植物は人問生活にとって欠くことの出来ない物で、これがなくては人間は生活出来ない。植物は衣食住の各方面に使われるが、ここではその主な用途について記す。
(一) 食用植物
山口村にも食用となる野生植物は少なくないが、他町村に比ぺれば産地が狭いので、その種類も量も少ない。次に本村に産する山菜の種類を五十音順にあげ、その利用法を付記する。
| 和名 | 利用法 | 
| アケピ類 | 若い茎葉は浸し物、和え物として使われ、果肉は甘くて生食される。 | 
| アサツキ | 早春の若いうちに全草を刻んで麺類の薬味にしたり、和え物になる。 | 
| アザミ類 | 新芽のうちは浸し物・和え物となる。 | 
| アマチャズル | 茎葉に甘味があるので、干して甘茶がつくられる。 | 
| イタドリ | 若い茎は生食もでき、塩漬けとしても使われる。 | 
| イヌビユ | 若い茎葉は浸し物・和え物として使うことができる。 | 
| ウド | 若い茎葉は和え物・揚げ物・酢味噌・汁の実として使われる。 | 
| ウバユリ・ オオウバユリ | 若葉は浸し物、鱗茎には澱粉が含まれていて、煮物に使われる。 | 
| ウワバミソウ・ ヒメウワバミソウ | 若い茎は浸し物・汁の実になる。 | 
| オオバギボウシ | 若い葉柄が浸し物・和え物・汁の実となる。 | 
| オニグルミ | 果実内部の子葉は脂肪に富み、生食もでき、和え物や製菓に使われる。 | 
| オヤマポクチ | 若葉が餅に入れられる。 | 
| カシ類 | 果実の渋を抜き、餅・団子に混ぜる。 | 
| ガマズミ類 | 酸味のある果肉を子供が喜ぶ。 | 
| クサソテツ | 着葉が浸し物・和え物となる。 | 
| クズ | 根茎に澱粉が含まれていて、真の葛粉がとれる。 | 
| クリ | 果実は飯に入れられ、製菓にも使われる。 | 
| ケンポナシ | 果枝が肉質に太って甘味がある。 | 
| コオニタビラコ | 春の七草の一つホトケノザで、浸し物になる | 
| コシアブラ | 若葉は浸し物・和え物・湯げ物になる。 | 
| サルナシ | 果実は熟せば甘くて生食される。 | 
| サンカクズル | 熟した果実が生食できる。 | 
| シオデ | 若い茎が浸し物として喜ぱれる。 | 
| シャク | 若葉が浸し物として使える。 | 
| シロザ | アカザと同じに若葉が浸し物・和え物になる。 | 
| スイバ | 酸味が強い。塩漬け・和え物になる。 | 
| ズミ | 熟した果実は、ジャム・果実酒に。 | 
| セリ | 春の七草の一つで吸い物、浸し物に使われる。 | 
| ゼンマイ | 若い葉柄をゆでて千して貯え、和え物にする。 | 
| ソバナ | 若い茎葉が浸し物・和え物になる。 | 
| タラノキ | 若芽が浸し物・和え物・場げ物となる。 | 
| タンボポ類 | 若葉が浸し物・和え物になる。 | 
| ツクシ | 浸し物・和え物になる。 | 
| ツノハシバミ | 果実が生食できる。 | 
| ツリガネニンジン | 若い茎葉が浸し物・和え物によい。 | 
| トチノキ | 果実の澱粉は、あくを抜いて餅や団子に入れる。 | 
| ナズナ | 春の七草の一つ。浸し物・和え物に使われる。 | 
| ナツハゼ | 実は生食でき、ジャム・果実酒にもなる。 | 
| ナワシロイチゴ | 果実が生食できる。 | 
| ナンテンハギ | 若い茎葉が浸し物・和え物になる。 | 
| ニラ | 全草が和え物・薬味になる。 | 
| ニリンソウ | あくを抜いて浸し物・和え物に。 | 
| ノカンゾウ・ ヤブカンゾウ | 若葉が和え物になる。 | 
