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「これでもう、インタビューはしないよ」

  梁家輝最後の独占インタビュー

  2001年3月21日
  L・・・レオン・カーファイ
  T・・・テレサ・モウ

T : 昨日電話して、このインタビューを引き受けてくれるって言った時、どうしてこれで最後だって言ったの?
L :本当はやらないつもりだったんだ。
T :やりたくないのね?でも今回は私の顔を立ててくれたって事?どうしてこれを引き受ける気になったの?
L :このあいだある雑誌のインタビューをうけた時、俳優として10数年やってきて、何だか、ふと、もう言うべき事は全て言いつくしたように思ったんだ。
T :もう言う事はないの?
L :そう。今の段階で何を人に聞かせたらいいか、もしくは将来何をするかとか・・。僕はあまり計画的な人間じゃないから、明日の事なんて分からない。その日暮らしってやつかな。それでまだ何か言いたい事あるかなあと思って、その雑誌の記者にこう言ったんだ。これを最後にインタビューはもうやらないよって。だって本当に言うことも無いし。
T :じゃあ、あとで何か特ダネがあるかどうか聞いてみなくちゃ。刺激のあるやつをね。
L :それじゃ「肥女馬騒」じゃないか!(視聴者が電話で芸能人のスキャンダル等をばらす番組)本当にたれこむ人がいるとは・・・。
T :ねえ家輝、自分は恵まれてたと思う?デビューしてからTVの仕事をする事もなく、どちらかと言えばTV界で堪え忍ぶこともなく、名監督の李翰祥に出会い「影帝」と呼ばれる様になり、仕事面ではこんなに早く沢山のものを得たわよね。それに結婚生活では・・・私だって4回!4回で、やっと2人産んだのに、あなたは一度で2人授かったでしょ。自分がラッキーだと思う?
L :すごく恵まれているね。瞬く間に十数年が過ぎてしまったし。すごくラッキーだったというのは、自分でも思う。時間が過ぎるのが早く感じるし、あっという間に十数年過ぎちゃったしね。でも実際は全ての過程に十何年も費やしたんだよ。
T :つまり十何年も苦労をしたってこと?
L :そう、君がさっき一言で言い切ったことをね。ラッキーなこと以外にも色々あったよ。
T :やっぱり苦労したのね。
L :いや、凄く苦労したってわけじゃなくて、きみが苦労していないと言うから・・・。
T :何本映画を撮った?
L :80・・・80何本か。
T :80何本?!すっごく多産な俳優よねー!
L :お互い様でしょ。
T :そんなことない、私はその半分もないわよ。80何本の映画を撮った俳優っていうのも、すごくラッキーよね。
L :でも香港の俳優にしたら、80何本なんて少ないよ。100本超えたらまあ・・・でも百何本くらいざらにいるかもね。以前の古い映画にしたら、そんな大した数字じゃないかも。黄飛鴻(ウォン・フェイ・ホン)なんてちょっと撮ったらもう50本とかでしょ。
T :でもそれは系列が違うでしょ。その手の映画は7日とか10日で1本の世界じゃない。
L :今の香港映画も大差ないよ。その手の香港映画さ。7日で16本だってあるらしいよ。
T :そうね、家輝もあまり撮らなくなったわね。じゃあ、映画界の前途についてどう思う?
L :さっきも言ったね。つまり自分はすごく恵まれているって。みんなが経験したことの無い過程を自分は通ってきた。TV界で苦労をした事は無いし。俳優養成コースに入っていた頃は苦労したって言えるかな?・・あの時も結構大変だった。今、その頃の事をしろって言われたら、すごい大変、しんどいと思うだろうな。当時は若かったから世間知らずだったよね。撮影の経験がなくても何にでも好奇心があった。 「カメラ、スタート」「えっ?」「5、4、3・・」「なに?なに?」ってかんじさ。
T :緊張した?
L :「3、2、1!」で、もう口も聞けなくなった。全てが珍しかった。
T :今はもう慣れているでしょうけどね。
L :そう、そうでないと何にでも興味が出てくる。
T :じゃあ、今は?今現在映画界における自分の位置ってどこだと思う?
どこに位置づけられると思う?
L :この10数年の出演経験者として…
T :ベテラン俳優!
L :映画俳優!ベテラン映画俳優!

