4つの指数で日本を評価する
                                 ichi
           
      人間開発報告書との出会い
 私たちが「国」を評価するとき、どのようなモノサシで評価するだろうか?日本は「経済大国」と言ったとき、経済というモノサシで評価しており、GDP(国内総生産)がよく使われる。しかし、GDP以外で「国」を評価するモノサシは、今の日本国ではあまり聞かれない。
 
                                                                      
 
 
 
 
 
 
 (1999年4月4日、日経新聞)
 
 
 
 このGDPのグラフを見ると、「米国はやはりすごいし、日本国も大したものだ」という感じを持つ。経済や社会について考える場合、よく米国が「モデル」として論じられているが、この議論の根底に(それを聞かされる人々の意識の前提にも)、このGDPによる国の格付けが存在している。
 デビット・コーテンは、1995年に「グローバル経済という怪物」(日本語訳1997年)を著し、多国籍企業の世界支配、人間破壊を警告した。一方、日本では1990年代後半には、「グローバルスタンダード」という言葉がマスコミで大量に流された。あたかもそれが世界中の常識や潮流であるかのように。
 デビット・コーテンは、1999年に「ポスト大企業の世界」(日本語訳2000年)を著した。
 その第3章「マイダスの呪い」の中「金持ちの幻想」に次の文がある。
 「私はアジアで暮らした15年間、資本主義から疎外された人々の運命をこの目で見てきた。・・・生活手段を失った人びとはほぼ例外なく、単なる貧困から絶望的な極貧状態に追い込まれた。開発の恩恵を享受するのは、生活手段を奪われる者ではなく、もともと豊かな者と相場が決まっている。」
 「国連開発計画による1997年の人間開発報告書によると、1960年の世界の所得総額のうち、高所得層上位20%が手にした額は、低所得者下位20%の30倍だった。公的な開発が実施されたその後の30年間で、倍率は60倍を超えた。1991年には61倍に達し、1994年には78倍に達した」(P121〜P122)。このデータの注に「国連開発計画『人間開発報告』」とある。国連開発計画も「人間開発報告」もあまり聞いたことがない言葉だ。
 インターネットで「国連開発計画」を検索し、国連開発計画の東京事務所のホームページ(HP)に入った。そのHPで「人間開発報告書」を説明している。また、国連開発計画は、UNDP(Unitede Nations Development Programme)と言われていることも知った。
 少しその説明を見てみよう。
「人間開発報告書
人間開発報告書は1990年に初めて発刊され、その中で開発援助の目的をひとりでも多くの人々が人間の尊厳にふさわしい生活ができるように手助けすることであると位置付け、その上で国の開発の度合いを測定する尺度として、1人当たりのGDP、平均寿命、就学率を基本要素として、これらを独自の数式に基づき人間開発指数として指数化したことに始まります。以来、人間開発報告書は毎年異なるテーマの下に人間開発のあり方を問題提起し、国際社会の議論をリードしてきました。1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境会議をはじめ、・・・1995年のコペンハーゲンでの社会開発サミット等を通じて、人間開発という概念は国際的にも幅広く受け入れられ、今や定着した概念となりつつあります」。
「人間開発報告書はUNDPの委託を受けて、世界的に著名な経済学者や開発の専門家によって執筆されています。報告書そのものは、UNDPの公式見解ではなく報告者の意見としての独立性が高いものとなっています」。
「1994年からは日本語版も発行され、現在、人間開発報告書は12カ国語以上に翻訳され、毎年100カ国以上で発行されています」。
 人間開発報告書は、次のテーマで毎年出されていた。
 1990年「人間開発指数」  ・・・・ 
 1994年「人間の安全保障」
 1995年「ジェンダーと人間開発」 ・・・・
 1997年「貧困と人間開発」
 1998年「消費パターンと人間開発」
 1999年「グローバリゼーションと人間開発」
 2000年「人権と人間開発」
 
