2001年6月のお嬢(下)
6月26日 私信 はじめて帚木蓬生の小説を読んだのは、いつだったっけ。 「閉鎖病棟」であることは間違いないが、時期はよく覚えていない。 文庫本は「平成9年5月20日 二刷」となってるから、そのころかな。 その、単刀直入なタイトルに惹かれたのだと思う。 それから、作者が東大の仏文科を出て、TBSに2年勤めた後、 九大の医学部に入り直して、現在は精神科医、ってのも、 この本を読もうと思った大きな理由ではある。 だって、私が出来るもんならやってみてぇ、と思ってること、全部だもん。 「アリラン」訳してた、ってことは、朝鮮語もできるのか、ひょっとして。 まったく、天は二物も三物も与えるんだなぁ。 それか、ひょっとして、「三たびの海峡」書くために、勉強したとかいうことも あり得るな。そうだ、絶対そうだよ。 とにかく、とんでもない勉強量だと思うんだよなぁ、彼の本を読んでると。 どこの病院で働いてるんだろう? そう思って調べたら、北九州のとある病院の副院長さんだ、ってことが判明。 まぁ、ちょっと、ストーカー的発想ですが、ご縁だなぁ、と勝手に思ってます。 「逃亡」を読み終えました。 終盤は、あるいは、演出なのか、作者自身の混乱なのか、と思うほどの緊迫感。 好き嫌いはあると思うけど、一読の価値があります。 一読の価値、と言えば、昨年末の朝日新聞石川版連載の「ボトルの向こうに」。 この小説を読み終えた今、やはりひとりでも多くの人に読んで欲しい、と思います。 なんというかな、この歳になってやっと、歴史とか、そういうのが少しずつ、 おぼろげながら見えてきたような気がするというか、なんというか。 もう一度、中学校の歴史から勉強し直したいなと。 それから、もう一度、瀋陽の街を歩きたい。 わけがわからないかも知れないけど、まぁ、そういうわけで、 帚木蓬生の小説のファンです。まったく、わけが分からない話ですみませんね。 以上、私信でした。 6月25日 かなしいくやしいむなしい 大学時代の友人から、久しぶりに電話があった。 懐かしかった。 でも、嫌な予感がした。 予感は的中した。 ある政党の熱心な支持者である彼女が、15分ほどの世間話の後に切り出した。 「今度の選挙のお願いをしたいんだけど」。 非拘束名簿方式に変わった次の選挙では、うちの政党を支持して欲しい。 それから、投票には政党名ではなく、とある候補者の名前を書いて欲しい、と。 百歩譲って政党名ならともかく、そんな名前も顔も知らない人に投票できない、 というと、ならば資料でも何でも用意するから、と。 私は断った。 その政党、その候補者に投票することを断ったのではない。 投票は選挙公報を見て決める、と言った私の心に、これ以上踏み込まないでくれ、 そう思った。 正直、腹が立っていた。 「政治は私たちが変えるのよ」。 私が昨日書いたようなことを、彼女も熱く語っていた。同感だ。 だけど、それは、自分の思想を押し売りすることとは違う。 私は、こんなことで、友達をなくしたくないと思う。 だけど、この先、選挙のたびに、彼女からの電話があるかと思うと、気が重い。 反射的に受話器を耳から離してしまいそうな気がする。 彼女がそのことに気付いてくれる日は、来るのだろうか。 6月24日 どうします? 大学受験の前に一生懸命に考えた。 よし、大学(←受かってもいないのに)では「政治過程論」ってヤツを勉強しよう。 で、政治過程論とは、というと、実は結局その後あっさり挫折したので、説明不能。 まぁ、例えば、東京大学ではこういう風なことを勉強するんだと。 「投票行動の研究」ってのが、とにかく楽しそうだなぁ、と思っていた。 乱暴な話だが、これが解ってしまえば、天下を取ったも同然じゃん、と。 都議選の結果はまだ出ていない。 正直言ってこういう選挙は、とても悩ましい。 小泉純一郎を支持しないわけではないけれど、都議会とは国政は別の話だ、 という気もするし、大体、いつ純ちゃんがクビになるかも知れないし、 そしたらまた守旧派のジジイがゾロゾロ出てくるかも知れないし、 そんなジジイが今度の選挙の結果でワイワイ喜んでいるのを見るのはしゃくだし、 だからといって民主党が勝ったところでそれもなんだか腑に落ちない。 じゃぁ、選挙に行かなきゃいいかというと、それじゃ何も変わらないわけで。 結局毎度、選挙なんてバクチだな、という結論に辿り着く。 ま、財布に余裕がある午後に気まぐれに競馬にでも行って、 3000円か5000円か賭けて、ちょっと大穴を夢見るような、 宝くじって買わなきゃ当たらないのよねー、とついつい並んでしまうような、 そんなぐらいの気分じゃないと、投票なんてやっとられんわ、と最近思う。 だからといって、諦めているつもりは毛頭ない。 選挙権を持ってから、急かされても怒鳴られても投票に行かなかった妹が、 今度の選挙に行くと言いだした。 「変わりそうな気がするから」だそうな。 でも、変わりそうな今、という時は、突然やってきたわけではない、と思う。 変わらないかも知れないけど、何もしなくてはもっと変わらない、そう思って、 毎度毎度、ささやかに馬券を買うように投票してきた人たちのこれまでの1票が、 少しでも今の「変わりそうな気配」を呼ぶ力になっていたことを、信じたい。 っていうか、変わりそうな気がするって言うけどさ、変えようと思えば、 今までだって、変わるチャンスなんていくらでもあったっての。 ま、有権者みんなが投票行ってりゃ、って話だけどね。 