アブない風と新しい風が吹いている
       ――未来からの訪問者(7)――
                            ichi
 
     T ベランダで太陽光発電を
 毎月1回、「みどりのニュースレター」が手元に届く。これは、京都の環境NGO、「環境市民」が発行している。1999年7月号に「自然エネルギー学校・京都第1期受講生募集」というお知らせがあった。全部で7回、8月から年明けの2月まで、1月に1回のペースで、様々な自然エネルギーの紹介と体験ができる催しだ。早速申し込んだ。
 その第2回目、「太陽光のエネルギーを我らの手に」というテーマで、講義と実際の太陽光電池のパネルを使って実習があった。
 これまでも太陽光パネルをみたことは何度もあった。しかし、実際に手にとって配線をし、太陽光を受け、発電を確認し、ラジオやパソコンをつないで、作動させるというのは初めてだ。しかも、割と簡単にでた。
 この講座は、定員30名と言うところ、実際には数名オーバーしている。東は東京都から西は九州の福岡からの参加者がいる。中には、「環境」を仕事にしている人も数人いる。その中の一人、Sさんは中小企業の若い経営者だ。大阪の南で、工場を経営している。3年前までは、原子力も扱っていたというが、現在、環境関係で仕事を開発しようとしている。Sさんの会社が、太陽光パネルの販売を扱っていると知り、自宅の狭いマンションのベランダに、「独立型太陽光パネル」を設置しようと考えた。
 太陽光発電と聞くと、普通は屋根の上にある物を想像する。それを設置するには、100万円以上かかる。大体、1kwの太陽光パネルで、約100万円で、申し込めば政府の補助金が約3分の1つく。もし2kwの太陽光パネルを設置すれば、政府の補助金を得たとして、約140万円ぐらいかかる。
この自然エネルギー学校に参加するまでに、本で太陽光発電の設置の仕方を一応学んでいた。しかし何か不安であり、太陽光パネルをどこで手に入れたらいいかが解らなかった。今回実際に太陽光パネルの配線を行い、太陽光パネルを取り扱っている会社とのコンタクトができ、マンションの狭いベランダに太陽光パネルを設置しようと決めた。
 設置の仕方は、太陽光パネルで起こした電気をバッテリーにためる。バッテリーからの逆流防止と、バッテリーの過放電を防ぐため、充放電コントローラーをつける。太陽光パネルやバッテリーの電気は直流だ。実際に家庭用の電化製品は交流なので、この直流を交流に直すインバーターが必要だ。このように発電した電気をまずバッテリーに蓄え、使用する方式を、独立型の発電という。
 かかった費用は、太陽光パネルが約4万8千円、充放電コントローラーが約1万5千円、インバーター(130W)が約9千円、バッテリー(27A)が約3千円、コードなどが約2千円、合計8万円ほどだ。
 現在、昼に蓄えられた電気を、パソコンなどの充電に使っている。
 この太陽光パネルを設置するために、少々電気の勉強もした。久しぶりに日曜大工もした。初めて、ベランダをよく観察した。自分の住んでいる住居の位置を考えた。朝、太陽がでているとうれしくなり、夜インバーターにコンセントを入れると、何か得をした気分になった。もう少し大きな太陽光パネルと、もう少し容量の大きなバッテリーとインバーターが欲しくなった。
 ただ、日曜日に電気を使いすぎた翌日、充放電コントローラーに赤ランプがついた。バッテリーの放電防止だ。数日、雨の日と曇りの日が続いた。なかな赤ランプが消えない。充電をするのに時間がかかる。電気は貴重品だと実感する。
 