T :今この業界つまり映画界だけど、ずっと雨後の竹の子式に撮ってきたじゃない?

昔のコメディー映画なんて、あっという間にもう何十本も出来上がったりしたわよね。その後社会も変わってきていて、今じゃどこでも新人を起用するでしょう。この現状をどう思う?健全だと思う?
L :うーん、健全かどうかって言うのは難しいよね。これは社会現象のひとつだと思うし。香港だからこそこういう事が起きたんじゃないかな。
T :香港だからこそ!?
L :そう、香港しかない特質!
T :独特な?
L :うん、香港は純粋な商業社会だから、何にでもお金が絡むし。どうして雨後の竹の子かって言うと、そういうのはうけるとかその映画は当たる、ああいうスタイルは売れるってなると一生懸命そういうのを撮って、ある業界でお金を儲ける。金にならなくなるまで、そういう物を撮ったら、また新しいものでビジネスをはじめる。
T :だからいつも新人を起用するって思うの? 今やたらと、まだまだなのにあいつは年だのもう昔の人間だの言われている人達がいて・・・
L :いや、ただ今の香港のスピードが早いって思うだけ。
T :進歩したと思う?ある意味不健全な状況とは思わないの?香港がこんなに商業化な所だからこそ、こんな不健全な状況にしてしまったとしたら・・・。
L :他の国や場所で映画を撮るっていう事で比べたら、僕らの撮る映画は多分・・・僕らの方法は不健全かも知れない。でも香港だけで香港の一俳優として見たらば、何にも不健全な事なんてないと思う。ここはこんなに沢山の俳優を生み出してきたんだし。それに昔は輝かしい時代があったんだしね。今はただちょっと低迷しているか何かなだけで。でもそれは間違ってるって事じゃない。
T :あなたも映画が低迷してると思うんでしょ?私たち俳優にも責任があると思う?
L :無いよ。何の責任?
T :そう、どうしてこんなこと聞いたかっていうと、マーケットが好調な時は例えばあなたにしても続けて何十本ものオファーがあったりするでしょ。同時期に何十本と。でもスケジュールの調整も難しいし自分の事だからよく分かるでしょ?いつ時間があるかも分からなかったり撮影する時になっても時間がとれなかったり、こういう状況下が徐々にマーケットを低迷させてしまったのかしら?
L :関係無いと思う。
T :関係無い?
L :もちろん関係無いよ。例えば・・・簡単な事でさ。どうして絶えずオファーを受けるんだろう?どうしてこんなに沢山のオファーを受けるんだろう?どうして自分の時間を全部切り売りしてしまうんだろう?それだって、需要と供給の問題なだけだよ。
T :マーケットの需要ってこと?
L :ひとつのマーケットの需要でしょう。
T :でも、こういう風にも言えない?オファーを蹴ることもできるのよ。例えばこんなに沢山の事をする元気がないとしたら・だって一度に沢山仕事引き受けちゃったら、一人の俳優が同時に9本も10本もこなした上で、ある水準をキープ出来る訳ないじゃない。
L :出来るよ、僕は出来る。
T :寝る時間すらないのに、どうやってキープできるって言うの?
L :限界までキープするさ。他と比べ物にならない位の水準をキープするし、相手の要求するものを出せるよ。
T :でもそれがベストとは限らないでしょう?
L :じゃあ何がベストかって言うと自分でも上手く言えないけど、例えば今日10本のオファーを受けたとする。1本しかオファーがないのと比べたら、その1本の演出のレベルがその10本より良いって言えるかな?時には必ずしも良い訳じゃないよね。
T :否定してもしなくてもいいけど、いつもゴミみたいな映画が多いわよね。
L :でも引き受けなきゃ。
T :引き受けなきゃって、それってギャラでしょ。
L :いや、他の色んな要素でさ。
T :OKじゃ聞くけど、今の映画の低迷はクリエイターにも責任があると思う?
L :それじゃ人のせいにしているみたいじゃないか。
T :違う、違う、そのうちのある責任って意味で。私も認めるけど俳優っていうのはこう・・・やたら仕事を引き受けたりするでしょう。だってギャラは高いし。ハリウッドと比べると香港の俳優のギャラは高い方になるんじゃない。人口もそんなに多くない所なんだし。創作の方面ではやっぱりもう少し大人にならないとって思うんだけど。
L :そういう言い方って人のせいにしているよね。
T :違う、違う!
