
フラメンコを習い始めて半年経ったある夏、夏
祭りのイベントで教室の皆でセビジャーナスを
踊ることになった。このイベントは生徒全員が
参加可能で、皆浮き足立った。皆の一番の関心
は、どんな衣装を着て踊るかだった。
先生が手持ちの衣装をたくさんスタジオに持っ
てこられて、それを披露した。特に心引かれた
のが、ピンク地に水色の水玉の衣装で、スカー
トに何段もフリルがついていて、それはとても
素敵な衣装だった。私も友達もこんな衣装を着
たいとキャーキャー騒いだ。
「こういう何段もフリルがついているスカート
は重いから、ブエルタ(回転)する時軸がぶれ
やすいの。だから軸のしっかりした人でないと
着て踊れないのよ。」と言って、昔バレエを
習っていた人にその衣装をあてがった。先生は、
その他の素敵な衣装も上手い人から順番にあて
がい、衣装がもらえなかった生徒には、レオ
タードに練習用のスカート、それにピキージョ
(フラメンコ用スカーフ)で踊るよう指示され
た。残念ながら私は練習用のスカートで踊るこ
とになった。上手い人が着る衣装は、どれも彩
度のきれいな華やかなものだった。それに比べ
て私の衣装は、黒のレオタードに黒の練習用ス
カート、そうでなくても小柄で下手くそなのに、
衣装まで地味だなんて何だかみじめな気分に
なってしまった。ウェディングドレスを着た
人妻(一応既婚者)がこんなことで絶望感に
かられるなんてアホらしいと思われるかもし
れないが、その時の私はまるで醜いアヒルの
子の気分で落ち込んでしまった。 でも私は、
先生が持たれていた衣装のなかに袖にたくさ
んフリルがついた白いブラウスがあって、そ
れはまだ誰にもあてがっていなかったを知っ
ていたので、密かに狙っていた。 そしてイベ
ントの直前に、何とかあのブラウスを着て踊
りたい!という私の切実な想いを先生に訴え
たら、そのブラウスを着る許可を下さった。
これで私の人生がバラ色に変わったのは言う
までもない。女性なら誰だってきれいな衣装を
身にまといたいと思うはずだ。それを一体誰が
責められるだろう?
白いブラウスを獲得した私は本番が楽しみ
だった。何たって初めての舞台だ。初舞台の結
果は、今まで経験したしたことのない至福の時
を過ごせたことだった。
それから上手くなりたい、上手くなってフリ
ルのたくさんついた衣装が着たいと、私はフラ
メンコにのめり込んでいったのだ。
今思い返すと、随分不純な(?)動機だったなぁ
と思う。
そんな私が、今じゃフリルのたくさんついた衣装
は恥ずかしくて着れない!なんて言ってるんだか
ら・・・。女心って難しいわぁ。
2001.10.21.
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