    U 着陸できない飛行機            
最近、広瀬隆を注目している。集英社文庫から「恐怖の放射性廃棄物 プルトニウム時代の終わり」という広瀬の本がでた。この本は、もともと1994年にでた単行本「ドイツの森番たち」という本がもとにな
っている。広瀬は、1994年にドイツで原発撤退の動きが進行している状況を現地で取材した。取材を受けた中には、電力会社の最高責任者、高レベル廃棄物処分現地の技術者、原子力官僚、市民運動家、エネルギー問題の専門家が含まれている。
この本を読むと、当時日本と同じ約30%を原発に依存していたドイツが、「脱原発」にいかざるを得なかったのは、「廃棄物処理の困難さ」と言うことが解る。日本では原発を称して「トイレのないマンション」という表現があるが、ドイツでは「着陸する飛行場もなく飛び続ける飛行機、それが原子力だ」(P312)と言われているという。
 今回、文庫化に際して、大幅な加筆訂正が行われた。その加筆で広瀬はこの5年間に起こった大変重要な「新たな3つの時代的現象」を指摘している。(以下、引用の下線は著者による)。
 「第1が、ドイツのダイムラー・ベンツを中心に進められてきたエネルギー革命である。これは、電力会社をこの世から不要にしてしまう燃料電池の物語だ」
 「第2が、シュレーダー政権が着手した原発撤退政策の具体的なプランである」
 「第3が、日本の『高レベル廃棄物』最終処分場の候補地と目され、恐怖の闘いを展開している北海道・青森県・岐阜県・岡山県と、その結果として日本全土の原発現地に山積みされつつある『使用済み核燃料』という名の高レベル(高レベル放射性廃棄物)の状況である」  
 高レベル放射性廃棄物(以下、高レベル)は、一般にガラスで固定化しキャニスターとよばれる大型の核燃料容器に入れられる。次のグラフは、現在までと、約30年後(2027年)の各原発からでる高レベル放射性廃棄物の量を、キャニスター本数で示している。
 広瀬によれば「グラフに示すのは、99年3月末までに日本の原発がつくり出した放射性廃棄物の量である。100万キロワットの原発が稼働率80%で運転すると、キャニスほぼ30本の高レベルが発生する。その数字に、各地の原発の稼働率(過去の実績)を当てはめて計算すると、すでに高レベルに換算して1万7000本の放射性廃棄物が発生している。そのグラフ中央に示した通り、六ケ所村の中間貯蔵庫は、総量で1440本しか収納できない。フランスとイギリスに使用ずみ核燃料を送り、あるいは六ケ所村で再処理しようがしまいが、プルサーマル計画でプルトニウムを利用しようがしまいが、キャニスター1万5000本余りに相当する大部分の高レベルは日本全土の原発に氾濫するのである」。
「その量は今後さらに深刻で、原発の運転寿命を三〇年と設定すれば、九八年に廃炉になった東海第一原発と、九九年現在運転中の商業用原発五一基の分だけで、二〇二七年には四万本の高レベルに達する。四万本×数百万倍のドラム缶に相当する天文学的な量の放射性廃棄物は、行き場がないのである」。
  
 この事態に対して、日本政府はどうしようとしたか?
「日本政府と通産省・科学技術庁の官僚は、ここまで事態を招いた自らの失政を知っているので、九九年六月九日に「改正原子炉等規制法」を参院本会議で可決・成立し、『中間貯蔵施設』の新設を、法で強行することを決定した」(P39)(この改正原子炉等規制法については、ほとんどマスコミでは報道されなかった。私はこの広瀬の文で初めて知った)。
「原子炉で日々生まれる使用ずみ核燃料と呼ばれる高レベルが、北海道・岐阜県・岡山県・青森県、どこでも行き場を失うことが明白なため、最後に、原発現地が最終処分場となって、96%の高レベルが止め置か
「れることが法律で定められたのだ。これは住民の意思を無視して、乱暴と言えばあまりにも乱暴で、正気とは思えない法令である。その危険性を原発現地の住民に気づかれないために、あたかも一時的な保管であるかのような印象を与えようと、『中間貯蔵施設』という名称を使ったの
である。住民は、今度こそだまされてはいけない。この貯蔵施設は、巨大なプールに、わずか数ミリという厚さのステンレス板を何百枚も溶接して張った、まことに弱いつぎはぎだらけの容れ物である。大型の地震が襲えば、ひび割れたコンクリートから水が抜けて、そのまま原子炉何十基分にも相当する燃料のメルトダウン事故を起こすと言われる、恐怖の貯蔵プールである。ガラス固化体となった高レベルより、はるかに危険度が高い。あるいは、乾式のキャスクと呼ばれる容器に入れられて貯蔵される。その場合には、容器を冷却するシステムが地震などで停電すれば、容器がそのまま原子炉に豹変し、燃料がメルトダウン事故を起こす。その管理を、地元は一万年という長い歳月にわたって続けなければならないのである」(P42)。引用するだけでも恐ろしい事態が、ほとんど注目も議論もされずに進行している。広瀬は、日本が地震国であるという極めて当たり前のことをふまえて、事態の深刻さを訴えている。
 
