文字だけの映画感(2/5)


本館の『私の映画感』が更新できそうもない為このページで文字だけの映画感(館)
を発信して行きます。こちらの方もどうぞごひいきに。


本館同様、劇場、映画館で観ていく作品に限定しました。

ストーリーの欄は鑑賞した日時と映画館などを記録します。


記録 2002年11月〜2003年5月





ドリームキャッチャー(DREAM CATCHER)
ジャンル:ホラー
2003/05/13 07:19
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ストーリー 鑑賞月日 平成15年 5月 1日
映画館  SY角座(大阪難波)
監督   ローレンス・カスダン
撮影   ジョン・シール
音楽   ジェイムズ・N・ハワード

スティーブン・キング原作の映画は良く観る。これまた難しいテーマを題材にしたホラーサスペンスである。題名は北米ネイティブ・アメリカンのお守りの事。ストーリーは子供時代から始まる。仲良し4人組み、ヘンリー(トーマス・ジェーン)、ビーヴァー(ジェイソン・リー)、ジョーンジー(ダミアン・ルイス)、ピート(ティモシー・オリファント)が
体験したある出来事から彼らには個別の不思議な力がつく。それは彼らにとって重荷ですらあった。大人になってからも彼らは年に一度恒例で休暇を過ごす事にしている。そして今回もメイン州の大きな森の奥深くの狩猟小屋に集まった。ある朝森の中を沢山の動物が移動してゆく(この場面は実写?)。また森の上空をヘリが飛び、その中には軍人達(エイブラハム大佐「モーガン・フリーマン」やオーエン「トム・サイズモア」たち)の姿が見える。一体何が起こったというのか?そこで彼らが見たものとは・・・。
出演 モーガン・フリーマン トーマス・ジェーン ジェイソン・リー
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆
コメント まず4人組みのキャラクターが良い。面白く芸達者でもある。モーガン・フリーマンやトム・サイズモアといった重量級が居なくても充分楽しめたのではと思う。勿論個人的には彼ら二人は大好きな俳優達であるのだが。また逆に居なくてはならないダディッツ(ドニー・ウオルバーグ)の存在である。このハンディキャップを持った役どころは重要なインパクトを占めている。やや強引な終わりかたを迎えるが、まあそれはそれでストーリーの流れから見て良いのかもしれない。

ストーリーの欄でも書いたが「例のもの」を題材にしたとき、それが具現化したときに視聴者に荒唐無稽に写らないかどうかを良く吟味する必要がある。サインの時に感じた失望は無かったものの、やはり難しさは痛感した。まあ誰も見たことが無いものをどう表現するかは容易な事ではないのだが。
ただそれらの事をのぞけば正しくスティーブン・キングとキャッスルロックエンターテイメントの作品である。楽しませて戴いたと言いたい。


アントワン・フィッシャー きみの帰る場所(ANTWONE FISHER)
ジャンル:家族
2003/05/01 08:21
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ストーリー 鑑賞月日 平成15年 4月30日
映画館  ナビオ シアター4(大阪)
監督   デンゼル・ワシントン
撮影   フィリップ・ルースロ
音楽   マイケル・ダンナ

重たいテーマだなと観る前には思っていました。然しながらデンゼル・ワシントンの初監督作品という事もあって観る事にしました。作品は原作者の生い立ちからヒントを得て、本人の脚本による映画化と聞く。また原作者は作家でもなく一介の警備員である。当初タイプすら叩けなかった彼を見出したのはボランテイアで脚本学校の講師をしていたクリス・スミス(この作品の共同製作者)であった。そうなんです彼はその学校の生徒だったんです。なんと言う偶然のなせる技であったことか。しばしば真実はフィクションより面白いものです。

