「安藤」・・「はい」
  「井上」・・「はい」
  「上田」・・「はい」
  3学期が始まり、定年間近の老教師が出席をとっている。

  「山田」・・「はい」
  「渡辺」・・「はい」
  全員の名前を呼び終えたあと、先生はしばらく考えていた。

  「おかしいな・・・」
  「何がおかしいんですか? 先生」すぐに学級委員が質問する。
  「確かこのクラスは36人だと思ったのに、今は35人になってるんだ」

  ザワザワとみんなの声がする。
  「誰か転校して行ったのですか?」
  「いや・・そう言う話は聞いていない」
  教室の中はさらにザワザワと騒がしくなった。

  「座敷ぼっこが帰って行ったんだ!」誰かが言った・・・。
座敷ぼっこ

  ( 何を言ってるんだ。最初から35人だったじゃないか・・ )
  僕はのんびりと話す老教師と 雪深い田舎にうんざりしていた・・。
座敷ぼっこ

  だけど・・・何か・・もの足りなさを感じている。
  それがなんなのか、大切なものを無くした気がするのに思い出せない・・。

座敷ぼっこ

座敷ぼっこ

-----  その年の夏 戦争は終わり・・・ 僕は都会へと帰って行った  -----

冬花