pH、KHとカルシウム 補


 最近、「硝酸塩、リン酸塩が低い水槽なのに低KH、低カルシウムになってしまう」と悩む方から何件か御相談を受けました。そのようなケースの解説を補っておきたいと思います。

 お悩みの水槽は「1日1,5リットルのKalkwasserを入れているのもかかわらず、Caが300ppm前後にしかならない。KHも5前後で低い。低Caと低KHという理解しにくい状態である。サンゴや石灰藻が沢山吸収するためだろうか?」というケースです。他のご相談も、このケースに近い状態でした。

 サンゴや石灰藻が吸収するCaはそんなに多くないので、定常状態では加える量が1リットル/dayでも充分に加えていると思います。それ以上入れても上がらないのは、どこかでCaが沈殿していうために上がらないと思います。
(カルシウムリアクターを付けたりした後は一定レベルのCa濃度に上がるのに時間がかかると思いますが。これは定常状態ではないでしょう)

 確かに、他のイオン、pHが一定なら、Ca×HCO=Aで、一定のはずです。Caが高ければKHが低く、KHが高ければCaが低くなるはずです。しかし、pHが上がったり他のイオンの影響でAが低下することがあります。典型的には、NaOHなどを入れpHが上がるとCaはたちまち下がります。NaOHを入れる人はあまりいないと思いますが、一番多いのは重曹の加え過ぎです。NaHCOを入れると一時pHとKHが上昇しますが、これでCaが低下してしまいます。(重曹を溶かした水を水槽に注ぐと白く濁るのはカルシウムイオンが沈殿を始めたサインです。これでカルシウムイオンは消費されてしまいます。)それと同時にKHもいくらか下がり、やがては元にもどってしまいます。
 重曹を入れるのはHCOが消費された後は、NaOHを加えたと同じ状態を生みます。高Ca、低KHの水槽に重曹を入れて補正するのは良いですが、Caが高くない水槽に重曹を入れるのは危険です。なお、Ca剤と重曹を同時に入れたからといって元が低Caの水槽の場合は数時間後にはよりひどい低Caになってしまう恐れがあります。

 Kalkwasserを過剰に加えた場合を考えてみましょう。CaイオンはpH12,4のKalkwasserでは高濃度に含まれていますが、pH9〜10付近で最もCaCOとして沈殿しやすく、イオンでいられなくなります。(この結果KHも下がります) Kalkwasser滴下付近の海水はこのpH9〜10付近になりやすくなっています。特に、過剰に加えた場合はこの範囲が広がってしまいます。このため、CaOHを沢山加えたのにCaイオンが下がってしまうというパラドックスに落ちるいることがあります。
 Kalkwasser滴下付近にCaCOの沈殿が多量にあるなら、この現象が起こっている可能性があります。(適量の添加でも、長期間では多少の沈殿が生じますが)
 対策はKalkwasser投与量の見直しと、沈殿する前に早くCaイオンを水槽全体に供給するために、滴下場所付近の水流増加を計ることです。

 なお、カルシウムリアクターを取り付けたらどうなるかという質問も受けました。うまく作動すれば、昼夜のpH差を無くし、重曹でない方法でKHを投与できる形になり、安定期に入ればCa、KHも良いところに落ち着くのではないでしょうか。
 ただ、安定までは数週かかるかも知れません。その間のpH低下や、KHの急上昇によるCa低下に注意が必要です。pH低下はCa上昇に働きますが、繰り返しますが、これには時間がかかります。KHの急上昇は数分でCaを下げてしまいます。Kalkwasserからリアクターへ移行はpH、KHとCa濃度に注意して、最初はCOを控えめにし、元が低Caの場合はKalkwasserも当分併用した方が安全だと思います。
                                               

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