       原発震災 
 1994年、阪神大震災の1年前、石橋克彦氏が「大地動乱の時代 ー地震学者は警告するー」(岩波新書)を出した。この中で石橋氏は「今世紀末から来世紀初めごろに小田原地震、東海地震、首都圏直下地震が続発し、それ以後首都圏直下が大地震活動期に入る公算が強い」と警告した。
 また、石橋氏は、1999年の「中央公論」2月号で、「地震が生んだ困った『神話』」と題して、「どこで大地震が起こっても不思議ではない日本列島に暮らす私たちは地震現象を的確に理解して『地震と共存する文化』を創っていかなければならない」と指摘した。この中で石橋氏は「通常震災と原発震災が複合した『原発震災』」の危険性を指摘した。「これ(原発震災)は今や、原発の是非を越えて直視すべき現実的需要課題である」と主張した。私はこの文で初めて「原発震災」という言葉を知った。 
 9月末に起こったJOCの核燃料処理工場の事故にふれ、石橋氏は朝日新聞の論壇に「今こそ『原発震災』直視を」という文を投稿したが、ボツになった。この原稿を「サンデー毎日」(11月21日号)が掲載した。以下の文は、その一部だ。(下線は引用者)。
 「・・・小論では、見過ごされている『原発震災』の現実的町能性を直視すべきことを訴えたい。それは、原子力発電所(原発)が地震で大事故を起こし、通常の震災と放射能災害とが複合・増幅しあう破局的災害である。
 政府.電力会社は、原発は『耐震設計審査指針』で耐震性が保証されているから大地震でも絶対に大丈夫だという。しかし、その根底にある地震(地下の岩石破壊現象)と地震動(地震による揺れ)の想定が地震学的に間違っており、従ってそれに基づいた耐震性は不十分である。
 そもそも、日本列島の地震の起こり方の理解が進んだ今となっては、列島を縁取る一六の商業用原発(原子炉五一基)のほとんどが、大地震に直撃されやすい場所に立地している。日本海東縁〜山陰の地震帯の柏崎刈羽・若狭湾岸・島根、『スラブ内地震』という型の大地地震が足下で起こる女川・福島・東海・伊方、東海巨大地震の予想震源域の真っただだ中の浜岡などである。・・・
 また、活断層が無くてもマグニチュード(M)7級の直下地震が起こりうることは現代地震科学の常識であるのに、原発は活断層の無いところに建設するという理由でM6・5までしか考慮していない。しかも実は、多くの原発の近くに活断層がある。最近、島根原発の直近に長さ八キロの活断層が確認されたが、中国電力と通産省は、それに対応する地震はM6・3にすぎないとして安全宣言を出した。しかし、長さ八キロの活断の地下でM7・2の一九四三年鳥取地震が起こって大被害を生じたような実例も多く、この安全宣言は完全に間違っている。
 要するに、日本中のどの原発も想定外の大地震に襲われる可能性がある。その場合には、多くの機器・配管系が同時に損傷する恐れが強く、多重の安全装置がすべて故障する状況も考えられる。しかしそのような事態は想定されていないから、最悪のケースでは、核暴走炉心溶解という「過酷事故」、さらには水蒸気爆発や水素爆発が起こって、炉心の莫大な放射性物質が原発の外に放出されるだろう。一般論として原発で過酷事故が起こりうることは電力会社も原子力安全委員会も認めている。一方、米国原子力規制委員会の報告では、地震による過酷事故の発生確率が、原発内の故障等に起因する場合よりずっと大きいという。
 例えばM8級の東海地震が起これば、阪神大震災を一ケタ上回る広域大震災が生じ、新幹線の脱線転覆などもありうる。そこに浜岡原発の大事故が重なれば、震災地の救援・復旧が強い放射能のために不可能になるとともに、原発の事故処理や近隣住民の放射能からの避難も地震被害のために困難をきわめ、被災地は放棄されて莫大な命が見殺しにされるだろう。また、周辺の膨大な人々が避難しなければならない。浜岡の過酷事故では、条件によっては、十数キロ圏内の九〇%以上の人が急性死し、茨城県や兵庫県までの風下側が長期居住不能になるという予測もある。
 このように原発震災は、おびただしい数の急性および晩発性の死者と障害者と遺伝的影響を生じ、国土の何割かを喪失させ、社会を崩壊させて、地震の揺れを感じなかった遠方の地や未来世代までを容赦なく覆い尽くす。そして、放射能汚染が地球全体に及ぶ。この事態に対して、臨時国会に提案されるという原子力防災法案は、本紙(注 朝日新聞)の報道で概略を知る限り何の役にも立たない。・・・
                 (神戸大学教授・地震学ー投稿)
[原注]
耐震設計審査指針 原子力安全委員会が定めた、原発建設の際の耐震設計の評価目安。
スラブ内地震 日本の太平洋岸のやや深いところで起きる地震。岩石破壊の仕方が激しく、原発にとって都合の悪い揺れを生じやすい。
活断層 過去数十〜二百万年の間にずれ動き、将来も活動する可能性のある断層。直下地震の震源になる。
核暴走 原子炉が制御不能に陥ること。86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故は、この果てに放射能を世界中にバラまいた。
炉心溶解 原発で炉心を冷やす冷却剤が失われ、炉心が溶け出すこと。79年の米・スリーマイル崎原発事紋で起きた。
過酷事故 チェルノブイリ原発やスリーマイル島原発で起きたような、文字通りの過酷な事故。
浜岡原発 静岡県浜岡町にある。御前崎の近く。現在、4基の原発が稼働中」(傍線は引用者)。
 
