皮膚真菌症(足白癬ー水虫を主体に)
真菌とは俗に云う黴で、菌糸と胞子よりなり、人に対し病原性を持つ皮膚真菌症では、白癬が一番多く、全体の90%近くを占める。その他、カンジダ、癜風などがある。
A 白癬
白癬の病型では足白癬(水虫)(64%)、爪白癬(17%)、体部白癬(たむし)(10%)、股部白癬(いんきんたむし)(7%)、手白癬(3%)であり、その他に頭部浅在性白癬(しらくも)、ケルスス禿瘡などがある。
a)症状
1)足白癬(水虫 )
趾間型:趾間に浸軟した(白く湿った)紅斑を呈し辺縁に鱗屑(フケ様のかさつき)を付着する。
小水疱型:足底から足側縁にかけて小水疱(小さな水脹れ)膿疱(膿があるような黄色の水脹れ)を伴う
角質増殖型:踵を中心に、足底に彌満性の角化(胼胝様に硬くなる)と皮溝(皮膚の皺)に一致した落屑(皮膚の皮剥け)をもつ。
趾間型、小水疱型は春から夏にかけて発症、悪化しやすく、痒みを伴うことが多いが、必発ではない。角質増殖型は小水疱を認めず、掻痒は少なく、冬も軽快しないのが典型である。
2)爪白癬
手指よりは足趾に多く、足白癬に合併することが多い。爪甲先端部の肥厚、混濁(白濁、黄濁、黒色化)爪甲下角質増殖(爪甲が厚くなる)、脆弱化などを呈する。爪白癬のみでは自覚症状はないが、細菌感染や陥入爪(巻爪)などを併発すると疼痛がある。
3)体部白癬(たむし)
掌蹠、陰股部位外の生毛部に生じた白癬で、臀部、顔面も含め、症状は以下の股部白癬と似る。ステロイド性の異型白癬や猫などの動物から感染するものもある。
4)股部白癬(いんきんたむし)(頑癬)
陰股部に生じた白癬である。大きな弧状あるいは連圏状(繋がったレース様)の境界明瞭な中心治癒傾向(中心が薄茶色で治ったような状態)がある紅斑、褐色斑。鱗屑、丘疹、小水疱を認め、掻痒もあることが多い。
5)手白癬
片手が多いが手掌に鱗屑の付着、小水疱を伴う。
6)その他
頭部浅在性白癬(しらくも):頭髪部に細かい鱗屑の付着。
ケルスス禿頭、白癬性毛瘡:頭髪部須毛部に排膿を伴う腫瘤状の盛り上がり。
b)診断、検査
1)直接顕微鏡検査
真菌症は、皮膚の肉眼的診断では他の類似した皮疹と誤ってしまうことが多い疾患である。真菌の診断上最も重要な検査は、直接顕微鏡検査であり、これのみで確定診断可能である。
病変部の鱗屑、小水疱蓋、丘疹の角質部分、毛、爪などを採取し15〜20%水酸化カリウム溶液を滴下し溶解後、顕微鏡検査を行う。隔壁を有する分岐性真性菌糸を認めれば陽性である。患者さんにほとんど苦痛を与えることなく、外来で簡単にできすぐ結果がわかる検査である。
2)培養検査
菌種の同定のために行う。菌種により臨床症状、感染経路と感染源、治療期間が異なるために必要となることがある。
c)治療
1)外用剤と内服剤の適応
白癬治療の基本は抗真菌剤の外用である。しかし次の症状では内服剤の適応となる。
@角質増殖型足白癬 A爪白癬 Bいわゆる深在性白癬(ケルスス禿頭、白癬性毛瘡)C広範囲、難治性
2)外用剤
最近の外用剤は薬剤の貯留性、浸透性が良くなり一日一回の外用方法が基本となっている。外用剤の基剤としてはクリーム剤、軟膏剤、液剤、ゲル剤があり、症状や部位により使い分ける。
外用剤の使用方法は入浴後か就寝前に優しくなでるように良くのばして塗布する。病変部位以外にも菌の付着が認められるので、病変の周囲も含めて外用する。足白癬では病変が認めなくても、靴で覆われる足底足背、全趾、趾間への外用が必要である。 外用剤の副作用としては一時的な刺激(ヒリヒリ感など)と接触性アレルギー(かぶれ)である。
3)内服剤
白癬に対する経口抗真菌剤は長い間グリセオフルビンしかなかったが、90年代になってからイトリゾール、ラミシールが発売された。イトリゾールは白癬菌以外の真菌に対しても抗菌力があり、一日一回の内服で良く、グリセオフルビンより副作用の発症頻度が少ないが、併用薬剤に注意が必要である。
ラミシールは爪白癬を含むすべての白癬に適応ある。
4)治療期間 体部、股部、手白癬では通常2〜3ヶ月間の外用で完治する。その間自覚症状が消えても毎日外用する。足白癬では、角化の程度により期間に違いがある。角質増殖がない新鮮病変では体部白癬などより早いこともあるが、概して3〜4ヶ月。角質増殖型ではグルセオフルビン内服でも6ヶ月〜1年を要する。爪白癬では手指爪内服6ヶ月、足趾爪1年以上。しかしイトリゾール、ラミシールでは内服期間が短縮されている。
5)日常生活の注意点
@帰宅したら、足などは良く洗い清潔にする。汗ばんだら靴下等をこまめに変える。
A靴は時々靴用の抗菌剤などを使用し、風通しの良いところで陰干しする。
B風呂場、トイレのマットは洗浄し、日光消毒する。
Cスリッパ等の履物は共用にはしない。
D家庭内の掃除はこまめにする。