 もう一つ、この東京事務所のホームページで「統計」があり、これを見て、大変意外に思った。1997年から2000年まで、UNDP基本資金への拠出額が示されている。1997年日本1位(米国5位)98年日本4位(米国1位)、99年日本3位(米国1位)、2000年日本1位(米国2位)となっている。また基本資金以外の拠出は1999年では日本が1位、米国が7位となっている。
 国連のこの分野では、日本は大変「国際的に貢献」しているのだ。しかし、国内ではUNDPが毎年発行する「人間開発報告書」は、ほとんで取り上げられていない。一体どうなっているのか?
 本屋では「人間開発報告書」がなかったので、中央図書館で1997年版と1998年版を借りた。インターネットで1999年版と2000年版(英語)をダウンロードした。
 実際に「人間開発報告書」を読んでみて、東京事務所の紹介文が納得できた。御用学者の見解ではない「独立した研究者の良心」とレベルの高さ、わかりやすい説明、トピックのおもしろさに驚いた。
 
      人間開発とは何か
 この報告書の最大の概念に「人間開発」がある。これをまず、見てみよう。
「人間開発の概念(The concept of human development)
人間の選択の幅を広げ、達成できる福利の水準を引き上げるプロセスが、人間開発の概念の中核である。・・・ただし、人間開発には、開発レベルに関係なく、3つの本質的側面がある。それは健康で長生きすること、知識を得ること、許容し得る生活水準を維持するのに必要な資金が手に入ることである。
 しかし人間開発はここで終わるのではない。政治的、経済的、社会的な、創造的かつ生産的な生活を送る機会、自尊心、人権の保証といったことにも人は高い価値を認める。所得は重要ではあるが持つべき選択肢の1つでしかなく、生活のすべてではない。所得は手段であって、人間開発は目的である」。同感だ。
 
人間開発指数(HDl)
合成指数であるHDIは、人間開発の3つの基本的側面(寿命、知識、生活水準)を通して各国の平均的達成度を測定したもの。この3つの側面を表すものとして、平均寿命、教育達成度(成人識字率と初等・中等・高等教育就学率を加えたもの)、1人当たり実質国内総生産の3つの変数が使われている」(97年版 P17)。
 UNDPは、この人間開発指数(HDl)を用いて、1990年から「人間開発報告書」を発表している。人間開発指数(HDl)の大切な点は、経済発展が人間の健康、教育の達成、一定の生活水準の維持にどのように「貢献」したかを見ていることである。経済のために人間があるのではなく、人間のために経済があるべきだという当然の視点に立っているところだ。
 
 さらにUNDPは、男女間の不平等を考慮し次の二つの指数を導入した。ジェンダー開発指数(GDI)、ジェンダー・エンパワーメント測定(GEM)だ。
98年の「人間開発報告書」でその説明を見てみよう。
ジェンダー開発指数(GDI)
HDIと同じ側面と変数で達成度を測るが、男女間の達成度の格差をとらえる。男女間の不平等を加味して下方修正したHDIともいえる。基本的人間開発におけるジェンダー格差が大きいほど、その国のGDIはHDIより低くなる」。
ジェンダー・エンパワーメント測定(GEM)
女性が経済的、政治的生活に積極的に参加できるかどうかを表す。社全参加に焦点を絞り、政治経済への参加や意思決定の主な領域におけるジェンダー不平等を測定している。国会、行政職、管理職、専門職および技術者に占める女性の比率、および男性の勤労所得に対する女性の勤労所得の比率を追跡している。GDIと異なり、特定分野での機会の不平等を明らかにするものである」(P21)。
 
