ゾイド改造講座

 

 今回のホビーフェアでのゾイドイベントが、過去(新シリーズ復活後からこのホビーフェアまで)いずれのゾイドイベントと異なる最大の点は、「ゾイド改造講座」の開講である。

 朝から昼近くまでエントリー受け付けをした改造コンテストを経て、その審査発表を終え、ホビーフェアもそろそろ大詰めという午後3時からスタートした最後のイベントである。

 

 ここでの題材はコマンドウルフ。この機体を使って、どうやってゾイドを改造したらいいのか、そんな「初歩のゾイド改造」と言える内容の講座である。

 まずは改造の初歩中の初歩、改造パーツの取り付けから。コマンドウルフ用の改造パーツ「アタックユニット」が発売されることから、このパーツを取り付けることで、ノーマルのコマンドウルフから一歩すすめた自分だけのコマンドウルフになることで改造できることが紹介された。また、プテラス用の「ボマーユニット」も工夫次第で取り付けられる事など、「○○用」というのにこだわらない自由な発想をすることが改造の入り口にあたることが合わせて紹介されていた。

 実際の作業は、時間の都合上、既にランナーから切り放されていた部品もあるものの、一部の部品を目の前でランナーから切り放しゲート部分をカッターで削り落とすという、模型製作における最低限の必要事項の解説も行われ、それをハンディーカメラで撮影しその場でそのままモニターに拡大するという方法で、進められていった。

 次の作業は、デカールの貼り方。商品に同梱されているデカールをそのまま貼るのではなく、まずは台紙ごとハサミでギリギリの大きさにデカールを切り抜いて、それをピンセットを使って貼っていく、という方法が紹介された。ゾイドのデカールはシール式であることから、メインターゲットである小学生にも抵抗無く受け入れられるであろうが、そうした彼らが、ハサミで必要部分のみしか残さない、という方法で、どこまでリアリティーを追求できるかを感じとることができれば、将来よい改造ができるユーザーになるきっかけができるのではないかと思われる。

 そして、最後に行われたのはウエザリング。コマンドウルフの背中にあるビークルを兼ねた連装ビーム砲は、黒の成形色で作られている。これを生かして、シルバーの塗料で使い込まれた感じ、塗装のはげた感じを演出しようというモノである。ラッカー系のシルバーを筆にとって、その後ティッシュペーパーにこすりつけて筆がカサカサになるまで余分な塗料を落とし、その上で連装ビーム砲にこすりつけていくという方法が紹介された。もちろん、この作業の結果、連装ビーム砲の角部分にシルバーの塗料が付着して、角がこすれて塗料がはげているという演出ができるようになるわけである。作業自体はやはりハンディーカメラで撮影されモニターに拡大されていたのであるが、パーティングラインを削り取っていないため、この部分にも塗料が付着してしまって、砲身に鋭い水平線が入ってしまっている事に問題を感じてしまったのは、否定できない。

 確かに小学生をメインとしたイベントで、パーティングラインを削ろう、なんて言うことは踏み込みすぎで言えないことはわかるのではあるが、デカールの不要部分を切り取ろうと呼びかけるのであれば、パーツの不要部分を削り取るのも必要な作業では無かろうか? 「かっこよく改造する」をテーマにする改造講座とは別に、「丁寧に組み立てる」をテーマにした組立講座を開講することで、「あわてず、落ちついて、よく考えて、じっくりとゾイドに向かう」事を教えるのも、ゾイドユーザーの底辺を広げるのには良い手段であるかも知れない。ゾイドはもともとから、モーターや電池を搭載することから、強度確保のため、他のプラモデルと比較して肉厚の厚いパーツで作られている。この点から、少々の作業ミスにも強いパーツであるといえる。もちろんゾイドのイベントであるから、ゾイド独自の何か、でイベントを構成するのは不思議ではないが、メインターゲットが小学生である以上、学ぶべき事は山ほどあるはずである。そこで、将来当たり前となる「あわてず、落ちついて、よく考える」を教えるイベント構成にするのも、大人相手でない商売としては、一考しても良いと思われる。(注)

 

※注

 視察団は、タカラのブースでビーダマンの競技をしている小学生が、全員ビーダマを床にボロボロこぼしながら平気で競技をしている姿を見ました。審判も司会者も誰も、ビーダマをこぼしていることに注意ない事を、奇妙な光景に感じたのです。いくら遊びとは言え、こうした競技を通じて、ルールの中で遊ぶと言うこと、マナーを覚えるのは必要なことであり、なぜこのビーダマンの競技で、「床にビーダマを落としたらその分減点」というルールになっていないのか不思議に思ったのです。この様子を見て、タカラの将来に不安を覚えたのは事実です。

 ゾイドは、旧シリーズの時、その動くという構造を組み立てるということから、知育玩具と位置づけて販売戦略を立てているおもちゃやさんもありました。そんなエピソードもふまえ、トミーには、ゾイドを通して子供達に将来役に立つ何かも教える展開を期待したいです。東証一部上場をきっかけに「Dream Energy」をかかげたのは、投資家を儲けさせるだけの企業に成り下がらないための自分たちへの戒めと考えたいです。また、「20世紀おもちゃ博物館展」において、1950年代から現在までにその時代時代を代表するおもちゃとしてまんべんなくおもちゃが紹介されていたのは、大手おもちゃメーカーの中で唯一トミーだけでした。そうした、いつの時代も愛されるおもちゃを作り続けたトミーには、なぜいつの時代も愛されたおもちゃであったのかを忘れない販売戦略を立てもらいたいです。

 そうした諸々の要素から、つっこんだ意見にしました。

 

 

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