岡山市職員労働組合が発行する月刊自治研誌「岡山市政の今日と明日」2000年3月号の学校給食特集記事


  地底人の独り言(編集室より)
       コストも大幅に下げながら改善を実現するための展望が開けます
  学校給食運営審議会の中間報告とその後の状況
      (岡山市職員労働組合 副委員長 花田 雅行)
  ・17項目の実現が全校に誇れる学校給食をつくっていく道 そのために私たちはがんばります
      (岡山市職員労働組合学校支部長 小学校栄養士 服部 一美)
 
 中間報告に思う子供たちにとって充実改善となるものであってほしい
    小学校栄養士 中田 万里子)
 
 ・学校給食運営審議会中間報告の評価について
      (豊かな学校給食をめざす市民運動実行委員会代表委員 おかやまコープ 日名 泰之)
  ・学校給食に思うこと
       (豊かな学校給食をめざす市民実行委員会代表委員 岡山のお米は美味しいよの会 椋代 厚子)
  子どもの命を育む学校給食
       (小学校PTA役員 田中 敦子)


地底人の独り言(編集室より)の学校給食関係部分の抜粋
☆市教育委は岡山市の学校給食を民間やPTAに委託(試行)するというけれど…
 ところで、今の岡山市政において一つの焦点となっているのが、学校給食の「見直し」である。昨年の12月24日、まさにクリスマスの日に、突然に岡山市の学校給食関係職員や市民は、とんでもないプレゼントを受け取った。「岡山市学校給食運営審議会」(会長・目瀬守男美作女子大学学長)より、「学校給食の在り方について」(中間報告)が提出されたのだ。私は、この「学校給食審議会」の中間報告について、少しだけ意見があるし、それ以前の設置の仕方や運営の在り方にも思いがないでいない。こうしたことについては、最終報告が出された時点で、と思っている。
 ところで、本号ではさながら「学校給食」小特集となつた。学校給食関係者のみならず市民のみなさんにも、執筆いただいた。本誌の前号には、その「中間報告」の全文と1月18日に岡山市議会文教委員会に岡山市教育委が提出した説明資料「学校給食について」を掲載している。合わせて読んでいただければ、幸いである。そして、ご意見を本誌に寄せて欲しい。大切な子どもたちの食に関わる問題である。みんなで考えたいものだ。
 ところで、この学校給食について言えば、学校給食の役割は何か、そして学校給食や学校給食関係職員に何を求めるのかが今問われていると考える。これまでの岡山市の学校給食は、制度的には@そのほとんどが自校方式であり、A中学校給食も実施としており、かつB全校に栄養士を配置している、とまさに制度的には全国でも先進である。ところが、この制度的な豊かさが、学校給食の充実ということでは、必ずしも直結していなかったことは否定できない。例えば、全校に栄養士が配置されているにもかかわらず、統一献立となつており、かつ給食資材も学校給食会からの一括購入という制約があり、かつ食器の使用という点でも2枚のみの制限がある。米飯給食にしてもタッタ週二回、それも業者炊飯である。今大きな問題となっている子どもたちのアレルギーについても、実態すら調査しておらず、除去食も実施できていない。また、学校給食関係職員の三期休暇の過ごし方についても、確かに出勤はしているものの、不十分さを残していた。
 今岡山市の学校給食の「見直し」で求められるのは、「コスト削減」の側面ももちろん無視できないが、最も必要なのは「現存している不十分さとその原因」をしっかりと把握し、充実する方向を明らかにすることと言えよう。そうしてその不十分さを克服して、子どもたちのためにも制度的な先進を生かして「全国に誇れる学校給食を実現する」ことと言えよう。そのためにこそ、市教委は全ての父母・市民と学校給食関係者は語り合い、英知を出し合い、手をつないで改善・充実へ努力していくことと言えよう。それが何より、子どもたちのためなのだから。

*制度のみの先進から、日本に誇れる豊かな学校給食の実現をめざして
 今回の学校給食の在り方及びその関係者の勤務実態についての議論がなされる中で、私たち学校給食関係者は、三期休暇の過ごし方も含めて、学校給食の役割や自分たちの仕事の在り方について問い直した。そして学校給食の充実に向けて、職員の側からの見直した結果を「岡山市の学校給食についての17項目改善提案」としてまとめた。この充実提案の詳しい内容は、本誌99年11月号の「岡山市の学校給食充実のために・職場討議資料(素案)」及びパンフレット「岡山市の学校給食の充実のために」(岡山市学校給食を良くする会発行)を読んでほしい。
 ところで学校給食を考えていく上で、まず明確にしなければならないのは、今日の子どもたちや家庭での食の問題が、相当に深刻となっていることであり、だからこそ学校給食の果たす役割がますます重要となっていることである。マック、バーガー、ミスドー、レトルトetc、簡単かつ高カロリー食品が、子どもたちの心を捉えて離さない。「駅弁」で知られる三好野も、現代の主流はコンビニの「お弁当」と聞く。こうしたコンビニでのお弁当が、夜の食卓にのったりと家庭での食事も、様々な課題を抱えている。料理の苦手な若い母親が増加している。まさに現代では、車社会と外遊びの激減の中で歩くことも少なく、一方ストレスは大幅に増加し、加えて高カロリー食品の氾濫である。こうした中で、子どもたちは育っている。食の乱れが、体や心の育ちの乱れへとつながっていると言えよう。だからこそ、学校給食は単なる「お昼のお弁当」ではなく、「教育の一環」であり、その充実求められているのである。
 こうした立場から、私たちは改善・充実の内容として、次のようなことを提案し、それを実行していきたいと考えている。まずは現在の統一献立方式を自校献立方式に改善し、食材についても学校給食会から全てを一括購入ではなく、野菜や果物などについては生産者の顔が見える地域・地場のものを使用する。食器についても、献立に応じて、枚数制限をやめ子ども本位で使用する。また、現在子どもだけでなく、親・家庭の食が乱れている実態があり、栄養士などが子どもや家庭・親への食教育に努力する。そして三期休暇中をはじめ、父母・地域の方々を対象に学校や公民館等を利用して、伝統食をはじめとする「料理教室」(既に昨年の暮れには、一部地域で「おせち料理」教室を開催し好評を博している)を開催する。三期休暇中には、学童保育や部活に来る子どもたちにも、昼食を用意することは、もちろん可能となる。同時に、これまで全くデータのなかつた子どもたちのアレルギーの実態調査を行い、各々の子どもに合つた「除去食」を提供するとともに、父母とともに食を通してアレルギー改善に向けて努力する。また、地域のお年寄りのために、「配食サービス」のための「お弁当」を、勤務時間内に作り、地域のボランティアの方々によりお配りいただく。お元気なお年寄りは、空き教室を利用した「学校レストラン」に出かけてきていただき、みんなで一緒に食べる。そんなことを考えている。同時に、お年寄りの「生き甲斐対策」とも合わせて、休耕田等を利用して「家庭菜園」に取り組んでいただき、地域での集配体制も確立して、学校給食の食材として利用することも可能だと考える。こうすれば、市場では不可となる曲がったキュウリでも利用できる。各校単位であれば、こうしたことも可能となる。まさに、学校給食を核に、地域・家庭に日本の伝統食が復活し、豊かな食文化を確立でき、かつ高齢者福祉施策の向上へと発展していくと確信する。こうすることで、制度的な先進から、その内容もともなって先進となると言えよう。
 まさに今、「学校給食運営審議会」の設置とその議論や「中間報告」を含めて、父母・市民の学校給食の関心が高まっている。その意味では、今日岡山市の学校給食を全国の先進とする絶好の機会が訪れていると考える。極言すれば、岡山市の学校給食を改善する最後の機会とも言えよう。この機会を絶対に逃してはならないのである。

*主体性を放棄し、職員や市民・父母合意を抜きに、経費削減・委託へ直進する市教委
 ところで、こうした私たちの改善提案に対して、不可解なのは市教委の対応である。「学校給食運営審議会」で議論されている間、市教委は「今議論していただいているので…」として、給食関係職員の不安な気持に対しても、不安解消に向けた発言は一切無かった。そして12月24日の審議会の「中間報告」を受けた形で、1月18日の市議会文教委員会には、即座に調理業務を民間やPTAに試行委託することを明らかにした。加えて、調理の共同化や栄養士の削減等を行うとの態度を明確にした。
 ところで、市議会文教委員会開催の、その数日前の1月13日に岡山市職労と現業労組との共同で、市教委との話し合いが持たれた。その交渉の席で戸村教育長は、私たちの「現在の人員のままで良いから、改善提案を実施させてほしい。その機会を一切与えずに、民間委託を試行するとは不可解であり、認められない」との主張に対して、「みなさんの言うことは理解できる。考え直してみる」と言明したのである。こうした発言は、労使では「白紙撤回」を意味し、実際に戸村教育長は、自ら進んで両組合の委員長と握手し、話し合い・交渉に参加した給食関係職員の拍手に送られて、部屋を出ていったのである。その後、考え直した結果を言わないままに、先の市議会文教委員会での発言である。一体どうなっているのかと悩んでしまう。また、いくつかの学校では、校長が市教委等から聞いたと前置きして、「この学校の給食は来年度からPTAにより実施される」と報告もしている。まさに裏切られた感じであり、給食関係職員の心はズタズタに切り裂かれ、改善に向けた熱意も萎んでしまう、そんな最悪の事態を迎えている。
 また驚くことに、その後に私たちが入手した資料によると、市教委は運営審議会の「中間報告」が出されたその日付(12月24日付)で、中間報告が明らかにした「給食経費の5年間で21億円の削減」を、具体的に数字で示した内容がペーパーとなっていた。
 それによると「5年間で目標額21億円を達成するための方策」として、「@民間委託・28校・3センター、APTA委託・30校、B共同化・4校、C委託化に伴うパート職員削減、D栄養職員削減」等を数字を上げて明確にし、初年度である今年は、「@民間委託・6校、APTA委託・4校、B共同化・4校」としている。こうした数字もはじき出しており、かつこれにより退職勧奨または職種変更は約100人と見込んでいる。そして職名変更先について、食品監視員なども挙げている。これで明白なように「中間報告は」、審議会ではなく、まさに市教委が作成したものとすら言えよう。
 ともあれ、こうして市教委は職員や父母・市民の声も聞かずに「民間やPTA委託」に邁進している。本来約100人の退職勧奨や職名変更を実施するのであれば、職員合意は不可欠である。職員合意の努力すら放棄している。そうした結果として、また今回のPTA委託に関して、申し訳ないことに少なくない学校で、父母の間の混乱が生じている。先の市議会文教委員会へ提出した市教委の資料では、「PTA委託の場合、調理業務等に従事するものは保護者を中心とした学校関係者」と明記している。ところが、一部の学校の父母には、「PTAが引き受けても、調理は業者がする」と説明している所もあると聞く。ところで、PTAの方々で、そんなに簡単に給食づくりは可能であろうかと疑問に思う。家庭での食事作りとは異なり、テンプラを揚げる場合でも、多い学校では一度に700食〜1000食もつくる。まさに油に酔ってしまうと言えよう。父母が月に二回検便をして、調理をし、それでも一昨年の0−157等の食中毒が出た場合、PTAはその責任を取れるのだろうか。父母も子どもも不安である。また「民間委託にするよりはPTAで」と説明しておきながら、「岡山市中学校PTA連合会」は、会長名で去る1月28日に、「学校給食の運営について」の提案を文書で行い、その中で「単位PTAによる調理業務が出来ない場合は、外部民間委託を認める」と明記している。
 今日、父母・市民の方々にご心配をかけて申し訳なく思う。同時にPTAの方々が、子どもを思い、学校給食を大切に思うが故に、「民間委託に出すよりは、父母の手で」との善意の声を聞く時、今まで努力はしてきたものの、大切な学校給食の不十分さを残してきたことを心から申し訳なく思う。重ねて書くが、今回は改善する最後の機会と認識して、そのために努力を重ねたいと考える。