ストーリーは辛い過去を背負った彼アントン・フィッシャー水兵「デレク・ルーク」の海軍内部でのトラブルの原因を調べる精神科医ダヴェンポート中佐「デンゼル・ワシントン」との対話から少しずつ彼の人生がわかってくる。当初かたくなに心を閉じていた彼もやがて中佐に心を開いてゆく。やがて中佐から自分の家族をさがせとのアドバイスを受ける。自分自身の心の旅路に終止符をうつためにもと彼も納得し、物語のなかで愛するようになった恋人シェリル「ジョイ・ブライアント」と伴に、彼の育ったクリーブランドに旅たつ。そこで彼らが見つけたものとは・・・。
出演 デレク・ルーク ジョイ・ブライアント デンゼル・ワシントン
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
コメント 作品はストレートで実直そのもの、何の工夫も無いほど素直な作品に仕上がった様に思う。
唯一あった作為といえば冒頭の主人公の甘い夢が現実となるラストシーンでは無かろうか。
ことほど左様に淡々と物語は進んでゆく。特に母との再会の情感を見事に押さえたシーンは昔観た邦画の母子ものには無い淡白さで私に訴えてきた。それゆえに伝わるやりきれない悲しみの大きさに打ちひしがれる。

最初の遅々たる展開はやがて、その内容に驚かされながらラストの家族を探す旅の終わりを迎えるまで一気に突進する。さながら交響曲の各楽章に似たその断片はやがて至福の時を迎えて終える。微笑みを抱いたまま映画館を後にできる暖かい映画であった。感情の移入は殆んど無かったものの正直何度か泣かされた。

主演の二人はほとんど無名に近い俳優の卵達であるそうな。しかしその演技に疑問を持つことなど何処にも無く、それどころか充分観客に伝える力が大きかった。アフリカ系アメリカンの新しい世代の登場ともいえる。楽しみな事です。
ひさしぶりに観た良い映画である。私にとっては今年NO1の映画であったように思う。


魔界転生(邦画)
ジャンル:時代劇
2003/04/30 16:31
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ストーリー 鑑賞月日 平成15年 4月26日
映画館  道頓堀東映(大阪)
監督   平山秀幸
撮影   柳島克己
音楽   安川午朗

私の若い頃、いっとき官能小説というものが流行った。しかしこれだけに飽き足らずサスペンスの要素を取り入れた作家達がいた。西村寿行という。そして時代劇特に女忍者、いわゆる「くの一」シリーズを確立したのが今回の映画の原作者「山田風太郎」である。彼らの原作は良く映画化されている。
私も結構彼らの原作も映画も観ているほうだと思う。それが今回観た動機ともいえます。
従って原作はすこぶるエッチである。さすがに映画の世界ではそこまで描けないのでそちらの方面は殆んど割愛してあるようだ。もちろん映画を観るまえから予測していた事。今若手俳優のなかで抜群の人気を誇っている窪塚洋介を起用した以上、若い女性層の支持を取り付けなくては映画が興行的に成功しないからだが、あえてこの辺のところをお知らせしておきたい。また旧作のジュリーによる魔界転生も見たように思うが忘れた。

ストーリーは原作と同様、史実とはかけ離れた荒唐無稽なものにつきる。
天草の乱で戦死した天草四郎とその従者クララお品「麻生久美子」は10余年後、この世の者としてではなく復活する。時は家光の治世、ようやく平和が訪れようとしている時代であったが、四郎は再び戦乱の世を起こすべく紀伊の徳川頼宣「杉本哲太」をそそのかし、将軍になるよう力を貸す。その力とは死者を甦らせ助力する事であった。魔界から転生した彼らは・・・。
出演 窪塚洋介 麻生久美子 佐藤浩市
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆
コメント 日本の特殊撮影も大したものです。ワイヤーアクションもさることながら画像処理もハリウッド映画と遜色ない所まで来ているようだ。私が気に入った特写は死者が転生してくる場面が血みどろであるのに再びの死があっけない程美しい事だ。何やら願望的人生を暗示しているようで興味深い。原作はもっとえぐいようなので興味のある方はお読みください。
さて今話題の窪塚洋介は良い。恵まれた容姿とその才能は今回のはまり役ともいえる。とりわけ復活して、この世に現れる場面の美しかった事(これは特写に対する評価でもあるが)他の人間の転生とはかなり異なっており、さながら神のようであり妙な感じにとれた。

今回の作品は時代劇であり、やはり柳生十兵衛「佐藤浩市」の存在に負う所が多い。彼無しでは、この映画は評価すら出来ない。柄本をはじめとする助演陣の凄い事。とりわけ家康役の「麿 赤児」には圧倒された。
ひとつ気になったのが,転生前の四郎が斬首される時、妖術的なアクションがあった事くらいか。転生前は普通の人では無かったのか、とふと気になった。
まあまあそれ以外は娯楽的な面白い作品であった。クリスチャンは怒るかもしれないが。