      貧困は基本的なものを破壊する
 1997年の「人間開発報告書」は、更に重要な事を指摘した。貧困の拡大である。
「最新のデータでは、人間開発指数(HDI)が昨年30ヶ国で悪化している。この数字は『人間開発報告書』が1990年に創刊されて以来、最も大きなものである。1987年から1993年にかけて1日1ドル以下の所得の人の数は、ほぼ1億人増えて13億人に達しており、この人数は、東南アジアと太平洋地域を除くすべての地域でいまもなお増加傾向にあると推定されている。・・・
 多くの先進国で失業が増えつつあり、公共支出や福祉国家に対する圧力によって従来の貧困対策が妨げられている。英国や米国などいくつかの先進国では貧困が著しく増加している」(P4)。
 日本では、「グローバルスタンダード」という言葉が華々しく使われ始めた頃、貧困の拡大に「人間開発報告書」は、次のように大きな警鐘を鳴らしていた。
「4.グローバル化は多大な機会を提供する。そのためにはグローバルな公平を期し、いっそうの注意と配慮をもってグローバル化を進めていくことが必須条件である」という部分では、次の指摘をしている。
「地図もコンパスも持たずに、ひたすら猛スピードで前進するようなクローバル化は、中国やインド、アジアの一部の新興工業経済地域など、いくつかの巨大で最強の経済国では貧困緩和に貢献した。しかし、そうしたグローバル化はさまざまな国の間や内部に敗者を生み出すものでもあった。貿易と外国投資の拡大に伴い、途上地域は勝者と敗者の格差拡大を経験した。そうしているうちに、多くの先進国は失業率が1930年代以来最高水準に達し、所得の不平等は19世紀以来、最悪の状況に陥ってしまった
 グローバル化の最大の利益は幸運なひと握りの人の手に渡っている。富の上げ潮は・・・ヨットや大洋航路船舶は新しい波に乗って富み栄えているが、多くのいかだやボートは浸水しているし、なかには沈んでいくものもある。
 貧困と所得に関してずばり核心に迫ってみよう。地球全体の所得に占める世界の下位20%の低所得層のシェアは現在、たったの1.1%であり、1991年の1.4%、1960年の2.3%を下回っている。下降傾向はいまもなお続いている。そして上位20%の高所得層と下位20%の低所得層の所得の比率は、1960年代の30対1から1991年の61対1に拡大し、1994年には記録を更新し78対1にまで開いた。・・・雇用を創出して奈落への急降下を回避するには、国内と国際の両レベルでグローバル化を適正に管理することが必要である」(P10)。
 
 さらに報告書は、「貧困」が人間の発達にとって意味するものを極めて明瞭に述べている。
「人間開発の視点から見ると、貧困とは我慢し得るまずまずの生活を営むために必要な、選択の幅と機会がまったく与えられないということを意味する。
 貧困は、人間が当たり前の生活を送ることができないという形で表れる。貧困は物質的な豊かさに必要な
ものがないということを意味するだけではない。人間開発にとって最も基本的なもの、つまり健康で創造的な生活を長く送り、つつましい生活水準を維持し、自由・尊厳・自尊心・他者からの尊敬を享受するために必要な選択肢が与えられないことも意味する」(P5)。私はこの下線部を読んだとき、人間にとって貧困が物質的なものだけではなく、「自尊心」や「他者との関係」の破壊だと言うことに大変共感した。
 97年版は、貧困に警告を発し、人間貧困指数(HPI)を提案した。
 「人間貧困指数(HPl)
HDIが各国の人間開発の実現に向けての全般的な進歩を測定しているのに対し、人間貧困指数(HPI)は進歩の分配を反映し、依然として残っている剥奪状況を測定するものである」。
 問題を焦点化し、その問題を取り扱うためのモノサシを提起する姿勢が、本当の知識人だろう。
 
      先進国で拡大する貧困
 さらに98年版では、「途上国」の貧困についての指数をHPIー1と分類し、さらに先進国の貧困を取り扱うHPIー2というものを導入した。その理由が次のように述べられている。
「すべての先進国で、高い消費水準にもかかわらず、貧困と剥奪状況はなくなっておらず、むしろ国によっては増大している。本年の報告書は先進国の貧困に関する新しい指数を提示している。これは人間の剥奪状況の程度を測る多面的な測定手段で、『人間開発報告書1997』の中で提示した途上国を対象とする人間貧困指数と同種のものであるが、先進国の社会的・経済的状況にとって、より適切な測定方法である。この新たな人間貧困指数(HPIー2と呼ぶ)を用いて測定すると、先進国人口の7〜17%は貧困層に入ることになる。つまり剥奪状況の水準は国の平均所得とほとんど関係がない。スウェーデンは貧困層の割合が7%と最も低いが、平均所得では上位から13位にとどまっている。一方、米国は平均所得水準は最も高いが、人間貧困の状態にある人口の割合も最も高くなっている。また1人当たりの所得が同水準でも、人間貧困の度合いがきわめて異なる場合もある。たとえば、オランダと英国は所得水準は同様であるが、HPIー2の数値はそれぞれ8%、15%と開きがある。
 HPIー2の測定結果によると、低い消費水準と人間の剥奪状況が、必ずしも途上国の貧困層だけの宿命ではないことがはっきりとわかる。豊かな国の1億人以上の人々も同じような状態に置かれているのである。約2億人が、60歳まで生きられないと予想され、1億人以上がホームレスになっている。また少なくとも3700万人が失業しており、しばしば社会的にも疎外されているのである」(P3)。
人間貧困指数ー2(HPIー2)」
HP1ー2 今年の報告書から導入されたもので、先進国の人間貧困を測定するものである。・・・HPIー1と同じ3つの側面に加えて社会的疎外の状況に焦点を当てている。変数は、60歳未満で死亡すると見られる人の割合、識字能力が十分とはいえない人の割合、可処分所得が中央値の50%未満の人の割合、そして長期失業者(12ヵ月以上)の割合である」(P21)。
 HPIー2は、先進国の国内格差すなわち国内の富の不平等な配分の程度を示している。「規制緩和」、「グローバルスタンダード」の大合唱の日本では、人間貧困指数というものは、今までほとんど紹介されていなかったし、私は知らなかった。
 
