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脳について(3)
〜 認知症の症状と進行(その1:初期〜中期)〜前回からちょっと時間があいてしまいましたが、今回は「認知症はどんなふうに進むのか?」についてお話します。長いので2回に分けます。
最も多いと言われている、アルツハイマー型認知症を念頭においてみました。
【初 期】
1. 新しいことを覚えられない 例)若いころから使っているガスコンロの使い方は分かるが、
最近買った電磁調理器の使い方が覚えられない。
2. しまった物が見つからない 例)いつも財布を探している。
3. 複雑な話を理解できない 例)医院の受付で院外処方せんをもらい、次にその処方せんを持って調剤薬局へ行き薬をもらう、といういくつかの手続きを組み合わせて行うようなことが理解できない。薬局の前まで行くと、ここで薬をもらうんだ、と単純なことならわかる。
4. 社会生活・家庭生活に支障が出てくる ・支払いをすることができない。
・学校の先生として働くことができない。
・主婦なら夕食を用意することができない。
(材料を買ってきて、包丁で切り、鍋で煮て、味付けをして皿に盛り出す、という一連の行為がやり遂げられないため、簡単なおかずになってしまう、いつも同じおかずになってしまうなど)
5. 全般的な精神活動の低下 ・表情に乏しくなり、ぼんやりと過ごしている。
・根気がなくなり、好きだった趣味もやらなくなり、無為に過ごす。
・うつ状態になる人もいる。
(「死にたい」と口にしたり、食欲がなくなりやせてしまう。いらいらしたり不安で眠れなくなり、毎晩のように親戚や子供に電話をかけまくる。自分で何かを決められなくなり、息子や嫁に何でもお任せになってしまう。など)
6. 物わかりが悪くなり、人の話を聞かない ・同じ質問を何度もする。
・同じ話を繰り返し人に聞かせる。
・一生懸命説明しても聞いているようで聞いていない。
・理解ができないので、説明を途中でさえぎりまた同じ話をし始める。
・用事をお願いしても、最初に頼んだことをやり始めたところで終わってしまう。
【中 期】
1. 数時間前のことを忘れる ・昼頃に、朝食のメニューをもう思い出せない。
・記憶を補うために適当な知っているメニューを
「今朝食べた」と言ってしまうこともある。
・「朝ご飯はまだ食べていない」と言うこともある。
・また、買い物に行ってきたことを忘れ何度も同じものを買ってくる。
2. 場所がわからなくなる
見当識障害=日時・場所・人がわからない…のうちの「場所」 ・自分の家なのに、他人の家だと思う。
・病院に来ているのに、学校に来ていると思っている。
・初めて来た町なのに、「ここは子供の頃に住んでいたところだ」と言い張る。
3. 家族のことがわからない
見当識障害=日時・場所・人がわからない…のうちの「人」 ・息子を自分の兄だと思い違いする。
・妻を、知らないおばあさんだと言う。
4. 日付や時間があやふや
見当識障害=日時・場所・人がわからない…のうちの「日付」 ・夕方なのに朝だと思っている。
・薬を飲む時間がわからず、内服管理ができなくなる。
5. 身だしなみ・服装に無頓着になる ・TPOに沿った服装ができなくなる。
・たとえば、パジャマのままで出かける。
・シャツの裾がスカートからはみ出していたり、
ジャケットのボタンを掛け違えていても平気になってしまう。
・冬なのにTシャツ1枚、夏なのにセ−ターを重ね着するなど。
6. 今までできていた家事ができない ・洗濯機の使い方を忘れる。
・包丁で野菜をどんな形に切っていいのかわからない。
・砂糖と塩の区別がつかない。
・ゴミ出しの日を間違えたり、ゴミを出す場所を間違える。
7. 精神病のような症状が出る ・無いものが見えたり(幻視)、いない人の声が聞こえる(幻聴)。
これらを「幻覚」という。
・また、なくしたものを誰かが盗んだという「物盗られ妄想」が出る。
(妄想とは本人にとっては強い思い込みなので、他人から「それは事実ではない」と指摘されても納得しないだけでなく、逆に嘘をつかれたと思い敵意を抱くことが多い)
・他に、妻(または夫)が浮気している、嫁が食べ物に毒を入れているなどの妄想も出やすい。
中期ぐらいまでは、このような症状は家庭内で主に見られ、家族や身近な人にしか気づかれていないことがほとんどです。たまにしか会わない人や、短時間のコミュニケーションしかしていない人には認知症だということが全然わかりません。「ぼけているって聞いたけど、この間お家の前で立ち話したときには、いつもと変わらずお元気そうでお顔の色もよろしかったわよ」などとご近所の方に言われてしまうのです。立ち話程度では、わからないのです。その割に、家の中では上記のような精神病のような症状や、そのほかの生活障害が色々出てきて、ご家族の方は大変な思いをしています。お嫁さんがノイローゼのようになってしまうのも、この時期です。
初期・中期と言っても、「今日から中期です」とはっきりわかれているものではありません。認知症は徐々に進行し、色々な症状がそれぞれ違ったスピードで進行していくものですから、ある患者さんを表現するとしたら「初期から中期にさしかかったぐらい」とか「中期の終わり頃」などという言い回しになります。
次回は末期の症状についてお話しましょう。
12-14-2002
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