「安藤」・・「はい」
「井上」・・「はい」
「上田」・・「はい」
2学期が始まり、定年間近の老教師が出席をとっている。
「山田」・・「はい」
「渡辺」・・「はい」
全員の名前を呼び終えて、先生はしばらく考えていた。
「おかしいな・・・」
「何がおかしいんですか? 先生」すぐに学級委員が質問する。
「確かこのクラスは35人だと思ったのに、今は36人になってるんだ」
ザワザワとみんなの声がする。
「誰か転校して来たのですか?」
「いや・・そう言う話は聞いていない」
教室の中はさらにザワザワと騒がしくなった。
「これは座敷ぼっこの仕業かも知れないな・・」
「先生。座敷ぼっこってなんですか?」学級委員はまた質問する。
「先生が子供の頃の事だけどな。友達と遊んでいると いつの間にか1人増えてるんだ」
「誰も気づかないんですか?」
「そうだ。確かめると最初から居た子ばかりなんだ」
「みんなの思い違いじゃ・・?」
「いや、確かに増えている。だけど誰が増えたのか誰もわからない・・」
「そんな馬鹿な事・・」
「そのうち誰かが 座敷ぼっこが来た、って話すんだよ」
座敷ぼっこ