Christmas with Blue Comets
【INTRODUCTION】







































 冒頭でも書きましたように、ここでブルー・コメッツ(以下ブルコメ)を取り上げるというのは、今ひとつピンとこない人も多いかと思いますが、私にとっては洋楽を聴くきっかけとなったGSブーム、その窓口となった忘れ得ぬグループですし、所謂子供向けのキャラクターもののクリスマスレコードを抜きにすれば、初めて(自分の意志で)買ったクリスマスレコードは、ブルコメの'66年のシングル「ジングル・ベル」でした。

 今年の5月に、メンバーの1人であった井上忠夫(大輔)氏が亡くなるという、三十数年来のファンとしては誠にショッキングな事件があり、何とか追悼盤のような形で、ブルコメのこれまでの音源をボックスにでもしてもらえないものかと考えておりましたが、6月上旬にブルコメCDボックスの制作が内定したという某筋からの情報が入りました。もともとボックス化の企画自体は何度か出ていたようですが、ゴーサインが出たのは、井上氏の事と、ちあきなおみボックスが売れた事、つまりボックスセットが商売になった事が追い風になったようです。

 この時点ではCD何枚組になるのかは不明で、多くても(ちあきボックスと同じ)6枚かなと思っておりました。ただ、ちあきボックスについていえば、その装丁が少々不満でしたので、願わくはもう少し手をかけたものにしてほしいなあと思っていたのですが、その後10枚組になるらしいという情報が入ってきたときには正直言って驚きました。

 枚数が多くなるのは、ファンであれば(お金の事は別にして)喜ばしいことなのですが、ブルコメの場合はどうしてもある程度の枚数が必要な理由がありました。それは彼らがGSとしては、極めて特殊なグループであったからです。日本のロカビリー時代からバックバンドとして活動していた事もあり、ビートルズ以降のヴォーカル&インストゥルメンタル・グループのスタイルを主としたGSの中では、一世代前の楽器編成といってよい事。バックバンドとしての体質のせいか、出で立ちもスーツに短髪と地味だった事。当然、年齢的にも年長だった事。他のGSよりも演奏・歌ともに実力があるグループだったので、GSブームの終焉後も活動を続けられたものの、シングルにおける歌謡曲寄りのアプローチが、ともすれば後から見た場合に、ただの歌謡バンド的な見方をされかねない側面を持っていた事。

 つまり、ロックバンドとしてブルコメを考える場合には、バックバンド時代から時間軸で追うような総括的な聴き方をしないと、きちんとした評価がしにくいのです。それをしないと、代表曲「ブルー・シャトウ」とその替え歌まで生んだ風俗史的な面だけを取り上げられて、下手をすれば「どこがロックだ?」で終わる可能性すらありました。そうしたサロン的な見方では、レコ大受賞、GSでは唯一の紅白出場というのも、マイナス材料でしかありません。勿論、ブルコメはれっきとしたロックバンドです。ただ例えば、ロックバンド的な佇まいが分りやすい(というか説明しやすい)スパイダースなんかに比べると、そのロックバンドとしての資質が分りにくいグループであったのは確かです。

 その後9月にボックスに先駆けて2枚組CDの発売、11月にボックス発売というスケジュールの情報も入ってきました。その頃には、私がよく覗きにいく「60年代通信」というサイトの主宰者で、ブルコメファンとしても有名なKiyomiさんの動きが変というか、余りにも多忙そうなのがサイト上からも拝察出来たので、これは多分(ボックスを)お手伝いしているなと踏んでいました。その時点では、まさかライナーの方まで書かれているとは思いませんでしたが、9月に入って、ボックス収録のクリスマス音源のライナーを手伝って欲しいという連絡が来たときには、身震いするような思いでした。

 いくらファンとはいえ、このような大きなボックスのライナーを書くなんて、素人には荷が重いと考えるのは当然です。ましてやその時の連絡では、クリスマス音源がフル収録される盤、他の曲も含めて1枚丸ごとのライナーというお話でしたので、もし手伝わせていただくにしてもクリスマス音源だけにさせていただけないかという弱気な返事をしました。

 10日ほどして、Kiyomiさんよりブックレットの割り付け等がほぼ固まったので、会って資料を渡したいという連絡が入りました。新宿で会って話をしている中で、他の資料が日本コロムビアにあるので、時間があればこれから一緒に行けませんか、という話になりました。特に問題なかったので同行したところ、実は自分の担当ディスクの枚数がかなりあり、その他にもヒストリーページ等の作成があって、出来れば他のディスクのライナーをどれか1枚書いて欲しいと言われて真っ青になりましたが、いろいろ話を聞いていると、どう考えても進行が遅れており、ブックレットに写真を載せるグッズの確保等も含め、お手伝いしないことには発売日に間に合わないのではないかと思われる事態でした。

 とりあえず候補の中から、手元にLPが残っている『ヨーロッパのブルー・コメッツ』『アメリカのブルー・コメッツ』の2in1となるディスク4を書かせていただくことにしました。結局、このあとカヴァー集となるディスク6、シングル以外のオリジナル集となるディスク3も書くことになってしまい、曲目解説ということでは、クリスマスアルバム分を0.5枚とすれば、何とCD3.5枚分を担当してしまう羽目になってしまったのであります。

 ブルコメの集大成的なこのボックスに、まさか私の駄文がこんなに多く載る羽目になるとは想像だにしませんでしたが、もしボックスをお買いになった方がいらっしゃいましたら、誠につたない解説になりましたことを心よりお詫び申し上げます。ただ、ボックス自体はご覧になれば御分りのように、関係者の皆さんの情熱が伝わってくる、本当に素晴らしい出来のものです。

 さて、ここでは別にブルコメボックス顛末記を書こうと思ったのではありません。私がこの中のクリスマスアルバム音源のライナーを書いたのは前記の通りです。当然ながらスペースの問題もあり、思いついたことの全てを書けた訳ではありません。また、素人の悲しさで、校了後に浮かんできた事柄も少なからずあります。その補足版といっては何ですが、曲目解説プラスαとして、ここで改めてダラダラと書かせていただこうと思った訳です。

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