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脳について(1)
〜「物忘れ」が気になる〜今回からのテーマは「物忘れ〜認知症」です。
みなさんに最も身近な「脳」の症状というと、「物忘れ」ではないでしょうか?「物忘れ」という言葉から「認知症」という言葉が連想されたら、最近の新聞雑誌などを良く読まれている証拠だと思います。「認知症」というのは何となく得体の知れない恐い病気というイメージがあると思いますが、敵に立ち向かうには、まずその敵の性質を詳しく知ることが必要です。
◆ 認知症とは? 認知症の定義普通の知能だった人が、中高年になってから知能が下がること。
去年に比べて、今年の知能はどうかな? と考えたとき、明らかにできなくなったことがあれば、知能が下がったと判断します。
【例】 ●去年までは買い物の支払いをちゃんとできていたが、今年になったら分からなくなり、どんな値段のものを買うときにでも1万円札を出すようになった。おつりは店員さんにお任せになってしまった・・・
●去年までは10年間毎朝欠かさず犬の散歩をさせていたのに、今年になったら慣れている道なのに道を間違えて時々迷子になってしまうようになり、やる気もなくなって他の家族に散歩を任せるようになってしまった・・・
●去年まではいつも飲んでいる高血圧の薬をちゃんと自分で管理して、毎朝きちんと飲めていたのに、今年になったら薬の数が合わなくなったり、たくさん飲んでしまったり、あるいは飲まなくなってそのまましまい込まれていたりするようになった、血圧も上がったり下がったりで、軽い脳梗塞の発作を起こしてしまった・・・
●去年まではキレイ好きで部屋の掃除や入浴を欠かさずしていたが、今年になったらだらしがなくなり、部屋の中はゴミでいっぱい、もう1カ月も風呂に入っていないし、毎日同じ服を着ている・・・
●去年までは読書が趣味で、いつも本を読んでいたのに、今年になったら全然読まなくなって、何もせずにぼんやりしていることが多くなった・・・
上記は、ほんの一例ですが、ご家族の方が気付いた認知症の初期症状の代表的な例です。
◆ 普通の物忘れと認知症の物忘れの特徴の違い◇ 普通の物忘れ
体験の一部を忘れる。物忘れを自覚している。時・所・人は分かる。
日常生活に支障はない。極めて徐々に進行する。
【例】 ●人名(知人やテレビの俳優などの名前)や物の名前がとっさに出てこない。
「あれ」「それ」といった指示語が多くなったり、「あの人、あの人、誰だっけ、名前を忘れちゃった」といいながら、顔や声やどんな人なのかは頭に思い浮かんでいるのに、名前だけ出てこない、といったこと。どなたでも経験したことがあると思います。
「あの子は由美ちゃんだったっけ」
「由美ちゃんじゃない、久美ちゃんだよ」
「そうそう、久美ちゃんだったか。間違えちゃったよ」これは普通の物忘れ。老化現象で少し進んでいくこともありますが、病気ではないので、日常生活に支障が出ることはありません。間違いを訂正してあげると、「ああそうだった」と分かってくれます。間違えた、忘れてた、と自覚があるのです。こういう状態の人は、心配は要りません。
◇ 痴呆症の物忘れ
体験の全体を忘れる。物忘れの自覚に乏しい。時・所・人も分からない。
日常生活に支障を来す。進行が早い。
【例】 ●買ってきた物どころか、買い物に行ったこと自体を忘れる。何度も同じものを買ってきてしまうので、冷蔵庫の中はたとえば牛乳が30本も並んでいる、魚の切り身がぎっしりつまっている・・・
●よく知っているはずの人の顔を見ても、知っている人だと認識できない。玄関に息子が帰ってきても、「どちら様ですか?」とお客さんに接するような態度で挨拶される。道で隣の奥さんに会っても、誰だか分からず初対面のような振る舞いをする・・・
●今が何月か分からずに、夏なのにコートを着ていたり、冬なのにTシャツ一枚で過ごしていたりする・・・
このような物忘れは脳の病気から来るものと考えられます。
「お母さん、牛乳、さっき買ってきたばかりでしょ!
もう冷蔵庫の中は牛乳でいっぱいだよ」「何いってるの、あんたたちがたくさん飲むからすぐ無くなるのよ。
最近買い物に行っていないから買ってこなくちゃ・・・」「さっき買い物に行ってきたばかりでしょ」
「まだ行ってないから、行かなくちゃ」
「でも、これ、もう賞味期限を1カ月も過ぎていますよ。
腐っているみたいで臭うし。捨てていいでしょう?」「何するの、大事なものを捨てるんじゃないよ!」
と、話はどこまでも平行線、ついには親子ゲンカに発展してしまいます。ご本人に物忘れの自覚がないから、「ああそうだった」と納得してくれないのです。ご本人の言うことを訂正すればするほど、周りの人とご本人との溝が深まっていきます・・・
これから、認知症の原因と、予防や治療のこと、介護のことなどについて、徐々に書きますので、読んで下さいね。
9-8-2002
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