L :どうしても僕の意見を認めようとしないんだから。
T :責任の分担っていうだけよ。じゃあ、俳優に責任は無いって言うの?
L :僕は俳優として、どうであれ責任を負う必要は無いと思う。
T :じゃあ、クリエイターは?
L :ある程度は必要かもね。
T :どうして?
L :創作が足らないとマーケットを萎縮させるし、映画なんて見なくてもいいと人に思わせるから。
T :作品の範囲が狭すぎると思う? 例えばストーリーを膨らませないうちに、あるスタイルの映画をわーって撮ったり・・・
L :基本的に香港は小さい所で、その香港で生き残っているクリエイター自身の持っている空間と視野も狭いと思うよ。
T :狭いのかしら?
L :もしこれが外国なら、いい脚本を書けば一生困らずに済む。他の時間を自分の生活を充実させる事ができるし、次の脚本を書く時間もできる。もうひとつの空間がもてるよね。でも、香港はそれが無い。香港のクリエイターって絶えず創り出さなきゃいけない。
でなきゃお金にならない。挙げ句の果てには人の物をコピーするだけ。コピーすると似たような演出になるから、必ずしもベストな満足のいくものが出来るとは限らない。
T :あなたは物事に対してとても積極的な人じゃない?例えば前にギャラを受け取らずに、「天上人間」という映画に投資したり、そのあと進行が遅れたんで、また50万ドル出したり・・・。どうしてそうしたの?
L :創作を応援しているから。新しい物に挑戦する人達を応援してるから。例えば当時「天上人間」の監督は、監督初挑戦だった。だから、彼に 投資する人がいなかった。で、彼は僕をみつけて投資させるように説得に成功したし「彼を支持するんだ、彼にはこれが出来る筈だから」って思わせた。だからそうしたまで。
T :今後も続ける?積極的に応援していく?例えば私に「ノーギャラでもいい?」って持ち掛けたり、出演料を何かに投資したり、他の俳優を応援したり、もっと多くの事をしたりする?作家を探して脚本を書かせるとか・・
L :あちこち行って、ああしろこうしろってけしかけたりはしないと思う。でも、きっとある条件を持つ人なら応援するかも。何か出来る人とか。何かに投資する時は考えた方がいいよ、特に自分も俳優ならね。でも、もしそう出来るのなら、何で株に投資して自分の知っている物にはしないのかな?どうして自分が詳しいものにしないのだろう。僕なら絶対・・・でも、必ずある条件付きだけどね。毎回毎回投資できるわけじゃないし。
T :確か前にジョン・トラボルタが自分のギャラを下げて、低予算の映画を撮った事があったと思うんだけど。「パルプ・フィクション」という映画。それで彼は血路を開いたのよね。あなたもそういう風にするかしら?
L :試した事あるよ。でも、それが唯一の方法ではないし、それにギャラを下げたりノーギャラでクリエイターを支持するっていうのは、少なくともその作品に対してある程度の自信がなきゃだめだよね。僕自身理解がないって事じゃなくて。「じゃあ自分のギャラいくらまで下げるよ、そうすれば他に当てられるし」と言ったら・・・
T :じゃあ、もし誰かがそうした時に・・・
L :予想できると思うんだ。僕は大体いつも予想出来たよ。ある監督が僕に話をもちかけてきたとする。脚本を見てプレゼンテーションを聞いてそれで「この人は信頼できる、この作品は応援するに値する」と思ったらそうするよ。
T :じゃあ、将来的にも・・・
L :でも、どんな作品に対してもそうするという訳じゃない。
T :だけど、信頼に値するって確信したらそうするの?
L :うん。
T :そういう人たちを応援するのね。
L :多分たくさんの俳優がそうすると思う。でもやっていても皆に知られてないのじゃないかな。色んな俳優が映画に関係している事をやっていると思うよ。学生に作品を見せたり一緒に仕事をしたりして。ただいろんな人にそれが知られているかどうかなだけだよ。
T :「ラ・マン」は俳優として、ターニングポイントになったと言える?
L :もちろん、そうじゃないわけないよ。違う?だって、突然にして約地球上の半分の人が自分を知る事になったんだから。
T :すごく嬉しかった?
L :すごく嬉しいねぇ・・・
T :当時、虚栄心は無かったの?ハリウッドマーケットに進出したのよ!