      3つの新聞を評価する 
 ニフティーの新聞検索で、UNDが導入した4つの指数を扱った記事があったかを、朝日、毎日、読売について調べた。それぞれ98年7月以降のデータだが、大変、興味深い結果が得られた。
 まず、人間開発指数(HDI)については、朝日が7件(内社説が2件)、毎日が5件、読売が4件報道していた。
 朝日新聞は、人間開発指数(HDI)を「豊かさ指数」として毎年この人間開発報告書の結果を報じていた。次のようだ。
「日本、『豊かさ指数』4位から9位に後退
    国連開発計画発表/ 2000.07.01 東京夕刊」「人間の豊かさ、日本は4位に 
  国連開発計画が報告 /1999.07.13 東京朝刊」「カネだけじゃない豊かさ日本8位 所得12位のカナダ福祉充実で1位 / 1998.09.10 東京朝刊」 
 
 男女の不平等に関するジェンダー開発指数(GDI)やジェンダーエンパワーメント測定(GEM)はどうか?
 GDIについては朝日は2件、毎日は2件、読売は1件、GEMについては朝日は3件、毎日と読売は0件だった。
 朝日は2000年6月の社説、「もっともっと進出を 女性幹部職員」でGDIとGEMを紹介している。
 では、人間貧困指数(HPI)はどうか?なんと、98年11月の朝日新聞の夕刊1件のみだ。私たちの多くが、人間貧困指数を知らなくても当然だ。この夕刊の紹介記事は、次のようだ。
米国の貧困(窓・論説委員室から)
             1998.11.02 東京夕刊 
 『人々の収入格差が米国で広がっている。報告はその事実を物語っているだけです』
 国連開発計画(UNDP)の米国人総裁、ガス・スペス氏が戸惑った表情を浮かべた。
 UNDPが最近まとめた人間開発報告にある『人間貧困指数』の国別順位について感想を求められたときのことだ。
 この指数は、いわば社会の健康度を測るための物差しだ。ことし初めて試算したところ、先進十七カ国の中で、米国が最下位になってしまった。
 指数の根拠を聞いて、なるほどと思った。
 まず、一年以上の失業者と六十歳以下での死亡者を数える。そこに可処分所得が平均の半分以下の人数、薬の効能書きなどが理解できない人の率を加えていく。これらに当てはまる人の、人口に占める割合が多い国ほど順位は低くなる。
 市場競争万能の米国は、ビル・ゲイツ氏のような大成功者を生む一方、麻薬に汚染された若者やホームレスを数多くつくる。・・・
 そもそも、「貧しい」とはどういう状態なのだろう。
 一定の収入に達しないこと。通常はそう考えられている。世界銀行もその基準である。
 世界人口の約五人に一人にあたる十三億人が一日一ドル以下の収入で暮らしている。
 UNDPは収入に加えて、人々が不健康で、能力を発揮できずにいる状態こそ『貧しい』と考える。乳児死亡率の低減や教育の普及に取り組むのは、そうした貧困を減らすためだ。・・・
 ちなみに指数の上位は、スウェーデン、オランダ、ドイツの順、日本は八位だ」。
 
 次の表1〜3は、1998年から2000年までの4つの指標のランキングだ。
 
表1、人間開発指数(HDI)ランキング

1998年HDI

 

98年一人
あたり
GDP順位

1999年HDI

 

99年一人
あたり
GDP順位

2000年HDI

 