*給食経費を大幅に削減した上で、全国に誇れる学校給食を実現しよう
 ともあれ、今日こうした混乱を招いた原因は、主体性を欠き職員や父母・市民合意を抜きに、強引に「先に民間委託ありき」を実行してきた市教委にあると言えよう。同時に、「同種同業の仕事であれば、経費的には公も民間も同じであるのが普通であり、理論的には税負担していない公の方が安いはずである」として「民間の同様業種と同等の経費水準にする」との「中間報告」の立場に、意見の違いを感じる。この「民間の同様業種と同等」とは、つまりは学校給食を単に「お昼のお弁当」と考えていると指摘せざるを得ない。先にも書いたが、学校給食は単なるお弁当とは異なり、まさに教育の一環であり、かつ学校給食及び学校給食関係の栄養士や調理員にどこまでの役割の発揮を求めるのがが問われていると言えよう。前述の単に「お昼のお弁当」とのみ考えるならば、その経費比較は簡単であり、かつ安いだけを求めれば良いかもしれない。ただし、子どもたちが食べる学校給食の前提である「安心・安全」を基本に、私たちが提起した17項目を実施するとなると専門職員なしには出来ない。もし民間業者にそれを求めるとなると、莫大な委託料を求められることは必至である。もちろんPTAの父母の方々では困難なことは明白と言える。
 同時に、現在のままでも大幅に経費の削減は可能となることを明らかにしておきたい。まず第一に、現在の調理員は1970年頃に、岡山市がセンター給食を開始し、かつ米飯給食や完全給食を開始しており、その際に大量に雇用された職員が現在50歳代となり、全職員の三分の二を占めている。だからこそ、市教委が提出した資料には、給食調理員の平均賃金は栄養士と比較して年間110万円も高いとなっている。調理員の平均賃金が栄養士並になるだけで、110万円×350人=約4億円の経費削減は可能である。また現在学校給食会から給食資材を一括購入しているが、その費用は年間15億円にも達する。この学校給食会の食材購入価格は、市教委によると市場価格に比較して1.49倍となつているとの由。従って、この学校給食会からの給食材料の購入を、市場価格並にするだけで約5億円の削減は可能となる。加えて学校給食会に支払っている手数料は3%(ちなみに倉敷市は1%、全国では支払っていない自治体も多数あり)であり、たとえば倉敷市並に引き下げると約3千5千万円も削減できる。タッタこれだけで10億円近い経費が削減でき、その一方では子どもにも父母・市民にも喜ばれる「全国に誇れる学校給食」が可能となるのである。給食経費の削減については、その他にもいくつかの提案も用意している。こうしたことを全く無視して、民間委託や父母に混乱を持ち込むPTA委託をすることは、子どもたちと学校給食の明日のためには決してならないと確信する。
 そのために、今こそ市教委は職員合意・父母・市民合意のために努力すべきである。そして、私たちが提案した17項目の改善提案を実行する時間的な猶予を保障すべきであると考えるがどうであろう。
 読者各位も、是非とも学校給食についてのご意見・ご提案を本誌に寄せて欲しい。みんなで考えていこうではないか。


学校給食運営審議会の中間報告とその後の状況
「明日の子ども達のために、今こそ市民的な議論を広げ、
現行制度を生かし改善し全国的に優れた学校給食を実現しよう」

                    岡山市職員労働組合 副委員長 花田 雅行

はじめに・・豊かな給食への改善実施こそ市民は求めている
 昨年末の12月24日に審議会の中間報告がだされて以降、教育委員会は組合の17項目の改善要求には背を向け、民間委託やPTAへの委託の試行実施などを1月13日の交渉で提案しました。「改善提案の試行は一切行わせず、委託の試行は許せない」と行った交渉委員の追求に、教育長は「考え直す」と言いました。しかし、その後組合とは一切話し合いをせず、一方で民間委託やPTA委託の試行実施校を打診するなど既成事実をつくっています。しかも民間委託や調理へのPTA参画の試行等子どもを実験台にしようとしていることに、多くの市民からも批判が起こっています。「中間報告を基にもっと市民と話し合え」といった声が起こっています。子どもたちの食と発達、地域のまち造りにも貢献する学校給食の改善充実には、民間委託ではできません。学校給食で働く職員は、豊かな給食のために17項目を「今でも実施できる事は実施しよう」目に見えて「給食がよくなっている」と実感できるように全力をあげています。

1、審議会の中間報告は学校給食についての決定ではなく、受けた岡山市の教育委員会がどうするかその姿勢がとわれている。
 昨年末の12月24日に学校給食運営審議会は岡山市教育委員会に対して、「学校給食の在り方について」の中間報告』を行ないました。
 審議会の内容は、一人一人の委員が自分の考えを発言し、それが整理されまとめられたものであり、一つ一つについて突っ込んだ議論はまだ不十分な実態と言わざるをえません。
 しかも委員は、膨大な資料を配られ十分な説明も無く、試食と関係者の意見を15分間づつ聞いただけで、実際の調理の状況、搬入されている食材の状況、献立作成の状況、他都市の視察など何も行っていないのが現状です。教育委員会の審議会に対する姿勢が問われています。言い換えれば教育委員会が学校給食をどのように充実していこうとしているのか、どのように改善していこうとしているのか、その熱意が伝わってかなかったのが残念でした。
 一番大きな問題は中心にすえられるべき子どもたちの状況と給食が分析されていないことです。その原因は審議会が給食の中身(健康教育、安全管理、衛生管理など)と効率的運営の2つの部会に分けて審議されたことです。
 いずれにしても、報告を受けた教育委員会が、「まずコスト削減ありき」の姿勢で子どもを実験台にする「試行」という名で民間委託や同様のPTA委託を行うのか、現行の制度を生かしさらに内容を充実・改善して「市民へのリターン」を高めていくのかが問われています。
 審議会発足(99年8月5日)のとき「しっかり議論して下さい、どうするかは執行部、行政側の問題です」と市長はあいさつしましたが、まさに岡山市と教育委員会の姿勢が問われているといえます。

2、中間報告は『現在の給食の質の向上を目指して、経費削減の実効を着実にあげられることを期待している』個別の項目には様々な意見あり。
 審議会は、来年度の予算に反映させるために、8月に設置し12月には中間報告をするという短期間での中間報告となっています。主人公である市民に中間報告の内容を伝える情報公開としっかり議論のできる場を作る事が大切です。学校給食は21世紀の子ども達の食と育ちに関わる重要な問題であり、今後の答申に向け市民・保護者の意見を充分聞いて議論を進めてほしいと思います。
 中間報告の内容は岡山市の優れた制度(中学校での給食の実施、栄養士の全校配置、単独自校方式)が十分生かされていない中で、食器の改善、地場産食材の活用、自校献立、自校炊飯、食材・献立の制約の見直し、ランチルーム(食堂)、共同購入方式の見直し、学童保育への給食の提供、地域の高齢者への配食サービスなど内容の改善や向上を求めており評価できる点も多くあります。
 一方、運営の面では食材は岡山市学校給食会を通じての共同購入方式をとり市場価格の約1.5倍で購入していることや、3%の物資斡旋手数料の問題(他都市ではない自治体もある。倉敷市は1%)の見直しに触れている事は評価できますが、民間委託、第3セクター、PTAの参画など学校給食の制度に関わるものと定年年齢・職員の配置基準の見直しなどに関わるものが中心になっています。そのためコスト削減が優先され子ども達の学校給食の内容が低下する危険性も含んでいます。
 第二部会では「こういう方法論が幾つかの選択肢としてありますよ。どの選択肢を採用されるかというのは、現場の問題、あるいは行政との問題、いろんなものを考慮に入れないといけない、これというように決まるものではございません。こういう方法論がありますよということを報告する」ということでコストの問題でもいろんな方法論が列挙されています。
 幾つかの意見の違いや問題がある点について触れてみます。
 1)民間委託の問題点
 民間企業は本来利潤を追求するものです。他都市の例を少し報告します。最初は安く委託していますが、年々委託料が値上がりして3年後には直営より高くなっているいる状況があります。また給食を作る社員が衛生面での作業の大変さから次々と替わり、ついには委託を放棄する会社まで出ています。
 さらに、民間企業は日本給食サービス協会に参加している166社で全国を5ブロックに別けて独占的に行っています。その協会の学校給食委託の提言は@作り手の負担を考えない強化磁器の使用はやめる。A作業の大変な手作りはほどほどに。B食材の一括購入と冷凍食品の活用をC献立が複雑すぎて採算があわない。など『安くて良い給食の両立は困難』といっています。協会の提言からも質の低下や混乱を招くと言わざるを得ません。
 調理業務を委託することは、職業安定法44条の関係で市の職員(栄養士)は直接民間企業の社員を指導できません。すでに民間委託をしている大阪のY市では、配缶の時間に遅れて困る、汚れたままの食器が出されたということもあります。さらに栄養士は「最初の指示」「中間の確認」「出来上がりの確認」の3回だけ調理場に入ると説明されていたが、実際は1回入ると1時間以上になり午前中はほとんど調理場にいる状況です。企業の調理員さんがなれないことや人手不足からくる様々な問題点があり栄養士の献身的な重労働で何とか給食ができているようです。
 民間委託を積極的に進めている団体が発行している「行政サービス・ビジネス」(東洋経済新報社)では「地方行革の推進は民間のニュービジネス創出のビッグチャンスでもある」と地方自治体が行っている仕事を儲けの対象にしようとしています。この本には学校給食だけでなく「ごみ収集」「学校用務員」「保育所」「幼稚園」「施設の管理」など多くを対象にしています。まさに市民の暮らしや教育・福祉の仕事が営利目的に変質させられようとしています。
 2)破綻する第3セクタ−
 また第3セクターについては、ほとんど議論されていません。99年12月28日に自治省の調査結果では47%が赤字になっており、自治体が巨額の損失補填するケースが続出していると発表しました。今後さらに、自治体の持ち出しが増え重い負担になると言われており、財政面からも運営面からも多くの問題があります。
 3)岡山市の学校給食の苦い歴史を無視するPTAの調理参画
 本来PTAは、各学校に給食運営委員会を作り献立や食材へ親や子ども・地域の声を反映させるために積極的に参加すべきだと思います。しかし調理業務に携わる事は責任体制などに多くの問題を含んでいます。親の善意が結果として、教育としての学校給食の破壊に繋がらないようにしないといけないと思います。教育委員会は市議会の文教委員会(2000年1月18日)でPTAの参画は「民間委託の一形態」と報告しています。
 1月15日と16日にPTAの役員の方を訪問して話し合いました。「何かあったらこの地域に住めなくなる」「月2回の検便にかかったらショックだし、子どもがいじめに合わないだろうか」「家で3〜5食作るのとちがって、200食から1000食作るのだから、体が持たないし他人の食事をつくる責任は大変」「多くの人が共働きしている中で、一部の人に負担を強いいるのか」「保護者にはなんの話もなくどこで話が進められているのか」「もっと時間をかけて話し合ってほしい」「子どもを実験台にしないでほしい」「いまのままでいいんです」とおおくのPTAの役員の方が話しています。「民間委託をさせないために歯止めとしてPTA委託を考えている」という声もあります。しかし「子どもを給食の実験台にしてほしくない」と言う声が多くありました。
 岡山市では昭和34年(1959年)9月の「おそば」の日に清輝小学校で給食が原因で集団赤痢が発生しました。この苦い経験のもとに岡山市ではその後、それまでPTA雇用であった調理員を文部省の通達の実施とあわせ市の職員にし、それまでいなかった栄養士を全校に配置してきました。そして現在9割を超える調理員が調理師の資格を取り、経験を積んで子ども達のための安全な給食をめざして、不十分なところを積極的に改善し充実に向けて取り組んでいます。この集団食中毒という岡山市の学校給食の苦い経験を忘れては行けません。
 4)コストの削減は民間委託でなくても行える
        子どもと地域に貢献してこそ自治体の役割が発揮できる

