マイコプラズマ感染症はMycoplasma pneumoniae(M. pneumoniae)という病原体によって起こります.一般の細菌は,一番外側に細胞壁という膜があり,この膜によって細菌の形が保たれ生きています. これがないとその細菌は溶けてしまいます.
M.pneumoniaeは,細胞壁がなくても生きていけるという特殊な構造上のデザインを持っています. 呼吸器感染症に対してよく使われるセフェム系抗生物質は,細菌の細胞壁の合成を阻害することで抗菌力を発揮します. ところが,M.pneumoniaeには,もともと細胞壁がないため,ふつうの細菌によく効くはずのセフェム系抗生物質が, この特殊な病原体に対しては全く効かないのです.
マイコプラズマ肺炎は,肺炎球菌などによる細菌性肺炎よりも軽症との固定観念がありますが,重症化して, 呼吸不全をおこし集中治療室での管理を必要としたという例もあります.(わたしも日本呼吸器学会で症例報告をしています) 内科・小児科領域でまずはじめに処方される抗生物質がセフェム系ということが多いので,マイコプラズマ感染症を念頭において治療しないと, 治るものも治らないということになります.
しかし,この病気を意識して,適切な抗生物質(クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどのニューマクロライドが第一選択となります)を選択し, きちんとした内科的管理をすれば,ほとんどの場合には,心配ありません. しかし,ふつうの風邪と思って不十分な治療を続けると重症化する可能性もあります.
咳が多く,なかなか熱が下がらない時には,マイコプラズマ感染症にもご注意を.
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