あ、純ちゃんのキャラクターが決まったそうで。 これも票集めになるのかしらん。 6月22日 死刑判決を言い渡した後、泣きながら「別の裁判所での判断を勧める」と 訓戒を述べた裁判官がいたんだそうだ。(本日付け朝日新聞朝刊2社より) 裁判官の黒い法服は確か、法律以外の何ものにも染まらないことの象徴、 とかなんとか、そんな意味を持っていたような気がする。 それでも、裁判官の涙は流れた。 死刑判決が言い渡される瞬間を見たことがある。 被告人は、貧弱な身体をした、気の小さそうな、しょぼくれた男で、 裁判の間も、判決を言い渡される瞬間も、終始ただただおどおどしていて、 4人もの人を殺した極悪人に私たちが思い描くイメージとは、違っていた。 ただ、その卑屈な雰囲気だけが印象的だった。 国選弁護人は即日控訴したが、控訴期限までの弁護人不在の間に、 彼は自ら控訴を取り下げ、結局1審だけで死刑が確定してしまった。 なんだか、呆気にとられた。 アア、アノオトコハ、ワタシノミタ、アノハンケツニヨッテ、シヌノカ、と。 その後、学者や弁護士による人権救済の動きがあり、 彼は恐らく今も、私選弁護人とともに、公判再開の申し立てをしているはずだ。 とにもかくにも、彼はまだ生きている。 死刑に対して、私はまだ自分の考えをまとめきれずにいる。 死んだほうがましだ、死んでしまえ、という被告人だって何人か思い浮かぶし、 もし身内に被害者がいれば、ましてその思いは募るだろう。 一方で、憎い人間を殺すことで、その憎しみが消えるかというと、 そこに残るのは空しさだけか、それ以上の心の痛みか、という気もしないでもなく。 一昨日、死刑判決を受けた被告の女が犯した最初の罪は、 たった1万円しか入っていないセカンドバッグを奪うための昏睡強盗殺人。 その後に同じ手口で200万円を奪っているから、2度の強盗殺人で確かに 死刑相当でも違和感を感じないと言えば感じないのだけれど、 どういうわけか、憎しみとは違う、なにか、言いようのない虚しさというか、 悲しさというか、なんだかなぁ、というものを感じるのは私だけだろうか。 また偽善者ぶってますかね。 6月21日 読書 連日泣きながら家と会社を往復している。 と言っても、仕事が辛いわけではなくて、読んでいる小説が佳境に入ってきて、 数ページごとに泣かせどころがやってくるからだ。 「昼下がり…」にはまだ書いていないのだが、帚木蓬生の「逃亡」を読んでいる。 第二次大戦中に憲兵として国に忠誠尽くして働いた男が、 敗戦とともに、戦犯として追われる身になり逃亡を続ける、という話。 国家と個人とは、なんてややこしい話はこの際、私にとっては重要ではなくて、 中国からの帰国の場面などが、満州から引き揚げてきた祖母と重なって、 どうしても涙なしには読むことができないのだ。 祖母の話はいつかまた書くとして、私はそういう祖母が居て、祖父が居て、 父が居て、母が居て、そして、今ここに生かされている。 まぁ、大雑把に言えば、そういうことを感じているわけで。 何度挑戦しても読み進められなかったこの本を、今かじり付くように読む自分に、 我ながら不思議な思いを抱いている。 6月20日 Team2ch なんてったって私は偽善者なもんだから、人助けめいたことが嫌いじゃない。 世のため、人のため、ああ、自己満足。それでよい。何が悪い。 で、最近話題の「白血病解析プロジェクト」に手を出すことにした。 へっぽこ2ちゃんねらーの私だから、もちろんTeam2chに入る気マンマンだ。 なんてったって、メンバー数・貢献度とも、世界トップクラスだっていうからね。 何の事やら???という方が居るかも知れないから、簡単に説明すると、 白血病の原因究明のカギとなるタンパク質の特定には、 米国立癌研究財団だけでは2400万時間(約2470年)かかるらしいのだが、 それを、個人のパソコンの空きCPUを使って手伝っちゃおう、という試み。 あるソフトをインストールして起動すれば、パソコンの電源を入れている間は、 ずっとそのソフトが、データ解析をちまちまとやってくれる、というわけで、 しかも、他のアプリケーションにはほとんど影響がないときたもんだ。 詳しくはここで。 こんなに楽で、しかもターゲットが白血病だけになんだか充実感が得られそう。 同じような試みで、「SETI」っていう宇宙人を捜すプロジェクトもあるらしいけど、 宇宙人探しじゃちょっとねー。 そーいうわけで、早速ダウンロード開始。無事完了。 いざ、インストール。 あら?なんか変なメッセージが…。 あんたのパソコンじゃ、この仕事は無理だわよ(←英文直訳)、ってか。 だってうちのパソコンは購入から3年を経た48MBのバリュースター君で、 なんで48MBって中途半端かというと、それはあとから12MB付け足したからで、 その上おつむは「pentium」なんだもーん。 「U」でも「V」でもない、ただの「pentium」なんだもーん。。 人様の研究のお手伝いをする余裕なんて、何処にも少しも残っていないのだよ。 くっそー。なんかすっげー屈辱感。 新しいパソコン欲しいよー!!! …と、すっかり、インテル社の策略にはまっている私。 というのも、このプロジェクト、何を隠そう「pentium4」宣伝のための企画。 なんか腹立ってくるけど、やっぱり、新しいパソコン欲しい…。 いや、そこまで白血病の解析したいわけではないんだけどね。なんとなく。 興味とパソコンの余力が有る方は、どうぞご参加下さいませ。 |