L :無かったよ。たぶん既にすごい見栄っぱりだったからじゃないかな。最初からすごい見栄張ってたんで、その時も特別な虚栄心っていうのは無かったよ。だって、それはもう分かっていた事だったから。
T :すごく自然な事だった?
L :ある映画を撮って、プロモーションの形式がああいう風で、条件の組み合わせがこんな風でとなると、実際自分がどうなるのかが予想できたんだ。だからその時も、特別な虚栄心は無かった。でも、賞を取るっていうのは別だよ。あれは受賞の最後の瞬間まで分からないしね。だけど、撮影はずっとやっていけば、そのうちどうなるのかが分かる。
T :あなたは確か初めてハリウッドに進出した香港人俳優じゃなかったかしら?
L :最初じゃない筈だよ。前にもたくさん進出しているし。自分が知る限りではどう順番を着けても自分は2番目でしょ。初進出者はチョン・プイだよ!「セント・ポール砲艦!」って強調しないと。(彼の演じた役が言う合い言葉)彼には今でもそのギャラが払われ続けているらしいよ。
T :失礼しました!じゃあ、あなたは2人目ね。ハリウッド進出の2番手だけれど、「ラ・マン」の後、なんだか活動が止まっていたみたいよね。どうしてだと思う?インターナショナルなあなたの事務所に責任があると思う?
L :いや、それは自分の責任。自分が取るべき責任。元々「ラ・マン」は僕をいわゆる国際俳優の行列に位置づけようとしたんだ。でも選りによって、「ラ・マン」のすぐ後に出たのが「黒薔薇VS黒薔薇」だったんだ。国際俳優のイメージが、一気に地元俳優に引き戻された。地元の俳優のイメージに変わったっていうか・・・。だから自分の歩んできた道は、突然国際俳優としての道じゃなくなってしまったんだ。
T :それは自分の計画が無かったから?それともインターナショナルなあなたの事務所が「もうそろそろいいだろう」って言ったの?
L :いや、自分に計画性がないだけ。計画なんてないし、計画するのも好きじゃない。俳優になったのだって、計画していたわけじゃないし。
T :でも既に進出したのに、どうして続けなかったの?ハリウッド進出は俳優ならば誰もが見る夢じゃない。「ラ・マン」の後にどういう風にやっていくかってしっかりした計画を、事務所は立ててくれなかったの?
L :今ならそうしてくれる人もいるけど、前はいなかった。だから「黒薔薇」に出たんだよ。当時「ラ・マン」の後、自分が俳優としてどこまで行けるか分かっていたけど、だからってその道を歩いたりはしない。新しい試みをしたかったからかもしれない。その新しい道をどう歩むべきか試したかったのかもしれないね。
T :後悔してないの?だって「黒薔薇」があなたを・・・
L :ないよ。後悔なんてするはずない。「ラ・マン」の後、国際俳優をしていたら必ずしも・・・
T :こんなに稼げなかった?
L :今のこの段階にたどり着けなかったかもしれない。
T :でもチョウ・ユン・ファみたいになれたかもよ。
L :君の言うそういうのに、絶対になりたいんじゃなくて・・・。
T :嫌いなの?
L :嫌いなんじゃなくて、分からない。どんなか想像できないよ。現実に起こってない事だし、考えた事もない。
T :チョウ・ユン・ファみたいにハリウッドに進出するのは好きじゃないの?大変?
L :もし今すぐ行けと言われたらもちろん大変だよ。一家全員あっちに行って生活をしなきゃいけないんだし。やっぱりよそで仕事をするなら、その近くにいなくちゃ駄目だよ。香港で映画を撮るなら、絶対香港にいなきゃ。アメリカに住んでいてこっちで香港映画を撮ったりは出来ない。そんなに行ったり来たりなんて良くないよ。
T :やっぱり香港が好きって事?ここで発展していくのが夢?
L :今、腰を上げろと言われたら、面倒くさいと思うんだよね。でもあの時そうしていたら、こんな風に思うどころか楽しんでいたかも。だから分からない。でも後悔していないし「あの時こうしていたら」と考えたりもしない。
T :じゃあ、また今についてだけど、現在の映画の低迷は私たち俳優にとって、かえって良いことかしら?なぜって、もしそうじゃなければあなただって絶対に舞台の仕事を引き受けたりしないでしょう。つまり俳優が各方面の別の事を試みてるんじゃないかと思う。あなただってスケジュールはパンパンなのに、何ヶ月も費やしてまでも舞台をやるのはどうしてかしら?