 一食当たりの経費が平成10年度で731円(備品等の減価償却した場合)かかっており高いと指摘されその削減がいわれています。経費の内393円、52.4%が人件費でありこの削減に取り組むべきと審議会で中間報告されています。しかしコスト削減は民間委託等を行わなくても十分可能です。例えば栄養士は平均年齢が39才で平均賃金が620万円、調理員は平均年齢が52才で平均賃金は740万円となっていますが、調理員の年齢構成は調理員総数の351人中258人が51才以上で、2/3を占めています。(そうなったのは右の表のような急激な人口増加に伴なうなかで、米飯給食の実施などによるものです)生徒数減の中で今の制度のままでも今後10年程度で大幅な人件費減が予想されます。退職と新規採用で調理員の平均年齢が栄養士と同じくらいになると一人当たり120万円、総額4億円の削減になります。退職者の2割をパートにする現在の方法でさらに人件費はさがります。
 さらに岡山市学校給食会が一括購入している食材費は市場価格の約1.5倍で購入していると報告されており、約15億円が年間購入費ですから、これの是正で5億円は削減できます。また、3%の物資斡旋手数料を倉敷市なみの1%にすることで、4600万円の内3000万円が削減できます。これらのことで約10億円の削減は可能との試算ができるのです。
 一方、部活の生徒への給食提供、夏休み時に学童保育の児童への給食提供。地域の一人暮らしの老人へ毎日弁当を提供する、配達はボランティアの人にお願いすることなどの実施をすれば、現在一部の地域で保健福祉局で行っていますが、1食1050円かかっています。学校で行うともっと安い経費で実施できます。また地域の食材が学校給食で使われる、休耕田等を活用して野菜などを老人が作り、学校給食にその材料が使われることにより、老人の生きがい対策にもなり、まさに生きた教育としての学校給食になり、地域の活性化にもつながります。自校献立制度に改善すればこうした改善の一層内容のあるものになります。
 さらに今日アレルギーは大きな問題になっています。その実態調査を行い実行できる除去食などただちに行うことが求められています。
 こうした学校給食を単なる弁当屋でなく内容充実と地域を視野に入れた機能の拡大を進めてこそ「市民へのリターン」が高まり、自治体が学校給食を担う役割が発揮できるはずです。民間委託などを性急に実施するより、こうした充実改善こそいま必要になっています。

1965年 70年  75年 80年 85年
小学校 学校数   31  44  75  80  82
     児童数 23,356 30,512 42,875 52,839 50,643 以降減少
中学校 学校数  12  17   29  31  33
     生徒数 11,560 13,435 18,548 20,534 26,510 88年ピーク


3、財政危機のしわよせを子ども達を犠牲にしてよいのでしょうか
   子ども達の学校給食と民間の弁当屋さんや食堂を同一視できるのでしょうか
 岡山市が大きな借金を抱えているのは、財政局の発表でも建設分野が大きな原因といっています。この背景には国の補助金が削減されている事や、借金をどんどんしても良い制度を作ったからです。岡山市の一般会計に占める教育費は1990年度は15.7%でしたが99年度には10.3%まで低下しており、さらに教育の切り捨てが行われるのは大きな問題です。まさに子どもを犠牲にしようとしています。子どもたちは日本の宝と言われますが、その育ちを責任をもって保障することは国や地方自治体の責務です。 中間報告では、弁当屋さんなどと学校給食を同一視してコストの削減目標が設定されており、学校給食の教育としての役割や子ども達の姿が見えてきません。
 目標値とされている「5年間程度」での「21億円程度」の削減の根拠は、「同種同業の仕事であれば、公も民間も同じである」「売り上げの製造原価の構成比を民間の同様業種と同じ水準にする」「この考え方に基づいて積算すれば1食当たり200円軽減され、1年間で21億円程度となる」との報告でり、「この考え方」が問題になります。民間の弁当屋として子どもに1食与えておけばいいのか、教育としての学校給食の役割を果たしていくのか問われていると言えます。
 報告を受けた教育委員会は、「先にコスト削減ありき」ではなくて21世紀の子ども達が、人生を健康にすごすために「教育としての学校給食」を守り向上させる立場でどう取り組むのか、また地方自治体として食を通じて地域のどのように関わっていくのか今後の対応が問われています。同時にそこで働く職員にも、子どもたちの給食の充実・発展に全力をあげるのかどうか、さらに自治体で働く職員として子どもと地域の食に責任をもつのかが問われています。

4、21世紀の子ども達の食と成長を支えるために
            教育委員会に誠意ある丁寧な対応を求める

 「21億円の削減」を前提に「試行」の名で民間委託などの実施を急ぐ事があるとすれば大きな問題です。来年度の予算に反映させるとなると市役所内部では実質1月末までしか検討期間がなく、市議会で議論されても3月中旬までで、あまりにも性急すぎます。大阪の堺市でも半年間は掛けています。中間報告を教育委員会は市議会議員と学校長にだけ伝え、インターネットに1月中旬に入れ、市政だよりの2月号に概要を掲載しましたが、私たちがPTAの方を訪問して話あいましたが、まだまだ保護者の方には伝わっていません。ましてや協議は何等できていないのが実情です。
 昨年の11月1日に学校給食の改善をめざして17項目の要求を提出し、その要求書にもとずいて、1月13日に学校給食問題で、市職労・現業労組合同で教育委員会と交渉を行い、「PTA委託や民間委託の試行を4月から実施するの回答にたいして、栄養士・調理員から学校給食の大切さや改善していく内容の発言そしてPTA委託や民間委託では充実できないなどの追及のもとに、最終的には、「皆さんの熱意はわかった、考え直す」と教育長は発言し、両委員長と握手して交渉を終わりました。この教育長の回答は事実上「白紙撤回」の内容であり、市教育委員会には考え直した回答を持って再度交渉を行う責任があります。
 しかし教育委員会はその後交渉すら持たずに、1月18日に市民団体が申し入れに行った際に「民間委託・PTA委託の試行をする」と答え、市議会文教委員会にも「試行」として民間委託やPTA委託(民間委託の一形態)をすると報告するという極めて不誠実な態度をとっています。このことにたいして同日市職労と現業労組の代表は「13日の交渉経過と違う、早急に交渉を開くよう」申し入れました。しかしその後も交渉は開かれていません。
 一方20日に富山中学校の職員会議で校長が「4月からPTA委託になる」と報告したという情報が入り、その日に教育委員会に「交渉も持たず、話し合いも行わず、一方で委託の学校を決めるということはどうなっているのか、早急に交渉を持つよう」緊急に申し入れに行きました。その後教育委員会からの報告では「教育委員会からは言っていないし、考えていない」「富山中学校は、19日の新聞に文教委員会の報告が載っていたので『そうなった場合は協力せんといけんのでお知らせしておく』ということだった」という回答がありました。その後桑田中学校でも同じような話があり、教育委員会にたいして「学校で混乱が起こっており、決めていない旨伝えるよう」申し入れしました。富山中学校では保護者からの問い合わせがあったり、調理員が「私たちはどうなるのか」と不安になりパニックになっています。
 この交渉以前にも教育委員会は、私たちの要求に対して「審議会で審議しているので話し合いはその後に」といい、報告が出たらその日に民間委託の試行実施を打ち出す等、現場で働いている職員や労働組合を無視した対応をしていました。
 1月22日に開催された岡山市臨時財政問題調査会では、「学校給食運営審議会の中間報告」について協議されましたが、「組合・職員には知らせず、学校長が現場では伝える」などの状況があり、丁寧な対応が必要との話がされ、市長もこれに同意していました。しかし、その後教育委員会からは何等の対応もないままズルズルと日が経過しています。
 こうしたもとで25日に再度交渉を開くよう重ねて申し入れました。交渉を開かず、一方で既成事実を進める教育委員会の不当な態度にたいして、さらに28日に教育長にたいして市職労と現業労祖の両委員長で交渉を開くようもうしいれました。今回のように組合の側から交渉を開くよう再三に渡って申し入れを行うのは極めて異例であり、教育委員会の不誠実さと、子どもたちの給食に対する無責任さには強い怒りを覚えます。学校現場の混乱は必至でありその責任は挙げて教育委員会にあります。また労使の関係も破壊されようとしていおり、今後の市政運営に大きな影響を及ぼそうとしています。
 今教育委員会がなすべきことは、労働組合と誠実に交渉するという本来の立場に立ち返ること。そして民間委託やPTA委託の性急な実施でなく、17項目の改善提案を行った職員の熱意にこたえて学校給食の内容の改善こそ求められています。

5、全国に誇れる岡山市の学校給食を目指して、充実改善を進めよう
 子ども達はアレルギーや成人病など、多くの健康上の課題を抱えています。多くの保護者から「アレルギー食を作って対応してほしい」と要望が上がっています。しかし現状では、子ども達の状況を調査したものすらありません。早急に調査し、給食で対応をしていく必要があります。
 また自校献立にして地域の食材も利用し、自校炊飯なども行い豊かにしていくために、すぐにでも実施可能校の調査と試行の実施、地域の一人暮らしの老人に弁当を配るなど地域に密着した学校給食にしていけば、まちづくりにもつながっていきます。 栄養士・調理員が食の専門職として、自治体で働く労働者として市民・子どもたちに責任を持ち、誇りを持って働けるよう改善できるところはただちに取り組むことが必要になっています。給食だよりの発行回数を増やし、子どもたちの状況と献立の内容、家庭の食事への一口メモや親の声等のせながら学校と家庭を結び豊かな食生活を目指していくことも大切です。夏期休暇等を利用して公民館を利用して料理教室の開催なども歓迎の声が上がっています。
 私たちは17項目の改善提案を出していますが、食器の使用枚数の改善やセレクト給食、年末のお節料理教室、給食便りの発行増などできる改善を自主的に進めています。また自校炊飯がどの学校で実施できるか調査や試行、実施の職場討議など進めています。同時に学童保育の状況や一人暮らしの老人の状況調査等も行っていきます。民間委託でなく、提案している内容の実施や充実改善のために努力していきます。この提案には農業関係者からも歓迎の声が寄せられています。皆さんのご意見をお寄せ下さい。子ども達の食と育ちのために充実改善し、学校給食の民間委託を許さず子ども達の健やかな成長を願って議論を深め、運動を展開していきましょう。


17項目の実現が全校に誇れる学校給食をつくっていく道
そのために私たちはがんばります

岡山市職員労働組合
学校支部長 服部 一美(小学校栄養士)

今、子どもの「食」が大変
 今、子どもたちと話をしたり、様子をみると、朝ごはんを食べてなかったり、食べていてもパンとジュースだけとか、給食のない日の昼ご飯はラーメンという状況です。 特に中学生は部活帰りや塾の行き帰り、コンビニでパンやおむすびなど買って食べている姿や、小学生がスナック菓子片手に遊んでいる姿を通勤途中にも見かけます。 給食のある日とない日の栄養摂取を比べた調査では、給食のある日のほうがバランスが取れていて栄養摂取がいいという結果も出ています。試食会をしてお母さん方と話すと「自分が嫌いだと作らなかったり、買わない。給食ではいろいろのものをだしてもらって有り難い」「家では食べてほしいのでどうしても子どもの好きなものになってしまう。でも、給食では嫌いなものも食べているので安心だ」という声も聞かれます。農家の方から最近は根菜類が売れなくなったという話も聞きます。買い物にスーパーにいくとたくさんのお惣菜が売られていて閉店近くなるとほとんどのものがなくなっています。学生が部屋を探す時は近くにコンビニがあることが条件で、その近くから決まっていくということも聞きました。
 このような子どもたちの食環境のもとで学校給食を考えると“たかが一食”ではすまされないと思います。育ち盛りの子どもたちの心と体をつくる学校給食は単なるお昼ごはんとしてではなく、教育としての役割、そしてその機能をいっそう豊かにして地域とむすびついた学校給食として充実していきたいと思います。

