高脂血症
高脂血症とは
高脂血症とは、血中の総コレステロール(T.cho)が220mg/d以上、または中性脂肪(TG)が150mg/dlの状態を言います。
総コレステロールが高くなる、家族性高コレステロール血症、中性脂肪が高くなる、原発性高カイロミクロン血症、総コレステロールと中性脂肪が高くなる家族性複合型高脂血症と家族性L型高脂血症に分けられます。しかし、現在、特殊な遺伝型によるより、高脂肪食が招いた軽度の高脂血症が多く見られます。
元々人類はその長い進化の過程で飢餓に対応するよう歩んできましたので、現在の食事状況では、コレステロール、カロリーなどを貯め込みやすい体のつくりになっています。人体と現在の食生活は少しミスマッチなのです。その分、意識的に制御をくわえなければなりません。場合によっては、薬でコントロールすることも必要です。
高脂血症が招く物
1)高コレステロールがひきおこす病気は第一に、動脈の粥状硬化で、これによって狭心症、心筋梗塞などの血管がつまる病気が生じます。また、老年痴呆との関係も疑われています。いずれにしろ、日、月の単位ではなく、10年、20年といった時間スケールでの変化です。
2)高中性脂肪は、コレステロールとは独立に動脈硬化の危険因子と証明されています。また、1000mg/dl以上になると、急性膵炎を起こす危険が出てきます。急性膵炎の重症型は、死亡率の高い重篤な病気です。
高コレステロールにしろ高中性脂肪にしろ、取り返しがつかなくなるまで無症状であるところが怖い病気です。
高コレステロール
1)総コレステロールの中には、LDLコレステロール,HDLコレステロールなどがあります。LDLコレステロールは肝で作られ、コレステロールの全身へ供給される形です。LDLコレステロールは、俗にに悪玉コレステロールと言われ、変性したLDLコレステロール(酸化LDLコレステロール)は、血管内皮でマクロファージという白血球の一種に食べられ、そこで血管の粥状硬化を起こしてしまいます。
高脂肪食が続くとLDLコレステロールを代謝するLDLレセプターの数が減り、すると、ますます血中のコレステロールが増えて行くという悪循環が始まります。
2)HDLコレステロールは善玉コレステロールと言われており、血中のコレステロールを回収してくる形です。HDLコレステロールが低いひとは動脈硬化の危険因子を持つことになります。HDLコレステロール30mg/dlのひとは、60mg/dlのひとの2倍、心筋梗塞などの虚血性心疾患にかかりやすいと言われています。
しかし、男性で90mg/dl以上、女性で100mg/dl以上となるとHDLコレステロールも善玉ばかりではなくなるようです。
中性脂肪
中性脂肪は単独でも、動脈硬化の危険因子ですが、血中の中性脂肪が高くなると、血液中にインスリンはあるのにインスリンの効きが悪い状態が出現します。このため、糖尿病になりやすくなったり、糖尿病にかかっている人には悪化させたりします。
また、上で述べましたが、中性脂肪が1000mg/dlを越えると急性膵炎で、一命を落とすことがあります。
治療
まれにいる、家族性高コレステロール血症の遺伝子をホモに待つひと(両親からの遺伝子が、2本ともこの遺伝型だったひと)は総コレステロールが500mg/dlを越え、若くても心筋梗塞などの危険が高いので、専門医の元でLDLアフェレーシス(血液透析のような方法で、体外にLDLを出す治療)などの強力なコレステロール低下療法を受ける必要があります。
一般の高脂血症の治療は、その人ごとの背景因子によって異なります。男性45歳以上、女性55歳以上、家族に虚血性心疾患のひとがいる場合、自分がすでに狭心症などを患っている場合、高血圧、糖尿病を合併している場合はより強くコレステロール値を是正しなければなりません。
1)食事療法:
先に述べたように、高脂肪食はよりLDLコレステロールの増加をもたらしますから、先ず食事療法です。
コレステロールは1日300mg以下にして下さい。コレステロール食事表
2)運動療法:
有酸素運動、持続的運動、(ジョギング、ウォーキング、水泳などある程度の時間連続して行う運動)はHDLコレステロールを上げる効果があります。ただ、10年、20年と続けるには、特別に決心して運動の時間を作るより、通勤に歩く部分を入れるとか、エレベーターより階段を使うとかの日常に組み込んで運動の方が長続きします。
3)薬物療法:
食事療法で下がらないひとは、以下の目安で、薬物療法を行います。
LDLコレステロール
120mg/dl以下:正常
120〜140mg/dl:虚血性心疾患の既往のある人は、薬物療法開始。
140〜160mg/dl:糖尿病や、高血圧のある人は薬物療法開始。
160mg/dl以上:年齢を考慮し、薬物療法。
中性脂肪は、摂取カロリーによって決まります。先ずカロリー制限と、節酒が基本です。食事療法でも中性脂肪高値が続くひとはやはり他の因子を勘案して、薬物療法となることもあります。