チャイコフスキー Sidestory


2000年10月1日更新

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 チャイ5スコア

  トランペット奏者にとって、「チャイ5」は、非常に遣り甲斐のある曲だ。遣り甲斐を超えて、正直言って相当きつい曲でもある。とにかく、コーダ直前のポコ・メノモッソから出ずっぱりで、コーダでは循環主題のテーマを高らかに歌った後、最後に、駄目押しのモルト・メノモッソ6拍子でフォルテ4つ、ffffフォルテッテッテッシモの指定がある(因みに、大序曲1812年では、fffffフォルテッテッテッテッシモがある)。最後まで、譜面どおりバテないで演奏するのは、至難の業である。プロオケでさえも、少なくとも1番奏者に1人アシを付けて3人で演奏するのは普通のこと。近年、ベルリンやウィーンの超一流オケでも通常、倍管(4人)で演奏する。2人で演奏したチャイ5の場合は、必ずどこかで手を抜いているか、最初からすべての音符を吹くことを放棄している場合がほとんどだ。学生時代に金沢で聴いた某放送局のオケは、演奏旅行の遠征であったこともあり、予算の関係からか譜面指定の2人で吹いたが、案の定、終始、省エネ運転で欲求不満が募った。
 ところで、チャイコフスキーのスコアでは、トランペットが君臨する場面に常にObが付き添っているのをご存知だろうか。先のチャイ5のffffも、右のスコアでわかるようにObはffffを要求されている。Obが音量的にトランペットに対抗できるはずもない。同じ例は、第4交響曲の冒頭ファンファーレ、第5交響曲の上記コーダにおける循環テーマ、そして、「悲愴」の第1楽章展開部の下降音型などがある。

 自分自身でも2回「チャイ5」に挑戦したことがある。自分が1番を吹いた時は、事情によりアシなしで演奏せざるを得ず、2番奏者の非力もあり、見事玉砕した。クライマックスでハイHまで上ることは早々に諦めて、最後まで音を出すので精一杯だった。あまり良い思い出ではない。

 


末廣氏
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