4連キャブも怖くない!?


最近のバイクは排ガス規制のため、全体的にキャブセッティングは燃料が薄めになっているとのこと。Fazerも例にもれず、極低回転から中低回転域でどうも元気がなく、1000ccの排気量を感じられませんでした。レオビンチのスリップオインサイレンサーを付けたところ、ますます「燃料が足りねー」とエンジンがぼやいている声(これをノッキングとも言う ^^;)が聞こえてきました。
他にも、薄めセッティングの弊害として、始動性が悪い、熱発生が多いなどの症状があります。
そこで、部品代も特殊な工具も使わずに、簡単にできる範囲でキャブセッティングを変更して見ようと思い立ちました。以下はその詳細です。
  1. ニードルクリップ位置変更
  2. パイロットスクリュー調整
  3. 同調
  4. 再びパイロットスクリュー調整
  5. ニードルクリップ位置変更(その2)
  6. パワーチェック結果!
このプロジェクト終了時のセッティングは...

参考:キャブ関係の標準仕様




ニードルクリップ位置変更

  1. 使った工具:3.5mm六角レンチ、10mmメガネレンチ、大きめ(2番)の+ドライバー、ラチェットドライバー用の+ビット(これも2番)、先細プライヤー、プライヤー、細長い−ドライバー、ウェス2枚

  2. シートを取り外し、そのスペースに作業用のウェスを敷く。3.5mm六角レンチを使ってガソリンタンクの前側のボルトを外す。この状態でタンク前方のみ持ち上げて3本のパイプとゲージのコネクターを外してから、タンク後方両脇の2本のボルトを外してタンクを降ろす。

  3. 作業のしやすい順番は、#2(左から2番目)、#1、#4、#3。この順番でやったほうが、腕慣らしになると思う。

  4. じゃまなケーブル類を整理する。私の場合、#2の近くにあるカプラの束をすべて外し、エアクリーナーボックスにつながった太いゴムホース(ブリーザーホース)も外した。後で元に戻すのを忘れずに!キャブレターにゴミを入れないように、キャブ周辺を拭き掃除しておく。

  5. キャブトップのネジを外し、スプリングが飛び出さないよう慎重にキャブトップを外す。このとき、キャブトップ前方の出っ張りの中に「世界最小のOリング」(と、USAの複数の非公式サイトに書いてあった。US YAMAHA純正用語? このリングの当たるトップ側には穴があるのだが、ボディー側には何もない。誰か、何のために付いているか教えてください。)が入っていて、外したトップかボディーにへばりついているので、これを無くさないようにする。シートレール部に敷いたウェスに外したトップを裏返して置き、その中に小さいパーツを入れることにした。

  6. 大きなスプリングを外し、ダイアフラム/ニードルアセンブリーを外す。このとき、#2以外はまっすぐは引き抜けないが、ニードルを傷つけないよう注意しながら邪魔者を避けて外すことができる。ここからの作業は、ウエスの上で。この時点で、ニードルを下から押さえてみて、スプリングが効いている具合を確認しておく。

  7. ニードルホルダー(ダイアフラム側から見える白いプラスチックのつまみ)を先細プライヤーでゆっくり引き出す。これはネジではなく、カチっとはめ込んである。小さなスプリングが中にあるので、飛び出さないように手応えがあったらそろそろと引き出す。

  8. ウェスの上にニードルを出す。ニードルには上から、金属ワッシャー、Cクリップ(「E」ではないみたい)、白いプラスチックスペーサー、金属ワッシャー(これは上のワッシャーと同じもの)が付いているので、要確認。下のワッシャーは、スライドピストンの中に残っているかも。

  9. ワッシャーは外し、白いプラスチックスペーサーを下にずらすとクリップを入れる溝が全部で5本見える。クリップは上から3段目に入っているので、指を添えて飛ばさないように注意しながら小さい−ドライバーを使って引き抜き、4段目に入れる。(これで低から中開度が濃いめになるはず。)スペーサーをクリップに当たるまで上げ、クリップの上側にワッシャーを1枚入れる。

  10. ピストンの穴にまず金属ワッシャーを1枚入れ、平らに入っているか確認してから、ニードルを差し込む。ニードルホルダー下側の出っ張りに小さいスプリングを差し込み、片手で持つ。もう一方の手でダイアフラム&ピストンとともにニードルを下から支えて頭を上に出し、そこにスプリングを入れるようにしてニードルホルダーをはめ込んでゆく。ゆっくりニードルごと押し込んで、カチっというまで差し込む。ニードルを下から押さえてみて、最初と同じようにスプリングが効いていることを確認。

