「自分たちの卒業式」
2月29日、私の勤務する高校で卒業式が行われた。
 「国歌」斉唱・呼名・学校長祝辞など公式の式典が、次第順に進み、終了した。後は、卒業生が退場し、保護者の謝辞の予定であった。その時、ハプニングが、起こった。
 卒業生が退場せず、司会の卒業生が総務部長からマイクを貰い、お世話になった先生に「○○先生、前に出てきて下さい」と呼んだ。十数人が呼ばれ、卒業生の前に整列する。これまた、卒業生の一人がピアノを弾き、「贈る言葉」を斉唱した。手回しよく父母にも歌詞カードが配布され、参加者全員で歌った。その後、クラス順に、担任の先生に対する感謝の言葉、パーフォーマンスなど行い、最後に、再度、「贈る言葉」を斉唱し退場した。その間、1時間半弱、教師は全く生徒の計画を知らず、呆気にとられていた。
 卒業生が計画した「自分たちの卒業式」であった。式の司会進行から、ピアノ演奏、構成まで、見事に自分たちで作った卒業式であった。
私が勤める学校は、県内で最初にできた総合学科高校であり、教職員の献身的な教育活動とPR活動が功を奏し、高校教育改革のパイオニアとして、高い評価を得ている。今年度の総合学科発表会と同実践報告会には、全国から100名以上の教職員の参加を得て、盛会のうちに終了した。「定食からバイキングへ」というスローガンの下、カリキュラムの弾力化を図り、興味・関心の選択科目を増やした。
 しかし、生徒の中には、苦手な科目は履修しなくてよい、好きな科目だけとれるという点を特に重視しているものもいる。一方、教師の持ち科目数・教科数、時間数は非常に多くなっている。
 苦労の割に得る物が少ないと思っていたが、今回の「自分たちの卒業式」を見たとき、自分で考え行動できる生徒が、たくさん育っているのに驚いた。そして、「受信器から発信器へ」といった総合学科の理念は、一定評価できると感じた。
総合学科第1期生の諸君、卒業おめでとう。そして、自分たちで作った卒業式に乾杯。
(2000/4)
 
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