17項目の改善提案を教育委員会へ提出
 一昨年11月の市議会で「年間180食、一日一食しかつくらない、一食710円もかかっている」と問題にされて、昨年8月に学校給食運営審議会が設置され、議論が進み、12月に中間報告が出されました。
 私たちは自ら仕事を見直し、今まで岡山市の優れた制度を十分に生かしていなかったことを行政の責任(システムの問題)にして、改善充実はできないとあきらめていたのではないか、優れた制度に甘んじていたのではないかとの反省もしながら、もう一度学校給食について見直し、今なぜ公でする学校給食が必要なのかを考えました。学校給食で豊かな「食」を子どもたちに提供するとともに、「食」についての学びの場として保障し、さらに、学校給食を通じて家庭・地域の食や食習慣を望ましいものに変え、地域・街づくりにも貢献していくことが行政としての役割だと思います。
 だからこそ、大変な食の状況がある今、子どもたちの一日の食や地域の状況などを視野にいれ、子どもたちのための豊かな学校給食、地域に根ざした学校給食を実現するために、17項目の改善提案をまとめ、11月に教育委員会へ「岡山市の豊かな学校給食をめざす要求書」を提出しました。給食現場で働く職員は、子どもたちのための豊かな給食のために「今でも改善できることはただちに実施しよう」「目に見えて給食が良くなっていると実感できるようにがんばろう」と取り組んでいます。

今こそ17項目の実現で学校給食の充実を
・自校献立、地域での食材購入をしていきます。

 このことで地域の農業の活性化やお年寄りの生きがい対策にもつながります。
 自校献立にし、各学校で食材を発注することで、学校行事や子どもの実態、地域にあった献立になります。学校の一角にねぎやパセリを植えてそれを使うことができます。野菜を作っている地区では、給食時間に「この野菜は○○さんのおじいさんが作ってくれたものです」と子どもたちに知らせたり、学校に来て一緒に給食を食べてもらうこともできます。また地域の生産者の畑に行って実際に作っているところを見たり、生産の苦労話を聞くこともできます。子どもたちにとって、野菜の生産が身近なものになれば、自然に感謝の気持ちもわいて、食べ物を大切にすることにつながります。2年生がミニトマトを栽培し給食時間に食べた時のことです。給食の返却にきた子どもたちが口々に「服部先生、A君今日トマトを食べたんよ。」と教えてくれました。A君も後で「トマトを食べたよ。自分でつくったから食べてみた」と教えてくれました。A君はトマトが嫌いで今まで給食で出てもどうしても食べることができなかったのです。だけど自分でつくり、収穫したトマトは食べられたのです。また、昔から農業をしているお年寄りたちは本当は野菜を作り続けたい気持ちやいい技術をもちながら、最近は作っても食べてもらえないからと野菜づくりをやめて、ゲートボールをしているという話を聞きます。そのお年寄りたちが作った野菜を給食に使うことでお年寄りの生きがいにもつながり、子どもたちもおいしい安全なものを食べることができます。
 先日、あるPTA幹部役員さんとの話の中で、「私は、学校独自に献立をたて、地元の食材を使いたい」というと、「ありがとうございます。親として嬉しいです。このことは栄養士さんに反対されると思っていました」といわれました。献立作成と食材の調達は栄養士の仕事なのに、お礼をいわれたことで、今までの岡山市の制度のおかしさを改めて感じ、何としても本来の形にしていかなければと思いました。岡山市は農業市だから農家の方と提携すれば、街の中心部の学校でも野菜は入れてもらえると思います。農村地帯のPTA役員さんを訪問をした時のこと、たくさんのキャベツの出荷準備をしておられました。「この新鮮なキャベツが学校で使えたらいいですね」と言うと、「私たちも学校で使っていただきたいです」と言われました。丹精込めて作った野菜をたくさんでき過ぎたからとトラクターでつぶしているニュースを時々見ます。もったいない、これが学校給食に使えたらといつも思います。

・地元の米を使い、自校炊飯で米飯給食の回数を増していきます。
 米飯給食についても、今は週2回ですが、日本の主食であり食文化を伝えることからも回数を増やしたいです。子どもたちもご飯の日を楽しみにしていますし、岡山市でも経済局からは米飯回数を増やし、地元のお米を使うことが歓迎されています。農協の方と話をした時も「ぜひ地元の安全なおいしいお米を子どもたちに食べてほしい」といわれました。1月の学校給食週間に子どもたちに給食で食べてみたいもののアンケートを取りました。その中にチキンライスがありましたが、今は自校でご飯を炊いていないので希望に添えません。子どもにできないことを伝えるのが本当につらく残念です。米飯給食が開始される前には回転釜でご飯を炊いていた調理員さんもいて、ぜひ学校で炊きたいというところもあります。また高知県南国市のようにクラスに炊飯器を置いてすぐにでも自校炊飯をしたい。炊飯器を購入してほしいという声も上がっています。

・食事にふさわしい食器の材質と種類に改善をしていきます。
 食器は献立にふさわしい材質(強化磁器)や種類を使って見た目もあたたかく食べやすくしたいです。料理は器で食べるともいいます。今のステンレス食器ではあまりにも冷たい感じがします。集団給食だから壊れないものでよいというものおかしいと思います。食器は大切に扱うものということは家庭でも学校でも一緒です。そしてパン皿にご飯ではなく、ごはんはお茶碗で、麺は丼で食べさせたい。今まで献立によって食器の使用枚数に制限がありましたが、最近はパンの日も食器の枚数を増やし、子どもたちが配膳しやすく、食べやすくしている学校が増えています。箸についても、スプーンやフォークをだしていて箸だけが家庭からの持参もおかしいと思います。どこに食事にいっても箸などがついてない所はありません。箸を忘れて先生に叱られることなどあってはいけないことだと思います。食べる前に机やカバンの中から箸をだしてきて水道で洗うというより濡らしているだけというところを見かけるなど、衛生的にも不安があります。私の学校では箸が出せるように話し合いを始め、調理員さんから学校で箸を出したいと合意をもらっています。あとは学校全体での合意と予算の問題です。何とかお金のやりくりをして新年度から出せるようにしていきます。

・全校に「ランチルーム」や「食堂」の設置を求めていきます。
 食事にふさわしい場である「ランチルーム」「食堂」で子どもたちに食べることの楽しさを実感できるようにしていきたい。
 給食を配膳している時に教室をのぞいて見ると、机の上に習字道具や絵の具の筆を洗ったバケツ、体育館シューズや体操服などがのったままの机に給食を配っていることもあります。勉強したあとの机でなく食事にふさわしい机や部屋で食べることでよりおいしく感じます。子どもたちも「ランチルーム」で食べることをレストランにいっているみたいと大変楽しみにしています。

・食べる時間にあわせた適温給食をしていきます。
 温かいものは温かく、冷たいものは冷たくして、おいしく食べてほしい。
 できるだけ食べる時間に近づけて料理を仕上げ、適温給食になるように休憩時間の変更もしながら配缶しています。

・アレルギーの子もみんなと同じような給食を食べれるように除去食をつくります。 今アレルギーをもった子どもたちはたくさんいます。まず、どれくらいアレルギーで食事の制限があるかなど、子どもたち一人ひとりの健康の実態を調査し、各学校で保護者や校長、担任、給食関係者(必要により主治医)が一緒に話をし、できる範囲の除去食などもしていきたいと思います。今でも学校によっては除去食をして子どもや親からは大変喜ばれています。教育委員会としても、除去食を認めるよう働きかけていきます。

・三期休業には学童保育の子どもたちに給食の提供をします。
 バランスのとれた給食を提供することで、成長期の子どもたちの発達を保障します。学童のお母さんから夏は腐りやすいから弁当づくりにも気を使うという声も聞いていますし、弁当を業者に頼んでいるところもあるようです。
 給食現場では実施をしたいと声もあがっています。

・部活の子どもに補助食の提供をします。
 放課後部活をし、夕食を食べるまでの時間が長く、おなかをすかして、途中でファーストフードなど買って食べている生徒もいます。給食室で補助食をだせば買い食いをしないですみます。保護者からの強い要望もあり、その声にしっかり答えて何をどの様にしてだすことができるか話し合いを進めます。

・料理教室などで地域の食の改善やつながりを深めていきます。
 料理教室を開催することで地域の食改善にもつながっていきます。地域の公民館を使って昨年の夏休みには親子料理教室をしたり冬休みにはおせち料理教室の開催もしました。全地域で三期休業を利用しての料理教室が開けるようもっと地域とのつながりをつくっていきます。

・給食だよりの発行回数を増やし、レシピ集の発行をします。
 食の専門家として学校では給食を通じ、子どもたちに食の大切さを伝えるために食指導をし、給食だよりやレシピ集を発行して地域や家庭にも「食」の大切さを伝えていきます。昨年秋ごろから給食だよりも発行回数を増やし、タイムリーな内容を伝えるよう努力しています。みんなで給食だよりを持ち寄り内容を検討しながらより充実したものにしていきます。またレシピを知らせることで、家でつくってみたとか、いつも楽しみに待っているのでたくさん教えてほしいとの声が返ってきます。一部の中学校や小学校では卒業の時にレシピ集をプレゼントしています。

・一人暮らしのお年寄りへ配食サービスをしていきます。
 地域をまわって直接話をお聞きした時に、一人暮らしのお年寄りのなかにはは配食サービスがあることを知らなかったり、どうしたら配食サービスが受けれるのかもわからない人もいました。「配食サービスがあったらぜひ受けたい。」「配食サービスができるようにしてください。」との声がたくさん寄せられています。一部の地域ではすでに配食サービスが行われていますが、地域のお年寄りのために学校施設を使い、学校の給食職員で「お弁当」をつくり、地域のボランティアの方に配っていただくことで、市内全地域で実施することができます。

今が学校給食の充実改善のチャンス
 このような17項目の改善提案について、すでに改善を始めていることもあります。正直いって不安やしんどいところもあります。しかし、子どもの心と体の発達のために今が改善のチャンスです。栄養士がいて、調理員がいて、給食施設があることを最大限にいかしていきたいと思います。今そのことが問われていると思います。しかし、教育委員会は私たちの改善充実の願いには応えず、4月から民間委託やPTA委託などの試行をすることに固執しています。私たちの提言している17項目の改善を実施するためには、専門職である栄養士、調理員が必要です。民間委託やPTA委託では17項目の実施はできないと思います。また、先日行われた講演会の中で「学校教育の場は行政が責任をもつ分野で市場原理を適用するにふさわしくない分野です。市場原理とは民間がサービスを提供し、それを買った人が責任を取るシステムです。買う側に選択する力がある場合に適用できるのです。学校給食は子ども自身が選択できなく親の選択です。子ども本人が選べない分野に選択をいれることは間違いです。学校給食では市場原理の原則を押さえると同時に内容に踏み込んだ提起が必要」という話を聞き、私たちがしている改善のための運動に間違いないことを確信しました。

PTA訪問や給食フェアで市民から改善充実へ多くの期待の声
 栄養士や調理員、組合役員とのPTA役員の訪問や豊かな学校給食をめざす市民運動実行委員会で学校給食フェアを開催した中で、学校給食をめぐる情勢や改善充実の大切さを伝え、市民の方の意見を聞きました。多くの役員さんは「そんなになっているとは知らなかった」という反応でした。また「民間委託は反対。PTA委託は無理」「給食は大切なことなのに安易に進めるな」とか「市教委は市民に意見を聞かずに無理やり進めるのは問題だ」「子どもを犠牲にしないで」「委託などより直営でコストも下げて改善できるのだから、なぜそうしないのか」「現場のことをわかっていない発想だ」「コストを下げるのも岡山市全体で考えて、給食だけにもってこないで」という意見がありました。そして「学校給食の人件費は高いというが、調理員の資格をもつ人が調理してくれるその安心料を私たちは払っていきたい」「委託すれば余裕がないので、改善の提言や食教育などは先送りになるのではないか。今の内容を維持しさらに充実させていくことが大切」という期待の声も出されました。

