MADGAME

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そ し て 世 界 は 飽 和 し た


星には限られる人数がある。どんなに切り詰めても溢れてしまう絶対数がある。
ましてや、必要以上に空間を求める人類がいるのだからいつそれがきても可笑しくはなかった。
そして何が起こるか。そんなことは言わなくてもわかるであろう。

戦争だ

反発が起こる・デモ行進の日常化…それでも止まらない
そして削られる事に慣れていった人類は争いを受け入れていった。
正常派バイパスの波に押し流されていき、ごく当たり前の日々となっていった。
国が・世界が・そして星が 滅びの道を進んでいった。楽しく、可笑しく歩んでいった。

気づいたときにはもう遅い。

荒野が何処までも続く世界。それが大半を占めた。
貧富は目にあからさまに映る。これが世界の成れの果てだった。
型に嵌ったこの星を、いつしか人々は『EARTH』ではなく皮肉と哀しみを込めて『DESERTH』と呼ぶ。
その星で、生きていく希望などはありはしなかった。ただあったのは『絶望』という言葉。
22世紀終盤、増え続けたのが suicide ―自殺― である。
飽和した世界にそれは必要だったのだ。増えすぎたモノは自然の理の基、減っていくというもの。
けれど、それを罪だと咎めるのが人類であった。神の声を聞けない唯一の存在であるが故に繋がっていく悪循環。
2201年1月1日に施行されたものは 自殺禁止令 であった。

  −自殺禁止令−
 第二編 罪

(第二十六章 殺人の罪
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。

(第二百条 削除

(予備)
第二百一条 第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

(自殺関与及び同意殺人)
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

第二百ニ条の二 自らの考えのもと自身を殺した者は、その両親、兄弟、その他肉親を一年以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
        復帰後、社会的支援等全てを剥奪し、毎年百万の罰金を徴収するものとする。

(未遂罪)
第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

第二百三条の二 第二百ニ条の二の罪の未遂は、罰する。
        その際、社会指導施設に移送し、そこでの生活態度を監視され、復帰が認められるまで隔離を命ずる。


しかし、この法律が制定されたところで自殺者は一向に減らなかった。
当たり前である。
自殺を決心したものが肉親の心配などしない。死んでしまった者勝ちなのだから。


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