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名演2004年9月例会 劇団東演公演 


作/
沈虹光 訳/菱沼彬晁 演出/鈴木完一郎

人の一生、
いいことを幾つかする。
簡単なことさ。
そして決してやっちゃいけないこと、
それもやっぱりやっちゃうのさ……



9月16日(木)6時30分
  17日(金)1時30分
        6時30分

名古屋市民会館中ホール
 地図  
1 会費 
    
  月額 2600円 
  22歳以下 2000円 
  高校生以下 1300円
2 入会金 
  2900円 
  22歳以下 2300円 
  高校生以下 1600円

9月例会『長江−乗合い船』学習 会のお知らせ

 今回、初めて中国現代劇が例会になります。作者の沈虹光さんの作品は常に後味がさわやかで清々しいと、各地で好評です。
 『長江』で雄弁で世知にたけた高(ガオ)老船長役の小高三良さんを講師に迎え、魅力を語っていただきます。

8月2日(月)2時〜4時 
      6時30分〜8時30分 会場 名演事務局会議室

                    

 

名演初登場の劇作家 沈虹光作品の魅力

 『長江−乗合い船』は中国の現代劇の第一線で活躍中の女流劇作家、沈虹光(シェン・ホングァン)の作品です。
 彼女は1948年江蘇省生まれ、1982年『五年二組の日誌』で劇作家デビユー。1994年『長江』で曹禺戯創文学賞を受賞。翌年同作品で最も権威ある演劇賞「中国演劇祭」で主要6部門の賞を受賞しています。
 原題は『同船過渡』。「皆是有縁」と続く決まり文句で、「袖すりあうのも他生の縁」といった意味です。
 この作品は、これまでの中国現代劇によく見られた社会主義的教条主義が皆無。しかも今の中国の都市生活者の等身大の生活が実にリアルにかつ、深刻にならない喜劇性をもって巧みに描かれている点で高い評価を受けました。
 彼女の作品は常に後味が爽やかで清々しく、人間の善意を信じる楽観主義の姿勢を崩さず、同時に人生の厳しさもしっかりと描いている点に魅力があります。
 『長江』では世代の違った人物を登場させ、一方では頑固で気位が高く、むやみに説教をしたがる独身の元女教師を、他方は資本主義に傾斜する現代の中国の風潮を代表する若い夫婦を登場させています。住宅難を反映して同居を余儀なくされている彼らは日頃から折り合いが悪いです。それがヒョンなことから彼らの部屋に雄弁で世知にたけた岩船長が訪れて彼らの仲を徐々に修復していきます。
 作者沈虹光は、「この老船長は私の理想の人だ」と言っています。「人と人が、もし仲違いしたらそれを修復するのはとても大変で、人が幸せを求める時、人として優しさを失うようなことを私は望みません。この『長江』の中の部屋はいうなれば一艘の船でお互いに助け合って、はじめて人々は素晴らしくなると思います。私はこの芝居を通して私の願いを表現しました」と語っています。
 『長江』の日本での公演は1998年に劇団東演が初演、翌年同劇団が彼女の最新作『幸せの日々』とともに再演。
 “中国の女性作家がこんなにも私たちの日常と変らない生活を描き出しているとは微笑ましい”と好評を博した作品です。乞うご期待!


 
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私たち、日本の問題として
鈴木完一郎(演出)

魅力的な「おばあさん」像
菱沼彬晁(翻訳)

あらすじ


配役・スタッフ一覧

関連サイトリンク

 
 
    


私たち、日本の問題として
鈴木完一郎(演出)

 これはいい芝居になるぞ、不思議なもので最初に台本を読んだ瞬間、一種の予感のようなものが走る。『長江-乗合い船』の出会いはまさにそんなさわやかな感動で始まった。理にかなった台本構成の確かさ、登場人物に対する作家の優しい心くばり、軽妙洒脱な科白の面白さとテクニック、どれを取っても一級品で嬉しくなってしまった。だがなにより感激したのは、人間という切なくて滑稽で哀しい存在に対する母親のような作者の温かいまなざしである。同時に演劇の可能性を信じ、演劇の意義をしっかり見据えたその作劇姿勢である。社会を斜に眺めながら人間を唆い、あたかも皮肉と不信が存在理由でもあるかの如き表現が横行する日本の劇界に比べて、『長江−乗合い船』のそのいさぎよさはなんとも私には心地よくすがすがしい。
 この芝居を通じて現代中国を紹介するなどという気持ちはさらさらない。この作品が背負っているテーマは、そのまま私たち日本人の問題であると確信しているが、さらにこの芝居を深く理解していただくためにドラマの背景を少し説明しておきたい。
 かつて中国の都市の住居は職場、国家がまとめて面倒を見てきた。しかし都市人口の増大にともないこのドラマのような現象が起きてしまった。しかも一緒に住む相手は自分で選べず分配される。若夫婦の夫劉強はある政府機関で働く公務員である。大学を出て、科員、科長、所長、局長と昇進していくわけだが、彼は今、副科長の立場である。妻米玲は中等技術学校、中学校卒の学カレベルである。元恋人の雷子も同じで、彼は卒業後、工場などに雇われたが逸速くそこを辞めて商売の道に入った。高船長は現場叩き上げの水夫である。幼いときから船に乗って、風と波に鍛えられた職人的人物で、決してインテリではない。
 舞台は雄大な長江をのぞむ湖北省武漢、団結団地と名付けられたアパートの一室である。方先生と、若夫婦にまきおこる人間悲喜劇、果たして結末はいかに。 (1998年初演リーフレットより転載)


