メインユーザーと基本機能
ゾイドは、おもちゃであり、メインユーザーは、小学生。彼らが遊ぶであろう事を想定した作り方がされている。
おもちゃには、まず安全性の配慮がされる。メインユーザーが小学生である以上、一般の商品よりも、より高いレベルでの安全性が求められている。もちろん安全性は、一番考えなければならないことではあるが、おもちゃを考える上で、考慮しなければいけないことの一つに、子供達の扱い方、がある。
子供達は、まだまだ力の加減というものを知らない。このため、無意識に物を乱暴に扱ってしまう事があるであろう。また、その逆に、しっかり持っていなければならないものを、いい加減な持ち方をして落としてしまうということも多々あることであろう。このため、おもちゃの開発には、落下テストによる、強度試験が繰り返されるのである。この落下テストでは、基本機能が維持されるかがポイントとなる。
ゾイドは、動くことがメインとなるおもちゃである。このため、強度テストでは、落下させた後のゾイドが、無傷のゾイドと同じ動きを維持していることが、一つのテストの基準となる。つまり、歩行とともに腕を動かすゾイドは、落下後も歩行とともに腕を動かすという基本機能を維持しているか否かが基準となる。もし、落下後もしっかりとギミックが機能していれば、そのギミックをそのゾイドに取り入れることになり、もし落下後に不具合が生じるギミックであれば、それは省かれることになるのである。これは、あくまでも基本機能の維持であって、ハードポイントの折れを含める付属パーツの欠落は含まれていない。
これを強度テストの基準とすると、ゾイドにより複雑な繊細な動きを付加しようとしてギミックを設計したとしても、落下テスト後にすぐに壊れてしまうようなギミック部品を用いざるを得ないようなギミックは省かれることになる。また、仮にギミック部品が壊れなかったとしても、落下の衝撃により部品が外れやすいような機構のつながりにしかすることのできなかったようなギミックは、省かざるを得なくなってしまうのである。
この定義を当生産工場の機体を例にしてみれば、左図のギミックが落下に耐えうるか? というとはなはだ疑問ではあろう。
「ゾイドは丈夫である。落としても壊れない。」こんな印象を持っているユーザーは多いのではなかろうか。それは、ゾイドが上記のようなテストをクリアした上で商品化されたおもちゃであるための印象である。そこには、企画・設計されながらも、強度に耐えられなかったギミックが省かれたために、強度の耐えうるギミックだけが残って商品化されたために得られることとなった印象であることを忘れてはならない。
尚、これら考察は、正規取材を元にした考察ではないため、具体的落下試験の方法(落下させる高さ、床面の堅さ、角度など)は、一切考慮されていない。