  V エネルギーが変わる、社会が変わる
 政府はいまだ「さらに原発20基を建設しよう」と計画しているが、それに対して自然エネルギーを市民の側から普及させようと言う動きも本格化してきた。
 自然エネルギー推進市民フォーラム(REPP=Renewable Energy Promoting Peoples' Forum)がその一つだ。
これは、会員制の自然エネルギー普及事業を行う「グリーンファンド」と「太陽光発電設置助成事業」を、活動の大きな柱にしている非営利の市民団体(NPO)だ。
 グリーンファンドの会費は、1年払いで3000円以上だ。グリーンファンドの目的は次の5つだ。
@省エネ生活の知恵を皆で工夫し、共有する。
A暮らしに必要なエネルギーは環境に負荷のない自然エネルギーでまかなうよう皆で取り組む。
B自分たちのエネルギーは自分たちで、地域でまかなうよう皆で取り組む・・・エネルギー自給
C災害時の非常用電源としても使える、地域共同の自然エネルギー利用施設をつくる。
D自然エネルギー利用施設を普及しやすくする社会システムを作る。
 詳しくは、自然エネルギー推進市民フォーラム(REPP)のホームページをご覧下さい。(http://www.jca.apc.org/repp/home2.htm)です。
 
 また、1999年の5月に「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク(Green Energy law Network)通称GENが発足した。このGENのホームページをみてみよう。
(http://www.jca.apc.org/~gen/gen.htm)
問題の背景
 風力太陽光バイオマス小規模水力電力などの方法で発電される、地域分散の再生可能な電力はグリーン電力と呼ばれています。地球温暖化問題や酸性雨、放射性廃棄物の処理問題等のエネルギー消費による環境問題を解決する決め手として、グリーン電力は普及拡大が期待されており、中でも風力発電は実用性と経済性の向上が急速に進み、1990年代を通して世界全体で最も成長率の高い電源となっています。
 
 ドイツでは、1991年に「再生可能エネルギーからの電気の買い取りを電力会社に義務づける法律」を導入しました。この法律は、自然エネルギーからの電力の買い取りの義務づけ、買い取り価格の優遇、法的措置の三点の骨子からなっています。その結果、1998年末には風力発電による発電量が原発3基分に相当する300万キロワットに近づき、ドイツが世界一の風力発電国となっています。また、風力発電による電力供給が一割に達しようとしているデンマークや、木質バイオマスで一次エネルギーの約二割を供給しているスウェーデンなど、欧州では、自然エネルギーの普及に大胆な取り組みを始めています。
 
活動の目標
 これに対して、日本では、風力発電がわずかにドイツの百分の一程度にすぎず、バイオマスはほとんど利用されないまま、打ち捨てられています。まさに、自然エネルギーの後進国となっています。そのため、わたしたちグリーン・エネルギー・ネットワークでは、国民的な支援のもとで、自然エネルギーからの電気の買取りを義務付ける「自然エネルギー促進法」の議員立法を目指しています。
 
Green Energy law Network(GEN)事務局・連絡先
TEL:03-3834-2428
FAX:03-3834-2406
E-mail アドレス: gen@jca.apc.org
賛同者・御意見など随時募集しています
 
会員制度
「自然エネルギー促進法」推進ネットワークにご賛同下さい
自然エネルギーの普及拡大は、様々な立場を越えて取り組むべき緊急の課題です。「自然エネルギー促進法」推進ネットワークでは、ご支援いただける方の立場は問わず、幅広くネットワークしていきたいと考えております。
 
年会費
  個人会員 1口 2000円
  団体会員 1口 5000円
  協賛会員 1口 5000円

郵便振替口座番号:00140-5-120437
口座名義:「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク
     
