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ハンニバル Hannibal
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 去年の『グラディエーター』でいきなり大復活し、昔からのファンを喜ばせたリドリー・スコット監督。その彼がさっそく新作を発表し、しかもそれがあの、いろいろと物議をかもした『羊たちの沈黙』の続編とあっては、いやが上にも期待させられようというものです。

 しかしこれは残念ながら、私にとっては退屈な映画でしかありませんでした。

 雰囲気作りの巧さや映像の緻密さはさすがに見事で、「いかにも」と思わせてくれる仕上がりになっていました。俳優たちも、アンソニー・ホプキンスは言うに及ばず、それぞれが持ち味を活かした力強い演技をしており、それだけでも見応えがあったとは思います。
 でも、この映画の魅力はそこまで。そういった、表層的な部分でしか楽しみようがない作品だったのです。

 まず問題なのは、ハンニバル・レクター博士という人物の、作中での扱われ方です。
 彼が常人離れした知能と思考回路を持つ一種のスーパーマンであり、並大抵の手段では彼に太刀打ちできないということを、観客の多くはすでに知ってしまっています。ところが劇中で、レクターを罠にはめたり捕らえようとしたりする人物たちの取る行動は、どれも短絡的で浅はかなものばかり。見ている側としては「そんなんでレクターに勝てるわけねーだろ」という思いが先に立ってしまうので、緊張感が乏しく、サスペンスが一向に盛り上がっていかないのです。だから、中盤で彼を追う刑事とのやり取りなど、どうにも冗長に思えてならなかったわけです。

 また、もっと根本的な問題としてあるのは、監督を含めた制作者たちが、この物語を通じて観客に何を伝えたいのか、それがこちら側にほとんど届いてこないということです。ひたすら事件ばかりを見せてゆく構成のため、それに関わる人々の心の微妙な動きを描き切れていない。それゆえ、前作からの因縁の対決であるレクターとクラリスの、心理面での様々な確執なども伝わってこないのです。――本来はそれこそが、続編たるこの作品で語られるべき事だったはずなのに、です。
 結局、観客としては、物語がどこへ向かっていくのかを掴めないままに、漫然と話の成り行きを見やっているほかありません。「退屈だ」と私が感じた理由がここにもあります。

 もしこれを単なるサイコホラーだと割り切って観たとしても、やはり失格でしょう。先にも述べたようにサスペンス不足なため、全くと言っていいほど怖くないからです。終盤になってかなり映像的にエグいシーンなども出てきますが、そういう恐怖感はあくまで一過性のものであって、胸の奥に響いて残るような怖さではないのです。

 つまるところこの映画は、物語の骨格のモロさを俳優と監督のパワーで強引にカバーして、なんとか「B級」と呼ばれずに済むラインに踏みとどまっている……そんな印象の残ってしまう作品だったのでした。多少なりと期待はしてただけに、余計残念です。

 評点は3点くらいでいいか、とすら思ったのですが……もともとホプキンス好き&ハンス・ジマーのサントラ好きということで、1点オマケしちゃいました。相変わらず「ズルい」2人ですよ、いやまったく。
(……しかし私、こんなオマケばっかししてますね……。でもいいのさ、ここはあくまで俺サマ流の感想ページだもーん。ふふ。)



(01.4.19)