★ゴールドブレンドとパッション



石丸氏演奏会ショット、41回定演より  佐藤功太郎氏との2年間の蜜月時代のあと、金大フィルが迎えたのは、先ごろお亡くなりになった、石丸寛氏でした。
 石丸氏は良く知られているように、「まるかんさん」と呼ばれ、アマチュアオケの支援に尽力された指揮者でした。ゴールドブレンド・コンサートという形で、多くのアマチュアオケの指導にあたられたのは、偉大な功績だったと思います。この演奏会に先立つこと5,6年前の石川フィルの創立時にも、石丸氏を迎えています。

 石丸氏が金大フィルと接している間、機会あるごとにおっしゃられていたのは、「パッション!」という言葉でした練習中はもちろん、宴会の席においても、パッションのある演奏をしてくださいと、おっしゃられていたのが印象的でした。お酒の席では、話が尽きることはなく、気さくな面も見せてもらえましたが、練習中はなんとも貴族的な洗練された雰囲気を持つジェントルマンというような印象があります。
 団員をその気にさせることも、心がけられていたように思いました。「フィデリオ」序曲の初練習、アレグロのテュッティに入る直前のクラリネットのソロ(田中絹子さん)に、「ブラヴォー」の一声。これをきっかけに、団員の緊張が取れ、見る見る演奏に乗ってきた様子も、記憶に残っています。



 「パッション」という言葉は、シベ2に似つかわしいと思います。シベリウスの交響曲は後年には大きな変質を遂げます(4-7番)。1−2番までは、民族的独立を音楽でサポートしたシベリウスの、一本気な特徴が良く出た交響曲です。(石丸氏のシベリウスに対する興味深い考え方が、プログラムに掲載されています。)特に、最終楽章は、いやがうえにも盛り上がる曲で、アマチュアオケにとっては、成功はほぼ約束されたも同然!コンサートの成功には、お得なプログラムだともいえます。金管が最後まで体力を保持して、クライマックスを力強く吹き切るのが条件ですけれども・・・。

  シベ2にはなんとも、日本の演歌に通じるような、「くささ」、「わざとらしさ」があります。人によっては大嫌い!と言う場合もあるに違いないと思います。コーダでは、弦楽器の延々と続く音階上下音型の上に、切々とテーマが歌われ、うねりを続けます。最後に、突如として短調から長調に転じるところの「くささ」など、相当なものです。あとは、ティンパニと金管が熱く盛り上げて、一丁上がり。ブラヴォーは間違いなし。石丸さんは、インタヴューでのコメントからも分かるように、もちろん、シベ2の支持派。
 金大フィルと石丸氏とシベリウス、幸福な巡り合わせだったと思います。

 金大フィルの演奏は、もちろん、力のこもったものでした。しかし、さすがの金管セクションも、最後はちょっとエネルギーが切れかけたと言うところでしょうか
 この後、金大フィルはシベリウスの交響曲1番を計3回、そして、この2番を第53回定期で再演しています。フィンランディアはともかくとして、シベリウスは、意外にも多く取り上げられている作曲家です。


プログラム表紙
演奏会データ

第41回定期演奏会
81/01/24厚生年金会館
指揮:石丸 寛 コンサートマスター:宮崎理恵

シベリウス/交響曲第2番ニ長調作品43
フィナーレ最終部

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