| ノビル | ニラと同様に使える。 | 
| ハコペ | 春の七草の一つ。汁の実・和え物になる。 | 
| ハナイカダ | 若葉が浸し物・和え物になる。 | 
| ハハコグサ | 春の七草の一つ。草餅に使われる。 | 
| ハンゴンソウ | 若い茎葉があくを抜けば和え物になる。 | 
| フキ | 花(フキノトウ)は油いため・味噌和えに、葉柄は煮物に入れ製菓にも。 | 
| マタタビ | 果実が焼酎漬けに。熟せぱ生食できる。 | 
| マツブサ | 熟した果実はジャム・果実酒によい。 | 
| ミツバ | 若葉が浸し物・吸い物になる。 | 
| モミジイチゴ | 果実が生食できる。 | 
| モリアザミ | 根を味噌漬けにしヤマゴポウという。 | 
| ヤマウコギ | 若葉が和え物・煮物になる。 | 
| ヤマノイモ | 長芋と同じに使われる。 | 
| ヤマブトウ | 熟した果実が果実酒に使われる。 | 
| ヨモギ | 若い茎葉が草餅に使われる。 | 
| ワラビ | 若い葉柄はあくを抜いて浸し物・和え物に。地下茎から澱粉がとれる。 | 
| 付 モウソウチク | 中国原産であるが野生状態である。竹の子は、三月末頃初物を賞味する家もあるが、四月から五月にかけ大 量に農協に集められ松本方面に出荷す。 | 
山口村の野生植物の中には医薬的効力のあるものも多い。
文献によって次にその主なものの効能を上げるが、使用にあたっては経験者の指導を受けるがよい。
| 和名 | 効能 | 
| アキカラマツ | 茎葉が健胃整腸剤となる。 | 
| アケビ類 | つるが利尿・頭痛・通風に効く。 | 
| アマドコロ | 根茎が強壮剤で解熱・神経痛に効く。 | 
| イカリソウ | 全草が強壮剤となる。 | 
| イタドリ | 根が利尿・健胃・解熱剤となる。 | 
| ウツボグサ | 全草、特に花穂に利尿の効きめがある。 | 
| オオパコ | 全草が強壮・健胃・利尿剤になる。 | 
| オトギリソウ | 生薬をもんで切り傷・はれ物につける。神経痛・関節炎・リュウマチスの注射薬が作られる。 | 
| オニグルミ | 果肉が去痰・咳止めにきく。 | 
| カキドウシ | 全草が強壮・感冒・腎臓・糖尿の薬になる。 | 
| キキョウ | 根が痰をとり咳をしずめる効きめがある。 | 
| ギシギシ | 根は下剤となり、皮膚病・はれ物に効く。 | 
| キツネノボタン類 | センニンソウの代用となる。 | 
| キハダ | 内皮は健胃・解熱剤となり、「百草」の原料。 | 
| クカイソウ | 根が利尿刑になる。 | 
| クズ | 根が発汗・解熱・健胃剤となる。 | 
| ゲンノショウコ | 下痢を止め健胃・利尿剤となる。 | 
| サラシナシュウマ | 根革が解熟・解毒に効く。 | 
| スイカズラ | 全草が発汗・解熱・利尿・解毒に効く。浴湯に使えば痔・はれ物・打身に効く。 | 
| センニンソウ | 生葉をもんで腕にはればば扁桃腺炎に効く。 | 
| センプリ | 健胃・駆虫剤となる。 | 
| タラノキ | 根皮は健胃・整腸・利尿・糖尿剤となる。 | 
| タンポポ | 根は健胃・解熱・脚気・ぜんそくに効く。 | 
| チドメグサ | 葉をもんで止血に使う。 | 
| ツリガネニンジン | 根は健胃剤、肺結核の咳止めに効く。 | 
| ツルニンジン | 根は解熱・強壮剤となる。 | 
| トチバニンジン | 根茎を健胃・解熱・去痰剤となる。 | 
| ドクダミ | 全草が利尿・便秘・駆虫剤となり、生薬は痔・水虫を治し、浴湯に入れば痔・田虫を治す。 | 