  11. ダイアフラム/ニードルアセンブリーにゴミや繊維くずなどが付かないようにきれいにしてから、キャブボディーに滑り込ませる。ニードルが一発で入ったら今日の運勢は大吉です。そんなことは滅多にないので、少し角度を変えながら上下させて、傷を付けないように納める。ダイアフラムの縁全体が本体にうまく収まるように注意。「世界最小のOリング」をキャブ前方の小さな丸いくぼみに置く。大きいスプリングをダイアフラムの中央に入れる。

  12. スプリングが中央の出っ張りに入るように注意しながらキャブトップを元に戻す。前後の間違いに注意。小さなピンで位置決めされているので、それに合わせて片手で押さえながら、1本づつネジを仮締めする。うまく収まっていることを横から確認してから、2本とも本締めする。

  13. 同じ要領で次のキャブに取りかかる。#2と比べて難しい点は...#1:フレームとクラッチケーブルがじゃまでネジが外しにくい。クラッチケーブルはフレームに留めているところを外して避けておき、ネジはドライバーが入らないので、ドライバービットとペンチか小振りのラチェットでなめないように注意して回す。#4:これもフレームが問題。さらに、スロットルポジションセンサーのケーブルステーが留められており、そこのネジ穴には小さいスリーブも入っているので、落とさないよう注意。#3:上空邪魔者多い。さらにやっかいなのは、チョークケーブルのステーが留められており(ここもスリーブ入り)、キャブトップを外すときにも戻すときにも、ステーとネジ(これは磁石に付かない)の扱いがやっかい。

  14. 後は、すべてのケーブル、パイプ類を元に戻しておしまい。

  15. (追加:自分でタンクを外したことがある方は知っていると思いますが、タンクを取り付けるとき、ステーでフレームにキズを付けてしまいやすいです。(私は以前にタッチペンのお世話になりました。)前のステーが当たりそうなところにウエスを被せてから、後ろに神経を向けてタンクを載せると良いかと思います。)


さてさて、とりあえず試乗です。
スロー系はいじっていないので、始動の感触はあまり変わりませんでした。ただし、短めの暖機のあと走り出してみると、今まではエンジンが十分暖まるまでエンストしがちだったのが、安定しています。
広い道に出て、一気加速や、各回転数からのスロットルオン・オフを繰り返して見ると、明らかに2000〜6000rpmのアクセルレスポンスが良くなっています。細かい右左折や渋滞路なんかでは、今までよりギア選択や半クラッチに気を遣わなくっても良くなりました。うん、満足。キャブ本体を外さなくても、簡単にストリートでの常用域が良くなるだけに、この変更はお勧めです。ようやく、かつて馴染んだリッタークラスのバイクの普通のレスポンスになりました。今まで「二次関数的な加速」と思っていたのは、下が薄かったんですねぇ。
なお、常用域での音がちょっと大きく太くなりました。
意地悪く、アイドリング〜2000rpmのレスポンスも確かめてみましたが、ここは大差なし。このへんのトルクが出ると、ゆっくりと発進するときとか一本橋なみの極低速での運転が楽なんですけど。

パイロットスクリュー調整

普通のドライバーでは絶対に回せないところを回さないといけないので、まずは自作工具でトライしました。
  1. 4mmくらいのマイナスドライバー(家庭用の安いやつ)を先端から4cmくらいでちょん切る。
  2. 先端両脇の「えら」をグラインダーで削り、幅を一定に整える。
  3. 柄にあたるところにビニールテープを巻いて径を太くし、内径5mmくらいの厚手のシリコーンチューブを被せる。
これでとりあえずすべてのパイロットスクリューに当てられるようにはなりました。、#3がつらい。#2シリンダーの後ろ側にある冷却水パイプを外して、左手を(右手では隙間の形から不可能)つっこみ、人差し指と中指だけでなんとか回すのですが、半回転も回すと指があがってしまいました。手と指が細長く、握力(指力?)に自信のある人以外はやらないほうがいいと思います。
なお、ホームセンターなんかで良く見るフレキシブルドライバーではまず無理だと思います。