007 ダイ・アナザー・デイ(007 DIE ANOTHER DAY)
ジャンル:アクション
2003/04/05 22:00
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ストーリー 鑑賞月日 平成15年 4月 5日
映画館  丸の内ルーブル(有楽町)
監督   リー・タマホリ
撮影   デヴィット・タッタソール
音楽   デヴィット・アーノルド

これまた「007」シリーズの20作目。1作目の「007は殺しの番号」(後のリバイバル時にドクター・ノオと改題する)の公開が1963年ですから、何ともう40年になります。
あのオープニングの主題歌と銃口から見るシーンが無くなっていたので残念でしたが、それと思わせる赤外線カメラの映像の強烈なコントラストを持ったデホルメの映像は、また炎と氷の相対するものを新鮮に見せていて良かったです。
今回は北朝鮮側の板門店、香港、ハバナ、ロンドン、アイスランドの雪原、そしてまた板門店と相も変わらず我らがダブルオーセブンことジェームス・ボンドは世界中を飛び回っている。
だが然し今回は何時もと少し違う。ムーン大佐「ウィル・ユン・リー」を暗殺すべく北朝鮮に潜入し、首尾よく成功したと思ったのだが板門店で捕まってしまう。彼は1年半もの間拷問を受けるが、ムーン大佐の右腕であったザオ「リック・ユーン」と捕虜交換をされる。戻った彼を然しMI6は許しはせず、殺しのライセンスである00番号を剥奪してしまう。そればかりか香港で幽閉されて自由すら奪われてしまう。彼は自らの存在を見出す為にそこから逃亡し、仕事の決着をつけるべくザオを追ってハバナに向う、そしてそこで待っていたものとは・・・。
出演 ピアース・ブロスナン ハル・ベリー トビー・スティーブンス
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆
コメント 暫くぶりに単純明快なアクション映画を堪能した。正直ピアース・ブロスナンのボンドはあまり好きでなく、やっぱりショーン・コネリーで無いと、と思っている一人です。そんな私がこの映画を観る動機はNSA(国家安全保障局)の女性諜報員(CIAでは無くなっていたのですね?なのに
英国は未だにMI6ですか!)ジンクスを演ずる「ハル・べリー」が観たかったからです。あの登場シーンは初代ボンドガール「ウルスラ・アンドレス」を彷彿させる第1作目へのオマージュとして演出したと聞く。そういう洒落もまた楽しいものだ。
いやあ彼女の若さと強さと美しさと面白さの全てが良かったですね。、お決まりのベッドシーンにマネーペニー「サマンサ・ボンド」がバーチャルリアリティマシンで参加したり、数々の強引なアクションシーンや、1年半の捕囚の身を経ても変わらないボンドの体型など、一部にはやや荒唐無稽の感もあるのだが、それらを差し引いてもなお面白く楽しい時間を持てた。
仕掛けも大規模で制作費が高くついた作品だと思います。(アクション映画はこうでないといけません)今回謎のダイヤモンド商のグスタフ・グレーブスを演ずる「トビー・スティーブンス」はあのディム・マギー・スミスの息子だと聴いて驚いた。

蛇足ですが北朝鮮がこの映画にクレームをつけたと聴いて理由がわからない。ムーン大佐の父ムーン将軍「ケネス・ツァン」が「外国との架け橋の為に息子を英国に留学させたが西側の堕落した心を受け取ってしまった」と嘆くシーンがあり、誇り高い軍人を見事に演じていた。北朝鮮に対する侮辱と受け止めるシーンなど無かったように思えるのだが、ムーン将軍みたいな人が本当に北朝鮮に居ればそんな言葉も出てこないものと残念に思える。


ロード・オフ・゙サ・゙リング 二つの塔(THE TWO TOWERS)
ジャンル:旅
2003/03/29 21:21
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ストーリー 鑑賞月日 平成15年 3月20日
映画館  松竹角座(大阪難波)
監督   ピーター・ジャクソン
撮影   アンドリュー・レスニー
音楽   ハワード・ショア

