネス………樋口 泰子
パブロ………………長森 雅人
捕方A………………本郷  弦
捕方B………………川村  進
ヘルナンデス………本郷  弦
役人A………………川村  進
役人B………………篠山 美咲
囚人一………………中山  研
囚人二………………須賀  力
囚人三………………松崎 謙二
囚人四………………森岡弘一郎
ヒネス・デ・パサモンテ  
……………………赤羽 秀之
サンソン・カラスコ  
 ……………………松崎 謙二
テレサ・パンサ……樋口 泰子
馬車引き……………友居 達彦
アルドンサ…………江間 直子
公爵…………………友居 達彦
公爵夫人……………菅原 あき
僧侶…………………川村  進
女……………………篠山 美咲
家畜商………………須賀  力
書記…………………中山  研
給仕…………………本郷  弦
家令…………………長森 雅人
医者…………………森岡弘一郎

人足たち、人形芝居の一行、侍女たち その他


関連サイト

無名塾ウェブサイト
http://www.mumeijuku.net/


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最終更新日 2007/10/11