学校給食へのPTAとしての本来の関わり方
 中学校PTA連合会の中で「民間委託は反対。民間委託をさせないためにPTA調理をするのだ」として準備が進められているようですが、PTA調理については意見がまとまっていないことも聞いています。PTAとしての本来の関わり方としては、各学校に学校給食運営委員会といった組織をつくり、その学校の給食について、子ども、親、地域の生産者、教職員、学校給食関係者が一緒に考え、話し合うことで子どもや学校の実態にあったものになります。その場で学校での子どもたちの様子を伝え、地域に伝わる行事食や野菜をどこから仕入れたらいいかなどの情報をいれてもらうことで学校と地域とのつながりが大きく広がると思います。

提言をした改善内容に確信をもってその実現の運動に全力をあげてがんばります。
 市民の方からの期待の声に、私たちが17項目の改善提言をだし給食の充実をしていることに確信をもつことができました。私たちは子どもたちのためにいい給食にしていく今が改善充実のチャンスだと思っています。教育委員会は4月より民間委託やPTA委託の試行を無理やり進めようとしていますが、コスト削減の試行ではなく、市民や職員の「改善努力をさせてほしい」との声に耳を傾け、直営のままでもコストの削減が図れる多機能化と内容の改善充実のための試行を是非して欲しいと思います。私たちは栄養士と調理員が心を一つにして、子どもや市民の期待に応えて、より豊かな給食をつくるためにがんばります。そして制度だけでなく、内容でも全国に誇れる岡山市の学校給食にしていきたいと思います。


中間報告に思う
子供たちにとって充実改善となるものであってほしい。


中田 万里子(栄養士)

 1月にクリ−ム煮のルウをバタ−4gと小麦粉4g(一人当たり)で手作りしました。隣の学校や6倍もの児童数の学校がしていると聞いて挑戦してみたのです。簡単にしかも上品な味で良いものができました。残量はなしです。職員は勿論のこと多くの児童がいつもよりおいしいといった反応で、微妙な味の違いがわかってくれたことを嬉しく思った日でした。

 子供の声に耳を傾けてみれば、本場の香辛料を使ってシシカバブ−風に牛肉の串焼きをした時の「生まれて初めての味じゃった、おいしかった。」とか、手作りメンチカツやえびコロッケの時の「ああおいしかった。家で作ってもらうから作り方を教えてん。」など、栄養士冥利・調理員冥利に尽きる言葉をもらっているなと思います。
 足守地区は共同購入に属していません。献立や食材の情報交換をしながら、地元業者や共同購入の業者などに直接発注しています。産地を知らせてもらったり、国内産・県内産・手作り・旬・安全性優先で食材を購入しているのは、共同購入の場合と同じですが、自分で注文するので、食材に対する思いが深くなるような気がします。

 岡山市学校給食会に加入していないので、利用金額の3%に当たる「会費」を払わなくてすんでいます。児童数減少で運営費が少ないので会費を払える状態でもありません。

 また、臨時休校になり給食中止した時でも、前もって地元の業者の了解を取っているので、ほとんどの場合、次の日からの献立変更をしないで給食を作ることができます。共同購入校のようにその週の献立が全部変わることはありません。

 以前私が共同購入校にいる時に、自由献立の日に柿を使いました。その時の品質の良さは今でも良く覚えています。全市的な使い方をしない時の方が、安価で質も良かった印象を受けています。少量・個別への対応など柔軟な対応が求められる時となっています。

 さて、私の学校の話に戻りましょう。5年目ともなれば保護者で親しくなった人も増えました。料理の作り方を聞かれたり、逆に教えていただいたりです。
 足守地区のメロン祭りやもみじ祭りには地元の人たちが「間倉ごぼうのコロッケ」「ごぼうのハンバ−グ」「ごぼうのてんぷら」「おこわ」「メロンジュ−ス」「ほたる焼き」などのテントを出します。来年に向けてごぼうの料理を開拓したいとの話があり、小麦粉は日清製粉に、作り方は啓運に問い合わせて肉まんの資料を集め、またこれはと思われる料理の資料を提供したところです。

 地域の食材は広く岡山市・岡山県で考えても豊富な食材があり、共同献立でも取り入れられているところですが、各校で注文すれば、行事や献立に合わせてより適切なものとなるのではないでしょうか。
 狭く足守の地元を考えてみると、柔らかくて香りの高い間倉ごぼう、しいたけ、足守メロン、養鶏場の新鮮な卵(勿論検査済)、その他の野菜でも家族で食べるために農薬を控えて作ったものがたくさんあるのではないかと思われます。ごぼうなど学校のためにと良心的に提供してくださる方もすでにありますが、料理や食材の掘り起こしも楽しみな今後の課題とし、旬をとらえて取り入れたいと思っています。

 学校の年間計画の中では、ねらいを明確にして様々な行事給食を大切にしてきました。春には、一年生を歓迎するお弁当給食をします。縦割り班で低学年に優しく対応することで、高学年としての自覚が増すように見受けられます。給食委員会の活躍の場です。
 また、ある時は”学区を探険するんだけどその日は給食時間に遅れるかも”と担任から相談を受け、「お弁当にして出前しましょうか」と話がまとまりました。臨機応変な対応ができます。子供たちも担任も大喜びでした。近々再度、出前弁当の計画があります。

 秋には、畑で収穫されたさつまいもを使って、学級活動でスイ−トポテト作りをしました。手際良い班、丁寧な班、アイデアいっぱいの班など個性豊かでした。でき上がりも各班の特長が出ていたように思いました。子供たちは大満足でした。
                                       クリスマスの頃にはバイキング給食です。放送でバイキングのグははっきり発音しないと大変です(?!)。奪い合いにならないように時々くだものやジャムのセレクト(選択)給食をして慣れるよう配慮します。食数の多い学校では無理だと考えられるかもしれませんが、くだものだったら小さく切ることで、実施できる学校が増えるのではないでしょうか。プラムやパイナップルを利用して種類を増やすこともあります。3〜4種類並べるととてもきれいです。

 テ−ブルマナ−給食は卒業前か、または秋の遠足日に6年生が学校に残っている時にします。”ちょっぴり大人に近づいたみなさんへ”という切り出しで、マナ−指導をします。この日は職員も遠足より留守番をしたいなあと言われるくらいです。食器は家庭科室のものを、ナイフとフォ−クは給食用を使って食べます。
 食器を運ぶことときれいに洗って消毒をすることが少し大変ですが、6年生の素直に喜んでくれている感想を見ると私たちもやりがいを感じます。

 うまくは言えませんが、給食というひとつの窓から子供たちの心と身体の成長をみることができるといって過言ではないと思います。公務員として損得抜きの気持ちで公平に子供たちを見守ってきたからこそ、子供や保護者との信頼関係も生まれ深まってきたのだと思うのです。

 何だか私の回顧録のようになってしまいましたが、この度の厳しい状況は、自分たちのしている給食を見つめ直す良い機会になったと思います。
 給食の一食が高価についていると具体的な数字で言われ出してから随分日にちが経ちました。審議会が作られ中間報告も出されました。この間、私たちのしてきた仕事への理解はないのかと悲しくなったり、民間委託やPTA委託や共同化では子供たちの給食の質低下は避けられないのにと怒ってみたり、今までしてきている行事給食はどうなるのと心配だったり、複雑な気持ちです。

 確かに企業努力は必要で、とっくの昔から、切り方(マ−ボ−豆腐を見てもらうだけでわかると思います。)適温供給(仕上げ配管時間をぎりぎりにします。食器を温めることも)手間賃(パンのクラス分け代金やスライス代の倹約ため自校で分けています。)材料代(ラ−メンの冷凍とりがらス−プはKg1000円、鶏のがらと豚骨でだしを取ると両方で320円で済みます。その上おいしい。)燃料代(かなり寒いところですが、ひざ掛け持参で休憩室のガススト−ブを極力我慢しています。)残菜処理(コンポストを使っています。)など工夫をしてきています。

 そして今また、尚一層の充実を目指して頑張ろうとしている私たちを応援してほしいと切に願っています。


子どもたちのために給食を充実させたい

中井久美子(給食調理員)

 もう随分前のこと。私は給食調理員として採用された4月、配置された小学校の新任式で子どもたちを前に、「みなさんが給食を楽しみにしてくれるよう、精一杯頑張ります。」と、緊張してあいさつをしたことを、今もはっきり覚えています。あれから永い年月が流れました。子どもたちは今も給食を楽しみにしていますが、私はあの初心を忘れずに、本当に精一杯頑張って来れたかなと、謙虚に自分の今までの仕事を振り返っています。
 今、学校給食がコスト主義の立場で見直され、切り捨てられようとしています。昨年末に出された学校給食運営審議会の中間報告には、私たちが掲げた改善点も盛り込まれているものの、一方ではコストが高いという議論の中で、民間委託やPTAによる給食運営などの方策が提案されています。この中間報告を受けて教育委員会は、この4月から「試行」という名目で民間委託やPTA委託を実施しようとしています。子どもたちを実験台にする試行は絶対許せません。
 私たち給食関係者は、味覚を育て食文化を育てていく責任を自覚し、専門性を発揮しながら子どもたちに作り手の思いが届く、きめ細かい給食をめざして頑張っています。それぞれの職場では、栄養士、調理員の思いを寄せ合い、適切な裁量と判断で、豊かな経験と知恵が充分に発揮されて、子どもたちのための給食が出来上がっています。「ぼく給食大好きだよ。」「みんなで食べるとおいしいよ。」「私、給食当番がんばったよ。」 熱い思いで頑張っている私たちには、子どもたちの素直な感想は、何よりの励みです。また、私たちは学校行事にも積極的に参加し、先生方との信頼関係を育て給食への理解を深める努力もしています。体育会で子どもたちの活躍に感動し、卒業式の晴れ姿に涙しています。色々な場面の子どもたちに出会うことで子どもたちに元気をもらい、自分たちの仕事の大切さを再認識しています。
 ここで、給食室の一日を紹介します。
朝、身仕度をきちんと整え作業が始まると、本当に真剣勝負です。限られた時間内での大量調理です。野菜の下処理から始まり裁断、その日の献立の下準備も多く、調理は子どもたちの食べる時間から逆算して開始されます。特に、揚げ物、焼き物は時間がかかり大変ですが、豊かな経験と工夫で時間に間に合わせています。そんな中でも、野菜、果物の洗浄、器具の消毒、手洗い、食材の置き場所など、徹底した衛生管理にも気が抜けません。調理の作業は種類も多く同時進行で進めていきますが、毎日働いている仲間との連携プレーです。経験の中で生まれた暗黙の了解のようなこともあり、作業は静かに着々と進んでいきます。それでも忙しい献立の日は、作業の流れと分担をしっかり確認し本当に時間と競争です。しかも、消毒用のお湯はいつも沸騰し、機械も刃物もあり危険と隣合わせです。しかし、そこはプロ。ケガはほとんどしません。子どもたちには、おいしいのはもちろん、熱いものは熱く、冷たいものは冷たく、見た目も美しく、食べやすく、配りやすい工夫をした給食を届けようと、奮闘しています。もちろん、失敗もやり直しも許されません。午後は、返却口に却ってくる食器や食缶を引き取る作業から始まります。目が回るほどの忙しさですが、子どもたちとの会話も大事です。ごちそうさまの元気な声で午後の作業がはかどります。洗浄もとても数が多いので大変です。食器が3種類、食缶、ボール、スプーン、お玉など、丁寧に洗い、丁寧にすすいで煮沸消毒です。次の日の献立に合わせて、食器やスプーンをセットしています。洗浄がすんだら、カウンターのふきそうじ、給食室の外回りの清掃、次の日の食材や調味料の用意、ゴミ出しなど、もう一仕事です。すべての作業が片付くと、今日の反省です。子どもたちのために本当に精一杯の仕事ができたか、そうでないことは素直に反省し次に生かします。一日の仕事内容は誰でもできるものではなく、誰にも任せられません。
 私たちは、食の専門家としての役割を家庭、地域にも視野を拡げ、より充実した豊かな岡山市の学校給食をめざして、画期的な17項目の改善案を掲げ、みんなで積極的な改善へ一歩を踏み出そうとしています。
 西大寺地域では各校で箸を提供し、食器も子どもたちが食べやすい数と種類を使用しています。楽しいバイキング給食やセレクト給食も、栄養士、調理員の工夫でそれぞれの形で実施されています。アレルギー除去食も、いくつかの現場では簡単な除去は実施しています。制度が変わらなくても、ただちに出来ることは少しずつですが実行しています。
 まだこれからの改善項目についても、実施に向けての職場討議や調査を進めています。私たちは食の専門家として、自治体で働く労働者として市民や子どもたちに責任を持ち、より充実した豊かな給食になるように、みんなで心をひとつにして取り組んでいきます。
 教育委員会は、民間委託やPTA委託の試行を急ぐのではなく、私たちの「改善努力をさせてほしい」の声を受けとめ、実施できる体制を整えるべきです。
 私たちは間委託など決して許さず、子どもたちが主役の学校給食をしっかり支えより充実させて、21世紀の子どもたちに贈ります。