結局、誘惑にまけて専用工具を買ってしまいました。(当初のコンセプトが...)DAYTONAのキャブエアスクリュードライバー(品番24538、定価4500円なり)です。
PS Adjuster
これは先が90度曲がって、中にワイヤーが入っているタイプです。ベベルギアを使ったものに比べて安くてコンパクトですが、空で回しても回転が結構重く、止まるまで締め込むときには要注意です。FZS1000では、どのキャブにもうまく当てられます。自分でいじって楽しもうという人は、買ってしまってもいいんじゃないでしょうか。
それで、結果ですが、まず3回転戻し(標準は2回転戻し)で試乗したところ、ニードルほどには変化が感じられませんでした。パイロットスクリューの役目を考えると当然なのかもしれません。やや、アイドリングから2000rpmまでが力が出ているような感じと、アクセル全閉から開けたときのつながりがちょっと良くなった感じです。
次に4回戻し(某ウェブサイトでお勧めしていた)にしてみましたが、ここで欲張って同調もいじってみたところ泥沼に入ってしまい、この結果はしばらくお預けになりました。次の「同調」が解決次第、続きやります。


同調

本、雑誌、ウェブ、バイク屋のおやじ(?)などで今まで見聞きしたかぎり、真っ当な方法としては:
  1. 4連バキュームゲージを使って、アイドリング付近の負圧をそろえる。
  2. バタフライバルブの隙間をシックネスゲージ(あるいはなにか代わりに使えるもの)を使ってそろえる。
という2つの手段があるようです。1は高い(Yahooオークションでは、最低限の機能の安いもので7000円くらいから出ていました。できれば、デジタルのバーグラフが4本ならんだやつが使いやすいのでしょうけど。昔、バイク屋で借りて使ったことがあります。)ので、まずは却下。2はニードルクリップ位置を変更したときに、同時にやればできたのですが、ステップバイステップということでやりませんでした。スライドピストンを外した状態ならバタフライバルブの下側は見えるので、隙間をはかる道具を工夫すればできるはずです。これから「自力」でやる方には、同時にやることをお勧めします。
そこで、物は試し、勘と音だけでやってみました。タンクを前方のネジだけ外して持ち上げた状態で、エンジンを掛け、アイドリングを上げて......
結論:よい子はまねをしないように! (;_;)
どんどん泥沼に入って行きました。玉砕です。ついに、V2のような音にまでなりました。記憶を頼りに、およそ元の状態に戻し、バイク屋さんに調整を予約しにいきました(涙)。工賃4-5000円くらいでできるようなので、エンジンや吸排気系を自分でちょくちょくいじる人以外は、素直にプロにやってもらうことをお勧めします。トライ&エラーで決めるものでもないですし。(<−自分を慰めている?)

で、バイク屋さんに任せて、同調終了です。
どうせやるなら、同調の効果がダイナモに現れるかどうか、前後でパワーチェックもやってもらいました。結果は、変化無し!当然といえば当然で、同調の効果が出るのは特にスロットル開度が小さいときで、パワーチェックはスロットルほとんど全開ですから。
実際には、アイドリングおよび低回転での安定度や音は自分でバラバラにしてしまう前の状態よりもかなり良くなりました。音が良くなるとレスポンスもすごく良くなったように感じます。このへんが、体感だけでセッティングをいじるときの難しいところなんでしょうね。


再びパイロットスクリュー調整

同調がとれたところで、PS4回転戻しで具合を見てみましたが、どうも極低回転がもたつきます。ひとまず、3回転戻しに決めることにしました。
それより気になるのは、だんだんと春の陽気になってきたことです。これから気温が上がっていくとガスが濃いめになってきますので、また日を改めてセッティングを確認したいと思います。
3月23日の時点では日中(推定気温16℃)でやや濃いめかなという感じです。1速で上体を伏せてフル加速したところ、しっかりホイールリフトしてくれました。(^_^)v

ニードルクリップ位置変更(その2)

