N0.1 CHARLES BROWN(ブルース・シンガー/ピアニスト)

 今年(1999)の1月21日、うっ血性心不全により、入院先のオークランドの病院で亡くなりました。76歳でした。昨年待望の初来日が予定されましたが、体調の不調からそれも果たせず、シカゴ・ブルース・フェスティバルの出演もキャンセルした後は、どうも芳しくない状態が続いていたようです。
 チャールズ・ブラウンと言えば、最大の当たり曲は何と言っても「メリー・クリスマス・ベイビー」です。ギタリスト、オスカー・ムーア(あのキング・コール・トリオのギターです)とジョニー・ムーアの兄弟と共にスリー・ブレイザースの歌手兼ピアニストをつとめていた時のヒット曲(1947)ですが、その後ソロとしてのAladdinでの’56年の録音を始め多くの再録があり、彼の看板とも言える曲でした。
 60年代に入ってからは「プリーズ・カム・ホーム・フォー・クリスマス」という、もう一つの看板ソングを持ち、どちらも多くのカヴァーを生んでいます。「メリー・・・」の方はJ・ムーアの作ですが、「プリーズ・・・」は自作曲でこの他にも多くのクリスマスブルースを書いています。このサイトのタイトルは、ホームページを作ろうと思い立って色々と関連事項を調べ始めた5月に、彼が1月に亡くなっていた事を初めて知り、私なりのささやかな追悼の意味も込めて、それまで考えていたタイトルから変更して付けたものです。
 彼は’61年にKINGでクリスマス・アルバムを出していますが、’75年に同アルバムのリイシューがKING傘下のGUSTOから出ており(ジャケットデザインはほぼ同じ)、さらに'78年にBILL DOGGETTのオルガン・インストを4曲加えて別ジャケットで出ています。この'78年盤のCDが’88年に出ています。
 現在入手可能かどうかは不明ですが、もしチャールズ・ブラウンのクリスマスCDらしきものをみつけた際、KING・GUSTOのどちらかのレーベル名、または追加されたBILL DOGGETTの名前があれば、このアルバムのCDだと思って間違いないでしょう。さて現在入手可能なCDとしては、'94年にRounderで録音したものがあります。11曲中5曲が先のCDと曲目がだぶっていますが新録音です。KING盤に比べると少々軽い仕上がりであるのはいなめません。


p-memo1cd1.jpg
PLEASE COME HOME FOR CHRISTMAS
/CHARLES BROWN(1988=CD)
(KING KCD−5019)

PLEASE COME HOME FOR CHRISTMAS
CHRISTMAS IN HEAVEN
CHRISTMAS BLUES
I’LL BE HOME FOR CHRISTMAS(*)
IT’S CHRISTMAS TIME
WRAP YOURSELF IN A CHRISTMAS PACKAGE
BLUE CHRISTMAS(*)
CHRISTMAS QUESTIONS
MERRY CHRISTMAS BABY
BRINGING IN A BRAND NEW YEAR
THE CHRISTMAS SONG(*)
CHRISTMAS COMES BUT ONCE A YEAR
IT’S CHRISTMAS ALL YEAR ROUND
CHRISTMAS WITH NO ONE TO LOVE
WINTER WONDERLAND(*)
LET’S MAKE EVERY DAY A CHRISTMAS DAY

(*印は)BILL DOGGETTの演奏です
’61年のオリジナル盤のタイトルは
“Charles Brown sings Christmas Songs”


p-memo1cd2.jpg

CHARLES BROWN’S COOL CHRISTMAS BLUES
/CHARLES BROWN(1994)
(BULLSEYE BLUES CD BB 9561)

MERRY CHRISTMAS BABY
SANTA’S BLUES
BLUE HOLIDAY
SILENT NIGHT
CHRISTMAS COMES BUT ONCE A YEAR
PLEASE COME HOME FOR CHRISTMAS
A SONG FOR CHRISTMAS
STAY WITH ME
TO SOMEONE THAT I LOVE
CHRISTMAS IN HEAVEN
BRINGING IN A BRAND NEW YEAR


 「プリーズ・カム・ホーム・フォー・クリスマス」は'78年にイーグルスがカヴァーした事で、一般のROCKファンにもよく知られる曲となりました。イーグルスのヴァージョンは、ドン・ヘンリーが原曲をよく聴いていたという話の割には、あまりブルースフレーバーの感じられないポップ寄りの仕上がりです。むしろチャールズ・ブラウンよりも、’63年のTHE UNIQUESのヴァージョンを下敷きにしたのではないかと思え、それに彼らがレコーディングする前年の’77年に出たFREDDY FENDERのテックスメックス風味の素晴らしいカヴァーにインスパイアされて出来上がったのが、あの録音なのではないかと私は考えています。しかし良く出来たカヴァーであるのは間違いありません。
 面白いのは、これ以降に出たこの曲のカヴァーで、原曲を知っていたのか、それともイーグルスのレコードでこの曲を覚えたのかが、はっきりと判る事です。さしずめ後者の代表格はボン・ジョヴィでしょうか。何年か前にパット・ベネターがいきなりブルースアルバムを出した事があり、最後にこの曲のカヴァーが入っていました。それまでの彼女の路線からすると、ブルースというのは余りにも唐突だったのは確かで、半信半疑で聴きましたが、これが何とも堂々たるブルースアルバムでした。「プリーズ・・・」も成る程これはチャールズ・ブラウンのオリジナルを聴き込んだと思しき出来で、先入観にとらわれてはいけないと反省した次第です。
 彼の死去10日前の1月11日には、サンフランシスコでジョン・リー・フッカー、ボニー・レイット、アルヴィン・ヤングブラッド・ハート等のアーティスト達による、彼へのトリビュート・コンサートが開かれました。本人はすでに入院中でしたが「どうしても出席したい」と移動式ベッドで会場入りし、ステージ脇から演奏を見守っていたとの事です。5月になるまで亡くなっていた事さえ知らずにいた私は、誠に浅はかなファンではありましたが、このコーナーの1番目だけはどうしてもこの人を改めて紹介したく、長々と書かせていただきました。  合掌
チャールズ・ブラウンのレコードジャケットはこちら


xmas_back_01q.gif