contents > Science Triathlon
アミノ酸と中枢性疲労

 サプリメントとして「プロテイン」ではなく「アミノ酸」を売りにした商品を意識したのは、BCAAを含む商品が出てきてからのように思います。
 ちょっと言葉の解説をしますと、プロテインはタンパク質のことで、脂肪、炭水化物とともに三大栄養素のひとつです。タンパク質はアミノ酸を構成要素としてできています。アミノ酸はアミノ基(NH3)とカルボキシル基(COOH)という構造をもつ分子で、生物の体を構成するアミノ酸は全部で20種類あります。
 BCAAはBranched Chain Amino Acid(分岐鎖アミノ酸)の略で、アミノ酸の中でも、分岐した構造をもつもの、具体的にはロイシン、イソロイシン、バリンという3種類があります。
 さて、脳内物質のセロトニンは、倦怠感や眠気を催す物質です。アミノ酸の一種であるトリプトファンは脳内でセロトニンに変化します。
 トリプトファンが脳内に入るためにはゲートを通らなくてはいけないのですが、このゲートは分岐鎖アミノ酸(BCAA)と共通なので、血液中のBCAA濃度が低いときは脳内にトリプトファンが流入しやすく、中枢性疲労が起こりやすくなります。逆に血液中のBCAA濃度が高いときは、競合が起こるので脳内にトリプトファンが流入しにくく、中枢性疲労が起こりにくくなるといえます。
 また持久的な運動をする際に、エネルギー源として脂肪が使われるとき、血液中に遊離脂肪酸が増えますが、この遊離脂肪酸は血液中のアルブミンというタンパク質に結合していたトリプトファンを引き離してかわりにとアルブミンと脂肪酸が結合します。単独になったトリプトファンは脳の中に入ってセロトニンをつくってしまいます。
 ということは持久運動では脳内セロトニンができやすいので、BCAAを運動前に摂取することは中枢性の疲労を予防・軽減してくれると期待できるようです。
 このような中枢性疲労はオーバートレーニングの症状である眠気、食欲減退、倦怠感などに影響を及ぼしていると考えられます。
(Budgget Richard , British Journal of Sports Medicine,32:107-110.1998)