 実際、11月25日の朝日新聞は「自然エネルギーを生かせ 超党派の200人が『促進議員連盟』」という記事を載せた。
「太陽光や風力などの自然エネルギーの拡大を目指す超党派の国会議員で組織した『自然エネルギー促進議員連盟』(会長・目民党の愛知和男代議士)が24日、発足した。共産党を除く各党から200人あまりの国会議員が入会。石油などの化石燃料や原子力中心の日本のエネルギー政策の転換を図る狙いもあり、議員立法による『自然エネルギー促進法』を年明けの通常国会で提案する予定だ。
 自然エネルギーは、太陽光、風力などのほか、小規模水力や木くずなどを利用したバイオマスなども含まれる。再生可能で、温室効果ガスや有害廃棄物がほとんど出ないクリーンエネルギーとしても注目され、欧州でも主要なエネルギー政策に位置づけられている。日本では、こうした自然エネルギーは1%にも満たず、2010年までに廃棄物発電なども含めた新エネルギーを3.1%まで拡大する目標がある。今年5月には市民団体による全国ネットワークが結成され、電カ会社に自然エネルギーで発電した電力の買い取り義務を課すことなどを盛り込んだ『自然エネルギー促進法』の制定を求める声が出ていた」。
 
     ホームメイドの電力
この9月にNHK番組「クローズアップ現代」は、燃料電池の放送をした。これは東京で開かれたモーターショーを取材し、環境に配慮した車として、燃料電池を搭載した車を紹介した。番組の後半では、「ガス会社や家電メーカーも燃料電池の開発にしのぎを削っている」ことが紹介された。
 では燃料電池とはどういうものか?
 「家族で学ぶ環境読本 “正しい”エネルギー」という本(著者は赤池学、永野裕紀乃、金谷年展)がTBSブリタニカから今年8月にでた。この中に燃料電池の説明が、マナブ先生とユキノさんとの会話でわかりやすく説明されている。
 「マナブ先生 水を電気分解すると水素と酸素に分かれるよね。この逆の過程、つまり水素と酸素を合わせて水を作る方法で発電するのが、燃料電池。電池という名前がついているけど、静かな発電装置なんだよ。一九五〇年代に、ふたりのアメリカの研究者がこの技術を開発したんだ。そして、一九六五年には、アメリカの有人人工衛星ジェミニ五号に積まれて、電気とともに、宇宙飛行士が飲む水を供給した。現在でも、スペースシャトルには燃料電池が使われている。燃料電池にはいろいろな種類があるが、最近注目されているのは、PEM(ブロトン交換膜)型燃料電池だ。これは、自動車などを作っているドイツの会社とカナダの会社が協力して技術開発を行い、自動車に使えるようにしたものだ。
ユキノ これが広く普及すれば、すばらしいことですね。CO2など地球温暖化ガスをたくさん出している自動車が、燃料電池を使って走るようになれば、C02を減らせるし、空気は汚れないし、酸性雨も防げますよね」。
 現在、我々が使う電気は、遠い発電所から送電線で送られてくる。熱効率では、何と火力発電所で約35%を利用しているにすぎない。原発も近くの海へ約70%の熱を捨てているので、約30%のエネルギー効率だ。一方それに対して、家庭に設置された燃料電池を利用すれば、総合エネルギー効率は70〜80%ぐらいになり、大変効率的だ。
 「ホームメイドエネルギーの時代がくる」というマナブ先生とユキノさんとの会話をもう一度みてみよう。
ユキノ 燃料電池が家庭に入れば白分の家で発電できるから便利ですね。電機屋さんで冷蔵庫を買うように燃料電池を電機屋さんで買い、自分の家で発電までできるなんて、本当に分散型発電の社会の到来ですね。省エネも、もっとすすみますね。まさしくホームメイドエネルギーの時代が目の前にやってきたのですね。
マナブ先生 そうだね。燃料電池を動かす水素は、今使っている天然ガス用のガス管を通して各家庭に運ぶことができるので、大掛かりな工事は必要ないんだ。さらに、燃料電池は振動も騒音もなく静かなので、近所迷惑にもならない。電気だけでなく熱も使えるので大きな省エネになるしね」。
 
 11月23日の日本経済新聞は「東京ガス 発電事業を検討 中期計画 総合エネ会社をめざす」という記事を載せ、その中で「次世代の分散型電源として普及が期待される家庭用燃料電池や超小型ガスタービンの商品化を急ぐ」と紹介した。また大阪ガスも「家庭用のマイクロエンジンと燃料電池」の商品化を進めているという。
 エネルギーが変われば、産業が変わり、社会が変わる。21世紀を前にして、大きな「革命」が起ころうとしている。
                         (’99.11.28)
 
**太陽光発電関係の本
 「手軽にできるミニ太陽光発電」(家の光協会)
   千葉三樹男著、1700円
 「だれでもできるベランダ太陽光発電」 
   (合同出版) 自然エネルギー推進市民フ      
            ォーラム[REPP]編
 
 
 
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