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2000年11月のお嬢(下)



11月20日 投票に行こう

加藤・山崎両派が衆院本会議を欠席するというニュース速報が流れた。むむむ。
でも、まぁ、仕方ない。2人を責めるのは酷だと思う。責めるのはよそう。
なーんてことを思っているのは、どうやら少数派みたいで、テレビに出てくる人は、
キャスター・評論家・町の人まで、みんなこぞって「加藤は腰抜けだ」なんて言っている。
1人の人間に「日本の未来を託してたのに」みたいなこと言うなよー。それ、重すぎるだろ。
しかも、託したのって、ここ2、3日でしょ。なのに「裏切られた」とか言ってるし。図々しくない?
内閣支持率がこんなに低いのにどーして、とか何とか言ってみんなプリプリしてるけど、
あの、テレビのインタビューに答えてる人たちの投票率って、どのくらいなのかしら。
あれだけ、町中の人が自民党の悪口を言っているってことは、有権者全員が選挙に行ってりゃ、
こんな事態にはならなかったんじゃないの?なんて思ってしまう。
なのに、いざ選挙になれば今度は、関心がないだの、理想的な人がいないだの、
色んな言い訳をして、投票に行かない。お天気のいい日は投票率が下がるなんて、どーいうこっちゃ。
確かに、ベストの選択肢がある選挙なんて滅多にない。
でも、そんなもんでしょう、人が人を選ぶって。消去法だと思う、たぶん。
限られた条件の中で限りなくベターな選択をする。それが嫌なら、自分が選挙に出ればいい。
それも嫌なら、政治家にむやみやたらに期待したり、悪口言ったりすな、と言うのは極論かしら。
ニュースステーションで「もうこんな国にいられません。こうなったら外国に留学して永住します」という
視聴者からのFAXを渡辺真理が力一杯読んでいた。アホか、と思う。
アメリカなんか、いつも偉そうにしてるけど、所詮選挙の票数もまともに数えられん国やぞ。
どこに行って、何を学ぶつもりじゃ。逃げてどうする。
さあさあ皆さん、次の選挙は諦めずに投票に行きましょうよ。ほんとうに。


11月19日 改革

ぎっくり腰の直後だというのに、朝もはよからバドミントンの試合に出掛ける。
我が町会は団体戦で優勝し、個人戦でも2位という快挙だ。素晴らしい。
なーんて、実は、個人戦、3組しか出てないっちゅーねん。1回勝てば準優勝(笑)。
打ち上げの席では、リーダーが女子チームを社会人リーグに登録すると決意表明した。
彼女は、海外遠征にも出掛けている家庭婦人バドミントン界の有力選手。42歳。
3年前、それまでいたチームを抜けて、メンバーのほとんどが初心者という、このチームを作った。
それはいわゆる「クーデター」だった。
彼女が以前所属していたチームのリーダーは「魔女」と呼ばれている。
いざ選挙になればメンバーを自分がひいきにしている地元の候補者の応援要員として派遣して、
議員のご機嫌を獲る。試合会場では議員と互いに「センセー、センセー」とやっている。
それを断ったならば、どんな実力の持ち主であっても、試合には出られなくなった。
体育協会やら、バドミントン協会の役員を務める彼女のいじめは陰湿極まりなく、果てしなく続いた。
うちのチームは、そんなチームと決別したわずかな有志によって生まれたのだ。
リーダーは打ち上げの間ずっと、超ミニスカートの間から、パンツを見せて大暴れしていたかと思ったら、
ふと見ると、隅っこで誰かに話をしながらすすり泣いていた。
きっと私たちには言えないことが、まだまだたくさんあるのだろう。彼女は一人でその全てを背負う。
そして、次の瞬間には、ジョッキを一気に飲み干して、大股開きでこう言った。
「私は3年、5年先を見ているわけではなくて、10年20年後のことを考えているから頑張れるんよ」。
「改革」って、こういうもんなんだろうなぁ、と妙に納得してしまった。勇気が出る。
実は今日、表彰状を「魔女」にもらった。
みんな、なんだか呼び出しをくらって怒られているみたいで、気味の悪い表彰式だった。
恐怖による支配は絶対に続かない、なーんて野中さんの顔を思い浮かべたのは、私だけだろうか。


11月18日 余談

余談、である。
昨日もらった、そのレポートの話を母親にした。で、昨日書いたみたいな話をしたまでは良かった。
母は民生委員なんかをやっているので、会議で提案してみる、とか何とか言っていたし。
でも、何を思ったか突然、「でもね、あそこのお宅ね、赤十字とかの募金、絶対出さないのよ」などと、
意地悪そうな顔をして言い始めた。
私だって払わないわよ、そんな使い道のわからん金なんて、と言うと、意外そうな顔をして、
ちょっとシュンとしていた。娘が自分の意見に賛同すると思っていたのだろう。
募金なんて、町内会が集めるモノでもないし、ましてご近所が払うから、と言って出すモノでもない。
なのに、勘違いした人々が、募金しない人に、やれあの人は冷たいだの、ケチだの、勝手なことを言う。
そんな人に限って、なんで北朝鮮なんかに米を送るんだ、とかなんとか文句を言っているのだ。
自分のお金や時間は、自分でコントロールして使うモノじゃないのかな。大切なモノなんだから。
面倒くさがりのくせに、ちょっとばかりの募金で、人助けを「してやった」気分に浸りたい人ってのが居て、
それで赤十字みたいな大きな組織に自分の金を託して、結局あとで文句を言っている。なんだか虚しい。
そりゃ、もちろん、赤十字の活動は大切。募金している人みんながそういう人じゃないことも、わかってるつもり。
でもやっぱ「してやった」じゃないと思うんだよね。あと「みんながするから」でもないし。
身内には行動で見せてきたつもりだったけど、まだまだだったことが、少しショックでもあり、情けない。
道は長いぞ、この先も。
っていうか、私は一体どこへ行こうとしているのだろう。