「学校給食運営審議会中間報告の評価について」

豊かな学校給食をめざす市民運動実行委員会
代表委員 日名 泰之(おかやまコープ)

 まえがき
 岡山市議会での「他府県の学校給食制度の民間委託などの流れを受けて、岡山市でも検討すべきではないか」との議員質問や、萩原市長の「岡山市の学校給食のコストは高すぎる、見直しが必要」との議会答弁などを契機に、学校給食運営審議会が設置されました。
 この審議会は、基本的には民間委託化を前提に、学校給食に関わる市財政の圧縮を目的にした答申を求めるものとして設置されるという、市民からすれば驚くべきものになっています。
 今、真に学校給食のあり方の検討が求められているのは、岡山市の学校給食が始まって以降の社会の変化や、児童・生徒を取り巻く社会環境の変遷の中で、また、児童・生徒の勉学や、生活に臨む変化などをふまえて、教育としての学校給食の新たな課題を整理し、施策の発展めざす点にあります。
 児童・生徒を取り巻く社会の状況変化をみると、
1 偏差値教育に代表される、受験を唯一の目標とする教育の元で、一人一人の児童・生徒の個性や、能力を評価し伸ばしてやる教育が廃れ、個性が認められず、目標が持てないで落ちこぼれ子供が増え、学級崩壊や、不登校、非行へと駆り立てるベースを作っている。いろいろな生き方や、働く場があること、社会の仕組みの中で、一人一人の個性を生かして、やりたいこと、なりたいことをめざし、そのようにいきいきと成長した人々が社会を構成してゆくことを教える場が今求められている。
  学校給食は、その意味で、栄養士さん、調理師さんが同じ校舎で児童・生徒と接して授業・教科を補い、優れた社会教育になっていることを正しく評価する事が欠かせない大事なことである。この評価に立って、その役割のどこにひずみを生じ、何が十分に発揮できないでいるのかを検討することが大事です。
2 自給自足、食糧不足で生活が絶えず脅かされた終戦直後までの庶民の暮らしが、大量生産、大量消費の時代に移り、輸入食品、加工食品が溢れるようになった現在、食の環境変化は、子どもの食生活、食習慣と嗜好を変えつつあります。豊かになることは、社会の進歩・発展の恩恵を受けることで積極的な面があるが、その対局に、栄養の偏り、カロリーの多加、日本の食の伝統の継承が途絶える、挙げ句の果てに、食を粗末にし、体をこわし・・・と将来への不安ではなく、既に抜き差しならない状態に子どもを追いやっている実態が広がっている。それは、核家族化、女性の社会参加の中で、一層拍車がかかっている。このような変化の中で、子どもの食を考え、伝統食文化を継承し、豊かな食生活を取り戻すための社会的な支援機構の構築が求められているが、学校給食はその重要な一環を担わなければならない。
3 農産物の生産と流通がグローバル化する中で、加工食品の製造や流通の大きな変化の中で、日本農業が危機に直面している中で、あらためて、地場で生産されたものを地場で消費する意識的な努力が求められています。流通と生産のあり方が根本から問われている問題であるが、学校給食における食材の調達は、社会の流通の一環としての役割から、地場産の活用を意識的にすすめ、そのことによる流通コストの軽減などの新たな経済的見直しの場としても課題が残っているはず。
 以上の点を考えるならば、岡山市の学校給食制度は、自校方式を前提とし、すべての学校に栄養士と調理員が配置され、教師と連携出来る社会教育、食教育の充実を図り、子どもの食生活を改善させ、農業の見直しに貢献出来る等々の多くの点で、優れた基礎的な仕組みを作り上げることが出来ています。この大きな財産と先進性を正しく評価し、より今日の状況に見合った発展、充実への検討が求められている。
 学校給食にかかる経費問題を考える際に、民間の営業指数を以て評価の物差しとして、単純に比較し、高すぎる、民間委託が必要と断じるのであれば、岡山市の教育への姿勢と在り方が問われ、将来に大きな負の付けを課すことになると思われます。

 以下、学校給食運営審議会の中間報告について問題点を指摘し、教育委員会が2000年度から試験的な実施に踏み切るしていることへの見直しと、審議会の最終答申では、市民が将来を見通して納得のゆく検討結果としてまとめられることへの要望をまとめた。


 今回の中間答申には、具体的な改善項目の中には、2000年度からすぐ実施に移って欲しいことが多く含まれています。中には遅きに失していると指摘されるものもありますが、是非とも、最終答申を待ったり、財政難を口実に引き延ばすことの無いような実施を強く要望します。
 しかし、学校給食を巡って、もっとも基本に関わる点で、決定的に重大な問題を持っています。それは、財政難を背景に福祉予算が削られ、教育費に削減の矢を射る今日の日本の国政の影響を大きく受け、本来の地方自治体のあり方を逸脱する多くの自治体があることと共通する問題を背景にしているように思われます。
 そもそも地方自治体は、こうした厳しい社会の動向の中で、住民のくらしの環境と、子どもの将来への展望に向けどう応えるのかの視点で、いろいろな施策は検討されなければならないものです。地方自治体の財政再建や健全化の視点は、なりふり構わず、住民サービスを縮小させ、自治体職員にしわ寄せを強いる物ではなく、その逆に住民本位に施策の無駄を見つけ、不要不急の事業の再検討の中で財政再建を図ることが求められています。
 中間答申の持っている誤謬を正し、実施の急がれる物を早急に実施に移すように求めることが大切です。

(1)中間答申のもっとも大きな問題点は、答申全体に亘って学校給食のあり方を考える視点が一貫して貫かれていないことです。最近発表された文部省の諮問に対する審議会答申と照らしても、大きくずれているように思われます。
  以下に指摘する点について、広く市民にこの問題点を広報し、世論の良識を反映できるようにすること、教育委員会、「給食運営審議会」においてこの重要な問題での再検討をしていただき、真に解決すべき重要な事項が真剣に検討されるよう強く求めます。

@ その重要な第一の点は「民間委託」の結論を引き出すための物になっていることです。
 「4項の学校給食のあり方」では、「次代を担う児童生徒が生涯を通じた健康づくりや食文化についての基礎知識を身につけ、集団生活のマナーやルール、経費のしくみなどを体験を通じて修得する教育的意義は依然大きい」と、学校給食の教育的視点の評価を指摘しながら、その視点で現状評価をしたのかと疑われるような内容になっています。
 岡山市の学校給食の優れた到達点が、自校方式を基本に、栄養職員を各校に配置する事で、子どもの最も近いところで、給食を通して食や健康の教育を進めることが出来るところにあり、また、そのことで、学校毎に献立を作り、献立に合わせてより多く食材の調達も地場の物を利用できる体制にもなっていることです。これは給食の持つ教育的視点の基本のはずです。
 しかし中間答申は、この点については積極的な評価をせず、「制度開始以来、社会的な変化の中で社会的要請との間に格差が生じ、運営そのものに制度疲労が生じている」と坊主懺悔的な評価を行い、結局は、学校給食業務の効率的な運営への対策として、栄養職員、調理員の削減と民間委託化を目当てにした、民間企業的な合理化策への結論の導き方になっていることです。

A 第二は、費用の問題の捉え方にあります。
 中間答申は、教育費にしめる給食に関わる費用の占有率や、1食あたりの費用の増加の問題を指摘し、生業としての営業係数と比較して単純に費用がかかりすぎ、多すぎるとする事に大きな問題があとの指摘には積極的ですが、しかし、本当に分析したのでしょうか?
 1)学校給食を行っている全国の自治体との比較で、岡山市の場合はどのような水準にあるのでしょうか?
 2)教育的な意義や役割を持つ学校給食の評価をするとき、民間の営業の計数との比較をすることにどんな意味があるのでしょうか?
こうした単純な疑問が湧いてきますが、この基本問題で正面から検討がされた気配は何も伝わってきません。
 本来、学校給食は、教育と福利の面からスタートした物であり、民間の経営的な基準で成り立たない面を公費でまかない、その目的を達するところにあります。その効果がより適切な物になっているかどうかの分析の物差しを持って評価すべきです。とても教育基本法など教育の理念に立って考える立場とは相容れない、大変な誤謬がここにあります。

B 真に検討されるべき課題
 今日、真に検討が求められている視点は、以下の点にあるはずです。
1)構造的な不況の社会環境にあって、子どもの教育と給食問題への市民の第一義的な要望がどこにあるか。その把握と対応策の検討。
2)今日まで作り上げた制度の良さが生きていない根本の原因は何にあるか。その分析、究明と改善点の具体化。
3)これからの子どもの教育の在り方を考えたとき、教育環境の一分野として学校給食を充実すべきは何か。その充実を図る方途の検討。

あらためて、中間答申の基本点での誤謬を正し、審議の見直しを求めます。

(2)「4項の学校給食のあり方」や、「5項の諮問事項に対する意見」の中で、保護者や学校関係者から、この間改善が指摘されてきたことや要望された事項について改善すべきとあげられた点も多く含まれていることは評価できます。
  それは以下の点です。
・ 献立に見合った食器具の使用
・ 地場食材の使用促進、米飯給食の増加
・ 自校炊飯方式の検討
・ 給食センターへの保温・保冷車の導入
・ ドライシステムの給食場への転換・整備
・ 学校栄養職員のチェック機能と指導性の発揮、及び保健所機能との連携強化
・ 学校行事に合わせた献立・・弾力性のある給食
・ 食材や献立の制約条件の見直し改善
・ ランティルーム(食堂など)の整備促進
・ 献立工夫で残菜を少なくする
・ PTA組織による学校運営方途の検討
・ 共同購入方式を含めて食材購入システムの見直し
・ 削減できた経費を境域施設・設備などの充実に還元