ご存知ロード・オブ・ザ・リングの1作目「旅の仲間」に続く2作目であり
1作目で散り散りになった仲間がそれぞれの試練を受けて行くという設定である。
それと新しい仲間(実の所仲間かどうか、その真実は不明であるのだが)がフロドとサムに加わる。
CGキャラクターである『ゴラム』とはホビットの支族ストゥア族であり名前もスメアゴルという者であったのだが彼が見つけた指輪の為に醜い姿に変わってしまいゴラムと呼ばれるようになったという。
だから彼が落とした指輪をフロドの養父ビルボが拾いフロドに渡った1作目の話が始まると言う次第である。このゴラムはCGキャラクターでありながら「アンディ・サーキス」という英国の役者さんが演じている(というか動きを投影して作り上げている)。おかしな言葉を使っているらしいが私の英語の解読力ではそこまでは判らない。実は1作目にも出ていたのだがお気づきの方が居られただろうか。私は勿論原作を読んでから観たので良く理解していた。

物語はそれらの話をまじえて闇の勢力と白(これがまた意味深なのだがネタばれの為秘密)の勢力の凄絶な戦いがはじまる。エントという巨人やボロミアの弟ファラミア「デヴィッド・ウエンハム」やハルデイア「クレイグ・パーカー」というエルフの一団などが入り乱れ、あっと言う間の3時間であった。
出演 イライジャ・ウッド イアン・マッケラン ヴィゴ・モーテンセン
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
コメント 正直第1作目に受けた景観に対する感動は少なくなったものの、物語としての内容は充実してきたようだ。作者がゴラムに託した思いや、旅の仲間のそれぞれが懐いている希求が率直に伝わってくる類の良い映画であると思う。
取り分けシェイクスピアを連想するローハンのセオデン王「バナード・ヒル」の物語の素晴らしさとその姪エオウイン姫「ミランダ・オットー」のアラゴルンに対する恋心は心和ませるものだ。アラゴルンの恋心の葛藤が面白い。もてる男はつらいもののようだ。
3作目が待たれてならない。全部見終えたあと、DVDでも買って通しで一度に観たいものだとつくずく思う。

奇しくもイラク戦争が始まった日に観た、この映画の戦闘シーンは古代のそれも物語としての戦いであり、然も誰が善で誰が悪か、聴衆のすべてが知っている所に救いがある。
現実の戦争はあまりに複雑でしかも双方にとって悲惨である。そういえばロード・オブ・ザ・リングの時代背景に良く似た「ダニーボーイ」の唄でも有名な現実の「薔薇戦争」は100年間も続いたとか聞く、人間とは私も含めて、つくづく摩訶不思議な生き物であることか。早く終わって欲しいものだと思いながらこの感想を終える。


ボーン・アイデンティティ(THE BOURNE IDENTITY)
ジャンル:サイコ・サスペンス
2003/03/08 21:02
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ストーリー 鑑賞月日 平成15年 3月 7日
映画館  日劇3(有楽町)
監督   ダグ・リーマン
撮影   オリヴァー・ウッド
音楽   ジョン・パウエル

この映画を観るきっかけは当然その原作にある。原作者のロバート・ラドラムは私の1番好きな海外のサスペンス作家である。(ちなみに2番目はクライヴ・カッスラー)私が若い頃、彼の作品「スカーラッチ家の遺産」に出会ってから、彼の全作品を読んでいる。ただ翻訳本についてだけだが、彼の描くスパイ小説は文字通り「血わき肉おどる」ものである。その彼も既に泉下の人である。だから私の夢は英語に上達して彼の原作をもう一度読破することに変わった。老後の楽しみのひとつになることを願っているのだが?(もし英語が理解出来ればという意味)

さて原作「暗殺者」はふた昔も前に読んでいるので忘れていますが、三部作の一作目でもあり、映画のシリーズ化もありそうな話を聞きました。
ストーリーは「マット・ディモン」演ずるジェイソン・ボーンが嵐のマルセイユ沖の海で救出される所から始まる。所が彼は数発の弾丸を身体に受け、然もあろうことか尻に銀行名と口座番号を記録したカプセルまで埋め込まれていた。気がついた彼は記憶を無くしていた。そして記憶を取り戻す為に、唯一の手がかりである銀行のあるチューリッヒへ向かう。そしてそこで彼が見たものとは・・・・。
出演 マット・デイモン フランカ・ポテンテ クリス・クーパー
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆
コメント ヨーロッパの町並みは総じて何処も美しい。実際にパリでは現地ロケを行ったとか、でもチューリッヒの撮影のある部分はプラハで撮ったと聞く。それでも違和感は無く、ストーリーと見事にマッチしている背景であった。

