MADGAME
3.

「データオッケーっと…後は、コイツ繋いで、ココをこうして…」
移動し乍何やらブツブツと呟く。自作のゴーグル型のモニターを見つめつ、標的を捕える策を作っていた。
今回は『鴉猫の牙』神の罰とされること。それなり方法があるのだ。
MGにもルールは存在するが、あまり活用はされていない。細かなことを規定しても守りはしないし、結局は無駄である。
ルールというより、ガイドラインなのだ。
それでも守らなければいけないことが【殺し方】である。
自殺が禁止されている世界、一見して自殺とわからないようにしなければいけない。
其の為、殺し方を指定してくるのだ。今回は、神からの罰…というよりは、簡単に言うと首を食いちぎる。ということなのだろう。
「いちいち殺し方とか指定しなくたって、死体見れば自殺じゃないって判るじゃんか」
『…そう、 な…吟。 か、電波…るい…』
「あー、ちょっと色々弄ってるんで繋がらなくなるかも…リョーさん、シンさんはどうなんスか?」
『あっち…気に、なく……い。おま…は、い丈 …のか?』
「あー、一応平気っスけど、標的動いてません?」
『それ、…くだろ?…とりあ…ずまず、追い…け』
「はーい、了解っス!」

プツッ―――

明るい声と同時に電波は完全に途絶えた。その潔さに感嘆するものの吟を放っておいて良かったためしはない為悪態を吐いてから亮はもう一度回線を直そうとPCを弄る。
カタカタカタ とキーボードを叩く音が辺りに響く。後ろには壁、そこに寄りかかって立ちながら長いマントのようなコートを着、PCを打っている姿は普通だとどうみえるのだろうか…けれど此処には自分たち以外いるはずも無く、いたとしても亮は気にはしないだろう。
吟の方にはとりあえずと様子が見えるように電波が遮断されない亮オリジナルのキュラクタと呼ぶ小型自動カメラを飛ばしておく。
次は芯哉だ。彼に関しては心配するところは無いだろうが、敵の位置を把握しておくことは必要だろうと画面に目をやると一人その場から離れたのが目に入った。
『…慧谷さん、人数違う…』
「さっき一人離れた。片付け次第吟を追ってくれ」
ちょうど其の画面を見ていたところでの冷静に対処する。
一段とタイピングする音が早くなる。キュラクタをもう1台飛ばすと一人外れた敵に標準を合わせた。
セットされた画面を次々と上げていく。吟と敵さんのデータはまだ届かない分、芯哉の映像を映そうとRMFを動画として映し出そうとコマンドを打ち出した。
映った時に既に殆ど終わってはいたが、芯哉の行動に不審を抱いた。
「…拳銃?…あいつ、まさか!」 手に持っているものを拡大すると今ではあまり見ることのない型の銃が握られていた。
MGに相手を殺してはいけない。というルールはないが、其の後の対処が面倒なこととその他もろもろ動きにくくなるため亮は極力殺しはしなかった。
「トキ、…止めろ!トキ…鴇!!」
意識は既にブレイクしているのだろう。近くにいれば引っ叩いても止めるが生憎かなりの距離がある、今出来るのは呼びかけることだけ。
スピーカーの出力を最大にしつつ、亮は必死に呼びかける。
『…っ慧谷さん?』
「気がついたか?ならいい。そいつ等は放って置いて吟の方へ向かえ。方向はそこから10時と11時の中ほど」
『宗途と標的の位置関係は?』
「もう接触するな。その3、4分後には敵さんとも接触が入る。行けそうか?」
『行きますよ。情報送っておいて下さい』
「…RMF、オフになってるからオンにしとけ、そしたら情報入れる」
『あ…すみません』
「大丈夫だ」
なんとか意識を浮上させた相手に安堵の息を細く零し乍纏めておいたデータを、オンを確認してから送ってやる。これで芯哉の方はいいだろう。問題は吟と残りの敵だ。
なかなか二人の位置が見つけられない。そろそろメンテをしたほうが良いかとキュラクタの性能に悪態を吐く。

ピーーー

受信完了の音が響いた。
出てきたデータは吟のものではない。そして亮は目を見開いた。気がついたときには既に走り出していた。目にしたデータを信じたくなくて…
矛盾が頭を支配して、頭と躯が別行動を起こしていた。


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