6月17日 実習報告<6>
9:20 面談
市内の別の施設を出て一人暮らしをしようという患者さんと、現在その方が居る施設の担当者来訪。素人目にも一人暮らしはちょっと無理なんじゃないか、という雰囲気だったが、あくまでもこれは根拠のない第一印象。あとで聞いてみると、本人は知的障害がある上に精神障害があるらしく、その上今も幻聴が聞こえまくっている状況ではないか、とのこと。本人はその状況を自分で説明することが出来ないために、ただただ、大丈夫です大丈夫です、と繰り返すばかりだったのだ。
ニワトリとタマゴとどっちが先か、みたいな話だが、状況の悪い人ほど、家庭との関係がうまくいっていなかったり、経済的に大きな問題を抱えていたりするものだ。悪循環は加速度的に進んでいき、もうどこにも選択肢が無いような状態に陥っている人も少なくはない。で、今にも退院できそうな人が病院にいて、とても一人暮らしは無理だろう、という人が、町でポツリと暮らしていたりするのだ。何か変。何が変?
10:30 アナムネ2件
妻が痴呆で入院してから不安定になった、という男性の親戚夫婦が来院。本人の子ども達はみな遠方にいるとかで、まるで無関心だそうで、決して近い血縁ではないが面倒を見ているのだという。高齢者とその精神的問題というのは思った以上に密接な関係があって、それは単に痴呆だけではなく、喪失体験であったり、介護疲れであったり、孤独であったり、と様々な原因を持って様々な現象や症状が引き起こされているようだ。みな疲れ果てている。そしてこれまで何年も誰にも相談できなかったのだろう、初めてこうして他人に話す機会を得て、滝のように激しくとめどなくその思いを吐露している。彼らにとっては、その相手が、たとえこんな何の経験もない実習生であろうと、ベテランのPSWであろうと、ある部分ではあまり関係ないのかも知れない。とにかく聞いて欲しいのだ。だから彼らは私が実習生であることを断っているにもかかわらず、私の目をじっと見る。私に色々なことを訴えてくる。私はそこから逃げられない。逃げられないが、手を差し伸べられるわけでもなく、ただうなずき、ただただうなずくだけである。
自殺未遂を起こした娘に付き添ってきた母のアナムネ。娘が学校を中退した理由も、結婚した歳も、結婚相手の仕事も、ふたりが離婚した歳も、その後の娘の生業もよくわからないと言う。それでも親子だ。
つづく
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