L :毎回君と似たような意見になったり逆の意見になったりもするけど、思うにこれは単なる段階の問題なんじゃないかな。
T :現段階がどうであれ、あなたも他のものにトライするかもって事?
L :仮に舞台を引き受けなかったとしても、10本の映画に出られるわけじゃないし、映画10本出演の話を選んだりはしない。
T :どうして? もし、いまのマーケットが・・・
L :今のマーケットのどこでそんなに撮れるって言うんだよ!(笑)
T :低迷しているからじゃない。だからこそ、他の道を考えたりするのよ。
L :特に今自分でこういう要求があるじゃない?だから10冊もしくは20冊の脚本をもらったとしても、そこから10本選べるかどうか分からない。
T :10本まるまる引き受けるとは限らないってこと?
L :そう。
T :作品に対してどんな要求があるの?どんな風に思っているの?どうして前みたいに全部引き受けないの
L :当時はたくさん理由があって、お金はその内の重要な理由だった。それに他の要素もあったし・・・どのみち1年365日のうち363日は仕事してるんだし。2日だけ残してもしょうがないから、それなら仕事しちゃえって、そういう感じだった。だから色んなものを引き受けた。でも今はそうしないよ。自分の好きなものを少し引き受けてやりたい。それで一人の俳優の計画としてだけじゃなく、色んなものに参加できたらいいなって思う。もちろん一番うれしいのは、自分の好きな脚本がくる事。そして監督と自分が話をして、相手がすごく評価に値する人だったら完璧だよね。
T :今はまだ良い脚本を探している段階なの? ある意味、演出の突破というか・・・。
L :永遠にそうだよ。永遠に何かを追い求めるものだよね。仮にもし契約したら10本出演できるけど、役柄がどれも同じだったら僕はやらないと思うよ。
T :仕事の量が比較的少ない時、例えば家庭内でプレッシャーを感じたりした?自分んちの事だから分かるでしょ?メイドが4人に犬7匹、娘が2人もいるんだから、麻雀するにはもってこいだとは思うけど。(笑)
L :メイドが4人だって? それは僕とかみさん、それに僕の親父、お袋さ。(大爆笑)
T :プレッシャー感じた??
L ::「犬7匹」も僕でしょ、かみさん、親父、ばーちゃん、お袋に娘2人・・・(笑)
T :プレッシャーあった? 負担がすごく大きくて、何もかもが重く感じられたりした?
L :知っての通り、僕の家は普通の家庭。シンプルな家族で4人しかいないし、小さい頃からこの人数だった。でも元々は大家族が好きなんだ。だから今の大家族は自分のこの手で築いた! 自分でそうしたのだから、プレッシャーがあっても人には言わないよ。言うとしたら「プレッシャー? ないよ。何それ?」ってひとこと。
T :楽しいじゃない! 家に帰ったら4人揃うから麻雀ができるわね!
L :でしょ? 知らない者同志ならマージャンなんてやらないよね。でもその後でメイドの服に着替えるんだけどさ。(笑)
T :ちょっと、もう!(笑)
T :家輝って寂しがり屋よね、でも恋愛歴って・・・男の人はそんなに覚えているものじゃないじゃない?私との間にあった事は覚えている?
L :覚えているよ。ラブストーリーをどれだけやったと思っているの? 忘れる訳ないじゃない。僕とテレサ・モウとの間に起こったあの夜を・・・
T :あなたって非常識ねえ―!!
L :一晩だけだけどね、本当に。
T :信じる人がいるかもしれないじゃない。でも一晩だけなんて言って、冷たいわよね。
L :いや、覚えているよ!
T :私に説明させてよ!あの日の説明を・・・でも一夜の恋って説明が必要かしら?
L :いらないよ。最終的にこういうのは暴かれるものだし。ちょっと位ふざけてもいいさ。
T :どうしてすごく冷たいの? 何で連絡をくれなかったの?
L :待って、待って!長い月日を経た後、今日ついに答えを言うからさ。何で連絡をしなかったかって言うと、あの晩きみの電話番号を教えてもらわなかったから。
T :そうなの?でも・・・
L :一緒に晩ご飯食べた後でさえ、番号教えてもらわなかったから。
T :本当に非常識よねー!