(解釈に幅がある物))
 ただしこれらの事項の中には、解釈に余地を残しており、再確認し必要であれば是正を求めるべきこともあります。
@ 自校炊飯方式の検討、給食センターの保温・保冷車の導入に関して
  いずれも大切で・必要な改善項目であるが、部分的に継続されている共同調理場方式(センター方式)を現状のままで残すことを前提とする場合に、多くの矛盾を生みます。
・ 自校炊飯方式を検討するということは(段階的導入にしろ)、全校が自校方式で賄われてこそ生きる取り組みです。他府県で、様々な試みがなされていますが、ただ単に目先を変えて子どもの気を引くというお寒い発想ではだめな取り組みのはずです。この点はどういうことなのか?
・ 保温・保冷車の導入も、共同調理場方式(センター方式)を単独校調理場方式(自校方式)に切り替え、岡山市のすべての子どもに同じ条件を提供することが前提なのか、将来ともセンター方式を残すのかで、この対応の位置づけは大きく違ってきます。センター方式を実現するまでの過渡的対応策と受け止めたいが。
・ 中間答申では、自校方式の方がセンター方式に比較して1食あたりの経費は安いとの指摘がされている。従って、年度計画を明らかにして自校方式へ切り替える策を盛り込み、この二つの改善が真に生きるようにすることが必要です。
A 学校栄養職員のチェック機能と指導性の発揮
 この内容は、現状評価が何か、めざす物が何かが現状分析のどこにも明確にされていません。栄養職員の機能は現状でもきわめて明確であるはずです。(栄養バランス、保健衛生の管理を下にした献立立案と調理職員との連携にあるはずです。)この上にどのようなチェック機能が不足しているのか、その指摘がないので理解が出来ません。
 この機能が十分現状で発揮できていないというのであれば、それは、本当に制度に起因しているのか、その場合は制度のどこか。制度ではなく、運用面にあるのか、その場合は、運用指導の側(管理者)に問題はないのか。
 そうした「吟味なくして、システム全体とおおざっぱにとらえて、挙げ句の果てに勤務評価が強化される」などにならないことをしっかり押さえ、掲げた趣旨と内容を正確にすることを求めます。
B PTA組織のよる学校運営方途の検討に関して
 5項の「(4)その他学校給食の運営・改善の上で必要な事項」の中に、保護者の役割・責任としてふれられていることと関連する事項で、給食現場や、学校の教育の中で学校給食をどう子どもになじめせ、食教育の効果を上げるかの視点で、保護者がその運営などへ参画するというのであれば歓迎すべきことであるが、参画の名を借りて、保護者を「体の良いパート調理職員に」との解釈も含まっているのではないかとの危惧が生まれます。

(3)基本的な視点の誤謬の是正と共に、変更事項から削除または最終答申で削除を明記するよう求めること。
 1、5項の(3)学校給食の効率的運営の中で具体的な改善項目があげられていますが、以下の点については、変更もしくは是正を求める必要があります。
@ 職員の賃金体系、定年年齢
 この問題は市の職員の雇用関係に関わり問題であり、労働関係法によって労働組合と市の間で協議して決まる問題であり、学校給食問題に絡めて提言すること自体がどうなのかというあり方にふれる事項です。答申では是正を求めます。
A 栄養職員の配置基準への見直し、パート職員など加配職員の配置見直し
 まず、国の配置基準は全国的なさあざまな事例をふまえて設定されており、その自治体の考え方や、歴史的な到達点などは考慮されていません。この点を問題にするのであれば、岡山市の給食問題の位置づけと同じ考え方の自治体との比較でどうなのかを問題にすべきです。削除を求めます。
加配職員の配置見直しは、具体的な指標でより公正に「過配」であることを明らかにすることが大切です。その公正な基準を示すことが必要であり、運用に当たっては、@と同様に労働組合と市の間で協定する必要があります。
B 民間委託、第三セクタの活用の2項目は取り下げを求めます。理由は、学校給食の本来の意義と役割の視点で検討して出てくる結論ではないからです。試行の中で先取り実施するなど決して許されません。最終答申で削除を明記することを求めます。
C 共同調理場運営体制の見直し及び設備の集約化
 共同調理場方式は、前項でもふれたとおり、その解消と単独校調理場方式への転換が求められています。提案は「見直して、集約化」となっていますが、これでは今抱えている矛盾の解決にはつながらず、将来に問題を引き継ぐことは火を見るより明らかです。そして提案には経費的にも真の低減に成るかどうかの判断につながる検討の後が見えません。
具体的なプログラムを持って解消し、単独校調理場方式への転換を求めます。

2、「6項の21億円を削減し、云々」の項目は、指摘する問題点の強行実施が前提であり、とても納得できるものではありません。この項目が、結局一人歩きして、制度改善の目玉的な政策になってしまいます。
 民間委託化、第三セクター方式を導入した他の自治体の実状や、問題点についての検証を含めてどこまで信頼できる検討なのかの疑問もあります。ましてや、教育としての学校給食を民間の営業の経営指標による検討のみで、軽々な判断に至っているとしか受け止められない提案であり、とても受け入れられません。

(4)最後に
 岡山市が作り上げた学校給食の現在の制度の積極面や、優れた考え方を受け継ぎ、その上で、さらに求められる充実や将来への発展は何か、この視点から岡山市(市民を含めて)をあげた英知を結集することこそ今何より必要なことです。
 あらためて、学校給食の真の発展と改善に必要な検討として、学校給食運営審議会で審議していただきたいことについて以下の提言をします。
1)農業破壊で見通しを失いつつある食の問題に目を向けて、不況で苦しむ市民の要望に沿い、複雑化する社会の中で、個性をはぐくみ、強く生きる子どもを育てるための境域環境づくりから出発して、学校給食はどうあったらよいか、そのあり方を考えること。
2)保護者と教育現場の関係を築く上で、学校給食にどのような関わり方を創造すべきか、今日的な視点で、関係者の幅広い声を集め、まとめる検討を行うこと。
3)学校給食にかかる経費は社会的に当然のものとの認識に立って、その上で、高齢化・女性の社会参加の時代に見合った学校給食制度の多機能化について抜本的に検討すること。
4)具体的には「岡山市の豊かな学校給食をめざす市民運動実行委員会」が提言した17項目の具体化のプロセスについて、プログラムを提言すること。
 また、教育委員会に対しては、今回の中間答申の具体的な改善事項の内、市民が納得できる積極的なものについては、早期の実施に移ることを強く要望し、問題として指摘した事項については、試行といえども実施に移さないこと、そして、最終答申が、納得のゆく答申にまとまるよう、取り組むことを要望します。

2000年1月10日


学校給食に思うこと

豊かな学校給食をめざす市民実行委員会
代表委員 椋代 厚子(岡山のお米は美味しいよの会)

 私にとって学校給食は、つらい思いででいっぱいです。昭和30年の初めで、特に偏食だったわけでは、有 りませんが円形校舎の一階に給食室があり、螺旋階段から、4時間目授業の頃には、廊下から匂いがして、揚げている油とか、シチューとか、・・・
 多分、栄養価を考えてのメニュー作りだったのでしょう。いろんな食材が、一つの鍋でたかれ、混じり合った匂いが好きでは有りませんでしたし、脱脂粉乳を解かした温かい牛乳を飲むことができず、毎日残していました。
 無理に残さないように指導されたことは有りませんが、残飯としてバケツに入れることも罪悪感を感じていました。残飯の多いメニューの日と、少ない日の差が多かったことや、バケツの中でいろんなおかずが混じり合って、変な臭いになっていたことは、鮮明に想い出します。毎日回収業者が残飯をトラックで取りに来て、大きなドラム缶にゆられ、豚の飼料にとなるため牧場に、運ばれていきました。またお代わりをする元気のいい子もいたりして、どうして私は美味しく食べれないか不思議に思い、美味しそうにぱくぱく食べている子のことを羨ましく感じていました。
 小学校の6年間だけでしたが終わったときには、ほっとしました。
 我が家の台所から見える道路を挟んで向かい側に、出石小学校の給食室がありました。12時30分頃になると子供たちのにぎやかな声が聞こえてきて、小さな手で大きなボールなどを、運んでいるのをよく見かけました。1日のうちの楽しみな時間のなのでしょう。大きなマスク、帽子、割烹着は、小さなお母さん、小さなコックさんといったところでしょうか。
 子供が学校へ行くようになって、メニューを見たときには、驚きました。パンの日ばかりでなく、ご飯、麺と主食もさることながら、副食も和洋中と、ずいぶん洗練された物のように思いました。我が家の子供に限らず袋に入った麺は、袋の匂いがうっつていやがっていましたが、好き嫌いは別として楽しみの時間となっているように感じました。給食が有るから友達にいじめられても休まずいくA子ちゃんが、夏休み前など統一献立の為、通っている小学校が給食の休業日でもメニューはの予定は一覧表でみれるので、好きな物だった時は、とても残念がっていました。また調理してくださるおばさんたちのことは、レストランのコックのように思っていたようでほほえましくおもったことは、今でも覚えています。 夏休みになるといつもコンビニでお弁当を買うようにお金を渡されてた子は、スナック菓子を買って友達に振る舞っていました。昼食を作ってもらえない子もいる現実を思うと、今、改めて教育の現場からの食育の大切さを感じています。先日成人病センターの上田先生の講演で、アトピーのお母さんに料理をする事の大切さを話しても作れないし、料理教室にも来てもらえないとの報告がありました。子供の健康と食生活の大切さは、最近の子供のいじめ、不登校などの社会問題までも無関係でないと、言われています。毎日テレビで簡単にできる食材やコンビニの宣伝を、見てしまうと、手軽に使ってしまいます。現実子どもの食生活を思うとだからこそ、作り手の見える関係で、湯気を感じたり、臭いを感じたりする学校給食であり続けてほしいものです。
 次に、是非自校方式にしていただきたいし、現在自校方式のところは、続けていってほしいと思っています。教育の現場で、いろいろな行事が減っていき、また設備も減らしていき、スリム化していくことは、大切なものが失われていくように感じるのは、私だけではないと思います。私たちの取り巻く食品の多様化がどんどん進む中、書類だけでいろんなことが、決められていくのでなく、実際見て、さわって、考えての大事な部分が、簡素化されないように願っています。 
 遺伝子操作食品のことも不安材料だらけです。殺虫毒素入り作物の最大生産面積を誇るBtコーン。アメリカのアイオワ州立大学の遺伝子学科でアワノメイカを飼育しており、新鮮Btコーンの葉っぱを最初は、なかなか食べませんでしたが、1にち経過後、ようやく食べはじめ、不思議なことに6匹いた虫が、2日目には4匹になり、3日目には2匹に減ってしまいました。よく観察すると、死んだ虫を生き残っている虫が食べ、最後に残った2匹も動きが緩慢になり4日目には、ひからびてついに死んでいた様子の写真撮影に成功した記事を見たときには、背筋の寒い思いがしました。EUを初めあちこちで、ボイコットされはじめています。これまで「遺伝子操作作物は他の作物と変わらない為、特別の表示は必要ない」としてきたアメリカ政府までも安全性への懸念を示し、遺伝子操作物の安全性を問う声が大きくなり、表示する方向になってきています。しかし、遺伝子操作物の推進国のカナダ、チリ、ニュージーランドなどが作付けする限り、農産物輸入大国日本では、輸入されるでしょうし、どちらの原料を使うか決めるのは、企業です。
 ボイコットされている食品を、未来ある子供たちに、食べさせるような仕組みには、してほしくありませんし、見えないところが増えることの不安を感じています。

 今日、農水省の出した遺伝子組み替え食品の、表示方法が発表されました。 不安材料の増える物でした。


子どもの命を育む学校給食
         
田中 敦子(小学校PTA役員)
 
 現在の岡山市の学校給食が素晴らしいものであることに保護者として深く感謝しています。学校給食は子どもの命と健康にかかわるものなので,市の財政悪化によって,まず学校給食が委託の方向で検討されなければならないのかどうしても納得できません。学校給食について調べれば調べるほど,岡山市の学校給食のレベルの高さがわかるとともに,委託にますます不安をつのらせています。また,現代の社会状況において学校給食の役割が今まで以上に重要になってきていることも知りました。岡山市の優れた学校給食直営体制を,子どもたちのために続けていく価値をご理解くださいますよう,保護者として心よりお願いいたします。

