図解がないとちょっとややこしいのですが、ご辛抱を。
糖が代謝されてできる産物の一つにアラニンがあります(アラニンは役立たずのゴミではなく、肝臓でグルコースに変換されて血液中に放出され、ふたたびエネルギー源となります)。アラニンがつくられるときにはアミノ酸が使われますので、運動量が増えて糖の消費が増えるとアラニンの産生量が増え、最終的にアミノ酸の必要量も多くなります。・・・・・・・・(1)
またタンパク質と炭水化物をあわせてとることでグリコーゲンの貯蔵を増やすことができます。これは炭水化物だけをとったときよりもインスリンが高まるためです。インスリンが多いと、血糖の取り込みが早くなり、グリコーゲンの貯蔵を高めることにつながります。・・・・・・・(2)
(1)(2)のことから、運動のエネルギー源としてタンパク質(アミノ酸)が必要であることがわかります。それなら運動しながらタンパク質(アミノ酸)をじゃんじゃん補給すればよいかというと、それも難しい問題です。アミノ酸は代謝されると、その構造からかならずアンモニアが生じます(『アミノ酸と中枢性疲労』で述べたように、アミノ酸にはアミノ基があり、アミノ酸からはずれたアミノ基はアンモニアになるため)。アンモニアは体にとって有害なので、肝臓で尿素に変換し、尿にすてます。
ロングのトライアスロンのように、もはやグリコーゲンはとっくに使い果たしている、補給も追いつかない、という状況では、相当のエネルギーをタンパク質に依存していると考えられ、結果として大量の尿素を捨てなければなりません。でも尿素を捨てるためには、尿を出さなくてはいけない。これは脱水症状を防ぎたいレース中には相当なストレスとなります。
もし、アンモニアをあまり生じないタンパク質があったら……それがあるのです。それは卵。実験によると、分解された際に生じるアンモニアを測定すると、卵はほかのタンパク質源にくらべてダントツに少ないそうです。
これは理にかなっていて、卵黄は鳥が孵化するまでの栄養源ですが、生じたアンモニアは卵の殻の中にためておくよりしかたありません。鳥類はアンモニアを水に溶けず、無害な尿酸という物質に変えますが、できるだけ生じるアンモニアは少ない方がよいわけです。そんなことから、卵のタンパク質はアンモニアを生じにくいものに進化してきたようです。
レース中に卵というのはちょっと現実的ではないように思いますが、せめて前日の食事や当日の朝食はゲンを担いでトンカツにするよりは、オムレツの方が消化にも良いでしょう。
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