CD−R(PDF)による「課題研究」論文集の発刊
T.課題研究について
私の勤務する総合学科高校は、3年次生で「課題研究」という卒論のようなものがある。
3年次の生徒275名が、@A調査・研究(体験実習等を含む)AB調査・研究 (普通科目に関する資格取得を含む)B作品制作C資格取得 (普通科目以外)の4コースに別れる。さらに、13の教科のべ22のクラスに別れて1年間かけて、@はA4版(40 字×40行横書き)8枚論文、Aは本文A4版(40 字×40行横書き)4枚の論文、Bは作品を完成させ提出、Cは目標とする検定等資格試験にチャレンジを行うというものである。
@がいわゆる一般の卒論で167名が選択した。Aは漢字検定や数検などの資格取得と論文で当初10名いたが@に替わるものがでて後半数名になった。Bは芸術などで69名。Cは簿記やワープロ検定、シスアドなどがそれにあたり37名だった(実践記録集参照)。
私は、地歴公民科の教師だが、@の生徒52名を4名の教員で指導する。私は、15名の生徒を担当した。15名の論文のテーマは、<1 .携帯電話の研究、2 .少年犯罪研究、3 .為替レートと円、4 .神戸に本社を置く企業のロゴマークについて、5 .義援金の行方、6 .「ナショナルトラスト」についての研究、7 .株式の賢い買い方、8 .神戸空港に見る公共事業、9 .コンビニの研究、10 .私と難民問題、11 .対人地雷について、12 .日本のホテル業とホテルマンについて、13 .ノルマンディー上陸作戦、14 .司法改革、15 .交通>である。
 
U.CD−ROMによる「課題研究」論文集の発刊
従来は、紙で論文集を発行していたが、記憶媒体のCD−ROMが安価になり(1枚100円以内)、CD−ROMで論集をだすことにした。紙の論文集は製本に時間がかかるので、生徒にCD−ROMで論文集を出そうというと賛成してくれた。アドビ・アクロバットを使ってPDFで制作した。PDFのメリットは、記憶容量が少なくなることと一端書いたものに加工できないことである。PDFは、本や新聞、公文書などの固定するものに向いている。論文集にも最適である。ワードで15人の論文を編集して、それをAdobe Acrobat4.0という変換ソフトでPDFに変換し、論文集を作った。ワードで4MぐらいあったものがPDFでは2Mぐらいになった。それを、CD/RWを使ってCD−Rに焼き付けた。CD/RWは、4倍速のパナソニックのKXL−RW10ANというのを25、000円で買った。もっとスピードが速いものもあるが、音楽CDは音質が落ちるので1倍でしか書き込めないようだ。論文集の検索は、目次のページで、テーマをクリックするとその文章へ飛ぶように設定した。ワードの「挿入」の「検索と目次」でテーマのところに「見出し」を埋め込むと、テーマ一覧が作成できるのでそれで制作した。PDFに変換すると取消線みたいなものが現れたが、機能には、支障がなかった。もう少し大がかりな論文集では、「PDFエクスプローラー For CD−ROM」といったデーターベースを使った検索ソフトがあるようだ。その後、CD−Rラベラーセット(4、000円まで)を使ってラベルを作った。印刷は、ゼミの生徒が印刷した。とてもきれいなCD−ROMの論文集ができた。CD−ROMは、640Mあるので、3年次生全員275名でも制作できるなと思った(ただ、CD−ROMを焼くのに大変な時間がかかる)。
CD/RW、CD−R、ラベラーなど少し出費だったがいいものができたので満足している。2月26日に生徒に配るととても喜んでいた。
 
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巻頭言
ゼミの諸君、卒業おめでとうございます。
2000 年度1 年間かけて15 名の諸君がまとめた課題研究の論文集を上梓することができました。**高等学校において、PDF によるCD −ROM の論文集は、これがはじめての制作となります。ささやかですが卒業祝とさせていただきます。末永く大切にして下さい。長文をまとめることができるということは、テーマに対する情熱、問題意識、調査(文献・フィールド双方)、思考など全ての総合的な力が必要です。また、論理的に考える力が必要となってきます。一本の論文を完成させることができて、とてもいい勉強になったと思います。この経験を生かし、大学や社会でさらに力を伸ばして下さい。21 世紀は、日本にとって君たちにとってとても難しい時代であると思われます。最近、村上龍さん、江川紹子さん、ピーター・フランクルさんらの話を聞きました。3 人とも、次のようなことをおっしゃっていました。
日本の社会が「村社会」ではなくなったこと。かつては、国家はみんなに夢を提示することができたが、現在はそうでなくなっている。今は、個々人がそれぞれの夢をそれぞれ実現できればいいという時代になっている。共通の夢はない。だから、今の日本の若者にとっては大きな可能性のある時代だ。今までと違って今度こそ自分の人生に夢を持たなければならない。
また、野田正彰(京都女子大教授)さんは、
私たちの社会は相変わらず国家主義です。国家が上です。国家のためにいかにして人が貢献するか、有効に生きるかという発想がいつも横行しています。まず、国家ありきです。教育も豊かになったといえ、相変わらずいかにして教育資源を有効に活用して有意な人間を作るかという発想から基本的に変わっていない。この世に生まれてきた人たちができるだけ自分の可能性を開いていく、そういうサービスを作っていくのが社会であり、市民というのは、自分の可能性をいろんな形で開かせてくれた社会に対しどういう貢献ができるかと思う関係が大切だろうと思いますけども、そういう意味での市民というのが私たちの社会では成り立たない状況に来ていると思います。
私たちは、そういう社会をどう変えていくのかということに直面しながらいるんだろうと思います。私の仕事もそうですけど、「何時も自分の社会を見る目がまだシャープでないから世の中が変わらないんだろうと思っています」。それから、いろんな問題に気づいたら、私たちは、人生の中でそれに取り組むチャンスを持っているわけですから、そういう意味で生きていることは必ず面白いことだと思います。私たちは、いろいろ矛盾のある社会に生きていることの面白さというものがあると思うんで、それに一つずつ参加していくと言うことが大事じゃないかと思います。
と述べられています。
この困難な時代に成人していく君たちに、これらの言葉を贈ります。人生において、いくつかの可能性を実現して下さい。                   2001 年2 月28 日
 
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