1. 学校給食委託に対する不安

 「学校給食法」
第一条 この法律は,学校給食が児童及び生徒の心身の健全な発達に資し,かつ、 国民の食生活の改善に寄与するものであることにかんがみ,学校給食の実施に関し必要な事項を定め,もつて学校給食の普及充実を図ることを目的とする。
第四条 義務教諸学校の設置者は,当該義務教育諸学校において学校給食が実施されるように努めなければならない。
第五条 国及び地方公共団体は,学校給食の普及と健全な発達を図るように努めなければならない。

 1984年当時まで文部省は学校給食法に基づき直営を認め,民間委託を認めない方針をとっていました。ところが,国の行政改革・合理化の流れの中で,次の年1985年,一定条件のもとに,民間委託等の方法を認める「学校給食業務の運営の合理化について」の通知が出されました。そして,学校給食の民間委託はこの一度の通知から始まったのだと学校給食関係の書物を読んで知りました。
 
1-1学校給食の民間委託は食中毒事故の法的責任において社会的矛盾が生じます。
 義務教育諸学校の災害共済給付に関わる「日本学校安全会法施行令」では,

第三条 法第十九条第二項の学校の管理下における児童及び生徒の災害の範囲は, 次の各号に掲げるものとする。(略)
 二 学校給食に起因する中毒その他児童及び生徒の疾病でその原因である行為が 学校の管理においてなされたものののうち文部大臣が定めるもの。ただし,療養 に要する費用が五百円以上のものに限る。(略)

 上記の条文を見る限り,「学校給食に起因する中毒」は学校の管理下における災害としてあげられています。一方,民間委託方式では,自治体と業者との契約によって学校給食が行なわれますが,これまでの契約書の中には「事故あるときは業者の責任とする」との事項もあったらしく(法律に反する契約は司法では無効と聞いています),多くは公表されないということです(注1)。
 民間委託における食中毒の補償問題が起こった場合,学校の管理下における災害(たとえ委託であろうと,公立の義務教育諸学校における給食提供者は自治体)であるので,その場合保護者はやはり自治体に賠償責任を求めると思います。自治体が法的責任を負い補償すれば,民間業者のミスに税金がつかわれるという,社会的矛盾が生じます。また,公教育の実施者であり責任者である自治体が,公教育の場で行なわれる学校給食に責任を持つことは,「学校給食法」をはじめとする法の遵守であり,そうでなければ保護者として子どもを安心して学校にまかせられなくなります。

1-2学校給食提供者である自治体の責任は重大です。 
 大阪府堺市の食中毒で,死亡した小学6年女児(当時十二)の両親による損害賠償請求裁判の判決(注2)では,

  〈判決の要旨〉
 学校給食が学校教育の一環として行われ,児童にこれを食べない自由が事実上なく,献立についても選択の余地がないこと,調理も学校側に全面的にゆだねているという学校給食の特徴や,学校給食が直接体内に摂取するものであり,何らかの瑕疵(かし)があれば直ちに生命・身体へ影響を与える可能性があること,学校給食を喫食する児童が,抵抗力の弱い若年者であることなどからすれば,学校給食について,児童が何らかの危険の発生を甘受すべきとする余地はなく,学校給食には,極めて高度な安全性が求められているというべきであり,学校給食の安全性の瑕疵によって,食中毒を始めとする事故が起これば,結果的に,給食提供者の過失が強く推定される。


 判決要旨には,「学校給食には,極めて高度な安全性が求められているというべき」とあります。現在の岡山市の安全レベルは,正規調理員の9割までが調理師の有資格者で,各校に栄養士1名配置しており,全国的に見てもかなり優れています。さらに岡山市の誇りがあります。それは自校方式(平成9年の文部大臣諮問機関の保健体育審議会が,安全で最も望ましいとする学校給食形態)が約9割を占めていることです。岡山市の学校給食では,現在「極めて高度な安全性」が保たれているといえるのではないでしょうか。
 
1-3民間委託・PTA委託では食中毒事故発生を想定した,市民の合意が必要です。
 民間委託になると,民間業者には「食品衛生法」が法的には適用されます。1996年に起きた名古屋市中学校学校給食民間委託の場合,前日調理されたものが原因でした。保健所のコメントは「前日調理は望ましくないが,ダメということはない」ということで,「食品衛生法」に基づき,一週間の営業停止のあと,同じ業者によって同じように給食が再開されました(注3)。O-157食中毒事故以降,このようなずさんな調理をしているところはないとしても,民間委託と直営の間には安全衛生管理について法的にはこのようにかなり隔たりがあります。一方,平成9年度に新たに作成された学校給食衛生管理の基準や堺市食中毒補償判決をふまえた安全性が学校給食に求められています。人件費抑制・効率優先を図らなければ採算が合わなくなる民間委託で,岡山市の「極めて高度な安全性」と同じ安全管理がどこまでできるのか,どのような契約しろ,保護者として心配なことには変わりありません。
 また,PTA委託も,それを運営していくのは保護者でしょうが,現在のように調理師の有資格者を中心に構成していくことは難しいでしょうし,その構成も毎年変わっていくのでしょう(卒業入学は毎年ある)?現在働いている母親の割合も多く,PTA役員選出そのものもだんだん難しくなってきている状況もあります。なんとか運営にこぎつけても,食中毒事故や調理中に起きる事故など補償やその責任は,誰がどこまでどのように負うのか,具体的に解決しておくべき課題は多いのではないでしょうか。なにより現状と同じ安全レベルにはなかなか到達できないのではないかとそれが一番不安です(岡山市の保護者によるPTA委託の学校給食で赤痢が発生した食中毒事故も聞きました)。
 総務庁の調べ(1996年末〜1997年)によると,全国の学校給食の衛生管理は不十分なところが多いこと。厚生省の点検(1997年)でも,問題のある学校での調理では,食品の中心部まで火が通っていないなどのケースが約一割見られたという新聞記事がありました。境市の食中毒以後も全国で毎年数千人単位で学校給食で食中毒が発生していることも報道されていました(注4)。ならば,なおのこと,PTA委託・民間委託で食中毒が起こった場合の,事故責任の所在を明確にし,法的にどのように処理していくつもりなのかは当然考えられてしかるべきことであり,それを受給する児童・生徒の保護者にも伝え,そのような委託の補償に税金を使うことについても市民の合意が必要だと思います。

 岡山市の現在の,優れた学校給食直営体制をやめ,コスト削減のために,PTA委託・民間委託にすることは,保護者を始め,子どもたちの縁者にとって,安全性,法的整合性の点から,大きな不安を感じることだと思います。また,岡山県邑久町や大阪府堺市のような悲惨な食中毒事故が学校給食においてあった以上,このような事故は起きないという保証はだれにもできないのですから,学校給食については子どもの命にかかわることとして,コストより安全を第一に考えていただきたいのです。


2. 食教育の必要な現代

 昨年10月の新聞に載っていた,赤十字の献血の検診医による論考(注5)を読み,若者の血液が示す深刻な状況に驚きました。

 ・「彼らが中高年に達した時には生活習慣病の罹患率が今の中高年よりずっと高  まるだろう」
 ・「高額で高度な医療がより求められることになる」
 ・「長期介護を要する人も増えるに違いない」
 ・「見方を変えれば,これは国民医療費の増加を招くことになりかねない」

 そして,最後に「医療財政の改善のみならず五十年百年先を見据えて,この国の繁栄を維持しようとするなら保育所の拡充などで『産む意欲』を取り戻させて少子化を阻むだけでは足りない。これからの社会を担う若者を育てるためには栄養バランスのとれた食事とともに,日常生活の中での食事の位置づけや食事の持つ精神的意味を回復させることが必要だと考える。」と締めくくられています。
 わが子が通う小学校の保健関係の報告においても,肥満・やせぎみなどの児童の割合が増えているという情報を目にし,文部大臣の諮問機関「保健体育審議会」の答申や文部省の「家庭教育ノート」でも,新聞・テレビ・雑誌を通じて報道されている,「キレる子どもたち」と食生活との関連性の指摘など,すべての情報はこれから社会的に食教育を真剣に考えないといけないのだという警鐘として大きくなるばかりです。現代では、将来の医療や福祉の問題の深刻化を防ぐ大きな役割を学校給食が担っているのではないでしょうか。

3 学校給食は少子化対策

 さまざまな団体から提言されているような,学童保育への給食提供,部活生徒への間食提供,地域のお年寄りへの給食提供,生活習慣病予防のための地域への「食教育」・保護者に向けた食生活アドバイスなど,多くの行政サービスが今の直営給食システムのままで,わずかの費用で可能になり,効率化をはかれるのではないでしょうか。少子化・高齢化社会においては行政サービスの内容の充実こそ求められていると思います。

3-1 働く母親への社会的支援が必要です。
 学童保育の給食提供も重要な少子化対策のひとつです。学童保育では長い夏期休業中なども給食がありません。昨年11月に行なわれた岡山県学童保育集会に参加し,耳にしたのですが,岡山市の児童クラブの中には,週に1度程度,サンドイッチを買ったり,お弁当を買ったりしているところもあるそうです。また「民間のお弁当は絶対食べさせたくないので作っているが,夏はくさりやすいので,困っている」と話す方もいました。
 幼稚園・保育園の整備が少子化対策としてあがっていますが,それに続く小学校低学年児童の学童保育も特に少子化対策としての手だてが必要なところだと思います。まず,学校休業中の学童保育の給食提供で多くの働く母親を支援することができます。母親が子どものお弁当を作るのを怠けたいだけだという批判も聞きますが,働く母親の子育ての苦労について社会が無理解であれば,少子化はなかなかとまらないのではないでしょうか。
 本来,西欧諸国では産業革命以降,働く母親が増えたことによる,子どもの成長支援・教育の必要から,公教育における給食が生まれたという歴史的背景があります(注6)。男女雇用均等法の施行に合せ,学校給食の意義のひとつとしてとらえなおす必要が少子化社会の社会的要請としてあると思います。

3-2 学校給食コスト削減は少子化対策に逆効果となります。
 国が2000億円もの地方交付金を配分するほど少子化対策は国の重要課題になってきています。しかし,今の子どもたちの育成にかかわる学校給食の負担金(法的に定められているもの)を削減することは,教育や福祉を軽視することであり,子どもを育てにくい社会にします。子どもを大切に育てようとする教育・社会的制度,行政サービスの充実が感じられてこそ,安心して子どもを生み,育てようとする気持ちも出てくるのではないでしょうか。
 
 子どもを育てる社会的支援として,また医療・介護の問題の深刻化を防ぐ手だてとして,岡山市の優れた学校給食直営の体制を維持し,その有効的活用をぜひ考えていただきたいのです。コスト削減は少子化対策,医療・福祉の政策などの全体的視野に立って,長期的に構想されるべき問題で,安易に手のつけやすい学校給食を対象にすべきではないと考えます。学校給食の改善は安全性や教育的価値を最優先し,岡山市の優れた学校給食直営体制がさらに全国に誇るものになることを保護者として願ってやみません。
 

(注1;『学校給食を考える O157事件はなぜおきるのか』
                   雨宮正子他編 青木書店1997年発行)  
(注2;1999年9月11日付 朝日新聞) 
(注3;1996年5月21日付 朝日新聞)
(注4;注2に同じ)
(注5;1999年10月11日付 朝日新聞)  
(注6;1961年ユネスコ主催による第14回国際公教育会議
   「学校給食および衣服に関する各国文部省にたいする勧告」第33号)

参考文献   『学校給食の創造と人間形成』新村洋史著 芽ばえ社
       『いま考える学校給食』新村洋史著 汐文社

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