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 在日朝鮮人として生まれ育った少年が、差別問題に直面しつつも破天荒な青春を力強く歩んでゆく、恋と友情と笑いと涙とケンカと焼肉の物語。

 いわゆる「在日」の問題というちょっと扱いにくいテーマを、この映画では斬新なスタイルで語ります。
 それは、キレの良いポップな映像と、全編に盛り込まれたハイセンスなコミックタッチのギャグ。そこに暗さや重さはあまり感じられません。もちろん深刻な核心に触れる場面もありますが、それは全体から見ればわずかなもの。描かれるのは、在日という枠組みからドロップアウトした主人公と、彼の視点から映し出される、どこか奇妙な日々の光景です。

 差別問題の根幹を成す要因は、多くの場合、差別される存在の特異性などではありません。根深く残る陰鬱な差別意識それ自体が問題なのであり、それをこの物語の主人公は「ダッセェ」と一蹴します。否、一蹴しようともがきます。
 そんな彼を必要以上にウェットに描写せず、あくまで等身大の人間として描いているため、観客は感情移入が容易になり、同時に、差別問題の無意味さやばかばかしさが浮き彫りにされてくるわけです。この構成が非常に巧い。

 俳優陣も熱演で応えています。とりわけ、主人公の高校生を演じた窪塚洋介がいい。とぼけた味のある自然体の演技に存在感があり、緩急に富んだドラマを引っ張って魅力抜群。また、その親父を演じた山崎努も、やることは無茶苦茶ながらもその顔だけで様々な苦悩を語らせて、さすがの貫禄を見せてくれます。

 筋運びにいささか唐突なところもありましたが、多少のデコボコは気にせず押し切ってしまうような、みなぎる前向きのパワーが気持ちのいい快作になっています。今作といい『ウォーターボーイズ』といい、このところ元気いっぱいの邦画が続出してますね。ぜひともヒットして、次につなげてもらいたいものです。



(01.10.30)