チューリッヒで窮地に陥った彼が助けを求めた失業中の女性マリー(フランカ・ポテンテ)であった。
彼女の車がみすぼらしいミニクーペでまたそれが良い。ノートルダムを背景にしたパリでの朝にこの車の赤は鮮やかであった。赤といえばフランカ・ボアンテの服装も(少しずつ良くなっていく様子が理由が分かっているだけに面白い)赤と黒が良く似合っていた。
マット・ディモンは確かに今までには無い役ではなかったか、リプリーなどで見せたあの内面的な表情は変えようが無いものの、アクションの凄まじさや、カーチェイスの素晴らしさは面白かった。
凄腕の殺し屋を完膚なきまでに打ちのめす彼の過去の秘密が明かされる時、それほど強い彼が何故、最初のシーンで撃たれて死にかけたも理解できる。その時はやはりマット・ディモンであればこそと思った。

彼の上司テッド役の「クリス・クーパー」の酷薄さが良い。然し設定にやや難ありか?犯人か暗殺者役の方が似合いそうではあった。「クライヴ・オーエン」の演ずる暗殺者”教授”役は良かった。小説のなかの印象に残っていた事のひとつでもある。
そして何よりラストシーンが素晴らしかった。私ごのみの終わり方ではあった。


レッド・ドラゴン(RED DRAGON)
ジャンル:サイコ・サスペンス
2003/02/16 08:07
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ストーリー 鑑賞月日 平成15年 2月10日
映画館  南街シネコン(大阪難波)
監督   ブレッド・ラトナー
撮影   ダンテ・スピノッテイ
音楽   ダニー・エルフマン

おなじみの「羊たちの沈黙」のレクターを取り上げた3番目の作品である。時代は「羊たちの沈黙」の前の設定となっている。レクターを逮捕したウイル(エドワード・ノートン)とのプロファイリングの共同作業(勿論逮捕以前の作業のこと)や逮捕のシーンもあって興味深かった。
出だしとそれに続く晩餐のシーンも初めて見た観客以外は何のことか分かっているだけに、不謹慎とはわかりながら笑ってしまう。

だが然し今回のストリーのキーワードは麻雀牌の「紅中(フオンチュン)」であった。ちなみに英語ではこれを「レッド・ドラゴン」と呼ぶそうな。余談で関係ないがサイコロの1も英語では「スネーク・アイ」とやはり呼ぶようだ。詩的な呼び方で英語のいいまわしも悪くはないと思った。
着物、刺青、竜ときたら「玉を掴む虹竜」を想像してしまうのは私だけだろうか?
然し、今回の竜の絵はやはりウイリアム・ブレイクの描いた西洋的なものであった。
それはまた見ようによっては羊の角を連想させる物でもあった。

引退していたウイルは懇願され犯人をプロファイルすることになってしまった。そして彼の今回の共同作業者もやはり獄中のレクターしかいなかった。逮捕された側とした側との不思議な共同作業が今回も波乱を含みながら展開する。
出演 アンソニー・ホプキンス エドワード・ノートン レイフ・ファインズ
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
コメント 今回の犯人像は実に興味ぶかかった。羊たちの沈黙の「バッファロー・ビル」は理解しがたい狂人でしかなかった。だが今回の脚本は犯人「MrD」(レイフ・ファインズ)を実に詳しく描いている。

おまけに仕事場での同僚の盲目のリーバ(エミリー・ワトソン)との展開は主役のものである。私は事実上の主役は彼だと思っている。
また新聞記者フレディ(フィリップ・S・ホフマン)の熱演がはまり役であった。
個人的な好みで言わせて貰えばFBIの上司クロホード役(ハーヴェイ・カイテル)はスコット・グレンの方が良かったと思う程度だ。他のキャステイングは文句なく、ぴったりという程素晴らしいものであったと思う。

「安易に犯人の側に感情移入した結果平凡な作品になってしまった」という新聞批評を読んだが私は逆に捉えている。非凡な作品であり、リアルタイムで観られた事に満足している。


壬生義士伝(邦画)
ジャンル:時代劇
2003/02/01 07:19
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ストーリー 鑑賞月日 平成15年 1月19日
映画館  マリオン プラゼール(有楽町)
監督   滝田洋二郎
撮影   浜田毅(JSC)
音楽   久石 譲