00年一人あたり
GDP順位

1、カナダ

  11

1、カナダ

 13

1、カナダ

 9

2、フランス

  14

2、ノルウェー

  7

2、ノルウェー

 3

3、ノルウェー

   8

3、米国

  3

3、米国

 2

4、米国

   3

4、日本

  9

4、オーストラリア

13

5、アイスランド

  15

5、ベルギー

 11

5、アイスランド

  6

6、フィンランド

  23

6、スウェーデン

 24

6、スウェーデン

21

7、オランダ

  18

7、オーストラリア

 22

7、ベルギー

11

8、日本

  10

8、オランダ

 17

8、オランダ

14

9、ニュージーランド

  26

9、アイスランド

 12

9、日本

10

10、スウェーデン
 

  22
 

10、英国
 

 19
 

10、英国
 

23
 
  * 一人あたりGDP順位の1位は98年から2000年までルクセンブルグ
 
 ここで一人あたりGDPと人間開発指数(HDI)との間に比例的な関係がないことが見て取れる。違う風に言えば、「GDPの増大すなわち人間の発達の保証」ということではない。GDP増大(経済成長)という果実を、人間の発達につなげるためには、その国の政策や文化が影響も持つということ、またGDPが一定低くても、社会の成り立ちが工夫されていれば、人間の発達は保証されていくということを、このHDIは示している。
 
 
表2、ジェンダー開発指数(GDI)とジェンダーエンパワーメント測定(GEM)
   ランキング

98年GDI

98年GEM

99年GDI

99年GEM

00年GDI

00年GEM

1、カナダ
 

1、スウェーデン

1、カナダ
 

1、ノルウェー
 

1、カナダ
 

1、ノルウェー
 

2、ノルウェー
 

2、ノルウェー 

2、ノルウェー

2、スウェーデン  

2、ノルウェー

2、アイスランド 

3、スウェーデン
 

3、デンマーク

3、米国
 

3、デンマーク
 

3、オーストラリア

3、スウェーデン  

4、アイスランド
 

4、ニュージーランド 

4、オーストラリア

4、カナダ 
 

4、米国
 

4、デンマーク
 

5、フィンランド
 

5、フィンランド

5、スウェーデン 

5、ドイツ 
 

5、アイスランド

5、フィンランド

6、米国
 

6、アイスランド

6、ベルギー
 

6、フィンランド

6、スウェーデン

6、ドイツ
 

7、フランス

7、カナダ

、アイスラン

、アイスラン

7、ベルギー

7、オランダ

、ニュージーラン

8、ドイツ
 

8、日本
 

8、米国
 

8、オランダ
 

8、カナダ
 

9、オーストラリア

9、オランダ 

9、オランダ
 

9、オーストラリア

9、日本
 

9、ニュージー
ランド

10、デンマーク

 

10、オーストラリア 
 

10、フランス

 

10、オランダ

 

10、英国

 

10、ベルギー

 
         11、米国                      13、米国
 13、日本    38、日本         38、日本         41、日本
 男女間の不平等を考慮したGDIは、HDIに比べてより多くの生活者の実感に近いランキングになっている。日本のGDIは、一人あたりのGDPやHDIに比べ低く、女性に社会進出を示すGEMの低さはかなり衝撃的だ。
 
 
表3、先進国17カ国の人間貧困指数/HPIー2(上位ほど貧困の差が少ない)
   (2000年はルクセンブルグを加え18カ国、GDPは先進国中の順位)

1998年
HPIー2

98年一人あたりGDP順位

1999年
HPIー2

99年一人あたりGDP順位

2000年
HPIー2

00年一人あたりGDP順位

1、スウェーデン

 13

1、スウェーデン

 15

1、ノルウェー

  3

2、オランダ

 10

2、オランダ

  9

2、スウェーデン

 14 

3、ドイツ

  8

3、ドイツ

  8

3、オランダ

  9 

4、ノルウェー

  2

4、ノルウェー

  2

4、フィンランド

 13 

5、イタリア

  9

5、イタリア

 12

5、デンマーク

  4

6、フィンランド

 14

6、フィンランド

 14

6、ドイツ

 10

7、フランス

  7

7、フランス 

  7

7、ルクセンブルグ

  1 

8、日本

  4

8、日本

  3

8、フランス

 12

9、デンマーク

  3

9、カナダ

  6

9、日本

  6

10、カナダ
 

  5
 

10、デンマーク
 

  4
 

10、スペイン
 

 18
 
 17、米国(最下位)1   17、米国(最下位) 1   18、米国(最下位) 2
 
 「日本は世界で最も平等だ」と時々マスコミで主張する「知識人」がいるが、この主張がいかにデータに基づかないかがわかる。ただ、確かに米国に比べ、日本の方がまだかなり貧富の格差が少ないとは言える。この人間貧困指数(HPI)が、1998年に導入されてから、2000年まで3年間米国はランキングの最低だ。また、カナダもかなり低く、英国もベスト10に入っていないことも注目したい。このランキングは、英国以外のヨーロッパ各国の社会体制が「貧困の緩和」と言う点で、かなりうまくいっていることを示唆している。
 
