8 社寺叢

  (一) 上山口の諏訪神社

 約三、○○○平方bと小さな礼叢であるが、海抜三四○bと、木曽谷で最も低地にある神社で、比較的自然に近い状態に保たれてきたため、暖地性植物が数多くみられ、学術上重要な社叢である。そこで全域が文化財として県の指定を受けている。胸高周囲(以下同じ〉三bから四bのスギの大木が八本、三・八bぐらいのヒノキ、その他やや細めのコウヤマキ等針葉樹の大木と、二・五bのウラジロガシ、 二bや一・五bのアラガシ、一・六bのウラジロガシ等の常緑広葉樹の大木も混生している。

さらに、一・二bのヒイラギ、 一・○五bのサカキ等、その種としては、大きい常緑広葉樹も混じえている。低木層としては、サカキ・ソヨゴ・ユズリハ・ヒサカキ・ヤプツバキ・クロソヨゴの常緑樹、イイギリ・ヌルデ・クサギ・コマユミ・ヤプムラサキ・サンショウ・エゴノキ・アブラチャン・クロモジ・ヒメクロモジ・ミズキ等の落葉樹がある。常緑のつる植物として、テイカカズラ・フユヅタがある。

林下には、チャノキ・ヤブミョウガ・ナライシダ・ハリガネワラビ・ホソパトウゲシバ・フユノハナワラビ等がある。また、同し境内に粟島神社があるが、その前に、シダレエノキがある。近くの山から移植したと言いえられているが、県下には、ここにしかない木である。以前丸子町東内に、国の天然記念物の指定を愛けた木があったが枯れてしまったので、この木は大変貴重である。地上三○abの周囲二b七○ab、その上でニつに分かれている。地上一bでの周囲、片方が一・○八b、もう片方が一・四五bあり、樹勢もよい。保護したい木である。

  (二) 神坂荒町の諏訪神社

小高い山へ続く、海抜五七○bの平地にある社叢で、参道が長く、全体が林の中に包まれている。特に社殿横には、周囲三bの杉が大きくそびえている。その中に一・八六bのウラジロガシの常緑広葉樹、ヒノキ等の大木がある。低木層として、シキミ・アラガシ・サカキ・ヒサカキ・アオキ・ヒイラギ等の常緑樹、コシアプラ・シロモジ・ムラサキシキプ・ウワミズザクラ・イモノキ・ウメモドキ・カスミザクラ・クヌギ等の落葉樹がある。林下には、ヤブコウジ・シライトソウ・ペニシダ・ササクサ・ウスヒメワラビ・ゼンマイ・コパギポウシ・キッコウハグマ・シヨウジョウパカマ・ヤマジノホトトギス・ホソパノトウゲシパ等がみられる。

 (三) 神坂・峠の熊野神社

 海抜七七○bの山つきの神社で、社叢はあまり広くない。旧中山道より一段高いところにある。最近、裏山を掘り割って、バイパスが出来たので、社叢がさらに小さくなった。社殿の若側には、イズプナの周囲二bと二・五五bの大木が二本ある。他に少し小さなものが一本ある。社殿左側の旧中山道ぞいの斜面には、二bのコウヤマキが二本、一・二七bのオオモミジ、一・二九bのアカシデ、三・二五bのスギ、二・二七bのヒノキ等の大木の林があり、林床をミヤコザサがおおっている。また、参道には、三bのスギが六本ならんで社殿をとりかこむようにしている。その他、モミ、アスナロ、ヤマザクラ等がみられる。

 (四) 山口・光西寺

 本堂のまわりをヒノキの生壇で囲い、庭にはイチョウ、ウメ、ソメイヨシノ、白花のサルスペリ、ナンテン、ツツジ類等が植えられていて、サクラ類にはヨウラクラノがところどころに着生している。庫裏の客間の方には庭園があり、ドウダンツツジ・カナメモチの生壇で囲まれていて、イチイ・ハナノキ・マツ等が植えられ、庫裏の前庭には、シュロと周囲一・五bのカキノキがある。寺の上には代々の住職の墓があって、 シキミの生壇で囲んでおり、入口近くにはシュロがあって根元には実生の幼木がたくさん見られる。

 (五) 神坂・永昌寺

 本堂の前にはヒイラギの古木とクロマツ・サルスペリが植えられ、裏庭は斜面となっていて、針棄樹のクロマツ・コウヤマキ・イヌマキ・ビャクシン・常緑広葉樹のサカキ・ヒサカキ・ツバキ・キソモクセイのほかオオモミジ・ケヤキ・シダレザクラ・ドウダンツツジに多数のツツジ類が植えられ、よく整枝されていてカヤランも着生している。なお本堂の南側には五本のヒノキ、 二本のイロハカエデが一列に植えられていて日立つ。