L :そんな事ないよ!
T :スクリーンの梁家輝は「ラ・マン」であり、さっそうとしたプレイボーイ。でも、皆さん想像もできないと思うけど、実はすごくすごく恥ずかしがり屋な人なの。今から、それがどんなふうだかお話しましょう!私たちはすごく良い友人関係だったの。私は彼をいい人だと思っていたし、私も素敵な女の子だった・・・お互いに独身だったから紹介されたのよね。仲人って言うか、ある人が私達2人を引き合わせたのよ。でも、何と食事をしたその夜・・・あなた、私を見もしなかったでしょ、実は。
L :見たよ。
T :そうなの?
L ::「ちらっ」と。あの夜、僕はステーキをオーダーして・・・
T :あなた、ステーキ切っていただけじゃない。私は覚えているわよ。
L :そう!うつむいて、とにかくステーキ切っていた。でも、あのテーブルが小さかったことは、よく覚えているよ。
T :そうなの。
L :テーブルの下で、お互いの膝がぶつかっていたし。なんかそれだけで申し訳なくて。
T :私のこと、ちらちら見ていたでしょ? 覚えているのよ。それだけだけど。
L :一晩中ちらちら見ていたよ。
T :正視しなかったでしょ?
L :しなかった。あの時の僕は、こそこそしていたし。
T :そう!その夜のあと、電話さえ掛けてこないなんて。お互い連絡先も知らないし、その上私はすごく受け身な方だし。なんて言うか、プライドを傷つけられたっていうか・・・あなたの電話番号も知らないし、でもまさかその為だけにその紹介してくれた人に連絡する訳にもいかないし・・・だから終わっちゃったのかもね。
L :いや実は人と争うのもどうかと思って。何年後かに、もう一人のトニーと君を争うって分かっていたし
T :もう一人のトニー?
L :彼が出てきて、僕と争うのさ。もしかしたら、僕が負けるかもしれないじゃん。その時もうそれが予想できたから・・・。
T :何でそんなに賢いの? 何でそんなに先見の明があって、今の奥さんを選んだの?
L :本当に番号きくのを忘れちゃったんだよねー。
T :じゃあ、あなたの奥さんについて話しましょうよ。ラッキーにも私の電話番号を聞き忘れて、今の奥さんと知り合ったのよね。彼女に決めた理由は何?だって彼女が現れてからは、もう前みたいに遊んだりしなくなったじゃない。彼女の魅力って何かしら?
L :僕はもう遊んだりはしないよ。
T :でしょ?
L :テレサに追加点!本当の所どうしてなのか分からない。理由をあげるとすれば・・・こういうのは、お子様が言うのはいいけど僕らが言うのはちょっとね。かみさんのどこが好きか、どうして彼女を選んだのかって聞かれても・・・今までまあ、しょっちゅう考えたりはしないにせよ、インタビューなんかで結構聞かれたりしたんだよね。でも、本当に思いつかない。「じゃあ、長所を10個挙げて」と言われたとしても、たぶん言えないと思う。
T :いや、確かあなたの奥さんには究極の秘話があったわよね。電話であなたに「あなたそんなに心配しないで。例えどんな事があっても私達は家族じゃない」と言ったのでしょ。
L :ドラマのセリフみたいなものさ。誰だってこんなの言った事あるでしょ。
T :でも、あの時の家輝は、デレデレしちゃってひどいものだったわ。
L :かみさんに言われた事はどうであれ、デレデレするよ。フリだとしてもさ。いや、口だけでもね。もちろん彼女には彼女の長所があるよ。でも一言ではいい表せない。
T :一言では無理!?
L :だからって、言い出すと・・・
T :きりがない?
L :きりがない! そう、番組の中でこんな重大な事は・・・
T :とにかく、彼女が一番合うってこと?
L :いや、彼女を選んだ時は果たして彼女が一番合うかどうかなんて考えなかった。結婚してからこれまでを言えば、彼女はけっこう自分にあうと思うけど。自分にぴったりの相手だと思う。うん。逆に言えば、無い物を補い合えるんだよね。でも、選んだ時はわからなかったよ。正直言って、その時はそんな確信もなかったし、考える必要もなかった。だって、当時はまだ付き合っている関係だったから、きっとそんな事まで考えやしなかったと思うよ。
T :じゃあ、本当にラッキーだと分かった訳だ。奥さんとずっと今までぴったり合って。
L :途中いろいろ工夫やら気配りをしてこの関係を維持してきたからね。
T :そう?