| ナギナタコウジュ | 全草が利尿剤となる。 | 
| ナルコユリ | 全草が強壮剤・駆虫剤になる。 | 
| ニガキ | キハダと同じ。 | 
| ニワトコ | 内皮は腎臓病・毒消し、花は発汗剤となる。 | 
| ノイバラ | 果実と根皮は利尿・便秘に効く。 | 
| ヒキオコシ | 健胃・整腸に茎葉を使う。 | 
| フキ | 地下茎は健胃・感冒・咳止めに、生葉は血止めに使う。 | 
| ヘクソカズラ | 果肉が霜焼けに効く。 | 
| マタタビ | 虫えい果は体を暖める。茎葉は浴湯に入れる。 | 
| メギ | 内皮を健胃剤・洗眼に使う。 | 
| ヨモギ | 葉を胃病・感冒・止血に使い、もぐさを作る。 | 
| リンドウ | 根は健胃・利尿剤となり脚気に効く。 | 
針葉樹のヒノキ・サラワ・コウヤマキ・モミ・ツガ・イチイ・スギ、落葉樹のケヤキ・カツラ・サクラ類・クリ・ハリギリ・トチ・イヌエンジュ・ホオノキ・ミズメ・カシ類・カラマツその他で、杉が多く植えられる。床柱にはイチイ・イヌエンジュ・カエデ類が喜ぱれ、碁盤にはカヤが使われる。桶にはサワラ、特に風呂桶には、ヒノキ・サワラ・コウヤマキ・下駄にはホオノキ、こたつやぐらにはオニグルミが適している。
庭木には、アカマツ・コウヤマキ・イチイ・ピャクシン・カシ類・サカキ・イヌツゲ・ヒイラギ・ヤマクルマ・キズタなどの常葉樹、ケヤキ・カエデ類、花木どしてはシャクナゲ類、ツツジ類、ドウダン・コプシ・シキミ・ツバキ・ユキノシタ・ヤマボウシ・サラサドウダン・ベニドウダン・アセビ、果実を楽しむものにナンテン・ウメモドキ・ヤブコウジ・コムラサキ・紅葉の美しいのは、カエデ類・ニシキギ・キズタ・ドウダンがあり、シキミは墓地に植えられる。
観賞用草花としてはシュンラン・エビネ・セッコク・イワチドリ・サギソウ・クマガイソウ等のラン類の他、キキョウ、ヤマホタルプクロ・オミナエシ・イワタバコ・ミカエリソウ・リンドウ・スミレ類・ヤマハギ・フシクロセンノウ・カザグルマ・ヒトリシズカ・イカリソウ・コオニユリ・ササユリ・シライトソウ・カタクリ・ホトトギス類・ノカンゾウなどは花を、シノプ・クジャクシダ・イワヒバ・イワオモダカ・ヤシャゼンマイ・フユノハナワラビなどは、観葉植物である。
薪炭材としては、アカマツ・ナラ類・カシ類・クヌギ・サクラ類、その他の落葉樹が使われる。
日本紙にはコウゾ・カジノキ・カラムシ・ノリウツギがよく、縄の代用としてはコウゾ・サワクルミ・ヤナギ類の皮が使われ、アカソ・カラムシなどの皮は繊維を衣料にも使われる。またイ・ガマはたたみ・むしろに、ワラビ粉は唐傘の糊に欠かせない。染料としてはアカネ・オニグルミ・キハダ・クヌギ・クリ・ズミ・ハンノキ・ヤシャブシ・ヨモギ・カリヤスなどが使われた。
有毒植物とは内服するか接触することによって身体に異状を来たす植物のことである。本村にも強弱の差はあるが有毒のものがある。
| 和名 | |
| ウマノアシガタ | 全草に毒がある。 | 
| キツネノポタン類 | 全草に毒がある。 | 
| クサノオウ | 全草に毒がある。 | 
| タケニグサ | 全草有毒である。 | 
| ツタウルシ | 触れれぱ、かぷれることがある。 | 
| テンナンショウ類 | 根(球茎)に毒がある。 | 
| トウグイグサ類 | 全草に毒がある。 | 
| ドクウツギ | 全体有毒、特に果実は猛毒。 | 
| ホツツジ | 花の蜜が毒である。 | 
| ヤマウルシ | 触れれぱ、かぶれることがある。 | 
| レンゲツツジ | 全株、特に葉と花が強いという。 | 
