外国原産の植物でわが国に侵入し野生状態になっているものを「帰化植物」という。帰化植物は種子が外国から輸入される荷物に付着したり、穀物・飼料・野菜・果物・綿花・羊毛などに混入したりして国内に運ぴ込まれて発芽したもので、最初は港や工場の周辺に土着し、交通機関や風に運ばれて次第に範囲を広げるのが普通である。この中には繁殖力の強いものが多く、たちまちのうちに分布域を広げるものがあり、有害なものも少なくない。
なお観賞や牧草を目的に持ち込まれた外国原産の植物の中には繁殖して野性化するものもあって、これを「野生化植物」または「逸出植物」というが、これらも帰化植物に含めるのが普通である。
帰化植物は交通機関の発達した地方に多く、山中には少ない。長野県に帰化植物が侵人する場合幾つかの通路が考えられるが、地形的に濃尾平野に口を開いていて国道の通っている山口村は重要な玄関口の一つである。
愛知県の段戸山で昭和六年に発見された北米原産のダンドボロギクは昭和一二年に神坂村に侵入したという報告があった。その後県下各地で見られるようになったが現在では余り見られなくなり、代って昭和二五年に福岡県に侵入したべニバナボロギグが殖えて、本村でも特に高土幾山に近いキャンブ場に群生している。このように帰化植物には盛衰がみられる。
昭和一五年に大阪府で見つかった北米原産のアレチヌスビトハギは昭和四五年に本村に侵人し麻生に群生していたが、現在は余り見られなくなって、妻籠で見られるようになったが、県内では他には見られない。
戦後愛知県を中心に広がり始めたメリケンカルカヤは現在大桑村まで広がっていて、本村でも特に荒町の北部に多い。
強勢な繁殖力と生活力で他の植物を圧倒し、花粉病の原因ともなるというセイタカアワダチソウは、昭和二五年頃福岡県で目立ち始めたが、次第に東進して現在では関東地方と日本海側でも富山県に広がっている。本村でも昭和五九年から点々と見られるようになった。同じように繁殖力が強く他の植物に覆いかぷさって害を与えるアレチウリも昭和六三年に黍生南の耕地に広がっていたが、二、三年前に侵人したらしい。チチコグサモドキとハキダメギクも四区で見つけたが、これらもその頃入ったらしい。
荒町の道端にオオホナガアオゲイトウとヒメアオゲイトウが小群をつくっており、四区ではナガエノセンナリホオズキも小群をなしているが、これらも最近のもののようである。県内各地に侵入して繁殖力が強く花粉病の原因ともなるというオオプタクサは本村ではまだ見られない。
次に現在本村で見られる帰化植物名を列挙し原産地を付記する。
イネ科 |
コヌカグサ北米 ハルガヤ欧亜 カモガヤ欧亜 セイタカカゼクサ南アフリカ ヒロハウ シノケグサ北半球 ホソムギ欧 ナガハグサ北半球 メリケンカルカヤ北米 |
アヤメ科 | ニワゼキショウ北米 |
ユリ科 | オオアマナ欧 |
ビガンバナ科 | ナツズイセン朝鮮・中国 |
ショウガ科 | ミョウガ中国 |
タデ科 | エゾノギシギシ欧亜 ヒメスイバ欧 |
ヒユ科 | アオゲイトウ北米 ホソアオゲイトウ南米 オオホナガアオゲイトウ北米 ヒメアオゲイ トウ北米 イヌビユ欧 |
ヤマゴボウ科 | ヨウシュヤマゴボウ北米 |
ナデシコ科 | オランダミミナグサ欧 ムシトリナデンコ欧 |
アブラナ科 | ハルザキヤマガラシ欧 マメグンバイナズナ北米 |
ベンケイソウ科 | ツルマンネングサ北米アジア |
マメ科 | アレチヌスビトハギ北米 ハリエンジュ北米 ムラサキツメクサ欧 シロツメクサ欧 |
フウロソウ科 | アメリカフウロ北米 |
トウダイグサ科 | オオニシキソウ北米 コニシキソウ北米 |
オトギリソウ科 | キンシバイ中 コゴメバオトギリ欧 |
アカバナ科 | オオマツヨイグサ北米 アレチマツヨイグサ北米 |
ヒルガオ科 | マルバアサガオ熱米 マルパルコウソウ熱米 |
シソ科 | ヒメオドリコソウ欧 |
ナス科 | オニナスビ北米 ナガエノセンナリホオズキ北米 |
ゴマノハグサ科 | タチイヌノフグリ欧亜 オオイヌノフグリ西亜 |
ウリ科 | アレチウリ欧 |
キク科 | セイヨウノコギリソウ欧 プタクサ北米 アメリカセンダングサ北米 ベニバチボロギク 阿 ダンドボロギク北米 ヒメジョオン北米 オオアレチノギク南米 ヒメムカシヨモギ 北米 ケナシヒメムカシヨモギ北米 ハキダメギク熱米 チチコグサモドキ熱米 キク イモ北米 ノボロギク欧 セイタカアワダチソウ北米 オオアワダチソウ北米 オニノゲ シ欧 アカミタンボボ欧 セイヨウタンポポ欧 オオオナモミ北米 ハチミノソウ北米 |
以上の六四種類は本村の野生植物全体に対する比率(帰化率)が六lで本村の位置・地形・交通路などからみれば少いとみられる。これは本村が農業熱心で除草や草刈りが盛んに行われるがらと考えられる。
なおこれら帰化値物の原産地は北米が二八種で最も多く、次はヨーロッバの二○種で、近隣の中国が極めて少ない。
史前帰化植物とされるものの中には中国原産が多いと考えられるが、確実性の上からこれには触れないこととする。
以上のほかシュロ・ナンテン・ビワなどは原産地が我が国で、本村に野生しているのは栽培から逸出したもので、このようなものには「国内帰化」などの言葉が使われている。