11月17日 共に生きる

近所に重度の知的障害を持つ、フミヤくんという子がいる。
何とか彼を地域の人たちの中で育てたいというご両親の方針で、
養護学級へと市教委や学校が勧めるのを断り、普通学級に通わせてこれで9年目になる。
彼の中学卒業を前に、お母さんはその9年間をレポートにまとめた。
彼を産んだ当初、その事実が受け入れられずに苦しんだこと、そんな自分を助けてくれたのは、
彼の兄姉だったこと、そして今、彼がいて本当に良かったと思える、ということ。
レポートには、弟の就学先について両親と学校が話し合いを重ねている時期に、
5歳年上のお姉ちゃんが書いたという作文が載っている。
「兄妹が1年生になる人」と先生に尋ねられたのに、弟の就学先がまだ決まってなかったから、
手を挙げられなかった、という内容だ。手を挙げればよかった、と反省しました、とある。
その日、家に帰ったら弟の普通学級通学が許可されていた。最後にこうある。
「先生、弟は1年生になります。よろしくおねがいします」。
泣けた。
レポートを読み終わってもう一度その作文を読んで、また泣いた。
でも、これはドラマでも映画でもなくて、現実の話だ。感動して泣いたところで、彼らの力にはなるまい。
お母さんはこのレポートを近所の人に読んで欲しくて書いたのだ、と言っていた。
彼が学び、育ち、生きる場所は施設ではなくこの町なのだ、と。
お母さんは、障害の種類を問わず、また、障害者健常者を問わず誰でも集まれる場所が、
この町に欲しいと話していた。この町でなくてはだめなのだ、と。
私も力になりたいと思う。と言っても、何が出来るか、見当もつかないのだが。
お母さんが話している間、フミヤ君はずっとその隣で母に手を握られ、私を見てニコニコ笑っていた。
彼が言葉を発することすら出来ないということを、この日初めて知った。
そして、そんな彼のあまりに澄んだ綺麗な目を見て、私も言葉を失った。


11月16日 困ったオヤジ

クビになりそうな森総理は訪問先のブルネイで、ダボッとした民族衣装っぽいシャツを着て、
ポン引きのオヤジみたいな風情。なんだか楽しそうだ。
この期に及んで、電気が無くてもケータイは使える、とか、おもろい事を言ったそうな。
会社ではある人が、それを大きな声でみんなに知らせていた。
森はやっぱアホやねぇ、ITなんて何もわかってへんのや、あいつ、と。
それを聞いて、私は激しく思い出し笑いの衝動に駆られた。
その人の名誉のために今日まで我慢してきたけれど、もう限界じゃ。書いてやる。
あれは、1ヶ月ほど前、とあるスナックでの出来事。
私が店を出ようと席をたったその時、彼はやってきた。数日前に買ったばかりというパソコンを持って。
「ここで会ったが100年目」そう言って、私は引き留められた。おいおい、それはこっちのセリフじゃ。
パソコンはVAIOのとても立派な奴で、30万円ほどしたのだ、と早速演説が始まった。
やれ、インターネットだ、電子メールだ、ワープロに表計算に画像処理、他にもあれこれ。
これで、エロ画像の処理も完璧や、わっはっはっはっは〜〜〜〜〜。はいはい。
WindowsME搭載で、とにかく色んなソフトが山のように入っている、とご満悦の彼は、
今年になってWin98を入れた私にも執拗にMEを入れろ、ええから、入れたらええのに、と迫った。
いい加減、我慢が限界に達していた私は思いきって聞いてみた。
「ぶっちゃけた話、98とMEって、どこがどう違うんですか?」。
言ってから少し後悔した。あぁ、なんて残酷なことを言ってしまったのだろう。
使えもしないパソコンを、新しい物欲しさだけで4台も買っちゃったこのおじさんに、お世辞でも嘘でも、
「いいパソコンですね。私も欲しいなぁ。羨ましいなぁ」と言ってあげたらよかった。
でも、その3秒後、私はその後悔を後悔することになる。
「ほれ、なっちゃん、見てみぃ、これ」と彼が指さしているのは、マイコンピュータとゴミ箱のアイコン。
「なんかすごい機能がついたんですか?それ」
「ほれ、98とはアイコンの形がガラッと違うやろ、ガラッと。こ・れ・がMEっちゅーヤツや」。
”三枝の笑ウインドウ”に応募しようかな、とこの頃真剣に悩んでいる。