幕末、壬生の新選組は壬生狼と人々から呼ばれ恐れられていた。その中の一人吉村貫一郎は家族の生計の為に南部藩を脱藩して加わった。彼は新選組の中にあって剣の腕の優れた資質と、家族への仕送りの為守銭奴と蔑まれながらも、頭角を現して行く。家族の為とは言え脱藩の原罪を負いながら、故に最後までその義を貫いて果てた壬生の義士であった。

浅田次郎氏の原作のこの作品は実は昨年の10時間TVドラマで既に見ている。その時は「渡辺謙」の主演でもあり感動で何度も泣いた。今回は「陰陽師」の滝田監督の作品でもあり、主演吉村貫一郎に「中居貴一」共演斎藤一に「佐藤浩市」というふれこみの為、前から観ようと決めていた。
本作品も2時間20分とかなりの長尺である。ただ、いかんせんあの幕末に新選組に起こった事を粗筋だけでもすべて取り上げていたらとても足りない。TVドラマとの違いは視点が斎藤一にあったことであろうか。TVでは吉村貫一郎の末の息子であった。それとTVでは函館五稜郭で貫一郎の長男の生き様が描かれていたが映画では割愛されていた。
出演 中井貴一 佐藤浩市 夏川結衣
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆
コメント 映画の感想は辛い。ひとつは凄惨な場面があったこと。大衆受けを狙ったかのような斬首のリアリズムは感心しない。新選組を壬生の狼と捉えるなら良いかもしれない。
今回は家族を主題としている筈だ。

ふたつめは斎藤とぬい(中谷美紀)のラブシーンが感心しない、日活ロマンポルノ風タッチには辟易した。彼女のひたむきな愛と一人で生きる絶望が伝わって来ない。私は別にエログロを否定する堅物でもないが、今回は別の描き方があったろうにと思えてならない。

そしてみっつめは貫一郎の切腹後のシーンである。ついついTVドラマと比較してしまうが、映画もTVも切腹そのもののシーンは無いが、映画は普通に終わっていたがTVは凄まじかった。私が大泣きした場面でもあったのだが、幼馴染の大野(三宅裕司)から切腹用の刀それも銘のある名刀を貰う、それというのも貫一郎の刀は刃こぼれがひどく、とても腹など切れる状態では無かったからだ。そんな刀で腹を切ろうとしたらどうなるか想像してみて戴きたい。それこそリアリズムであり、そこから伝わる悲しみはとてつもなく大きかった。息子に大野から貰った刀を残したかったばっかりに・・・。

最後の不満はエキストラに神経を使っていないという事だ。それこそ現実見のない義士達の姿であった。おまけに貫一郎の妻しず(夏川結衣)にスポットがあたらなすぎも不満である。折角の良い原作であったのにそれらの場面が少なく残念でならない。
勿論素晴らしい場面も沢山あり、涙も出た。普通にみれば佳作かもしれない。
でもこれらの不満は日本映画には頑張ってもらいたい心が言わせる小言と受け止めて戴きたい。


ジョンQ(JOHN Q. )
ジャンル:家族
2002/12/06 22:13
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ストーリー 鑑賞月日 平成14年11月30日
映画館  ナビオTOHOプレックス(大阪)
監督   ニック・カサヴェテス
撮影   ロヒール・ストッフェルス
音楽   アアロン・ジグマン

題名のジョンQは主人公ジョン・クインシー・アーチボルト(デンゼル・ワシントン)の愛称である。典型的なブルーカラーであり仕事量の激減からパート社員によぎなくされ、アルバイトの面接を受けている何やら身につまされる境遇にいるご同輩である。
彼の家族は妻(キンバリー・エルス)と息子マイク(ダニエル・E・スミス)の3人であり、彼らの物語は借金のかたに車を持っていかれる、ある日の朝から始まる。
そんな彼らに息子の急病、入院、移植手術とたて続けに難題が持ち上がる。

