風が吹いただけでも激痛がはしることから名付けられた「痛風」。かつては「ぜいたく病」と呼ばれ、日本でも食生活の欧米化に伴って肥満(特に内臓脂肪型肥満)が増えた結果、痛風の患者数も増加してきたと考えられています。ところが最近は、女性や若年齢層の痛風が増えてきているそうで、トライアスリートの痛風もちょくちょく耳にします。原因は「ぜいたく(美食)」以外にもあるのです。
痛風への第一歩は「高尿酸血症」
痛風の初期には「高尿酸血症」といって血液検査で血液中の「尿酸値」が高く表れます(血液1デシリットル中の尿酸値が7mg以上)
。尿酸は、細胞の核にある核酸という物質(遺伝子DNAも核酸の一種)やエネルギー物質ATPなどの構成成分である「プリン体」が分解されてできますが、通常は尿や便とともに体外へ排泄されます。何らかの原因で、プリン体の排泄が追いつかなくなると血中濃度が高まり、やがて強烈な痛みが現れます。
こうした急性期に高尿酸血症を根本的に治療せず、痛みの対処療法だけを繰り返していると、体内に蓄積された尿酸が関節内で炎症を起こし続けて痛みが慢性化し、次第に尿酸の塊(痛風結節)ができるようになります。痛風結節は足の親指あたりにできることが多く、こうなると痛くて走るどころかくつもはけません。
痛風は単に痛いだけでなく(「単に」といっても、痛みの中では最強の痛みといわれますが)、悪化すると腎臓や心臓に障害を及ぼし、糖尿病や虚血性心疾患などの合併症を起こすこともあります。
尿酸のもと「プリン体」の摂取を減らす
尿酸のもとであるプリン体が体内に増加する原因としては、従来からプリン体の多い食品の摂りすぎが指摘されてきました。プリン体は遺伝子の一部でもあるので、どんな食品にも多かれ少なかれ含まれていますが、尿酸値の高い人はプリン体のとくに多い食品(下記参照)やプリン体を吸収しやすい調理法は避ける方が賢明です。食品に含まれるプリン体は水に溶けやすい性質をもっているので、肉や魚のゆで汁・焼き汁や、ラーメンのスープ(鶏ガラから多量のプリン体が溶け出している)は、本当はおいしくてもったいないのですが、減塩や脂肪の摂取を押さえるためにも我慢して残した方がいいでしょう。旨味調味料の成分のひとつ「イノシン酸」もプリン体の一種なので、注意が必要です。
実際には、食事の質よりも量の問題が重要で、というのは因果関係はよくわかりませんが肥満や中性脂肪が高いと痛風になりやすいからです。摂取エネルギーを適性に保つことや、尿酸の排泄を促すために日頃から十分に水分を十分にとることなどに気をつける必要があります。
<データ>プリン体の多い食品
(1) プリン体が非常に多く、避けた方がよい食品
アンキモ、白子、レバー(牛、鶏、豚)、イワシ缶詰(オイル漬)
(2) プリン体が多く、食べ過ぎに気をつけながら摂りたい食品
肉・肉加工品、魚(生、干物、練製品)、イカ、貝類、エビ、大豆、ウニ、たらこ
(続く)
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