4月半ばになりだいぶん暖かくなってきました。気温の上昇につれて中回転でやや濃いめの感じがでてきた(適当なこと言ってますが、5-6000rpmで回転上昇がもたつく感じです。)ので、ちょっと戻そうかと思い始めました。それから、アメリカの掲示板(FZ1OA)情報で、FZ1の2002モデルの一部(後期?)から#1&4のみ0.5mmニードルスペーサーが厚くなったという情報がありました。(つまり、ニードルが上がった。やっぱり、2001の初期状態は薄すぎると思ったのでしょうか?YAMAHAさん。)FZS1000でも同じかどうかは未確認ですが、直4で内側と外側でセッティングが違うのはよくあるので、ちょっと試してみようと考えました。
そこで、#1と4は1段上げたままにして、#2と3をシム調節でやや下げてみました。作業は以前と同じで、違うのはクリップ位置とワッシャーの入れ方だけです。
  1. クリップを引き抜き、標準状態と同じ上から3段目に入れる。スペーサーをクリップに当たるまで上げ、クリップの上側に入るべきワッシャーとスペーサーの下のとあわせて2枚とも「下に」(つまりあらかじめスライドピストンの穴に)入れる。
現物で確認したところ、ワッシャー2枚でちょうどクリップ溝1段分でした。標準で、3段目+下にワッシャー1枚ですから、3段目+2枚なら前回変更した上から4段目と標準との中間になります。つまり、3.5段目?

最高気温が24℃くらいになろうかという暖かい日に、市街地+高速+山道+すり抜け困難な渋滞路(涙)を含むショートツーリングに行って来ました。結論として、これが正解だと思います。このバイクに乗り換えた頃からのお散歩コースなのですが、吸排気系ノーマルのころよりも大抵のシチュエーションで乗りやすくなっています。ニードルを一斉に上げてから回転数によっては振動が気になっていたのですが、それも収まりました。内側2気筒より外側2気筒をやや濃いめにするというワザは有効なようです。勝手に推測するに、内側のキャブのほうが熱を持つので、同じセッティングだと濃いめになるのでしょうか?
(追加情報1:標準でも、メインジェットで外側2気筒のほうを濃くしてあります。ニードルも違うのですが、この違いってストレート径?)
(追加情報2:参考ですが、Dynojetのステージ1キットでは、メインジェットとニードルは4つとも同じで、#1と4は上から3段目、#2と3は上から4段目を指定しているようです。標準状態やそれを強調したマイセッティングとは反対の傾向です。何でかな〜?)
(追加情報3:同じ車種でも輸出仕様は全気筒同じジェットで、国内仕様は内側2気筒が小さめのジェットが入っていることがあるそうです。国内の交通事情から、渋滞やゴーストップが多くてキャブが熱を持ちやすいからだとか。でもFazerは輸出仕様なんですけどね。)

ひとまず、スリップオンサイレンサーに交換してから始めたキャブセッティングはこれで満足しました。これ以上は、メインジェットやスプリングなどをいじらないといけないので、パーツ交換無しのセッティング変更プロジェクトはこれにて一段落です。

追加情報:高速+一般道+峠道でのショートツーリングで燃費は17.1km/lでした。ほとんど低下していないみたいです。


パワーチェック結果!

5月1日、かのFAZERISMのもんじさんにご一緒して、忠男レーシングにて、パワーチェックしてきました。結果はご覧のとおり。

DYNORUN
赤がストックFZS1000(私のではないのですが....)の、青が我が愛機の結果です。思わず「にんまり」してます。(^ ^

最大トルクが大きくなっているのは予想外の嬉しい結果でしたが、注目してほしいのは3000〜7000rpmの「私の常用域」で凹凸が少ないきれいなカーブを描いているところです。これぞ、足かけ3ヶ月かけて乗りやすさを体で追求した結果だと自己満足しています。
ちなみに、この結果に満足しての帰り道は、いままでより回転もなめらかで、トルクも出ているように感じました。体感ってのはやっぱり怪しい?それとも、忠男マジック?(なま忠さんにも会えましたし。)

余談ですが、もんじさんや忠男レーシングのFZSはいろいろ参考になりました。
忠男レーシングのスペシャル仕様車(KING Cobraスリップオン+爆弾キット、前後オーリンズサス、ニッシン6ポッドのFブレーキなどなど。ため息出そう。)を試乗させてもらいました。はっきり言って別物です。必要な分だけきっちり働く感じの足回りのおかげで、コーナーも全く不安感がありませんでした。また、KING Cobra+爆弾キットでセッティングされたエンジンは、ダイノチェックこそ私のと大差ないのですが、体感するいろんな回転数からのスロットルレスポンスが一枚上手でした。特にびっくりしたのは、2000rpm付近の極低回転でもすごくレスポンスが良いことです。私のLeoVinceよりヌケがよさそうな音だったので、下のトルクは痩せているかと予想していたんですが、逆でした。すっごく良くできた足回りや、ハンドルがやや近くなっていることと併せて、街乗りからワインディングまで気持ちよく乗れるバイクでした。(ここまでやるには、いくらかかることやら...)

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