彼の加盟している保険では息子の移植手術は出来ないと病院に宣告される。
アメリカの保険制度は良く理解出来ないものの彼ら夫婦の困惑ぶりは良くわかる。
移植をしないとやがて息子の死を受け入れねばならない。職場の皆からカンパも集まり、微かに希望を持った彼らだったが、しかし病院から退院を通告された。あらゆる手段が無くなったジョンQが取った行動とは・・・。
出演 デンゼル・ワシントン ロバート・デュヴァル ジェームズ・ウッズ
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆
コメント 話のテンポも良い。題材が深刻だが担当医師(ジェームズ・ウッズ)や院長(アン・ヘッシュ)、警部(ロバート・デュバル)や警察本部長(レイ・リオッタ)等の重量級の助演者達の演技のからみも味わい深く堪能出来た。
またその時その場に居合わせた、個性ある様々な人々の味のある演技がこの作品に深い陰影をつけていたようだ。やはりこの功績は監督の力量だろう。子供を題材にしながらやはりスポットは父親に当てている。彼は家族の為に何が出来るのか?という問いかけが痛い程伝わってくる。
あわやというあの衝撃のシーンは私にも充分共感出来たが、監督(いや脚本か)はそうはさせなかった。あらかじめ仕込んだ伏線が突然目の前に現れ、自分の運命を激しく変えてしまう事ってありますヨネ。
まさしく家族を暖かく見ている監督の想いが伝わってくる作品でした。
感想ついでに映画のワンシーンの親子の会話を書いて置きます。NOVAに通って7ヶ月でやっと、この程度は理解出来る程度になりました。(え?遅いって?確かに!だが然し何もやらないよりましですから)

Hey,Dad? Am I going to die?
No,you're not going to die. Of course not.
How do you know?
Hey,what good would the world be without you?
without you,there is no world.
You know I love you, don't you?


ミッションブルー(SOUL ASSASSIN )
ジャンル:ハードボイルド
2002/11/23 07:23
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ストーリー 鑑賞月日 平成14年11月18日
映画館 シネマスクエア東急(新宿)
監督   ローレンス・マルキン
撮影 レックス・ヴェエルトヴァイン
音楽   アラン・ウイリアムズ

アムステルダムを舞台にした映画はあまり見てないような気がする。原題からも解るとおりこれはフィルム・ノワールである。邦題は映像の基本が青であるという事による。ほとんどのシーンが青いフィルターを通したように見える。実験的な取り組みだが、成功したと言える。少なくとも私には心地よかった。もともと好きな色であるからかもしれない。青色のお好きな貴方にもお勧めです。

ストーリーだが物語の序盤で主人公の恋人が何者かに暗殺される。それからは言ってしまえば「復讐と犯人探し」に推移するのだが、これも良く出来ている。街中を自転車によるカー・チェイスならぬ追跡があったり運河をボートで縦横無人に走り回ったり、あやしげな歓楽街(「飾り窓の女」で有名)や製鉄所でのシーンなどテンポも速く飽きることは無かった。
出演 スキート・ウーリッチ クリスティ・スワンソン デレク・デ・リント
この映画にいくら出せますか? 2000円〜〜2000円
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆
コメント 主役のケビン(スキート・ウーリッチ)と恋人のロザリンド(キャサリン・ラング)の二人が凄く良い。特にキャサリンは本作品が初の映画デビューと聞く。無論彼女と負けず劣らず美しい謎の美女テッサ役にクリスティ・スワンソンが演じていて、こちらの方が主演女優ではあるのだが、それでも尚、私はすっかり彼女のファンになってしまいました。笑顔の美しい女性は得ですネ。

この映画では家族の影が薄く唯一本当の親子関係が、ケビンからみたら父のようなヨルゲンセン(デレク・デ・リント 重厚で正にはまり役)と彼の息子(アントニオ・カメルリング 近親憎悪に近い感情を主人公に持つ)しかいない。それ以外は母か姉のようなカリーナ(レナ・オーウエン 上手いとしか言えない演技をみた)、警備のすべてを教わった師匠のフィックス(セルジュ=アンリ・ヴァルック 冷徹さの中に底深いものがかいま見える)そして兄弟のようなトルステン(アンドレ・アレンド・ヴァン・デ・ノールド 名前は長いがゲイのハッカー役は秀逸)。皆それぞれは他人でありながら、それでいて家族のような濃密な人間関係を持っている。

その中で展開する「苛烈な裏切りと固い信頼」(オリジナルキャッチコピー)のドラマが・・・。
面白い佳作であり堪能いたしました。


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