 
表4、HDI、GDI、HPIー2 を計算するにあたり同じ要素、異なる要素

 

  長寿

   知識

 生活水準  

参加/疎外

HDI
人間開発 指数

出生時平均余命

 

1.成人識字率
2.初等・中等・高等教育就学率

調整済み1人当たり所得(PPPドル)
 



 

GDI
ジェンダー開発指数

 

女性と男性の出生時平均余命


 

1.女性と男性の成人識字率
2.女性と男性の初等・中等・高等教育就学率

女性と男性の所得割合



 





 

HPI-2
ジェンダーエンパワーメント測定
 

60歳未満で死亡すると見られる人の割合

 

識字能力が十分とはいえない人の割合


 

所得貧困ライン(可処分所得の中央値の50%)に満たない生活をしている人の割合
 

長期失業者(12ヵ月以上)の割合
 
 
 
表5、「1998年の主な犯罪届け出件数」(2001年2月14日朝日新聞)
                          *一部データを加えている
                       (  )1万人当たりの犯罪発生率

 

殺人

強盗

 強姦

南アフリカ
人口4058万人

 24,588 
(6.1/万人)

 136,834 
(33.7/万人)

 52,159
(12.9/万人)

米国
2億1110万人
発生率の対日本比

 13,134
(0.62/万人)
  * 5.6倍

 350,937
(16.6/万人)
  * 61.5倍

 71,040
(3.4/万人)
 * 22.7倍

日本
1億2668万人
 

  1,388
(0.11/万人)
 

   3,426
(0.27/万人)
 

  1,873
(0.15/万人)
 
 
 
 最初に、GDPの国別のグラフを見た。その印象は米国はすごい、日本もなかなかだ、というものだった。しかし、今「世界標準」の4つの指標から見れば、日本は決して「大国」として威張れるほどではない。また不平等に関して、米国がずーと先進国で最下位と言うことは注目に値する。またヨーロッパのいくつかの国々をもっと知る必要を感じてしまう。
 2001年2月14日の朝日新聞は「アフリカはいま 苦悩する南ア」という記事を載せた。「貧困 犯罪 経済 負の連鎖」というリードがある。その中に「1998年の主な犯罪届け出件数」という表があった。南アフリカと米国と日本との犯罪の比較である。これに割合を計算したものをくわえて表5に示した。
 これを見ても、米国は我々がめざす社会では決してないと思う。貧富の差が大きく、生活の安全が脅かされ、犯罪におびえる社会に暮らすのはまっぴらだ。
 デビット・コーテンの「ポスト大企業の世界」は、資本主義と市場経済をはっきりと別のものとして区別し、グローバル資本主義を「ガン細胞」にたとえて、それといかに有効に戦うかを述べている。(コーテンによれば、そもそも資本主義という言葉が生まれたのが、つい最近の19世紀半ばであり(P65)、一方市場そのものはもちろん大昔からあった)。
 コーテンは言う。
 「一言で言えば、ガンに飢えを、生命に糧を、ということだ。・・・資本主義経済を死滅させ、健全な市場を育成する。
 最終的な目標は、グローバル資本主義を健全でグローバルな市場経済に置き換えることだ。そのためには、資本主義が差し出す選択肢を選ぶのをやめて、健全な市場経済が差し出す選択肢を選ぶ機会を徐々に増やしていけばいい」(P397,398)。
 「ただ、『私に何ができるのか?』という問いに対しては、全ての人にこう答えることができる。『身近なことから始めなさい』と。・・・自分が使える資源を活用し、さらにーこれがもっとも重要なことなのだがー自分を成長させるのである」(P399)。
                     (神戸にて、2001年2月27日)
UNDP東京事務所:http://www.undp.or.jp/hdr.htm
国連開発計画(UNDP):http://www.undp.org/
人間開発報告書の販売元/国際協力出版会(電話:03-3372-6771)/NGO活動推進センター・JANIC(電話:03-3294-5370)
 
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