75. レッスンで失望したこと

以前誰かが「相手(恋人、夫)に期待をしては

いけない。期待をするから、相手に対して失望

してしまったり、裏切られたように感じるのだ。」

と唱えていた。

フラメンコのクラスを受講して失望すると、何故

か私はこの関係ない言葉を思いだしてしまう。

「あー、期待しなきゃよかった!そうすればこん

なにがっかりせずに済んだのに。」と。 例えば、

ブラソの美しい踊り手のクラスを受講して、ブラ

ソの基本を習いたいと期待する。しかし彼女はブ

ラソじゃなく、パソばかり教える。しかもややこ

しい複雑なパソばかり!前向きにそれを学ぼうと

しても、気持ちはブラソの基本に行ってしまって

いるので、何だかがっかりしてしまう。 グループ

のクラスなら、まだ諦めはつく。例えばそれが個

人レッスンで、自分の要望をはっきり伝えたにも

関わらず、身の入らないレッスンだったら、あな

たはどう感じますか?

さて、ヘレスのフェスティバルが終わって、よう

やくお目当ての踊り手の個人レッスンが始まった。

半年以上前から習いたかった人だったし、友達の

友達だということで、余計楽しみだった。 レッス

ンが始まる前から、彼女とおしゃべりが弾んだ。

しかしレッスンが始まっても、余計なおしゃべりは

続いた。教えている最中、いきなり水を買いに行っ

たり、携帯電話でメールを送信したり、フラメンコ

とは全然関係ない話を延々とされたり、レッスンの

約半分は関係ないことに費やされていったので、

正直びっくりした。これでお金を取るなんてひどい!

と思ったら、「Mariは友達の友達だから、今日の

レッスンは無料でいいわ。」と、言ってきた。無

料にしてくれるのは嬉しかったけど、何故か心から

喜べなかった。何となく嫌な予感がしたからだ。

そして次の日、その嫌な予感は適中した。またレッ

スンの最中、フラメンコとは関係ない話題で稽古は

何度も中断されたのだ。「Mariは何歳なの?肌の

手入れはどうしているの?どんなクリームを使っ

ているの?」どうしてそんな話題を稽古の最中延々

とするのか、私は理解に苦しんだ。そういう話は、

稽古が終わってからするか、余計な話をした分、

延長してくれるとかの配慮をして欲しい。フラメ

ンコとは関係ない話題をレッスン中に延々とする

スペイン人は、初めてだ。さて、困った。止めた

くても、友達の友達だし、文句も言えない。友達

に毎日レッスンはどう?と聞かれる度に、返答に

悩んでしまった。

「うん、とても親切に教えてくれるよ。でもよく

しゃべる人だね。」

Noと言えない日本人。これって私のことかもしれ

ない。

そこで、個人レッスンはやめて、クラスレッスン

を受けることにした。グループなら、大丈夫だろ

うと思ったからだ。しかしそれは甘かった。たま

たまそのクラスの受講生が皆日本人だったからか

もしれないが、彼女の余計なおしゃべりは延々と

続いた上、振付けは進まない、かといってテクニ

カをするわけでもない、突然怒り出したり、機嫌

がよくなったり、私の憧れる踊り手エバ・ラ・ジェ

ルバブエナの悪口を聞かされた日には、もう怒り

に変ってしまった。彼女は、踊り手としてはいい

のだけど、人に教える姿勢が悪すぎた。我慢の限

界を超えた私は、友達に全てを話し、もう彼女の

レッスンを受けたくないと打ち明けた。私の話を

聞いた友人はとても驚いてショックを隠せない様

子だった。

「私の友達だから、よくしてあげてねってあれだ

けお願いしたのに・・・。」

そして、毎日個人レッスンを受けていたフェルナ

ンドにもこの話をした。

「何で日本人は皆彼女に習いたがるのか、不思議

でしょうがないんだ。何故って、スペイン人の

プロは、誰も彼女に習いたがらないからさ。Mariは

それに気付いて良かったね。」

この言葉は、私にとってすごい衝撃だった。確かに、

クラスレッスンにスペイン人はいなかった。でも

彼女は日本ではそれなりに有名だから、その情報を

頼りに皆習いに来ている現状を話した。

彼と話をして感じたことは、日本にはいってくる

情報はとても片寄っているという事実だった。

話をすればするほど、ショックだった。 彼は話の

最後に「君はこれからスペイン人のプロが習いた

がるマエストロ(師匠)に習うべきだよ。」とアド

バイスをくれた。

この言葉で、来年の目標が出来たのだ。

2002.04.28.

back next