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名演創立50周年記念企画

劇作家・演出家 坂手洋二氏講演会燐光群主宰)

 1962年、岡山県生まれ。慶應義塾大学国文学科卒。1983年燐光群旗揚げ。1991年『ブレスレス ゴミ袋を呼吸する夜の物語』で第35回岸田國士戯曲賞を受賞。『神々の国の首都』では、アメリカ・ヨーロッパに3回のツアーを実施。1999年『天皇と接吻』で第7回読売演劇大賞最優秀演出家賞・優秀作品賞を受賞。2001年新国立劇場に『ピカドン・キジムナー』を書き下ろす。2002年、燐光群『屋根裏』『最後の一人までが全体である』(作・演出)、演劇集団円『ブラインド・タッチ』(作)で第37回紀伊國屋演劇賞。『屋根裏』『CVR チャーリー・ビクター・ロミオ』『最後の一人までが全体である』『阿部定と睦夫』で第10回読売演劇大賞最優秀演出家賞、『最後の一人までが全体である』で同優秀作品賞。『屋根裏』で第54回読売文学賞を受賞。昨年は新国立劇場で『マッチ売りの少女』(作・別役実)を演出。地人会で『心と意志』(作・演出)を上演した。今年に入って『だるまさんがころんだ』を上演。8月18・19日には名古屋でも上演される(天白文化小劇場)
 日本劇作家協会副会長。日本演出者協会理事。国際演劇協会日本センター理事。評論集に「わたしたちはこうして二十世紀を越えた」(新宿書房)、他に戯曲集多数。

8月11日(水)6時30分〜
愛知県中小企業センター7階第8会議室


 8月11日に愛知県中小企業センター会議室で、劇作家・演出家の坂手洋二さんの講演会を行い、72人が参加しました。
 以下はその感想です。

 
 坂手氏の講演会の日程が決まってからの準備期間は約1ヶ月。その間、少しでも多くの方に坂手氏の意欲的な表現活動を知ってもらいたい、今回の講演を通して、演劇の持つ力を伝えたいという思いで準備をしてきた。講演内容、タイトルを決め、当日の準備を進めていく中で、改めて坂手氏の評論やインタビュー記事を読む。三年前に坂手氏の作品に出会って、演劇は人間の喜怒哀楽を刺激するだけのものではなく、見失いがちな何かを考えさせるものであり、衣食住と同列にあるべきものだと感じ、心が満たされるのがわかった。いつか彼の作品に関われたらという夢を持ち、舞台制作に積極的に取り組むようになった。
 そんな自分を振り返りながら迎えた当日。坂手氏の講演は、質疑応答と併せて約二時間強とは思えないほど、さまざまなエピソードが語られ、彼の演劇との出会い、演劇に対する思いを知る。「いま、演劇で何を」というテーマにふさわしく、私たちには社会に対しては責任があり、常に当事者であるべきだという熱いメッセージを受け取った。坂手氏の講演を聴いて、表現者と観客が舞台を通して対話をする、それが演劇であり、対話ができる感受性をいつまでも持ち続けたいと思った。
 これからも今回のような企画で、演劇を愛する人を増やしていきたいと強く感じる。実行委員として司会も務め、とても有意義だった。  (A11-05 Y・K)

講演でいくつか感じたことについて   
 表現とはなにか、そして演劇的表現とは、どういう意味をもつか、を学ぶことができた。
 演劇は、映画のようなクローズアップはなく、場面の移動もない、音響的なものもない、舞台というひとつの空間で人が、演じ、言葉、セリフで人を引きつけること。役者は、相手のセリフをよく聞くことが大事であること。演劇は、キャスト、スタッフそして観客、劇場の空間、美術、照明など、さまざまな人々で作られ、それぞれの役割があること。舞台裏では、演出家と著名な舞台美術家とのあいだで、それぞれどれだけのアイディアを出したのか、創意と知恵を出したか、どうか、ある種の緊張関係があること。こうした相手に刺激を与え会う関係によってすぐれた舞台ができあがるということを知った。また観客は、劇に主体的に参加していることについてふれた。ある劇では、客席を船底のように大きく改造し、そこに客席を設置して劇の重要な場面にした経験を語った。これには費用がかかったことなど、演出する側から観客が、にいかにしたら劇に参加できるかなど、いくつかの例をあげての苦労話があった。
 マスコミが報道しないことや気づかないような小さな報道でも、演劇としてできることがあること。自分たちのメディアとして演劇があること。演劇の位置づけとも関連してくるが、どこに、何に、どのような問題に着目していくかの意識、かくされた問題を発見して、それを舞台にのせる気構えを感じた。テーマの設定としては、面白いこと、めずらしいこと、新しいこと、だれもやったことのないことを求め続けていること。ここに演劇をつくる原動力として、内から湧き出るような想像力、旺盛な好奇心、創造性、確信ある自己主張があると感じた。戦争をテーマとする演劇的表現では、戦争を直接体験していなくても、戦争とどこかつながっているものがあるのではないか。そのつながりを見つけ、探りだし、それをどのように表現していくか、であること。さらに、軍隊は、戦争で人を殺すことを国家が公然と認めることである、この人を殺すことと国家が合法的に人を殺す死刑制度の存続との共通性、つながりについても語った。いま、死刑制度についての演劇を考えているという課題も出された。話題が次から次へと展開され、演劇が社会、政治や他の芸術との関係など、奥深さを感じると同時に、問題のとらえ方のみずみずしさ、豊かな感受性、積み重ねてきた体験というものを感じた。この講演を聞いて、演劇は、今日の時代において人間を表現する限りない可能性と魅力をもっているものだということであった。(B25-15 N.D)


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最終更新日 2004/09/10