L :ずっと彼女をこうやって、サランラップでくるんで、今まで!(笑)
T :夫婦でも、やっぱりそういうのって必要だと思う?
L :あったりまえだよ! テレサ、君って、本当に・・・(絶句)
T :色んな工夫をしながら関係を続けていくっていうのね。
L :本当に自分がそんなラッキーなわけがない。ピッって押したら写真が出てきて選べて、そうして2人は穏やかで安定した結婚生活を十数年も過ごしました、なーんて。そんなに簡単なもんじゃない。
T :友人関係でもあなたは敵をまったく作らない人よね。どうしたらそんな嘘っぽい事ができるの?芸能人なら余計に難しいと思うけど。だってこの仕事をしている人ってすごくワガママじゃない。どうしたら敵を作らずにすむの?うちのダンナは「家輝」と聞いただけで「あいつの事を悪く思っているやつはいない」って言うの。どうしてかな?
L :何か言わなきゃいけないからだろ。それに何かあるやつとは、口もきかないだろうし。
T :それでも聞いた事ないわ。人の口から「家輝はちょっとね」って言うのは。本当に。「家輝」っていえば、皆が拍手喝采みたいな・・・どうしてだと思う?
L :僕だってあるさ。いつも街を歩いていると裏に連れていかれて殴られるんだ。ただ殴られても、言わないだけ。
T :だめだめ。早く答えて!
L :敵がいないとは思わないよ。きっと自分にもいると思う。勿論いないのが一番だけどね。
T :覚えている?そういう事を。実は心にひっかかったりしてない?
L :僕って老人性痴呆症なんだよね。記憶力悪くってさ。
T :気に入らない人に会っても、握手しまくって笑いながら挨拶して、家に帰った後「うわ!本当はあいつ嫌いなんだよな!」って事ある?
L :あるよ。
T :そうなの?
L :ある人を見かけて、握手やら挨拶やらしまくって、話をして肩まで抱いて、それから家に帰ったあと「ん?あれって嫌いな奴じゃ・・・」と思った事がある。その時はじめてそいつと仲悪いって気付いた。そしたら自分に腹が立ってさ。「とんでもないよな!話ししたうえ、肩まで抱いて」って。そいつに2、3発くれてやって当然な相手なのにさ。
T :相手も普通に、あなたと話してたんでしょ?
L :忘れっぽいのかもね。だから怨まれることが無いって言われるけど、だからっていないとは限らない。忘れっぽいだけじゃないかな。それに敵なんていないのにこしたことはない。だからいつも、まず人の立場に立って考えるようにしている。出来るかどうかは分からないけど、出来るだけそうする。だめなら、怨まれるような事はしないようにする。でも、君のダンナがそう思ってくれてるのなら、けっこう成功したって事だよね。
T :成功したわよ。絶対、成功してる。・・・ありがとう!家輝!インタビューを引き受けてくれて。本当にどうもありがとう!!
L :え、もう終わり?
T :そう、おしまいよ。
L :これで終わり・・?


この対談インタビューは、3ヶ月にわたって上演された舞台劇「煙雨紅船」が終幕したあと2001年3月21日から3日間、香港のICABLEでテレサ・モーがホステス役の「娯楽熱賣十點半」で放映されました。ここでは二人の会話のほぼ全文を翻訳して紹介しました。ここでも言っていますが、家輝はよく「取材はもうこれきりだよ」というようなことを言います。以前「忽然一周刊」の取材でも、やはり最後のインタビューだと言っていました。それを聞くたびにファンとしては、ドキッとします。何しろ長期間活動を停止した前科のある家輝なので、えっ、俳優がインタビューをもうしないなんて、それってまたお休みするってこと・・・?と、短絡的に思ってしまうのです。でもこのインタビューでも家輝自身が認めている通り、彼はわりとその時々の気分で発言する方のようなので、インタビューを受けないからって、即、引退ってことでもないようです。ほっ。家輝さま、どうかあまりファンが悲しくなるようなことをおっしゃいませんように。


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