魅力的な「おばあさん」像
菱沼彬晁(翻訳)

 「わたしは以前から老人を題材にした作品を書きたいと思っていました」と、沈虹光さんは『長江−乗合い船』について語ってくれました。経験も感情も豊かなその人生を分けて欲しかったからということです。
 ある老人の物語が彼女に深い感動を与えました。1937年、盧溝橘事件を起こした日本軍はたちまち長江一帯を制圧します。夫の命を奪われたその女性は当時まだ二十代、二人の子供を連れて武漢から四川省の重慶へと逃れます。年移り、子供を育て上げ孫にも恵まれた彼女は、一人の老人の男性と出会います。男性は彼女にお菓子を贈り、彼女は詩を書いてお返しにしたりのおつきあいでした。二人の家は遠く離れており、子どもや孫たちの助けがないと会うことができず、子どもたちの仕事が忙しくて、めったに親のランデブーにつき添うことができません。
 そんなある日、彼女が亡くなりました。葬儀が終わってから、こどもたちはやっと彼女の死を老人に伝えていなかったことに気づきます。老人は彼女の遺骨に会いました。遺骨は納骨堂の高いところにあり、老人には手が届きません。老人はそれを納骨堂の職員に下の段に置くように頼みました。こうすれば、一人で来たときにも彼女に会えるから、と。
 沈虹光さんの作品に登場する人物の背後には、たくさんの実在の人物の物語が秘められています。膨大な取材メモの中から一人の人物が立ち上がってくるのです。とりわけ魅力的に描かれるのが「おばあさん」です。心が強く純で、ときに火のような激しさをみせます。『長江−乗合い船』の方先生や、『幸せの日々』の郭景蘭は、古い言葉で言うなら「艱難 汝を玉にす」を文字通り生き抜いたタイプです。沈虹光さんの住む湖北省は中国でも“性格のきつい人”が多く、三人寄れば喧嘩になる土地柄と言われていますが、それと関係あるのかどうかは分かりません。沈虹光さん自身は笑顔の素敵な、とても温和な方だから。(1999年再演リーフレットより転載〉




■あらすじ 
 舞台は長江(揚子江)に臨む高層団地の一室。ここは住宅事情が悪い為一戸に二世帯が同居している通称「団結団地」。
 この2LDKにはリューチャン(劉強)、ミーリン(米玲)の若夫婦と定年退職した元小学校教師の独身女性ファン(方)先生が同居。この二組は日頃からひどく折り合いが悪い。
 リューチャン(劉強)は役所勤めで、ミーリン(米玲)は衣料品販売業に手を出している。若夫婦は、先生気質が抜けず、なにかというとお説教するファン(方)先生をうまく追い出し部屋を自分達だけのものにしようと、彼女に無断で雑誌に「花婿募集」の広告を出してしまう。この記事を見て、退職直前のガオ(高)さんが訪ねてくる。ガオ(高)さんは、長江を往来する貨物船の船長。ファン(方)先生はだまされたとも知らずに、ガオ(高)船長とつきあい始めるが……。



 人物関係図



キャスト

スタッフ

方〈ファン〉先生

沈虹光

高〈ガオ〉船長

菱沼 彬晁

劉強〈リューチャン〉

演 出

米玲〈ミーリン〉

美 術

川口 夏江

雷子〈レイズー〉

照 明

鵜飼  守

TV局のカメラマン

音 響

高橋  巖

 

衣 裳

山田 靖子

舞台監督

古舘 裕司

宣伝美術

大下えいこ

制 作

横川  功

高橋 俊也

協 力




関連サイト

劇団東演ウェブサイト http://www.t-toen.com/
劇団東演『長江』紹介ページ http://www.t-toen.com/play/2002CJ.htm

東演裏情報ページ http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/1433/

まつもと市民劇場サイト 『長江』交流会レポート 
         http://msg2747.hp.infoseek.co.jp/kouryukai-tyoukou.htm

            『長江』感想文 http://msg2747.hp.infoseek.co.jp/kansou-tyoukou.htm

高岡演劇鑑賞会サイト 山田珠真子さんをお招きした学習会の模様http://toyama.cool.ne.jp/takaokaenkan/takaoka-homepage-main/uneisa-news-doko0011.htm

藤枝市民劇場サイト 『長江』感想文
http://www3.tokai.or.jp/kangeki/176_kansou.htm

晩成書房サイト 中国現代戯曲集 第4集紹介(『長江』が入っています)
http://www.bansei.co.jp/index/mokuroku/mokuji/m04/%92%86%8D%91%8C%BB%91%E3%8BY%8B%C8%8FW%81@%91%E6%82S%8FW.html



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最終更新日 2004/07/23